ティーパーティー所属、セイア様の付き人です。   作:音無葵

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お待たせしました!
趣味でナギサ様のイラスト描いてたりもするので時間が足りないですね。




09:覚醒

「お前は何故……何故まだ立ち上がる?」

 

何故、と問われ、サマナは考える……が、すぐにやめた。

ところどころ血を流し、息も絶え絶え、肉体はとうに限界を超越し、今この場に立っているのはもはや理屈では無いからだ。

 

 

全ては虚しいものだ(Vanitas vanitatum et omnia vanitas)というのに、なぜお前は諦めない?百合園セイアを失い、抜け殻となったお前が何故?」

 

そんなことは、他人から言われるまでもなく分かっている。

仮に復讐を遂げようと、セイアは、そして楽しかったあの日々は帰ってこないと気づき、復讐を諦めてしまったのは他ならぬサマナだからだ。

 

「あなたたちをぶち殺したところで、セイア様が帰ってこないことは分かっています」

 

だが、それでも。

 

「それでも、目の前に仇が現れて何もせずにいられるほど、物分かりがいいわけではありませんわ!」

 

魂から湧き出るありとあらゆる激情を薪として、満身創痍ながらも立ち上がり、敵を力強く見据える。

 

どうせすべては虚しく意味はないから諦めてしまえ、という甘い囁きがサマナの思考を侵す。

辛い、苦しい、痛い、寂しい……これらの感情に身を任せ、諦めてしまえばどれほど楽だろうか。

 

だが、サマナは諦めない。

ここで諦めてしまえば、生き残ろうが、死のうが、セイアに合わせる顔がなくなってしまう。

 

「ヒヨリ、やれ」

 

ヒヨリと呼ばれた緑髪の少女が、対物ライフルを構えサマナへと撃つ。

放った弾丸は過たず、サマナの額に直撃し後ろに大きくのけ反るが、それでもまだ倒れない。

 

「な、なんで……立っていられるわけがないはずなのに」

 

ゆっくりと、だがしっかりとした意志を持って、元の体勢に戻る。

もとより満身創痍な上、近距離で対物ライフルの直撃を受ければ無事では済まない。

 

当然、サマナは弾丸の直撃した額から相当量の血を流し、頭上のヘイローも危険信号のように明滅している。

しかし、ダメージとは裏腹に、サマナは"嗤って"いた。

 

そしてサマナの青藍色の右目が、青空を思わせる鮮やかな色に変化する。

 

「アハッ!」

 

どこかから、力が沸き出てくる……正体不明の経路(パス)が開通し、サマナの内側へと右目を通じて流れ込んでいる。

そして、頭ではなく魂で目覚めた力を理解する。

 

無造作に突き出した左手には、銃撃で吹き飛ばされたはずの拳銃が握られていた。

 

「なっ」

「リーダー!」

 

吹き飛ばされた銃を引き寄せた?それとも無から作り出した?

そんなことは、今はどうだっていい。

重要なのはこれでまた戦えるということだけだ。

 

「だが、何度向かってこようと同じことだ!」

 

武器を手に入れ、更に多少出力が上がったとはいえ、受けたダメージがなかったことになった訳では無い。

このまま押し切れると判断し、襲撃者たちは全員での集中砲火を選択する。

 

対するサマナは、翼を前面に展開し防御姿勢を取る。

そして、翼から赤黒い神秘を放出し弾丸を"搔き消した"。

 

「な、なんなんですかあれ!?」

「怯むな、撃ち続けろ!」

 

一瞬の動揺の後、サマナに再度攻撃を行おうとすると既にそこにはいなかった。

 

「リーダー、上!」

「そこか!」

 

サマナの十八番の空中からの奇襲攻撃。

あのミカでさえ、対応できなかった初見殺しの攻撃に、襲撃者たちは反応して見せた。

 

翼である程度は制御できるとはいえ、直線的な動きには変わりない。

進路さえ読めてしまえば、対処することはたやすい。

 

アサルトライフルで牽制し翼での制御を使わせ、本命の狙撃で仕留める。

咄嗟の作戦だったが、襲撃者たちは持ち前の練度で、相談もなしにそれを成功させる。

 

翼での防御は間に合わない。完全な直撃コースだ。

それをサマナは、あふれ出る神秘で強化されたフィジカルだけで、空中宙返りを成功させ回避するとともに着地を試みる。

 

「これでおしまい」

 

しかし、それすら計算のうち。

着地しようとする瞬間を狙い、ロケットランチャーの砲弾が目前に迫る。

 

全てが本命であり、かつ囮でもある。

正体不明の覚醒をしたサマナに何をされようと、確実に仕留めるための3重の罠がここに結実した。

 

いかに肉体が強化されていようと、着地寸前の状態では回避は不可能。

翼による防御も、もはや間に合う距離ではない。

 

故に、選択肢は……

 

着弾する寸前、サマナは赤黒い粒子だけをその場に残して消えた。

 

「バカな、消えただと」

「うわあああん!これでもダメなんてもう終わりです~!!」

「ヒヨリ、うるさい」

 

次の瞬間、アサルトライフルの少女の前の前にサマナは出現した。

両手のハンドガンを連射するが、咄嗟に反応されアサルトライフルを盾に受け止められてしまう。

 

上段回し蹴り、銃撃しながらのサマーソルトキック……先ほどまでの計算された動きではなく、どこか獣のような荒々しい戦闘スタイルに変貌していた。

先ほどとは違い、読みにくいフィジカルに任せた強引な攻めは、アサルトライフルの少女に着実にダメージを与える。

 

しかし、まだそれでも届かない。

決定打は与えられず、攻撃に偏重しているため反撃でサマナの方もダメージを受けている。

 

そして、再びサマナの姿が消失する。

 

「見切った」

 

再び粒子を残し、消えたサマナが出現したのはアサルトライフルの少女の右側面だった。

出現位置に射撃を置かれ、被弾を許してしまう。

 

「この距離ならば気配でわかるぞ」

「がはっ」

 

瞬間移動の正体は、ただの高速移動だ。

翼の隙間から神秘を放出することによる、神秘によるジェット噴射。

ただただそれが尋常ではない出力なため、放出された神秘が粒子として残るだけで瞬間移動したように見えるのだ。

 

「まだ、まだ死ねない!」

 

再び神秘を放出し加速する。

今度は、一直線にアサルトライフルの少女のもとへ向かう。

 

「それがどうした」

 

目の前に現れたサマナを視認し、先ほどと同様にハンドガンでの射撃体勢に入ったのを確認すると、アサルトライフルで受け止めようとする。

だが、サマナの能力はこれだけではないことを失念していた。

次の瞬間、サマナの両腕にハンドガンは無く、背負っていたはずのスナイパーライフルが握られていた。

 

「あははっ!」

「しまっぐはぁっ!」

 

防御不可能の一撃がアサルトライフルの少女に直撃し、サマナは反動を利用して後退し一度距離を取る。

 

そして再び高速移動で急襲を仕掛けようとし、急に力が抜けて前のめりに倒れこんだ。

 

「時間切れか」

 

突如溢れ出た莫大な神秘に任せた戦闘では、そう長く続かないことはサマナ自身分かっていた。

普段の出力を遥かに超える神秘を常時肉体に流し、神秘を放出して加速するなどと言う強引な高速移動を行えば肉体が損傷することは言わなくてもわかるだろう。

 

「げほっげほっ」

 

サマナは咳き込み、口から血を吐き出す。

あれほどの急加速と急停止を繰り返して、内臓にすらダメージが及んでいる。

 

「今度こそ終わりだ」

 

動けないサマナに対して、アサルトライフルを構える。

もはや肉体が限界を突破したサマナには、ただの銃撃でさえ命取りになる。

 

「いいえ、やらせないわ!」

 

どこからかともなく響く声とともに、アサルトライフルの少女の足元に1発の弾丸が着弾し爆発した。

 

「くっ」

「死んでください死んでください死んでください!!」

 

次に、紫髪の少女がショットガンを乱射しながらアサルトライフルの少女を襲撃する。

 

「リーダー!」

「はあ……援護なんてさせないよ」

 

ロケットランチャーの少女が援護しようとするが、どこからか現れた白と黒の髪の少女の銃から放たれる轟音で動きを止められる。

 

「あわわわわ」

「そ~れ♥」

 

スナイパーの少女のもとには、白髪の少女からマシンガンの銃弾と爆弾が雨あられと降り注ぎ、どちらを援護することもできない。

 

「お前たちは何者だ」

 

アサルトライフルの少女は、突然現れた集団に問いかける。

 

「私たちは便利屋68、金さえもらえば何でもやる何でも屋よ!」

「何……?いや、知らないぞ。何だそれは」

 

アサルトライフルの少女は、純粋な感想を口にする。

しかしその何気ない発言が、赤髪の少女を傷つけた。

 

「アルちゃん……」

 

赤髪の少女、アルは大きなショックを受け白目をむいている。

先ほどまで人が死ぬか死なないかの、重苦しい空気が流れていたはずだが、いつの間にかその空気は霧散している。

 

これが、便利屋68の日常。

なぜか、その場の空気を柔らかくする(ギャグ展開にする)

もはや何かの神秘による特殊能力ではないかと疑うほどだ。

 

「リーダー、そろそろまずいかも」

「ちっ、こっちも時間切れか。撤収するぞ。ミサキ、姫は任せる」

 

襲撃者たちは、倒された味方を回収すると撤退する。

 

「逃がさないわよ!」

「社長」

 

アルは追撃しようとするが、視線でけが人がいることを示され思いとどまる。

 

「忘れるな。我々はいつもお前を狙っているぞ」

 

そう言い残すと、襲撃者たちは路地へと消えていった。

 

「おーーーーい!サマナちゃーーーん!」

 

どこからかともなく、サマナのことを呼ぶ声が聞こえる。

ホシノの声だ。

 

サマナはその声を聴いて安堵し、そのまま意識を手放した。




当初は普通にアルちゃんたちが助けに来るつもりだったんですが、どこかで覚醒させたいなーと思ってたので入れちゃいました。
武器の召喚(仮)はもともと考えてたんですが、ほかのはその場で考えたので盛りすぎちゃいましたね。
赤いGN粒子まき散らしながらクイックブーストするバケモンになってしまった。
これも全部、怪異克服バルファルクが悪い。

そういえば。DDOSとか大変だった……というかまだ継続してるみたいですね。
昨日書こうと思ったらアクセスできなくてびっくりしました。
運営さんファイト!

追記:書いてた時はインフレさせすぎた思ったけど、 これでもまだ本気ホシノに勝てるビジョンが見えなくて震えてます
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