オイラはサンズ。アビドスの生徒だ   作:今日はステキな日だ

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足元注意ってな

 

雪の積もった街。そこには誰も居ない。お店の中も家の中にも誰も居ない。そこにあるのは塵だけ。

 

そんな誰も居ない街の中、()()は一人、塵を被った赤色のマフラーを握り締めて歩く。全てはあの人間を止める為、そして最後の審判を下す為、オレは最後の回廊で待つ。

 

ああ、今日はステキな(最悪な)日だ────

 

「!!…………ハアハア」

 

悪夢から逃れる為にオレはベットから飛び起きる。身体からは嫌な汗が流れ、自分の左頬を伝う感覚から、オレは左目で涙を流しているのだろう。

 

「クソッタレが………」

 

嫌な夢を見た。それは何度も何度も繰り返されて来た地獄。決して忘れる事など出来ない最悪の記憶。塵まみれになってしまった最悪の記憶。

 

これのせいでずっとオレはまともに熟睡出来たりなんかしない。毎回毎回、オレが寝るたびにこの悪夢が襲ってくる。

 

「…………?」

 

すぐ近くに置いてあるスマホからピコンと通知音が鳴り響く。スマホを手にとって見てみると、それは先生からのモモトークの通知だった。

 

『ホシノたちと一緒にセリカのバイトに遊びに行くのだけれど、サンズも一緒にどうだい?』

 

開いてみると、それはセリカがバイトをしている所へ遊びに行かないか?と言う先生からのお誘いだった。

 

『悪いが遠慮させてもらう』

 

文字を打ち込み先生へそう返信する。どうしても先程の夢を見てからは、今はそんな気分にはなれない。

 

『セリカの働いている所って飲食店だよ。小腹とか空いてない?』

 

『生憎、今のオイラには食欲がなくてな。パスさせてもらう』

 

『えー!!ラーメンだよ?』

 

『先生たちで楽しんできな』

 

『分かった。また今度行こう!!』

 

先生との連絡を終えたので、オレはモモトークを閉じてスマホを机に置く。

 

「ラーメンか………」

 

この辺りでラーメンが食べられる場所なんて、確か柴関ラーメンだけだった筈だ。オレはあそこの大将に何度かお世話になっているので、やっぱり先生の誘いに乗れば良かったと今更になって後悔する。

 

「暇だな………」

 

 

▼▼

 

 

午後になり日も落ちた頃に、突然サンズのスマホから着信音が鳴り響く。

 

『サンズ先輩!セリカちゃんがそちらの方に来てたりしませんか?!』

 

スマホを手に取り、通話ボタンを押すと開口一番にアヤネからそう告げられる。

 

「何かあったのか?」

 

アヤネの焦った様子からことの重大さを把握し、サンズは状況を把握しようとアヤネに質問する。

 

『それがセリカちゃんと連絡が取れなくなってしまって………。家の方にも向かってみたんですけど家に帰ってないみたいなんです』

 

「バイトをまだしてるんじゃないのか?」

 

『いえ、それがバイト先に確認を取ると、セリカちゃんは定時にお店を出たみたいなんです』

 

きな臭い匂いがしてきたなとサンズは心の中で思い始める。こういう時は大抵碌なことじゃない。しかもサンズの予感は悪い方ばかりに当たる。

 

「オイラ個人でもセリカを捜索する。何か有ったらまた連絡してくれ」

 

『はいわかりました先輩。また後で連絡をします!!』

 

アヤネとの通話が切れてツーツーという音が小さく部屋を鳴り響く。

 

「…………」

 

何故セリカが居なくなったのだろうか?という疑問がサンズの中で湧く。セリカがアビドスを捨てて出て行ったという可能性などが出てくるが、それに限っては絶対にない。

 

セリカはアビドスが大好きで、借金返済の為に隠れてバイトをしているような少女だ。それにアビドスを捨てて出て行こうとセリカが思っていたなら、先生にあそこまで食って掛かる事なんてしなかった筈だ。

 

誰かがセリカに危害を加えたのか?

 

ここ最近ずっとアビドスに危害を加えてきたり、事あることに妨害をしてくる集団の存在が頭に浮かんでくる。

 

「カタカタヘルメット団か………」

 

これはまだ推測で確証などは全くないが、状況的にカタカタヘルメット団がセリカに危害を加えた可能性は高い。

 

ならセリカはカタカタヘルメット団に危害を加えられたとして何処に居る?

 

サンズは脳内にある記憶を辿り、カタカタヘルメット団のアジドの場所を思い出す。本拠地は前に先生やホシノたちに潰された事から、ここにセリカは居ない筈だ。

 

なら次に考えられるのは、砂漠化が進んだ市街地のエリアだ。あそこは確か住民の居ない廃墟なので、治安が維持できなく、チンピラばかりが集まっている。

 

そこにアヤネが前、その市街地の危険要素を確認した時にカタカタヘルメット団の主力が集まっているのを確認した事から、セリカがそこに居る可能性は高い。

 

「…………」

 

サンズは綺麗に畳んである赤いマフラーをジッと見つめた後、パーカーのフードを深く被り、外の景色を見る。

 

「行くか………」

 

サンズがそうポツリと呟いた瞬間、サンズの身体がまるで瞬間移動でもしたかのようにその場から消えた。

 

 

 

▼▼

 

 

 

「う、うーん……。へ?」

 

セリカがガタンガタンと揺れる感覚と音で目を覚ます。目を開けてみるとそこは薄暗い長方形の部屋であり、ガタンガタンと揺れている感覚から自分が何処かに運ばれている事が分かる。

 

なんでこんな場所に居るのか?セリカは記憶を遡る。

 

確か私は午前中に先生に会って、その後ずっとストーカーされて、追い払って。その後にバイトに行って、そしたらホシノ先輩によって、アビドスのみんなと先生を連れて来られて。定時に帰って、それで……。

 

セリカは自分の身に何があったのかを思いだす。

 

「そうだ、私攫われたんだ!あ、う……頭が……」

 

ヘルメット団に攫われたのだ。その時に睡眠ガスグレネードを使って眠らされた後遺症なのか頭痛がする。

 

私はなんとかして立ち上がろうとするも、手足が縛られていて立ち上がる所か動く事さえ出来ない。

 

「ここ……トラックの荷台?……ヘルメット団め、私をどこに連れていくつもりよ」

 

手足が縛られていて身体を余り動かす事は出来ないが、視線なら動かせる。私は何かここから脱出する手掛かりを探す為、周りを注意深く見渡す。

 

「暗い……けど、あそこの隙間から少し光が漏れてる」

 

何度か身体を唸らせて地面を這い、私は光が漏れている隙間を覗き込む。

 

「……砂漠……線路!? 線路がある場所って……ま、まさかここ、アビドス郊外の砂漠!?」

 

隙間から見えた光景は、砂漠化により廃棄となってしまった建物や砂漠により所々が埋もれている線路だった。そしてそれにより私は今、自分がいる場所を理解して顔を青ざめさせる。

 

「……そ、そんな。ここからじゃ、どこにも連絡が取れない! もし脱出したとしても、対策委員会の皆にどうやって知らせれば……。どうしよ、みんな心配しているだろうな……」

 

自分の手元に愛銃はない。皆んなと連絡を取ろうと思っても恐らく近辺の通信設備の問題で、繋がらない。そもそも手足を縛られているのでそんな事は不可能だ。

 

「……このまま何処かに埋められちゃうのかな。誰にも気付かれない様に……。連絡も途絶えて……私も他の子達みたいに、街を去ったと思われるんだろうな……裏切ったって……思われるのかな。誤解されたまま、皆に会えないまま死ぬなんて……そんなのやだよ………」

 

死ぬかもしれないという恐怖に駆られて思考がどんどんとネガティブになっていく。私にとって一番嫌なのは皆んなに裏切ったと思われる事だ。

 

「う、う、ぐぅ……! うっ、ううっ……」

 

目から涙が溢れ出す。対策委員会みんなと過ごした日々を思い出して涙を流す。

 

「よう。いそがしそうでなによりだな」

 

そんな時だった。外で本来なら聞こえない筈の先輩の声が聞こえた。

 

「なっ、お前、いつの間に?!」

 

「なんでこの場所が分かったんだ?!」

 

外からヘルメット団の慌ただしい声が聞こえる。どうやら先程の先輩の声は幻聴ではなかったようだ。

 

「あれはサンズ先輩?もしかして私を助けに………?」

 

隙間からサンズ先輩の姿が確認出来る。だが先生やホシノ先輩たちの姿は見当たらない。

 

「サンズ先輩もしかして一人で来たの?!」

 

私は焦る。サンズ先輩は先生と同じでヘイローがない。つまり銃弾一発でサンズ先輩は私たちと違い重症に成り得る。

 

「このままだとサンズ先輩が危ない!!」

 

私は必死に手足の紐を解こうと、身を捩ったりしてみるがその努力は無意味に終わる。私はサンズ先輩がこのままだと死んでしまうと思い、顔がだんだんと青ざめ、目からは涙が溢れる。

 

「おっとクソガキ共、トラックを止めて真下を注意した方がいいぜ。何処に尖った骨があるかもしれないからな」

 

そんな時だった。サンズ先輩がそう言った直後、何か破裂したような音が鳴り響き、ガタガタと揺れていたトラックが更にガタガタと揺れだし、バランスが取れなくなっていく。そしてそのままトラックはスリップして転倒する。

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

トラックの中に居た私は身体が空中に浮くような感覚を感じた後、何度か壁や床に身体を打ち付ける。

 

「あたたたっ……んもう、何なのよ!!!!」

 

私はその際に身体が外に放り投げたされて地面に転がっていた。

 

「へへ、元気そうで何よりだな」

 

そこにサンズ先輩がニヤニヤとしながら私の元にやって来て、紐を解いてくれる。

 

「サンズ先輩!もっといい方法とかなかったんですか!!身体を何度もぶつけて痛いんだけど!!」

 

「すまん、すまん。お詫びにケチャップでもいるか?」

 

「要らない!!」

 

「へへ、そうか………。おっと他の奴等も来たみたいだぜ?」

 

サンズ先輩が見ている方向に私も振り向くと、そこには武器を構えて此方に向かっている皆んなの姿が見えた。

 

『セリカちゃんとサンズ先輩を発見!生存確認しました!』

 

「こちらも確認した。半泣きのセリカとサンズ先輩を発見!」

 

通信機からアヤネの声が聞こえ、それに応答する形でシロコが答える。

 

「なにぃー!? うちの可愛いセリカちゃんが泣いていただと!そんなに寂しかったの?ママが悪かったわ、ごめんねー!!」

 

「う、うわああ!?う、うるさいっ!!な、泣いてなんか!!」

 

「嘘!この目でしっかり見た!」

 

ホシノに揶揄われて私は恥ずかしさから慌てて否定するが、すかさずシロコ先輩に否定されてしまう。

 

「泣かないでください、セリカちゃん!私たちが、その涙を拭いで差し上げますから!」

 

「あーもう、うるさいってば!!違うったら違うのっ!!黙れーっ!!」

 

アビドスのみんなから私は揶揄われて、顔が赤くなるのが分かる。

 

”セリカが無事で安心したよ“

 

「な、なんで先生まで?!どうやってここまで来たの?!」

 

”だてにストーカーじゃないからね!!”

 

「ば……ば……!バッカじゃないの?!」

 

私は先生のアホらしい回答につい大きい声を出してしまう。

 

「うへ、元気そうじゃーん?無事確保完了ー」

 

そんなやりとりを見てホシノは安心したのかのほほんとした雰囲気でそう言う。

 

「ん、まだ油断は禁物。ここは敵地のど真ん中だから」

 

「だねー。人質を乗せた車両が破壊されたって知ったら、敵さん怒り狂って攻撃してくるよー」

 

そんなフラグを言った直後、アヤネから通信が入る。

 

『前方にカタカタヘルメット団の兵力、多数確認!! さらに巨大な重火器も多数確認しました! 徐々に包囲網を構築しています!』

 

「敵ながらあっぱれ……それじゃー、せっかくだから包囲網を突破して帰りますかね〜」

 

「……気を付けて。奴ら、改造した重戦車を持ってるわよ」

 

「知ってる。Flak41改良型」

 

ホシノたちがそれぞれ自分の愛銃を構える。

 

「それじゃ……行こうか?」

 

ホシノがいつものゆるりとした表情を少し張って、そう言った瞬間、戦闘が開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みにこの後、先生の戦闘指揮の元、無事カタカタヘルメット団を撃退しセリカを救出した。(サンズはこの時、先生のサポートをしている)

 

 

"そういえば、一つ気になったんだけど"

 

「なんだ?」

 

"サンズってどうやってこんなに早くセリカの元に行けたの?車とか使った訳でもなさそうだし……“

 

「”近道“を使ったんだよ」

 

"近道??"

 

 

 

 

 

 




毎回毎回、オレが寝るたびにこの悪夢が襲ってくる。

この文章を読んで、前の話で寝てたじゃんと思うかもしれませんが、これには理由があるんです。

ネタバレ?になるかもしれないから詳しくは言えないけど、サンズは誰かが居る空間じゃないと寝れなくなってしまったんです。前回はアビドスの面々や先生がいた為、サンズは寝る事が出来ました。熟睡ではないけど……

なのでサンズはたまにホシノやシロコ、ノノミ、と一瞬にお昼寝をしていたり………ゲフン、ゲフン


良かったら、感想などよろしくお願いします!


番外編でサンズのお昼寝回いる?

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