チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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カイザーPMC、君達は泣いていい


カイザーPMCの危機

 カイザーPMCの部隊は三方向から向かってきていた。正面は戦車を主力とした本隊であり、その左右の部隊は歩兵が殆どとなっている。

 

 各チームでそれぞれの部隊の相手を受け持つことになっており、この場での最高戦力であるグレイ教授とC&Cが正面を担当することになった。

 

「戦車隊、あのデカブツを狙え!あの大きさで素早く動けるはずがないだろう。滅多打ちにしてやるのだ!」

 

 理事の指示を受け、カイザーPMCの戦車隊が主砲を向けた先にあったのは、こちらに突進してくるパワードスーツを纏ったグレイの姿。彼らは主砲による攻撃を開始する。

 

 殺到する砲弾。彼らはこの攻撃だけで標的を一方的に倒せると踏んでいた。このデカブツをさっさと倒して残りの生徒達も片付けるつもりだったのだが、予想は裏切られる。

 

「な、何だとぉ!?」

 

 驚きの声を上げる理事。彼らが見たのは、見た目とは裏腹に軽やかなステップで砲弾を避け、シールドで受け流し、砲弾の一つを投げ返して味方を撃破する戦士の姿だった。この時点で、理事は逃げ出していたりする。

 

「たあっ!!」

 

 グレイは空高く跳躍し、戦車隊の頭上まで移動すると、そのまま降下して槍を戦車に叩き付ける。大きくしなった槍の威力は凄まじく、落下の勢いと腕力が合わさることで戦車を一撃で潰してしまった。

 

「この、化け物がぁ!!」

 

 付近にいた戦車の乗員が車載機関銃で銃撃してくるが、そんなものでは効果はない。容易く砲塔部分を車体から引っこ抜かれ、鈍器として別の味方へと叩き付けられてしまった。

 

「そうさ、私は化け物さ」

 

 グレイは勇猛果敢に敵陣へと斬り込んでいく。案の定、敵のど真ん中なので四方八方から囲まれており、死角が多いために危険な状態なのだが、それは想定済みだ。

 

 突然、グレイの背後にいる兵士達の頭上に一つの影が落ちる。見上げてみれば、そこには鋭い目付きの小柄な生徒がおり、二丁のサブマシンガンから銃弾を降り注がせてきた。その正体は、建物の壁面を駆け抜けて飛び上がったネルである。

 

「な、何だこいつ……があっ!?」

 

 兵士の一人が蜂の巣にされる。ネルは集団の真っ只中に降り立つと、鋭角的な機動で駆け回りながら、両手の銃を振り回して至近距離から銃撃を浴びせて倒していく。

 

 それは、まるで彼女の羽織るスカジャンに描かれた竜の如く。ツイン・ドラゴンと名付けられた二丁の愛銃は双頭の竜と化して敵を銃撃のブレスで打ち負かすのだ。

 

「クソ、近すぎる!これでは撃てない!」

 

「この……チビが!」

 

「誰がチビだ!?ぶっ殺すぞ!」

 

 至近距離に迫られているために兵士達はまともに撃つことができない。とある兵士が銃床による打撃で対処しようとするも、その前に鋭い回し蹴りを受けて頭部を破壊されてしまった。

 

「接近戦であたしに勝てると思うなよ!」

 

 ネルのコールサイン00(ダブルオー)は約束された勝利の象徴とされており、彼女はキヴォトス最強格の一人に数えられる。そんな彼女が得意とするのは接近戦であり、接近戦の間合いならば絶対に負けないと豪語するほどだ。

 

「流石だ、ネルよ」

 

「へっ、爺さんこそ凄いぜ」

 

 いつの間にかグレイとネルは背中合わせの状態になっていた。互いの大きさはかなり異なっているのだが、その暴れっぷりは大きさの違いを感じさせず、グレイの死角を完璧に埋めていた。

 

 かなりの数が二人に釘付けになっているわけだが、ミレニアム勢が彼らだけではないことをお忘れだろうか?

 

「アスナ、いっくよー!!」

 

 付近の建物から窓ガラスを突き破ってアスナが現れ、包囲網の背後から奇襲を仕掛ける。滞空中の射撃で何体かを倒すと、着地点にいた兵士の後頭部を膝蹴りで砕きつつ地面に降り立った。

 

 そこに一斉射撃が襲い掛かるも、アスナはまるで未来予知をしているかのように弾幕の隙間に体を滑り込ませ、普通に弾幕を掻い潜ってお返しに銃弾をプレゼントしていく。中にはC&C仕込みの格闘術で投げ飛ばされる兵士もいた。

 

「お掃除の時間です」

 

 同じタイミングで屋根の上に潜伏していたアカネが爆弾を投げ込み、別方向の集団を吹き飛ばす。生き残りは手にした愛用の拳銃で頭部だけを狙い撃ちして倒しており、無慈悲に撃ち抜く姿はまるで凄腕の暗殺者のようだ。

 

「狙い撃つ……」

 

 カリンによる狙撃も定期的に行われており、戦車や大型のオートマタといった目標を優先的に狙っている。その威力は凄まじく、戦車の装甲やシールドを一撃で貫通して沈黙させている。

 

 C&Cの強みは四人のエージェントによる連携だ。ネルだけでも十分に強いのだが、チームで動くことによって更なる力を発揮できるのだ。今は教授もいるので、鬼に金棒とでも言うべきだろう。

 

「戦う相手を間違えたなぁ!!」

 

 全くもってその通りである。ミレニアム最強のエージェントと高い戦闘力を持つ鳥人族のパワードスーツ戦士。この二人とC&Cを前にして、勝てる要素など何処にもないのだ。そして、瞬く間に部隊は壊滅した。

 

 一方その頃、先生達は……

 

「ノノミ、制圧射撃だ!」

 

「はい!お仕置きの時間です~!」

 

 先生の指示を受け、ノノミがガトリングによる制圧射撃を実施する。これで倒された者もおり、強力な弾幕の前に兵士は誰も動けない。

 

「今のうちに前進!」

 

 制圧射撃で敵を足止めしている間に、先生はシロコとセリカを率いて前進。新しい遮蔽物に身を隠した。

 

「シロコ、ドローンを」

 

「ん。ドローン、作動開始」

 

 ドローンが上昇を始める。シロコのドローンには左右にミサイルポッドが装備されており、敵集団にミサイルの雨を降り注がせた。

 

「みんな、今だ!」

 

 ミサイルの着弾で仲間が何人もやられ、混乱に陥ったカイザーPMCに対して、三人は遮蔽物から身を乗り出して射撃を行う。三人の射撃によって敵は制圧されていった。

 

「先生、前よりも射撃が上手くなった」

 

「そうかい?それは照れるな……」

 

 先生がリロードのために遮蔽物へ隠れた時、肩が触れそうな距離感でシロコが隣に現れ、射撃を褒めてくる。

 

「ちょっと、イチャイチャしてる暇があったらリロードしなさいよ!このままじゃ弾が切れるんだけど!」

 

 二人のリロードをカバーしていたセリカは仲間外れだ。単独で射撃している状態であり、二人に文句を言いながら必死に撃っていた。

 

 なお、そんな状態でありながらも正確な射撃によるヘッドショットで敵を確実に沈め続けていたりする。

 

 だが、弾切れが時間の問題であるため、先生は謝ると即座にリロードを終えて戦列に戻った。

 

「すまない、すぐに戻るよ」

 

 先生はグレイからパワードスーツを受け取った後、カイザーPMCや悪い大人と戦えるようになるため、銃を手に取ることにしていた。

 

 だが、先生に銃を握った記憶はない。撃ち方すら分からないので、先生は生徒達にアドバイスを求めていた。その一人がシロコだ。

 

 先生はシロコに銃選びから銃の扱い、射撃、戦術行動まで指導してもらい、戦える大人になった。しかし、その力を生徒に向けることはない。

 

 ちなみに、先生が選んだ銃はシロコとお揃いのアサルトライフルになっている。カラーリングも白色で近いものであり、シャーレのロゴ入りだ。先生はこの銃に〈フェデレーション〉という名前を付けていた。

 

「皆さん、補給品です!」

 

 そこへアヤネの操る非武装の赤いドローンが現れ、弾薬を詰め込んだコンテナを落とす。ノノミも合流し、全ての弾薬の受け取りが終わった。

 

「みんな、引き続き頑張ろう」

 

 そして、アビドス廃校対策委員会は進撃する。ノノミの制圧射撃に、シロコのドローンや手榴弾、セリカの正確な射撃、アヤネの支援が組み合わさり、カイザーPMCの掃討が進められた。

 

 やがて、三つのチームは同じ地点に到達する。そこには彼らの攻撃から逃れてきたカイザーPMC部隊が集まっており、理事もそこにいた。

 

「貴様ら、よくも我々の邪魔をしてくれたな!!援軍が来るという奇跡さえなければ、我々は速やかに目標を達成していたというのに……!」

 

「見苦しいぞ。潔く敗北を認めよ……!!」

 

 文句ばかり吐き続ける様子の理事を、グレイは一喝する。流石のグレイも、大人が喚き散らす姿に苛立ちを覚えたようだ。

 

「理事、ホシノは何処にいる?知らないとは言わせない……」

 

 そして、先生がホシノの居場所を理事に尋ねるのだが、簡単に教えてくれるわけではない。

 

「まさか、教えるはずがないだろう!その代わり、我々の最新兵器を見せてやろう!」

 

 その時、輸送ヘリが飛来する。下部には二足歩行の大型兵器が吊り下げられており、理事の背後に下ろされた。

 

「これはゴリアテ、我々が開発した最新鋭兵器だ。生きて帰れるとは思わないことだな!」

 

 ゴリアテと呼ばれるその兵器は、二足歩行で両腕にはガトリング、頭部には大きな大砲が装備されている。理事は胸部のコックピットに乗り込むと、攻撃を仕掛けてきた。

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