チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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ビークル:ゴリアテ
カイザーPMCが運用する二足歩行機動兵器です。近距離では両腕のガトリング砲、遠距離では頭部の大型ビーム砲と両肩に内蔵されたミサイルランチャーを使用して敵を排除します。


撃退

「貴様には新たな武装の実験台になってもらうぞ」

 

 グレイは槍を地面に突き立てると、拳銃のような形状の武装を出現させる。拳銃とはいっても鳥人族サイズなので、人間からすればサイズ感は手持ち式の大砲のようなものだ。

 

「死ねぇぇぇぇ!!!」

 

 そんな中、理事はゴリアテの頭部に存在する大型ビームキャノンを起動させると、エネルギーを集束させた極太のビームを放ってくる。

 

 対するグレイはシールドを斜めに構えると、ビームを受け流して斜め上方向へと軌道を変える。街への被害を最小限に押さえるためだ。

 

「受け流しただと!?なら、これはどうだ!」

 

 今度は両腕のガトリング砲が回転を開始し、多数の砲弾がグレイに集中する。だが、彼は直撃を受けても怯むことはなく、何事もなかったかのように拳銃型武装を二回発砲する。

 

 銃口から飛び出したのは、二発の青いビームだ。それらは両腕のガトリングに直撃し、瞬時に凍結させてしまった。

 

「な、何だこれは!?一体、何をした!?」

 

 凍結したガトリングは回転を完全に停止しており、武装として使えない状態だ。凍結という予想外の事態に、理事は驚いていた。

 

「教える意味があるのかね?」

 

 グレイが使用したのはアイスビームガンと名付けられた装備だ。チョウゾテクノロジーの一つであるアイスビームを放つことが可能になっている。アイスビーム限定のアームキャノンといえるだろう。

 

「舐めるなぁぁぁ!!!」

 

 ゴリアテの両肩が開き、多数のミサイルがその姿を覗かせる。直後、目標をロックオンした全てのミサイルが斉射され、グレイに殺到した。

 

 グレイは爆発に飲み込まれ、煙の中へと消える。しかし、煙が晴れて現れたのはシールドを構えたグレイの姿だった。

 

「今度はこちらからいかせてもらうぞ」

 

 アイスビームガンを何発も発砲し、ゴリアテの各所に直撃させていく。やがて、ゴリアテは氷の檻に閉じ込められ、完全に動きを封じられる結果となった。

 

「こやつを受けるがよい」

 

「何をする気だ!?や、やめろ!!あぁ、そうだ!欲しいものがあれば何でもくれてやる!設備だって提供してやる!だから!」

 

「それは無理な話だよ」

 

 グレイは氷像と化したゴリアテに向けてレールガン〈ギャラクシー〉を構える。理事が色々と命乞いをするが、奴に対する慈悲はない。エネルギーチャージが開始され、充填率がたちまち上昇していき、いつもより少し上の80%にまで達した。

 

〈エネルギー充填率、80%〉

 

「レールガン、発射!」

 

「う、うわぁぁぁぁっ!?!?」

 

 ミレニアムのマイスターが創造した光の剣が牙を剥く。辺り一帯に閃光が撒き散らされ、屈強な鋼の巨人は超高速の一撃によって穿たれた。

 

 

 

「ぐっ、ぐぬぬっ......!最新鋭の兵器がこんなにも簡単に破壊されるとは……」

 

「今度こそ、貴様の負けだ。ここで拘束させてもらう」

 

 グレイの目の前でゴリアテは仰向けに倒れていた。胸部の装甲には大穴が穿たれており、コクピットが完全に剥き出しの状態だ。そこから下半身を失った理事が這い出てきたので、拘束を試みたが……

 

「っ!?」

 

ガキンッ!

 

 グレイは咄嗟にシールドを掲げる。すると、砲弾が飛来してシールドに直撃した。それは一発で終わらずに何発も続く。見れば、数両の戦車がこちらに向かってきており、砲撃をグレイに集中させてきた。

 

『砲撃を続行せよ!』

 

 信管が抜かれているのか、砲撃が爆発するようなことはなく、そもそも防御力が高いので大したダメージになっていない。だが、砲弾の直撃を何回も受けて動ける者はおらず、グレイは釘付けにされてしまった。

 

『発煙弾、発射!理事を救出するのだ!』

 

 さらには煙幕までもが張られ、視界が遮られる。煙が晴れた時には既にPMC理事の姿が消えており、その場にはゴリアテの残骸が残されるだけとなってしまった。

 

「しまった、逃げられたか……すまない、奴を取り逃がしてしまった……」

 

「教授、気に病むことはありませんよ。アビドスの街からカイザーPMCを撃退できた。それだけでも十分です」

 

「ん、その通り。先輩の場所はこれから探ればいい」

 

「皆さん、ホシノ先輩の救出のためにも一先ず戻りましょう。ミレニアムの皆さん、そして便利屋の皆さんも………あれ、いませんね?」

 

 救出の策を練るために一先ず学校に戻ることを提案するアヤネ。教授やC&C、便利屋68の面々も一緒に来てもらうつもりだったのだが、便利屋だけ影も形もなくなっていた。

 

 アビドスとミレニアムの生徒、それぞれの引率者は、この戦いを乗り越えてアビドス高等学校の校舎へと無事に帰還した。

 

 

 

 

 

「そうか、黒服の奴が……」

 

 その日の夜、グレイは先生からとある報告を受け取っていた。

 

 戦いを終えて校舎に戻ってきたところ、二人は先生宛ての招待状が置かれているのを発見しており、その独特な絵柄から黒服が書いたものであることは明らかだった。

 

 先生がパワードスーツを纏った姿で指定された建物に向かうと、その最上階で黒服が待っていた。ホシノを拐ったのは、まさに彼だった。

 

 最初に、黒服は先生とは敵対ではなくむしろ協力したい旨を話した。ゲマトリアにとって先生という存在は些細なものではなく、障害になりうるものだった。それを自分達の側に取り込んでしまおうというのだ。

 

 だが、グレイからゲマトリアや黒服のことを聞かされていた先生は、それを拒否。進んで協力することはないと断言した。

 

 先生の要求はただ一つ。ホシノを返してもらうことのみだ。そのような権利など存在していないと黒服が反論したが、そんなことは想定内だ。

 

「ホシノの退学届に顧問である私がサインをしていない。だから、まだホシノはアビドスの生徒で、アビドス生徒会役員で、私の生徒だ」

 

「おや、これは一本取られました。先生と生徒……随分と厄介な概念ですね」

 

 黒服は先生に感心して数回拍手する。だが、それでも彼は先生に対してアビドスから手を引くように要求してきた。

 

「三澤先生、アビドスから手を引いてください。あの学校に力を貸したところで、あなたにもたらされる利益などないのですよ。そもそも、元からあなたの与り知るところではないのですから」

 

「断る」

 

「なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?」

 

 先生の選択に黒服は動揺する。表情など存在しない顔面であるが、それで覆い隠せるような度合いではなかった。

 

「理解できません。何故、断るのですか?先生、それは一体何のためなのですか?」

 

「今まで、あの子達の苦しみに対して責任を取る大人が誰一人いなかった」

 

「何が言いたいのですか?まさか、あなたが責任を取るとでも?あなたはあの子達とは無関係な赤の他人ですよ?どうして、そんなことをするのですか?」

 

「それが大人のやるべきことだからだ」

 

 先生の考える大人とは「責任を負う者」だ。黒服にはいくら説明しても理解できないだろう。

 

「先生、それは間違っています。大人とは……」

 

 黒服は語る。大人とは、望む通りに社会を改造し、法則を決めて、常識と非常識、非凡と平凡の境界線を決める者であり、他人を支配する存在であるのだと。

 

 一方の先生は、キヴォトスにおける支配者になりえたにも関わらず、一時的に手中に収めたはずの権力や権限、神秘を全て簡単に手放している。黒服と先生は正反対の存在であった。 

 

「言っても理解できないだろうな」 

 

「分かりました、交渉は決裂です。先生、あなたは彼女を助けたいですか?」

 

 黒服は意外にもホシノの場所を教えてくれた。ただし、大勢のPMCによって守られたアビドス砂漠にあるPMC基地であるというおまけ付きだ。

 

 黒服はそこでホシノに対して人体実験をする予定だった。〈ネメシス〉なるもので観測した神秘の裏側である恐怖を、生きている生徒に適用できるかという実験だという。だが、その予定も先生の介入によって前提が崩れたので永遠に中止である。

 

「精々、頑張って生徒を助けるといいでしょう。微力ながら、幸運を祈ります」

 

 こうして、今に至る。

 

「ホシノはアビドス砂漠にあるカイザーPMCの基地の地下に囚われています。助け出すのは一筋縄にはいかないでしょう」

 

「我々、ミレニアムが参戦したとしても苦しい戦いになるであろうな」

 

 アビドス砂漠にある基地には、僻地にしては不釣り合いな程の戦力が駐留しており、守りはかなり固い。大軍を分断し、援軍を足止めできるだけの戦力が必要だった。

 

「一応、戦力には当てがあります。ゲヘナの風紀委員会やトリニティの生徒会ならば支援してくれる可能性が……」

 

 アビドスの生徒達と共に戦う過程で、ゲヘナやトリニティと関わることもあった。そのお陰で両校とは縁があるため、先生は救出作戦のために力を借りようとしていた。

 

「先生よ、私も個人的に何人かの生徒に声をかけておこう」

 

「教授、それは助かります」

 

 翌日、先生はアビドスの生徒を引率してゲヘナとトリニティへ出発した。そして、グレイも彼らを助けるべく動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 便利屋68。それは、ゲヘナ学園二年生の陸八魔アルが社長を務める零細企業である。一流のアウトローを目指すアルの見境のない行動が危険視され、ゲヘナからはほぼ追放されているような状態だ。

 

 構成員はたったの四人。常に金欠であり、一人前のラーメンを分け合って食べ、アルが見栄を張るために借りた立派な事務所の家賃の支払いに苦労している。

 

 本日、そんな彼女達の事務所に一人の大きな客が来ていた。

 

「ど、どうぞ、お茶です……」

 

「ありがとう、お嬢さん」

 

 湯飲みを載せたトレーを持った、オドオドとした雰囲気の少女が奥から現れ、客の前に茶を差し出す。

 

 彼女は伊草ハルカ。軍服のような服装で紫色の髪の彼女は、ゲヘナ学園一年生で便利屋68の平社員である。彼女にはアルに救われた過去があり、アルのことを慕っていた。

 

「便利屋68に依頼をしたい。報酬としては、こちらでいかがかな?」

 

 便利屋68にやって来た客はグレイだ。今回、彼はとあることを彼女達に依頼するために訪問していた。

 

「何よ、この数字?!これだけあれば、しばらくは毎日のように大盛りのラーメンを一人ずつ注文できるじゃないの!」

 

 提示されたのはウン十万という金額だ。それで出てくる願望がラーメンなあたり、可愛いものである。

 

「仲間思いなのだな。そなたの元に彼女達が集ったのも理解できる……善人の魂を持っているとしか言いようがない」

 

「な、な、何を言っているのかしら!?わ、私は一流のアウトローになる女よ!も、もっと大きなことにお金を使ってやるんだから!」

 

「くふふっ、アルちゃんの人の良さが隠しきれてないよ?」

 

 アルは取り繕おうとするが、完全にガタガタである。そこに追い討ちをかけたのは、便利屋で室長の肩書を付けられた浅黄ムツキだ。

 

 彼女はアルの幼馴染で一番の理解者である。アルの内面のことをよく分かっているのだが、敢えてアルを煽ることで引き起こした騒動を楽しんでいたりする。

 

「それで、肝心の依頼内容を知りたいんだけど。まあ、大体の予想はついているけれど……」

 

 アルが慌てる中、透き通るような落ち着いた声が響く。そこには大人のような雰囲気の生徒がおり、課長の鬼方カヨコであった。

 

 ゲヘナ学園三年生である最年長の彼女は、便利屋68の参謀といえる存在で、判断力や洞察力を駆使して便利屋を支えている。ついでに苦労人でもある。

 

「あぁ、今回は戦闘がメインだ。アビドスの対策委員会と先生による人質救出を援護するため、C&Cと共にカイザーPMCの足止めをしてもらいたいのだ」

 

「カイザーPMCの足止めね。それくらいなら朝飯前よ!私達、便利屋68が引き受けさせてもらうわ!」

 

「ありがとう、協力に感謝するよ。翌朝、ここまで迎えの輸送機が来るので乗り込んでほしい」

 

「ええ、分かったわ」

 

 グレイはアルと握手を交わし、ここで契約が成立した。そのまま、グレイは帰ったのだが……

 

「社長、本当に依頼を受けてよかったの?前はたまたま上手くいったけれど、今回ばかりは同じ手は使えない。それに、あのC&Cと仕事をするのは……」

 

「C&C……聞いたことがあるような……」

 

「くふふ。アルちゃん、この前のメイド服の連中だよ?忘れちゃったの?」

 

「C&Cはミレニアム最強のエージェント集団。表ではメイド部として活動しているみたいだけど……」

 

「わ、私も聞いたことがあります。たしか、負け知らずでどんなテロリストが相手でも必ず捕縛してくるとか……」

 

「なななな、なっ、何ですってーーー??!!」

 

 白目を剥いたアルの絶叫が事務所に響いた。




最後のオチがアルになってしまった

アルとかコユキはオチを作るのに便利なキャラだと思う
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