チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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ビナー戦があっさりと終わってしまったな……


決着

バシュ!バシュ!バシュ!

 

 ビナーの後頭部に幾つも存在するVLSの蓋が開き、そこから垂直に射出された大型ミサイル群が先生達へと突っ込んでくる。

 

『教授、お願いします!』

 

「あぁ!」

 

 グレイは背負っている武装の片方を展開する。鳥人族サイズになったガトリング砲であり、トリガーを引くと束ねられた砲身が高速で回転を始めた。ガトリング砲から放たれたのは砲弾ではなく、ビームだ。連射されるビームによってミサイル群は次々と絡め取られ、目標に当たることはなかった。

 

 この武器はビームガトリング砲〈レイヴン〉といい、グレイがキヴォトスに来てから開発したもので、使用者の生体エネルギーを変換したパワービームを放つ仕組みだ。そして、弾数はほぼ無限となっている。

 

『アカネ!ムツキ!爆弾を!』

 

「承知しました」

 

「さぁ、いっくよ~!」

 

 ミサイルが全て撃墜されたタイミングで、アカネとムツキが爆弾を満載した鞄を投擲する。爆破を得意とする二人が用意した爆弾はどちらも強力であり、それらはビナーの周囲に落下して大爆発を起こし、ビナーの動きを制限する。

 

さらに……

 

『だんちゃーく、今!』

 

 そこへトリニティ砲兵隊による同時弾着射撃がお見舞いされ、上方向から強烈な衝撃を受けたビナーは完全に釘付けとなり、煙で視界も一時的に遮られることになった。

 

『今だ!』

 

 その瞬間、ビナーへと突撃していく生徒達の一団があった。

 

「死んでください!死んでください!」

 

「おらおらおらおらぁっ!!」

 

「うへぇ、若者は元気がいいねぇ……」

 

 それはハルカとネル、ホシノの三人だ。彼らは近距離からビナーに銃撃のラッシュを叩き込んでおり、その全てが一ヶ所に集中している。やがて、その箇所の装甲はズタボロになった。

 

『カリン!アル!』

 

「狙い撃つ……」

 

「ふふっ、任せなさい……」

 

 今度はズタボロになった箇所に二発の銃弾が連続で直撃する。カリンの対戦車ライフルによる射撃が鉄の外皮を深々と食い破り、アルの放った神秘を込めた一発が同じ位置に突き刺さり、内部から爆発を起こして傷口を大きく抉った。

 

『ヒナ、敵の傷口を狙って!』

 

「了解」

 

 そこに追い討ちをかけたのはヒナだ。神秘を込めた掃射の範囲をいつも以上に狭め、自らの最大火力を傷口に集中させていく。ゲヘナ最強の名は伊達ではなく、ビナーは悲鳴のような叫びを響かせた。

 

 ビナーが怯んだのを見て、先生は総攻撃を指示する。対策委員会が、C&Cが、風紀委員会が、便利屋68が、この場にいる全員が傷口に攻撃を開始した。

 

 ビナーは苦しみながらもビームやミサイルを発射しようとするが、トリニティの砲兵隊と補給を終えたリト達のウイングジェット隊の攻撃によって阻まれる。この戦いは、全ての戦力が投入される文字通りの総力戦になっていた。

 

『教授、とどめは……』

 

「あぁ、私に任せよ。この一撃で確実に仕留めてみせよう……」

 

 グレイはその後方におり、地面に深々と突き立てたシールドを土台にしてレールガン〈ギャラクシー〉の照準を合わせていた。レールガンはこの場で最も破壊力がある武器であり、ビナーに対する最後の一撃として選ばれたのだ。

 

 レールガンに生体エネルギーが注ぎ込まれ、エネルギーが浸透していくに連れて全体がぼんやりとした青白い光を放ち始める。

 

 レールガンが内包するエネルギーの数値はたちまち上昇していく。だが、それは無限ではない。全てのものは有限であり、永遠に続くものなど存在しないのだから。

 

 やがて、エネルギー量は限界に達する。レールガンはオーバーロード寸前であり、表面からは断続的に電撃が迸っている。

 

〈エネルギー充填率100%〉

 

「レールガン、発射!」

 

 閃光と共に必殺の一撃が放たれる。光の柱がアビドス砂漠の乾いた空気を切り裂きながら猛進し、生徒達が切り開いたビナーの傷口を撃ち貫いた。

 

ギィヤアァァァァァッ!?!?

 

 ビナーは断末魔の叫びを上げ、直後に沈黙。頭上のヘイローが消え、巨体が砂地に倒れ伏し、振動と共に砂が撒き散らされる。そして、デカグラマトン第三の預言者は砂の中へ沈んでいった。

 

「終わったのか……?」

 

「先生よ、そうとも限らない。あれは人智を越えた存在だ。神秘なるものが存在している以上、復活する可能性がないわけではないだろう……」

 

「それなら、また倒すだけです。何度でも立ち向かって、平穏を取り戻すつもりです」

 

「そうか。それなら、私もこの体が動く限りは手伝わせてもらうよ」

 

「それは頼もしいです」

 

「取り敢えず、今は我らの勝利を喜ぶとしよう」

 

「ええ、そうですね」

 

 先生はヘルメットを外し、グレイはパワードスーツの頭部のみを解除する。サラリーマンがネクタイを緩めるようなものであり、長い一連の戦いが終わった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから、色々と進展があった。

 

 まず、アビドスに金を貸していたカイザーローンについては、連邦生徒会による捜査が入った。三大学園がカイザーの不正をほぼ同時に公表した上、連邦生徒会に圧力をかけたからだ。

 

 結果、借金の額を減らすには至らなかったが、利息の高さが問題視され、適正な利息まで引き下げられた。また、アビドスを襲う武装集団に資金を流していたことも白日の下に晒され、アビドスに対して賠償金を支払うように命じられた。

 

 カイザーPMCについては、PMC理事が生徒の誘拐とアビドスに対する攻撃を指示した容疑で逮捕された。本当は誘拐に関しては黒服が真犯人なのだが、理事に罪を被せて上手く逃げたようだ。

 

 なお、カイザーコーポレーションは自分達は関係ないということを示すようにPMC理事を解任しており、彼は本社から見捨てられた形だ。その境遇には同情したい。

 

 PMCの攻撃でアビドスの校舎や数少ないアビドスが所有する土地にも被害が出ていたため、カイザーPMCに対しても賠償金の支払いが命じられた。

 

 なお、この賠償金は全てが現金で支払われたわけではなく、一部はカイザーコーポレーションが所有する旧アビドスの土地を返還する形での支払いになっている。もっとも、その土地はカイザーの計画に不要となったものや、利用価値の低いものばかりで、カイザーにとってはダメージが少ないのだが……

 

 それでも、土地の一部が帰ってきたことはアビドスにとっては嬉しいニュースだった。土地があれば何らかの事業を起こすこともできるし、規模の拡大に利用できるからだ。アビドスが再生していく姿を見て、入学したいという生徒が増えることも期待されている。

 

 PMC不在の間にアビドス砂漠のカイザーPMC基地の調査がミレニアムとアビドスにより極秘で実施された。過去のアビドス生徒会が保有していたビナーとの交戦記録や、デカグラマトン関係のデータが発見されている。

 

 また、アビドス砂漠でカイザーが進めている計画の一部データも発見されているが、砂漠に沈む巨大なオーパーツを探していることしか判明しなかった。ビナーといい、オーパーツといい、アビドス砂漠には様々なものが埋まっている可能性が高い。危険なものだって数多くあるだろう。

 

 そして、アビドス廃校対策委員会については、先生の権限による認証で連邦生徒会から正式にアビドス生徒会の後継組織として認められており、前と同じような酷い目に遭うことは少なくなったといえる。

 

 アビドスはこれから再生の道を歩んでいくだろう。その過程で思わぬ横槍や困難が待ち構えているかもしれないが、彼女達ならきっと成し遂げるに違いない。グレイはそう信じていた。

 

 

 

 

「おや、これは?」

 

 ある日、グレイの下にメッセージが届いた。それは、アビドス対策委員会からのものだ。

 

『お久しぶりです、グレイ教授。対策委員会の奥空アヤネです』

 

『アビドスは現在、復興のために力を注いでいるのですが、そこで驚くべき出来事が起こりました』

 

『私達は、ミレニアムから供与していただいた大型掘削機械、ディガーノートの性能を試すために掘削能力の試験を行っていました』

 

 正式名称はミレニアム・ディガーノートだ。鳥人族が惑星SR388で運用していた大型掘削兵器、ディガーノートをミレニアムが再現し、有人化したものであり、その一機がデータ取りのためにアビドスへと供与されたのだ。

 

『既存の掘削機械では掘れなかった場所まで掘削してしまうディガーノートの性能には驚きましたが、かなり硬い岩盤の層を掘削した直後、そこから大量の水が吹き出てきました。何と、私達は新しいオアシスを発見したのです』

 

『オアシスが見つかったと知れば、アビドスに戻ってきてくれる住民が現れるかもしれません。入学したいという生徒だって増える可能性もあります』

 

『ディガーノートによる採掘と、オアシスの水を利用したミレニアム製の水耕栽培設備の稼働により、アビドスの財政状況は改善する傾向にあります』

 

『最近、学籍を失った元生徒達に対してアビドスは門戸を開いています。希望者はまだ多くありませんが、これから増えることを期待しています』

 

 編入・入学希望者に対してアビドスは面接を行っており、すでに一名の編入と二名の入学が確定していた。その中には一人、元ヘルメット団がいたりする。これから希望者が増えることを考えると、彼女達は面接で忙しくなるだろう。

 

『それと、贈ってくださったウイングジェットはよく使わせていただいています。私達の足としても、貨物の輸送用としても便利で、大助かりです』

 

『是非、またミレニアムの皆さんと共にアビドスへいらっしゃってください。変化したアビドスの様子をお見せしたいので、精一杯頑張りますね』

 

「ふふっ、若さは良いな……衰退の道しかない我々とは違い、彼らには輝く未来が待っている。砂漠の雛鳥よ、君達が空へと羽ばたく時を楽しみにしているぞ……」

 

 グレイはラボの最上階にある一室から外を見る。そこには地平線の向こう側から登ってくる朝日の姿が。それは、まるでこれからのアビドスを表しているようだった。

 

 グレイはその光景を眺めた後、一日の活動を開始した。今日もまた、彼は教授として生徒のために奔走するのだろう。

 

1章 Millennium Chozo Professor〈完〉




これで第一章はラストになります。
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