その後、グレイ達は依頼人である〈お祭り運営委員会〉の所まで移動していた。届ければそれで完了なのだが、そんな彼らの前に武装集団が現れた。
「見つけたぞ!ミレニアムの奴らだな!?」
「ホログラム花火をこちらに寄越せ!」
それは、お面を装着した和装の集団だった。お面の種類は、天狗やおかめ、ひょっとこ、般若が主なところであり、ショットガンやロケットランチャー、ガトリングで武装していた。その中から、般若のお面を着けた者が進み出てくる。
「お前達が持ち込んだのは伝統を破壊するものだ!よって、我々が回収して処分させてもらう!」
「それは困るね。これは大切な私達の発明品でね、百鬼夜行の生徒から依頼されたものなんだ。ミレニアムのマイスターとして、君達に渡すことはできない」
「そもそも、君達は何者なんだね?」
「ミレニアムの教授……私達の正体を教えてやろう!私達は……」
お面集団の頭目が名乗ろうとするが、その前にその名を呼んだ者がいた。
「魑魅一座、だろ?俺は知ってるぜ。本当に懐かしい奴らだ……」
それはリトだった。
「魑魅一座は百鬼夜行の不良集団だ。まあ、ヘルメットの代わりにお面を着けたヘルメット団みたいなものだな」
「リトよ、よく知っているな」
「ちょっと、昔な……」
昔、というのは暴走族時代のことだろう。当時、リトと魑魅一座の間に何かあったのは間違いない。リトは〈スカイクロー〉と名付けた愛用する拳銃を構えて警告した。
「てめえら、教授達に手を出したらただでは済まさねえぜ」
「お前、まさか……!?」
魑魅一座の頭目は仮面で隠しきれない程に動揺する。構成員達は頭目の異様な様子を見て、気が気ではなかった。
「あの、キャプテン・ファルコなのか!?」
「それって、あの暴走族のリーダー?」
「突如として引退したとかいう?」
「聞いたことある!あのキャスパリーグとも殴り合ったらしい!」
「あの時はよくもやってくれたな、キャプテン・ファルコ!!お前達、あいつを倒したら幹部にしてやる!」
かつて、リトの率いる暴走族と魑魅一座が激突する事件があった。その結果は魑魅一座が大打撃を受ける形で終わっており、リト達は恐れられていた。
頭目は最初こそ動揺していたが、リト一人しかいない状況であり、自身の戦力が多数であることから、攻撃を命じた。
「おい、上を見てみろ」
「は?」
リトの言葉を聞いて一斉に上を見上げる魑魅一座。そこにはピンク色の球体が浮かんでおり、そのまま落下してきて……
「「「「「あばばばばば!?!?」」」」」
落下した球体から発生したのは広範囲に及ぶ電撃だった。その効果範囲に魑魅一座は収まっており、全員が感電して気絶した。
「にはははは!!引っ掛かった~!!」
彼らの意識は全てリトだけに向いており、特に脅威だと思っていなかったコユキ達は完全に無視されていた。リトが注意を引いているところをコユキ特性の電撃爆弾で一掃したのだ。
「コユキ、よくやった。リトも、よく彼らを引き付けてくれたな。ありがとう」
「後でスイーツでも奢ってください」
「礼はいい。それよりも、早く依頼人の場所まで行かねえと」
「そうであったな。皆、出発しよう」
その場に残されたのは、気絶して死体のように倒れ伏す魑魅一座のメンバーだけだった。
「おや、先生ではないか」
「教授!?どうして百鬼夜行に?」
依頼人が経営する喫茶店である百夜堂の前に到着すると、丁度入店しようとする先生の姿があった。
「この子達の付き添いさ。ここの店主から依頼を受けていてね……」
「こんにちは、先生。アビドスで姿は見ていたけれど、直接顔を合わせるのは初めてだね。私はエンジニア部の部長、白石ウタハ。よろしくね、先生」
「同じく、エンジニア部の豊見コトリです!説明や解説が必要なら、私に任せてください!」
「同じく、エンジニア部の猫塚ヒビキ。よろしく、先生」
「みんな、よろしくね」
「ところで、先生はどうして百鬼夜行に?」
「ここの店主をしている生徒から招待されまして。どうやら、相談したいことがあるようで……」
「なら、丁度よい。共に行こうか」
「ええ、そうですね」
先生によって百夜堂のドアが開き、カランカランとドアベルの音が鳴り響く。店員と思われる生徒がこちらに気付いたようだ。
「お頭ァァ!ようこそいらっしゃいマシタッ!わざわざシャーレ組とミレニアム組からいらっしゃると聞いて、このフィーナ!心よりお待ちしておりマシタァッッッ!!」
「お頭?」
「しゃ、シャーレ組?」
その店員は、キヴォトスでもあまりいないような異国感溢れる容姿の生徒だった。片言の話し方で可愛らしい喫茶店に場違いなセリフを発した彼女は、フィーナと名乗った。
「ちょっと、フィーナ!先生達が困っているでしょ!」
そこへ、和風メイドの格好をした店主らしき生徒が現れて彼女に注意する。今回の依頼者である〈お祭り運営委員会〉の委員長、河和シズコだ。
「で、でも、先生や教授が来たらビックリするくらいの挨拶をって委員長が……」
「いやいやいや、それはあくまでも第一印象の話だから!第一印象を可愛くしておくことで、最初から好感度MAXで行こうというこの……」
その場に微妙な空気が流れる。それに気づいたシズコは何とか取り繕おうとするが……
「え、えっと、今のはその、つまり……て、てへぺろ……っ!じゃなくて……こほんっ!」
もはやグダグダである。
「いらっしゃいませ、先生、教授、エンジニア部の皆さん、百夜堂へようこそ!にゃんにゃん!」
「「にゃん?」」
「はぁ……俺達は一体、何を見せられているんだ?」
「リト先輩、知らないんですか?」
「これは萌えというものだよ」
「萌えについての解説なら……」
「コトリ、ステイッ。私達はシズコと何度か会っているから、このノリには慣れたよ」
大人二名とリトだけ百夜堂のノリに付いていけていない状態だ。彼らは萌えというものを知らなかった。
「では、中へとご案内いたします!フィーナ、七名様!」
「はいっ!不肖フィーナ!全力でおもてなしいたしマスッッッ!」
「だからそういうのじゃなくって!」
シズコの叫びが百夜堂に響いた。
「改めまして、自己紹介を。私は河和シズコ、百鬼夜行連合学院所属、お祭り運営委員会の委員長であり、この百鬼夜行自慢の伝統的な喫茶店〈百夜堂〉のオーナーであると同時に看板娘でもあります!」
「そして、ワタシは百夜堂の従業員!任侠の道を極めんとする、朝比奈フィーナと申しマス!」
「よろしくね、二人とも」
「よろしく頼む。君達がミレニアムのエンジニア部に依頼をした生徒で間違いないね?」
「そうです。教授もこちらにいらっしゃると聞いた時は驚きました。ウタハさん、依頼を受けていただいて、ありがとうございます」
「もの作りは私達エンジニア部の得意とするところ。依頼を持ってきてくれたことに感謝しかないよ。それで、こちらが例のブツになるんだけれど……」
ウタハはホログラム花火の発生装置をテーブルの上に置く。全員の目がそれに集まった。
「この装置は?」
「そういえば、先生は知らなかったな。これはホログラム花火の発生装置だ」
「今回の祭りのフィナーレのためにミレニアムへお願いしたものです。今までは祭りの最後に伝統的に花火を打ち上げていたのですが、新たな試みをしようということになったんです」
「このホログラム花火なら、本物では難しい形や大きさの花火を用意できるし、大がかりな準備も必要なくなる。この子は私達の自信作さ」
「ホログラムの花火か……是非、使われるところを見てみたいな」
「ただ、少し問題が……」
「もしかして、私が招待された理由に関係があるのかな?」
「はい。最近、祭りの邪魔をしてくる奴らが現れまして……純粋に祭りにご招待したかったのも本当なのですが……今朝も色々と荒らされたし……」
「まさか、魑魅一座とかいう輩ではないだろうな?」
邪魔する者がいると聞いて真っ先に脳裏に浮かんできたのは、ホログラム花火を奪おうと襲ってきた武装集団、魑魅一座の姿だった。
「そうです!でも、どうして分かったんですか?」
「ここに来るまでに襲われてな……あぁ、こちらに怪我人はいない。リトとコユキが追い払ってくれたのでね」
「もしかして、魑魅一座へ対処するために私の力が必要ということかな?」
「はい。それについて相談したいのですが……」
だが、そこに奴らが襲来した。
ズガガガガァッ!!
ドパンッ!ドパンッ!
ズガアァァァン!!!
突如、百夜堂の外から多数の銃声と爆発音が響いてくる。外を覗いてみれば、そこでは先ほど襲ってきたお面集団、魑魅一座が暴れまわっていた。
「ふはははっ!あたしらは、百鬼夜行の路上に屯する魑魅魍魎……!」
「その名も、魑魅一座・路上流っす!」
「さあみんな、ご要望通りに荒らしまくりな!」
魑魅一座は銃を乱射し、ロケットランチャーをぶちかまして破壊活動を開始する。このままでは、百夜堂にも被害が出るだろう。
「皆さん、力を貸してくれませんか?私達、二人だけでは……」
「うん、指揮なら任せて」
「うちの生徒も参加させてもらう。コユキ、リト、コトリ、頼めるかね?」
「任せてください!」
「まあ、教授の頼みなら……」
「実戦はちょっと苦手ですが、頑張りますね」
シズコとフィーナ、コユキ、リト、コトリの五人で臨時のチームを結成し、魑魅一座・路上流に挑む。彼らは外へと飛び出すと敵の迎撃を開始した。
「みんな、行くよ!」