チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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大勢がいる戦闘の描写、どうしても空気になる生徒が出てきてしまうのが悩みです


共同戦線と囮作戦

 魑魅一座の再来は想定よりも早いものだった。先ほどよりも兵力は増しており、次こそは成功させるという気概が感じられた。

 

『ツバキ!盾を構えて前進!敵を引き付けて!』

 

「任せて」

 

 戦いにおいて先頭に立つのはシールドを装備するツバキだ。迫り来る銃弾の雨をシールドで防ぎつつ、愛用のサブマシンガンの先だけを縁から出して射撃していく。

 

「おい、ロケットランチャーを持ってこい!」

 

 そこへ、魑魅一座の一人がロケットランチャーをツバキ目掛けて放つも、彼女はシールドを振るってロケット弾を何処かへと弾き飛ばしてしまった。

 

 さらに、至近距離に迫った敵をシールドによる打撃で沈めたり、押し返したりする場面もあり、シールドを使いこなしていた。

 

『ほう……素晴らしい盾捌きだ』

 

 ツバキのその動きはドローンのカメラ越しに戦場を見ているグレイも評価する程だ。

 

「回り込め!」

 

 正面からツバキに当たっても勝てないことを察したのか、魑魅一座は彼女の包囲を試みる。しかし、正面を担当するのは彼女だけではなかった。

 

『ネオ雷ちゃん、彼女を援護するんだ!』

 

 それは、ウタハが開発した戦闘メカシリーズの最新モデルだった。雷ちゃんシリーズは椅子に戦闘能力を持たせるという謎のコンセプトで製作されたものだ。

 

 その初期モデルは人が座る頭の部分にガトリングがある程度であり、全く動けない固定砲台であったが、今は異なる。自走機能を手に入れた上、ガトリング砲を搭載した両腕が追加されたもので、放つのはビームとなっている。

 

「この、白い悪魔め!」

 

 魑魅一座はネオ雷ちゃんに集中砲火を浴びせるが、全体を守っているエネルギーシールドによって阻まれ、シールドから突き出されたガトリング砲による掃射で逆に片付けられていった。

 

「ウタハ、これはいいものだね」

 

『先生もそう思うかい?雷ちゃんは私の自信作なんだ。評価してもらえて光栄だよ』

 

「後で写真撮ったり触らせてもらってもいいかい?」

 

『あぁ、大歓迎さ』

 

 ツバキと雷ちゃんを前面に押し出し、その後ろから残りの生徒達が射撃して魑魅一座を排除していく。

 

 時折、タイミングや敵の配置を見て先生がコユキの爆弾や百夜堂で待機しているヒビキの迫撃砲を要請し、効果的に火力を叩きつけることで戦いは有利に進んでいた。

 

 その時だった……

 

「イズナ流忍法!四方八方もくもくの術!」

 

 突然、複数のグレネードが周囲にばらまかれ、四方八方が煙幕で視界不良となる。それと同時に魑魅一座が突撃を開始し、先生の目の前に一人の生徒が降り立った。

 

「イズナ、予告通りに再び参上しました!」

 

「イズナ……」

 

「イズナ、気付きました!たとえ、先生が私の夢を認めてくれたかっこいい大人だとしても、敵として出会った以上、倒さなければならない……それこそが、忍びとしての宿命であると!」

 

「イズナ、君はきっと騙されて……」

 

「問答無用です!さあ、お覚悟を!イズナは、先生のことを打ち倒してみせます!」

 

 イズナはクナイを逆手持ちし、先生へと向かってくる。他の生徒達や雷ちゃんは魑魅一座への対処で手一杯であり、守ってくれる存在はいない。だが……

 

ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!

 

「ウッ……!?」

 

 どこからか銃声が三連続で木霊し、大口径の銃弾がイズナの腹部に叩き込まれる。イズナは腹部に強い衝撃を受け、呻き声を漏らして腹を抑えながら片膝を地面に着いた。

 

「ペラペラと話し過ぎだ。御託を並べている暇があるなら、さっさとやればいいだろ?」

 

「リト……助かったよ」

 

「これは教授の指示だ。先生がピンポイントで狙われる可能性があるってな」

 

『先生よ、無事かね?』

 

「ええ、リトのお陰で何とか……」

 

 先生を救ったのはリトだった。航空機を操縦しているだけあって周囲の状況に対する視野は広く、先生の危機に気付くことができたのだ。

 

「い、イズナ……二度も負けてしまいました!?しっかりと準備をしたというのに、これでも敵わないなんて!?」

 

「イズナ、どうして君は魑魅一座なんかと一緒にいるの?」

 

「雇い主からそのように命令を受けているからです!」

 

「雇い主……」

 

「はい!邪魔者を倒し、任務を全うしなければなりません!どんな任務でも完璧にこなすのが忍びというもの……そうしていれば、いつかは真の主君に………はっ!?」

 

 イズナは想定よりもペラペラと事情を話し始める。しばらく話したところで、彼女は我に返った。

 

「イズナは何故こんなことを今……まさか、これも先生の策略!?」

 

「策略なんて大袈裟な……」

 

「ううっ、イズナは引き際を知っている一流の忍者なので、今回は退きます!次は絶対に負けませんから!ニンニン!」

 

 イズナは鉤縄を取り出すと、近くの木に引っ掛けて屋根の上へと飛ぶ。そのまま屋根の上を走り抜けて逃走した。

 

 

 

 

 

「先生、無事ですか?」

 

「うん、何とかね」

 

 魑魅一座も撤退して戦闘が終わった頃、シズコが先生の元へと駆け寄ってきた。

 

「先生の指揮と修業部の援軍のお陰で今回も勝ちましたけど、これをいつまでも続けられるかどうか……」

 

「たしかに、これではイタチごっこデス!」

 

「そういえば、雇い主がいるとか言っていましたし、その雇い主を叩けばいいんじゃないですか?」

 

『コユキよ、その通りだ。敵の頭を抑えれば戦いを短期間で終わらせられるだろう。いわゆる、斬首作戦というやつだ』

 

「教授、私も同意見です。元凶を見つける方法ですが、一つ考えがあります」

 

『ほう、それは?』

 

「囮作戦です。元凶は私の指揮能力を脅威と感じているはず。おそらく、先ほどのように私の身柄をピンポイントで抑えにくるでしょう」

 

『まさか、わざと捕まるのかね?』

 

「ええ、そうです」

 

 作戦はグレイが想像した通りだ。先生が囮としてわざと捕まり、魑魅一座やイズナに元凶の所まで案内してもらう。先生は発信器を装備した状態であり、その地点をグレイ達が強襲するのだ。

 

「この作戦では、私は非武装の状態で活動する予定です。油断させるために、銃もパワードスーツも装備しません」

 

『しかし、それは危険ではないかね?先生は銃弾一発でも致命傷となるのだ。せめて、パワードスーツくらいは……』

 

 作戦としては問題ないだろうが、グレイとしては先生の肉体強度の低さが懸念する点だった。グレイよりも致命傷を受ける可能性があり、危険だからだ。

 

「教授、心配はいりません。一応、私にはこれがあるので」

 

 そう言って先生がジャケットから取り出したのは、一機のタブレット型デバイスだった。

 

「これはシッテムの箱というもので、連邦生徒会長が残したオーパーツだと聞いています。これを持っているだけで、銃弾や爆発が勝手に逸れていくんです」

 

 それは、先生がキヴォトスに来たばかりの頃に入手したものだ。アロナという高性能なメインOSが搭載されており、先生をサポートしてくれる。なお、製造元や構造は謎に包まれており、先生以外には起動できないものになっていた。

 

『そのようなものが……興味深いな』

 

「ということで、教授。私が囮として敵地に潜入してきます」

 

『分かった。幸運を祈る』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先生は魑魅一座を誘き出すため、丸腰で百鬼夜行の市街を歩いていた。なお、グレイ達は小型の偵察用ドローンで付いてきている。すると、見覚えのあるシルエットが視界の片隅に写り込んだ。

 

(あれは……)

 

 先生はそのシルエットを追いかけ、とある路地に入っていく。そこにいたのは、狐耳の少女イズナだった。

 

「先生は、きっとこの辺りに……」

 

「イズナ、そこで何をしているのかい?」

 

「あっ、えっとですね、イズナは先生を探して……って、先生!?」

 

 まさか本当に先生がいると思っていなかったイズナは驚き、動揺する。

 

「い、いえ、イズナは慌ててなんていません!先生を倒すために来たのです!さあ、お覚悟です!」

 

「うん。とりあえず、お散歩でもどうかな?」

 

「喜んで!……ではなく!イズナは先生を倒しに……!」

 

「私と散歩は嫌かな?」

 

「い、いえ、決してそんなことは……え、えぇ?」

 

 イズナは先生の口車にいとも容易く乗せられてしまい、目的を達成できないまま散歩することになった。

 

 散歩中、イズナは屋台で売られている食べ物を見て大はしゃぎし、焼きそばや綿あめを買って祭りを楽しんでいた。

 

「百夜ノ春ノ桜花祭、イズナは本当に大好きなんです!ですので、こうやって先生と楽しむことができて嬉しいです!」

 

 そう言うイズナだが、彼女や魑魅一座の行動は桜花祭を破壊するものだ。おそらく、彼女はそれに気付いていないのだろう。

 

「でも、こんなに楽しいのに中止になってほしくはないよね?」

 

「ちゅ、中止?急にどうかされたんですか?」

 

「この楽しい祭りを台無しにしようとしている人がいる。多分、イズナを雇っている人なんだけど……」

 

「桜花祭を台無しに?でも、イズナはそんな命令は受けてません。イズナが受けたのは、事業を邪魔する連中を退治しろっていう……」

 

 イズナは、自分がしていることが桜花祭を台無しにすることに繋がるということを自覚していなかった。都合のいいように雇い主から吹き込まれたようだ。

 

 彼女が動揺しているのを見て、先生は雇い主を聞き出せるかと思ったが……

 

「イズナ、雇い主のことを教えてくれるかな?」

 

「そ、それはできません!雇い主を口にするなんて、忍びとしてやってはいけないこと!立派な忍者になるためにも、いくら先生だとしても……」

 

「イズナは本当に忍者が好きなんだね。イズナが自分で決めたのなら、無理にとは言わない」

 

「イズナが決めたこと……」

 

「でも、祭りの邪魔だけは無視できない。私達はイズナを止めるよ」

 

「やはり、これが宿命……くっ、ここはお先に失礼します!何だか今は戦う雰囲気ではないので!」

 

「またね、イズナ」

 

「はい、先生。ではまた!」

 

 イズナは裏路地に消えていく。その時、多数の足音が先生の方へと接近してきた。

 

『先生よ、魑魅一座が接近している。おそらく、そなたの捕縛が狙いだ』

 

『ええ。ここからは私に任せてください』

 

 目の前に現れたのは魑魅一座のメンバーだ。彼女達が大人しく投降するように呼び掛けてきたので、先生はその通りにする。簡単に先生が応じたことに困惑しつつも、彼女達は先生を雇い主の元へと連行した。

 

 ここからは、先生達のターンである。




そういえば、グレイの持っているレールガンについてですが、レールガンの名前を新たに〈ギャラクシー〉と命名し、ノアが初期案で持っているというレールガンと同じ形状ということにしました

早くアリスと一緒に「「光よ!」」をやらせたい
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