チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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今回はユズ編です


幕間①
生徒アーカイブ:花岡ユズ


「そうか、まだまだ難しいか……」

 

「はい。部室の近辺なら大丈夫ですけど、人が多い所となると……」

 

 ある日、グレイはゲーム開発部の部室を訪れていた。モモイとミドリは外出中であり、残っているのは部長のユズだけだ。

 

 ここを訪れた理由は、ユズとの定期的な面談である。彼女はグレイが気にかけている生徒の一人で、トラウマから外に出られないという悩みがあった。

 

「まあ、無理に外へ出る必要もなかろう。少しずつでもいいから、慣らしていくしかないだろうな」

 

「はい……ありがとうございます、教授」

 

 ユズはグレイのお陰で以前よりも人と話せるようになり、ロッカーに隠れる頻度も減ってきた。それでも外に出るのは難しく、過去のトラウマは根深いものだ。

 

「はぁ……ロッカーごと外に出られたらいいのに……そうすれば、モモイやミドリとだってお出かけを……」

 

「それだ……!」

 

「え、ええ?」

 

 ユズの願望から出た何気ない発言。それがグレイに閃きをもたらした。

 

「ユズよ、周囲からの視線を直接受けなければ、外には出られるのだな?」

 

「ええ、それなら……でも、ロッカーに入ったままでお出かけなんて……」

 

「別にロッカーである必要性はないであろう。そうだな、パワードスーツはいかがかね?」

 

「パワードスーツ……」

 

 パワードスーツはグレイの得意とするところだ。自身も装着しているし、ミレニアム保安部向けのパワードスーツも開発したばかりである。

 

「不良に絡まれても返り討ちにできるくらいにはしておこうかね。いや、待て、いきなり戦車が現れたら不味い……対戦車火器も装備すべきか……それか……」

 

「あ、あの!」

 

 グレイのエンジニア魂に火が付き、彼の脳内では最強のパワードスーツが出来上がっていく。色々とヒートアップしていく中、ユズが珍しい程の大声でストップをかけた。

 

「そこまで物騒だとダメだと思います……ど、どうせなら、可愛い感じの着ぐるみがいい……です……」

 

「す、すまん。これでは何処かへ戦争に行くようなものだな。分かった、可愛らしい着ぐるみを用意しておこう。一週間ほどで準備させてもらうよ」

 

 こうしてグレイは去っていく。一週間後、彼は宣言通りに着ぐるみを用意して部室にやってきた。

 

 

 

 

 

「ユズ、約束の着ぐるみを持ってきたぞ」

 

 グレイは持ってきたアタッシュケースを開いて着ぐるみを取り出す。それは、遊園地のマスコットじみた可愛らしい着ぐるみだった。

 

「そ、そのキャラクターは何ですか?」

 

「これは私のオリジナルさ。名をピョン太君という」

 

 ピョン太君のデザインは銀河連邦の惑星K-2Lに生息するリスとウサギが合わさったような原生生物が元になっている。

 

「とりあえず、着てみてくれ」

 

「は、はい……」

 

 ユズは胴体部分を着た後に頭部を被る。最初は中のスペースが広くてブカブカな状態だったが、頭部がカチッと接続された瞬間、内部がクッションのように膨らんで隙間が無くなった。

 

「内部には衝撃吸収材とパワーアシストを兼ねたバイオ素材製の人工筋肉を搭載しておる。たとえ事故にあったとしても問題ないだろう」

 

 着ぐるみといいながらも中身はパワードスーツと同じである。防御力はかなりのものであり、車に突っ込まれても中身は無事でいられるだろう。また、エネルギーシールドも標準装備である。

 

「ユズよ、視界の方はどうかね?」

 

「よく見えます……HUDに色々と表示されているような……」

 

 ユズの視界はFPSゲームのキャラクターのようになっており、様々な情報がHUDで表示されていた。

 

「エネルギー残量にレーダー……マップ……ターゲットレティクル……あの、渡すものを間違えてませんか?どう見ても戦闘用のパワードスーツじゃ……」

 

「これは自衛のためさ。着ぐるみの姿を見てイタズラで攻撃してくる不良もいるだろうからね。戦闘用のプログラムも積んであるから安心しなさい」

 

 グレイはピョン太君が戦闘用であることを明言した。ユズが想像していたのとは全く異なるものとなったわけだが、彼女の反応は……

 

「きょ、教授……その……」

 

「どうかしたかね?」

 

「この着ぐるみ……物騒な感じになってますけど、私の安全を考えてくれたんですよね。ありがとう……ございます……大事にします……」

 

「気に入ってもらえて何よりだ。これからピョン太君の詳しい説明をさせてもらおう」

 

 こうして、グレイはピョン太君について説明を開始する。そこで、ユズは思いもよらない機能の数々が存在することを知り、困惑するのだった……

 

 

 

 

 

「おい、見ろよ。ウサギだかリスだか分からねえ着ぐるみが歩いてんぞ」

 

「変なの。そうだ、射撃の的にしてやろうぜ」

 

 数日後、ミレニアム自治区の郊外にて二人のスケバンがピョン太君を目撃し、グレイの懸念通りに攻撃を仕掛けようとしていた。

 

「そこのウサギリス、そのツラ貸せや」

 

「大人しくそこに立ってろよ、射撃の的にしてやるからな」

 

 スケバン二人組はサブマシンガンを構え、ピョン太君に向けて発砲する。

 

ドガガガガガァッ!!!

 

 ピョン太君は蜂の巣にされ、ズタボロになったかと思われた。しかし、次の瞬間に彼らが目撃したのは、攻撃を受けた形跡すら存在しないピョン太君だった。

 

「ウソだろ!?」

 

「何で効いてないんだ?ゲヘナの風紀委員長じゃあるまいし……」

 

 攻撃を受けてびくともしないピョン太君の姿に、スケバンはゲヘナの風紀委員長であるヒナを幻視した。彼女は殲滅力だけでなく堅固な防御力も備えている。

 

 ピョン太君はエネルギーシールドを装備しており、表面も丈夫な素材で構成されているため、生半可な攻撃では破れないのだ。

 

 そして、今度はピョン太君の反撃が始まる。リスの尻尾状のウェポンラックが展開し、中から出現したアームからグレネードランチャーを受けとると……

 

ポンッ!ポンッ!

 

 二発の擲弾が投射され、スケバンの足元に落下すると爆発を起こして彼らを吹き飛ばす。

 

「うわっ!?」

 

「きゃ?!」

 

 あっという間に地面へと伏す二人のスケバン。うつ伏せの状態から顔を上げるとピョン太君が接近してきており、その手には先端からバチバチと電撃が発生する長い棒を持っている。スタンロッドというやつだ。

 

「ま、待て!?」

 

「わ、私らが悪かった!だから、こっちに来るなぁぁぁぁぁ!?」

 

 彼女らが気絶する直前に見た光景は、先端から電撃を放つ棒を無言で押し付けてくる着ぐるみの姿であり、恐怖の存在として噂されるのであった。




ピョン太君にはサムスと同等のバイザーシステムが備えられている設定です

ボ○太君?知らない子ですね
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