チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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言及していたパワードスーツ部隊の回となります


アルファチーム、出撃

 連邦生徒会長の失踪とそれに伴う連邦生徒会の混乱により、学園都市キヴォトスでは治安が悪化していた。

 

 戦車やヘリコプターといった出所が分からない武器の不法流通が2000%増加し、矯正局からは七囚人と呼ばれる者達が脱獄し、不良によって登校中の生徒が頻繁に襲われるなど、混乱の真っ只中にあった。

 

 シャーレの先生の活躍で改善の兆しはあるものの、依然として治安は悪い状態にある。治安が良いとされるミレニアムサイエンススクールも例外ではなく、凶悪なテロリストや犯罪者が出没するようになっていた。

 

 基本的にそのような輩は精鋭のエージェント達、C&Cが対処すべき案件なのだが、彼女達の手が回らない事態が起こっている。

 

 そのため、ミレニアム保安部の生徒達や無人機がテロリストによって蹴散らされ、C&Cが駆けつけた時には逃走されてしまうことが多かった。

 

 そこで、ミレニアムの生徒会と保安部はとある計画を始動させる。それは、パワードスーツ部隊を保安部に編成するという計画だった。

 

 パワードスーツに求められたのは、各学園の精鋭に匹敵する耐久力と身体能力である。そもそも、基本的に生徒の戦闘能力は神秘の強さで決まっており、コユキのように特殊能力に特化している生徒でなければ、神秘の強さに比例して耐久力と身体能力が高い傾向にある。

 

 神秘の強さが劣っている生徒であったとしても、特殊部隊のような訓練を積み重ねた者達であれば戦闘技術で格上を打ち倒すことも可能だが、そんなことが出来るのは一握りだけだ。

 

 神秘の強さが一般的な生徒でも格上に対抗できるようにする。それをコンセプトとしたパワードスーツの開発はグレイ主導で行われた。装着する生徒の育成も進められ、廃校したSRT特殊学園の一部隊を教官として雇っている。

 

 こうして完成したパワードスーツはミレニアムアーマーと呼ばれており、インナーとアーマー、ヘルメットで構成されている。

 

 インナーはバイオ素材製の人工筋肉を束ねて薄くしたものであり、車の突進を受け止められるだけの力を発揮する。耐久力も申し分ない。

 

 アーマーはグレイが装着しているパワードスーツとほぼ同じものであり、エネルギーシールドも重ねられているため、戦車砲の直撃や爆弾にすら耐える程だ。

 

 先生に渡したプロトタイプでは胸部や四肢の一部にしか装備されていなかったが、正式配備されたものでは腹部や太もも、二の腕にアーマーが追加されている。

 

 また、背部アーマーには二基の小型スラスターが搭載されており、短時間の滞空なら可能である。主に落下時の姿勢制御や走行時の加速、跳躍の補助に使用することが想定された。

 

 ヘルメットにはHUDが標準搭載され、パワードスーツのコンディション等を表示する機能や、照準機としての機能が存在する。

 

 ミレニアム保安部から厳しい訓練の末に四人の生徒が選出され、アーマーを装備した状態での訓練に移行している。この部隊の名はアルファチーム。ミレニアムを守るための精鋭部隊である。

 

 今日、彼らが訓練の成果を示す時がきた。

 

「任務を説明するわ。今回のターゲットはゲヘナで有名なテロリスト、温泉開発部よ」

 

 セミナーの会計、早瀬ユウカはパワードスーツに身を包んだアルファチームを前にして任務を説明していた。

 

「知っていると思うけれど、温泉開発部は爆破テロの常習犯よ。その活動範囲はゲヘナ内部に留まらず、ミレニアムも例外ではない」

 

 温泉開発部は、温泉開発と称して所構わず爆破を行うテロリストである。その勢力は他のテロリストよりも大規模であり、各地で治安組織が手を焼いている状況だ。

 

「C&Cは出張中の教授に随行しているため、今回はアルファチームに依頼することになりました。ターゲットの状況についてですが……」

 

 ユウカによると、温泉開発部は何処からか集めてきたブルドーザーを中心とした戦力でミレニアムの中心部へ向けて移動しており、その道中で“温泉開発”を繰り返している状況にある。アルファチームの任務は、彼らを強襲して制圧することにあった。

 

「了解。アルファチーム、出撃する」

 

 彼女達の初陣である。ウイングジェットに乗り込み、温泉開発部が活動しているという地点まで移動を開始した。

 

 

 

 

 

「ハーッハッハッハッ!」

 

 度重なる爆破によって瓦礫と化した市街地に高笑いが響き渡る。ブルドーザーの上にいる声の主は、小柄でブカブカの白衣を羽織った悪魔系の生徒だった。

 

「あぁ、素晴らしい爆発だ!諸君、手始めにここら一帯を温泉に変えようではないか!」

 

 彼女は温泉開発部の部長、ゲヘナ学園2年生の鬼怒川カスミである。爆発に芸術を感じるタイプの危険人物で、つい先ほど自分が起こした爆発の数々に酔いしれていた。

 

 しかし、そんな彼女の余裕はすぐに消え去ることになる。何故なら、アルファチームを敵に回してしまったからだ。

 

「温泉開発部のブルドーザー群を確認。これより、強襲制圧を開始する」

 

 列をなして前進するブルドーザー群。その通り道沿いにある建物の屋上に隠れていたアルファチームは車列に奇襲を仕掛けた。

 

 アルファチームは次々とブルドーザーの上を乗り継ぎ、置き土産に燃料タンクへ手榴弾を放り込み、随伴する部員に銃弾を叩き込んでいく。爆発音が何度も響き渡り、カスミは異常を知った。

 

「な、何が起こっているんだ!?」

 

『こちら第三開発隊!よく分からない連中に襲撃されっ……う、うわぁぁぁ!?』

 

 通信機からは部員達の悲鳴と怒号、爆発音が聞こえてくる。やがて、カスミの目の前にそのような状況を作り出した張本人達が現れた。

 

「お、お前達は?C&Cでも無さそうだが……」

 

 目の前に現れた四人組は、ヘルメット団ともオートマタともつかないような存在だ。ヘルメット上にはヘイローが浮かび、胸部アーマーにミレニアムの校章があることから、ミレニアム生なのは確実だった。

 

「私達はミレニアムのアルファチーム。お前のような悪党を潰すために来た。鬼怒川カスミ、お前を捕縛する」

 

「へえ、たった四人で捕まえられるとでも?」

 

 温泉開発部の部員達がアルファチームに銃を向ける。カスミの隣には、火炎放射機を持ったゲヘナの三年生、下倉メグが待機していた。

 

「アルファチーム、攻撃開始」

 

 四人は一斉に動きだし、銃撃を物ともせずに突撃していく。その機動力は決して生身で出せるようなものではなく、銃弾よりも素早く動いているのではないかと思われた。

 

 未知の存在に襲われ、温泉開発部員達はまともに反撃できていない。また一人、また一人と倒されていき、カスミを守るものは減っていく一方だ。

 

「何なんだ、何なんだ……!?」

 

 アルファチームとかいう集団の一人が、スラスターを吹かして飛び上がり、降下して腕を地面に叩き付けたかと思えば衝撃波が発生し、何人もの部員が吹き飛ばされる。

 

 銃撃は百発百中に近く、まるで鳥のような身軽な動きでこちらの銃弾を普通に避け、カウンターで高い精度の射撃をきめてくる。

 

「あ、悪魔だ……」

 

 (種族とか所業的に)お前の方が悪魔である。だが、悪魔である彼女がそう呼ぶくらいにアルファチームは恐ろしい相手だと判断されたのだ。

 

「悪魔はお前だ。観念しろ」

 

 そこへ、アルファチームのリーダーであるアルファ1が襲いかかってくる。

 

「部長はやらせないよ!」

 

 ライオットシールドとショットガンを装備した斬り込み隊長である彼女に対して、部員の下倉メグが火炎放射機で壁を張ることで妨害するが……

 

「そんなもの効くか」

 

 アルファ1はシールドを構えて炎の壁を強行突破し、メグをシールドで殴り倒すと、怯えるカスミの腹部にショットガンを押し当てる。

 

「ひ、ひぃぃぃっ!!た、助けてくれ!」

 

「それは無理な話だ」

 

 カスミの周囲はアルファチームで完全に固められており、その威圧感は半端ないものだろう。そして、アルファ1は怯えるカスミにショットガンを至近距離から何度もぶちかまし、意識を奪ってヘイローを消失させた。

 

 後にアルファチームは空崎ヒナと並んで鬼怒川カスミが恐れている存在として挙げられるようになり、ミレニアムに近づくのを止めたとか。

 

 

 

 

 

 数日後、ゲヘナの風紀委員長である空崎ヒナと風紀委員達は、ゲヘナとミレニアムの境界付近にいた。その目的は、温泉開発部員の身柄を引き取ることである。

 

「そろそろ、来る頃かしら」

 

 やがて、ミレニアム側から大型の装甲車がやってくる。停車したそれから現れたのは、パワードスーツで全身を覆い隠した四人の生徒だった。その異様な姿とキビキビとした動きに、風紀委員達の間には動揺が走る。

 

「パワードスーツ部隊……完成していたのね」

 

 風紀委員会の情報網により、ヒナはミレニアムでパワードスーツ部隊が育成されていることを小耳に挟んでいた。しかし、実戦配備にまでこぎ着けたことまでは把握できていなかった。

 

「はじめまして、風紀委員長。我々はミレニアム保安部所属のパワードスーツ部隊、アルファチーム」

 

「うちの生徒がかなり迷惑をかけたようね。温泉開発部の引き渡しに感謝するわ」

 

「共に治安を守る者同士だ。これからも連携を強化していきたい」

 

「ええ、これからもよろしく」

 

 アルファ1とヒナが握手する背景では、温泉開発部の引き渡しが始まっている。最初は一般の部員から始まり、幹部クラスがそこに続く。そして、最後にカスミが引きずられる形で連れてこられた。

 

「まだだ!理想にたどり着くまで、我々の活動は終わらない!全てはワクワク温泉大作戦のために!」

 

 この期に及んで、カスミはまだ諦めていないらしい。アルファチームにやられた恐怖を忘れてしまったのだろうか。

 

「あなたがその気なら、私が全力で対処するわ」

 

「そのふざけた面にショットガンをぶちこんでやろうか?」

 

「ひぃぃぃっ!?」

 

 しかし、反省する素振りのない姿に殺気全開のヒナとアルファ1に詰め寄られ、カスミは再び悲鳴を上げることになった。

 

 やがて、引き渡しが終わったので装甲車はミレニアム領内に戻っていく。その後ろ姿を見ながら、ヒナは呟いた。

 

「特殊部隊……うちにも必要かも」

 

 後に、ゲヘナの生徒会にアルファチームのことが報告され、会長が独自にパワードスーツを作ろうとして色々と爆死し、それを押し付けられた風紀委員会がそれっぽいものを最終的に開発したとか。




最後に言及したゲヘナのパワードスーツはスコープドッグのイメージです
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