チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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本当のエデン条約はここにあったのか……


新しい友達

 百鬼夜行から帰ってきて数日後、グレイはミレニアム自治区の市街地にてコユキと待ち合わせをしていた。

 

「早く着いてしまったようだ……」

 

 その目的は、これまで頑張ってくれていたコユキへの労いであり、何か好きなものを買ってあげることになっていた。グレイは十分も早く到着してしまったため、その場で待っていたのだが……

 

「ああっ!?」

 

 突然、少女の悲鳴と共に後ろから軽い衝撃が伝わってくる。グレイが振り向いてみると、そこには尻餅をついた生徒がいた。

 

「お嬢さん、大丈夫かね?」

 

「あいたたたた……は、はい、大丈夫です。ごめんなさい、転んでぶつかってしまって……」

 

「あれくらいなら大丈夫さ。お嬢さん、君はトリニティ総合学園の生徒さんかね?」

 

 その生徒の着ている制服には逆三角形と三つの円が重なったデザインの校章が刻まれており、トリニティの生徒であることは一目瞭然であった。

 

「そうです。私、トリニティ総合学園2年生の阿慈谷ヒフミって言います。あなたは、ミレニアムの教授さんですよね?」

 

「そうさ。私はミレニアムの教授、グレイバードだ。ヒフミよ、そなたとは何処かで会ったような気がするのだが……」

 

「ま、まさか、教授をテレビで見たことはありますけど、会ったことなんてないですよ。こ、こんな平凡な私が会えるはずがないですし、あはは……」

 

 だが、グレイには見覚えがあった。アビドスでの作戦会議にリモートで出てきた紙袋の人物である。目の前のヒフミに紙袋を被せた姿をイメージすると、完全にそれだった。

 

 だが、グレイは追及しない。誰にだって秘密はあるし、自分も例外ではないからだ。あの場に紙袋を被って参加したのも、何らかの深い訳があるのだろうと考えた。

 

「ふむ。何処かで会ったような気がしたのだがね。まあ、私の見間違いであろうな。ところで、今日はどうしてミレニアムに?」

 

「モモフレンズの限定グッズを買いに来たんです」

 

「モモフレンズ?」

 

「はい。最近、流行しているキャラクター達でして、愛好家をさせてもらっています。ペロロ様に、スカルマン、ウェーブキャットに……」

 

 ヒフミはスマホの画面を見せてキャラクターを紹介してくれた。白く太った鳥に、骸骨をデフォルメした人型、妙に胴体が長い猫などがいたのだが、彼女のお気に入りは……

 

「私は特にペロロ様がお気に入りですね」

 

 よりによって、彼女が背負っているリュックにもなっている白い太った鳥だった。大きく開かれた目は焦点があっておらず、クチバシからは舌が出っぱなしになっている。お世辞にも可愛いとは言えないデザインだ。

 

「今回、ミレニアムで限定販売されるのはプロフェッサーペロロ様人形でして、グレイ教授の影響があるそうですよ」

 

「私の?これが?」

 

 続いて画面に出てきたのは先ほどのペロロ様が白衣とメガネを身につけた姿。この不細工鳥が自分の影響を受けているなど、信じたくなかった。

 

「す、好きなものがあるのは良いことだ。追い続けなさい」

 

 しばらくして、グレイ達の方へと走ってくる者がいた。

 

「お〜い!教授~!」

 

 見れば、コユキが走ってきている。そして、小さな少女の手を引いている状態であった。迷子でも拾ったのだろうか?

 

「コユキよ、その子は?」

 

「実は迷子を見つけちゃいまして、とりあえず信頼できる大人の所に連れてきました!」

 

 コユキと手を繋いでいる幼女は悪魔の特徴を網羅しており、頭には二本角、腰には翼、極めつけには先が尖った尻尾が生えていた。完全にゲヘナの生徒である。

 

「こんにちは、お名前は?」

 

「イブキ!丹花イブキっていうの!」

 

「元気なお嬢さんだ。迷子だと聞いたが、この辺りは初めてかね?」

 

「そうなの。イブキね、好きなキャラクターの限定グッズを買いに来たんだけどね、道が分からなくて……でもね、コユキお姉ちゃんが助けてくれたの!」

 

「そうか。コユキ、よく助けたな」

 

「教授だって人助けしてるじゃないですか。だから、私も同じようにしただけですよ」

 

 コユキは成長した。グレイと出会うまではイタズラから犯罪行為にまで手を染めるような問題児だったが、年長者として小さな子を助けるようになったのだ。

 

「あの、あなたもペロロ様のグッズを買いに来たんですか?」

 

 そして、ヒフミがイブキに話しかける。自分と同じ目的でミレニアムに来たのではないかと予想して聞いてみると……

 

「もしかして、お姉ちゃんもなの?」

 

「はい!もしよければ、一緒に買いに行きませんか?」

 

「いいの?」

 

「モモフレンズ好きはみんな友達ですから。あっ、私は阿慈谷ヒフミって言います」

 

「よろしくね、ヒフミお姉ちゃん!」

 

 ヒフミとイブキは意気投合する。それぞれ、歴史的に対立するトリニティとゲヘナの生徒であるものの、こうして分かり会うことはできる。別に何らかの取り決めなどは必要ないのだ。

 

「ここで出会ったのも何かの縁ですし、みんなでモモトークでも交換しませんか?」

 

「それ、いいですね!」

 

「イブキも賛成!」

 

「新しい友人ができたようで何よりだ」

 

 三大学園の生徒達は友人となった。それぞれの学園同士は完全に良好な関係とはいえないが、関係改善の足掛かりとなっていくだろう。

 

「鳥のお爺ちゃんもイブキ達の友達だよ!よろしくね!」

 

「あぁ、よろしく。今度、ミレニアムに遊びに来る時は連絡してくれてもいい。お菓子でも用意して歓迎するよ」

 

「やった~!また連絡するね!」

 

 やがて、ヒフミとイブキは限定グッズを買いに出発する。二人が見えなくなった頃、グレイとコユキも動き出した。

 

「行こうか、コユキ」

 

「そうですね、教授!」

 

 後日、トリニティとゲヘナの生徒会名義の贈り物がそれぞれ届いた。後で分かったことだが、ヒフミは生徒会メンバーの一人から寵愛される関係性であり、一方のイブキは生徒会のメンバーであったのだとか。




今年の更新はこれがラストです
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