チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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戦闘機の描写はムズい


ミレニアムの蒼き翼

 百鬼夜行から戻ってきた後、リトはグレイに呼び出されて彼のラボに来ていた。

 

「よお、教授。お邪魔するぜ」

 

「おお、よく来てくれたな。早速、私についてきてほしい」

 

 リトはグレイの案内でラボ内のエレベーターに乗る。地下へと下降していく昇降機の中で、リトは自分を呼び出した訳を尋ねた。

 

「なあ、教授。どうして俺を呼んだんだ?」

 

「そなたに渡したいものがあってな。まあ、実物を見せた方が早いだろうな」

 

 そして、エレベーターが止まる。ドアが開いた先に広がっていたのは、平らで広い薄暗い空間だった。

 

「ここは……」

 

「秘密の格納庫さ。緊急事態が起きた時はここから脱出することになっている」

 

「それで、俺に渡すというものは?」

 

「あぁ、少し待ってなさい」

 

 グレイは壁面のスイッチを操作する。薄暗かった格納庫が照明に照らされ、駐機してある複数のウイングジェットの姿が現れる。そして、一つだけ布を被せられた何かが存在していた。

 

「これだ……」

 

 グレイはそれに接近し、布をバサッと一気に取り去る。そこにあったのは、輸送機とは異なり一切の無駄を削り取ったような鋭角的な機体だった。

 

「こいつは、戦闘機か?」

 

「あぁ、そうさ。全領域戦闘機アーウィン……それがこの機体の名だ」

 

「アーウィン……とても格好いいじゃねえか。創作物に出てきそうなデザインだが、飛べるのか?」

 

「勿論。アーウィンには重力制御システムが搭載されていてな、飛べない場所はほぼないといってもいい。宇宙も行けるさ」

 

「宇宙もだと?それは凄いな」

 

 アーウィンはグレイがチョウゾの技術を結集させて開発した戦闘機である。大気圏内は勿論のこと宇宙でも活動でき、単独で大気圏を突破可能な性能とシールドを備えていた。

 

「武装は主翼の付け根と機種に装備されたレーザー砲で、チャージを行うことで連射性能を犠牲に威力を上げられる。そして、追尾性能を備えた強力な爆弾、スマートボムも発射可能だ」

 

 スマートボムはパワーボムを航空機搭載用にしたもので、カイザーPMC基地のゲートに放たれたミサイルはそのプロトタイプである。

 

「教授、もしかしてアーウィンはあの砂漠にいたビナーとかいうデカブツ対策なのか?」

 

「そうだ。正確には、あのビナーの同胞達と戦う目的だがね。まあ、普段は不法なドローンを迎撃することがメインになりそうだが……」

 

「まて、あのデカブツみたいな奴が他にもいるのか?」

 

「あぁ。とある情報だと、まだまだいるそうだ」

 

「そいつは上等だ。やる気が出てきた」

 

「それは良かった。アーウィンのシミュレータは用意してあるから、好きなだけ練習するといい」

 

 その日、リトは日付が変わるまでシミュレータから出てくることはなく、出てきた後は倒れるように寝てしまい、ベッドに寝かされた。実機での練習に突入したのは、それから二日後のことだ。

 

「リト、これから実機での練習を開始するわけだが、準備は大丈夫かね?」

 

「あぁ、大丈夫だ。感覚は掴んだ」

 

 リトはアーウィンに乗り込むと、各種のスイッチを入れて機体を起動させる。ディスプレイに光が灯り、彼は片眼鏡のようなヘッドギアを装着した。

 

 このヘッドギアに装備された緑色のレンズは照準器となっており、右目の動きに連動してターゲットをロックオン可能だ。

 

「ヘッドギアの感覚はどうかね?」

 

「問題ない。まるで体の一部みたいだ」

 

「分かった。これより訓練を開始するが、この格納庫の出口の一つはミレニアム自治区の東アルプスに繋がっている。そこから出た後は所定の空域まで誘導しよう」

 

「まあ、都市の上空で訓練をするわけにはいかないからな」

 

「あぁ。訓練に使う空域は廃墟の上空を予定している。立ち入り禁止エリアのあそこならば、無関係の人を巻き込むことはないだろうからね」

 

 ミレニアム郊外の廃墟は立ち入り禁止エリアである。現在そこには誰もおらず、ドローンやオートマタが徘徊しているだけの状態だった。

 

「なるほどな。では、これから発進する」

 

 キャノピーが閉じ、リトは外部から切り離されて機体と一つになる。そして、機体後部から青いエネルギーが放出され……

 

「乱羽リト……ファルコン1出る!」

 

 エンジンの出力が上がり、アーウィンは浮遊すると山岳地帯に隠された発進口まで一直線に突き進み、次々と開いていく障壁を通過して出口の光へと飛び込んだ。

 

 

 

『無事に廃墟の上空に着いたようだな』

 

「あぁ、廃墟になった都市が広がっていやがる。どうしたらこの規模の都市が壊滅するんだか……」

 

『災害か疫病か、それとも種としての寿命が来ていたのか、私にも分からんよ。ただ一つ言えるのは、形あるものはいつか消えて無くなるということだけさ』

 

「難しい話はさっぱりだが、どうせ消えるなら名を世界に残しておきたいところだ」

 

『雑談はここまでとしよう。これからドローンを展開する。それを標的として訓練を行おう。コユキ、ドローンを頼む』

 

『はい、教授。任せてください!』

 

 すると、コユキの操作でビル群から何体ものドローンが浮遊してくる。その中にはアーウィンが通れるサイズのリングを吊り下げているものもあった。

 

『まずはリング潜りからだ。リングは廃墟の各地に設置されている。難易度が高い場所もあるが、そなたなら大丈夫だろう』

 

「教授、何を当たり前のことを……空を飛ばせたら俺の右に出る奴はいねえ」

 

『はは、そうであったな』

 

「では、始めさせてもらうぜ」

 

 アーウィンが急加速し、廃墟のビル群に向かっていく。途中にあった幾つかのリングを滑らかに通り抜け、ビルとビルの隙間に入り込んだ。

 

「こいつはスリル満点だ!」

 

 乱立するビル群の中をアーウィンが高速で飛翔する。リトは左右へのロールを繰り返し、時には機体を完全に横倒しにして狭い空間を通り抜けていく。

 

 リング潜りも忘れられていない。少しのミスが大惨事に繋がるような危険地帯を抜けるという糸を針に通すような行為をしながらも、リングを全て潜り抜けていた。

 

 そして、ビル群の出口で華麗なインメルマンターンを行い、最後のリングを潜ってフィニッシュした。

 

『流石だな、リト。まるで鳥のようだ』

 

「こんなもの、そうめんみたいなもんだぜ」

 

『リト先輩、例えが変じゃないですか?』

 

「うるせえ、気にするな」

 

 まだ訓練は終わらない。障害物の回避とリング潜りの次は、実際に敵が撃ってくる射撃訓練だった。

 

『二人とも、仲が良いな。次は射撃の訓練さ。コユキの操る戦闘ドローンを全て撃墜するのだ。コユキ、頼んだぞ』

 

『別に、リト先輩を落としてしまっても構いませんよね?』

 

『待て、その先は地獄だぞ』

 

「黒崎、あまり俺を本気にさせるなよ?」

 

 やがて、コユキの操る戦闘ドローンが群れを成してアーウィンの正面から迫ってきた。早速アーウィンに向けて銃撃してくるが、リトはヒラリヒラリと回避しながら、機首レーザー砲で撃墜していく。

 

「落ちろカトンボ!」

 

 ドローンはか弱き虫のように落とされていく。訓練とはいえ、あまりにも一方的な戦いだった。

 

『ぐぬぬ、これならどうですか!?』

 

 コユキは後方からドローンをアーウィンに接近させて奇襲するが、リトはブレーキをかけて急減速してやり過ごすと、逆に後ろから狙い撃って撃破した。

 

「そんなので俺を落とせるかよ!」

 

 その後もコユキはリトを倒そうと様々なパターンで戦闘ドローンを動かし続けたが、人機一体となったリトには敵わず、全て撃墜される結果に終わった。

 

 

 

 

 

 ある時、リトはアーウィンを駆ってアビドス砂漠の上空を飛行していた。その目的はというと……

 

『リト、今回のターゲットはビナーだ。依頼主のアビドス高校によると、市街地へと真っ直ぐに向かっておるそうだ。どうか、奴を再び砂の底に沈めてほしい』

 

 それは、アビドス高校からの依頼だった。グレイ達が倒したはずのビナーが復活し、再びアビドスへの進行を開始したのだ。それを撃退もしくは破壊することが今回の任務である。

 

「見つけたぞ、白蛇野郎!」

 

 やがて、リトの目は純白の装甲を纏ったヘイロー持ちの大蛇を目撃する。ビナーは挨拶代わりと言わんばかりに、口内から極太のビームを放ってきた。

 

「歓迎されてるな」

 

 リトは機体を右方向に横転させて素早く回避すると、機首のレーザー砲にエネルギーを集中させつつ、ビナーの頭部をロックオンしてチャージショットをお見舞いする。

 

 誘導性能を持つチャージ弾が顔面に直撃し、ビナーが怯む。空間を切り裂いて迫るビームを回避しながらチャージ弾を放ち続けていると、ビナーの動きが変わった。

 

グオォォォォ!!!

 

 ビナーはビーム発射を中断すると咆哮し、ミサイル群を撃ち放った。周囲を飛び回る矮小な存在によって大きなダメージを受けたことに怒りを覚え、確実に叩き落とそうというのだ。

 

「こいつは楽しめそうだ」

 

 リトは急加速と急制動を駆使して迫るミサイル群を次々と引き離し、脱落させていく。それでも追いすがるミサイルもいたが、クルビット機動で即座に反転し、正面から相対した状態で撃墜した。

 

 重力制御システムの賜物である。それにより、通常の航空機では困難な機動であっても容易に実行できるのだ。無論、リト自身の技量の高さも関係ないわけではないのだが。

 

 空中はリトの独壇場である。空に舞い上がったリトとアーウィンを止められるものはおらず、空の王者として君臨していた。いつしか彼女は“ミレニアムの蒼き翼”と呼ばれ、あのダブルオーと並んで畏怖されるようになったという。

 

『リトよ、奴の装甲に僅かだが古傷が残っていることを確認した。そこにスマートボムをお見舞いしてやるのだ』

 

 それは、生徒達の攻撃で大穴を穿たれ、集中攻撃を受けた装甲だった。そこへレールガンを撃ち込まれたことが敗因となったわけだが、そこの修復が完全に終わっていなかったのだ。

 

「了解、ぶちかましてやるぜ」

 

 リトは再び放たれたビームを回避して低空飛行へと移行する。地面スレスレの高度を飛行しながら古傷をロックオンし、スマートボムを撃ち放つ。真っ赤に発光する爆弾は古傷に飛び込み、強烈な爆風を放出した。

 

ギィヤアァァァァァッ!?!?

 

 ビナーは悲鳴のように咆哮する。再び大きく穿たれた傷口は無惨な状態であり、そこからは黒煙がもうもうと立ち上っている。やがて、ビナーは砂へと潜航して逃げていった。

 

「ミッションコンプリート。RTB」




人名が入っているインメルマンターンを出すかどうか迷ったけど、ブルーアーカイブには名古屋めしが出てるのでOKです(謎判定)
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