チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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明けましておめでとうございます!
これから2章の開幕となります!


2章 電脳戦争-Cyber Wars-〈完〉
教授と全知


 それは、アビドスでの活動を終えてミレニアムに戻ったばかりの頃だった。セミナーへの報告を済ませて帰路に着いたグレイと迎えにきたコユキの目の前に一体のドローンが現れた。

 

「このドローンは……?」

 

 怪訝そうにグレイが見つめていると、ドローンから青白いホログラムが投影される。映し出されたのは、白髪の儚げな雰囲気の美少女だ。

 

 まるで一輪の可憐な花のようで、おしとやかな性格に見えた。しかし、そんなイメージは一瞬で崩れ去る。

 

「はじめまして、教授。私はミレニアムの高嶺の花であり、〈全知〉の学位を持つ超天才清楚系病弱美少女ハッカーの明星ヒマリと申します」

 

「………」

 

 随分と自己主張の激しいタイプの美少女だった。かなりの自信家に見え、儚い一輪の花どころか図太い大木と言えよう。

 

「ヒマリ先輩、こんにちは!」

 

「コユキちゃん。元気にしてましたか?」

 

「はい!」

 

「そして、教授。アビドスでの活動はお疲れさまでした」

 

「ヒマリ、だったか……ヴェリタスの部長だと聞いている。ただ、最近はあまり顔を出していないようだな。チヒロはいつものことだと言っていたが……」

 

 ヒマリとは初対面だ。ヴェリタスとの交流は少なからずあるものの、基本的に部長の彼女だけ不在であり、部員達にもその所在は不明であった。

 

「私はこれまで、密かに教授のことを観察していました。そして今、誰もが認める超天才美少女のお眼鏡に適ったというわけです。パチパチパチ……」

 

 ヒマリは自身のペースを崩さない。ここまでペラペラと自画自賛の言葉を吐いているのを見ると、イライラするどころか却って清々しいものだ。

 

「面白いお嬢さんだ。それで、この老人に何のようかね?」

 

「私のことを面白いの一言で済ませるなんて……こほんっ、本題に入らせていただきましょう。あなたに協力していただきたい案件があるのです」

 

「ほぅ、それは?」

 

「デカグラマトンといえば分かるでしょう。このドローンについてきてください。私の隠れ家に案内します。コユキちゃんもどうぞ」

 

 二人は目の前のドローンについていき、今はあまり使われていない古い校舎に辿り着く。その先のとある扉を開くと、車椅子に座ったヒマリが待っていた。

 

「よく来てくださいました、教授。お菓子でも食べながらお話しましょう」

 

 コユキがお菓子を食べているのを横目に、二人は会談を始める。

 

「それで、デカグラマトンについてとのことだが……」

 

「ええ。教授もご存知でしょう。実際にデカグラマトンの預言者とも交戦しているわけですし。そして、リオと私は彼らの動向を追っていました」

 

 デカグラマトンの存在を知っているのはゲマトリアやカイザーだけではない。ミレニアムの上層部も教授の知らないところで探っていた。

 

「リオはデカグラマトンへの対処のため、セミナー傘下の部活を動かすことに決めました。それは特異現象捜査部。科学で証明できない事象を研究し、対策することが目的です」

 

「デカグラマトンも特異現象の一つというわけだね」

 

「ええ。私はそんな特異現象捜査部の部長を兼任することになりました。本当はリオの依頼など受けたくなかったのですが、澄み渡った空のような心を持つ私には拒否するという選択肢はありませんでした」

 

「そうか」

 

「ここに教授をお呼びしたのは、特異現象捜査部の顧問を勤めていただくためです。あなたの知識や戦闘力を当てにしているのもそうですが……一番はあなたが進めている計画を利用させてもらうことです。たしか、MB計画でしたっけ?」

 

「そうさ。正式名称はミレニアムブレイン計画……ミレニアムの運営を支援するための有機生体スーパーコンピュータを開発する計画だ」

 

 グレイのいた銀河社会では生体コンピュータという存在は一般的だ。鳥人族のものであればマザーブレインやセントラルユニット、連邦であればオーロラユニットがあり、人間の脳細胞を利用した警備ロボットもあったりする。

 

「それをデカグラマトン対策に利用……いや、最初からMB計画は対デカグラマトン用だった。違いますか?」

 

「その通りだ。無論、ミレニアムのために使うという目的もないわけではないがね」

 

「ええ、それは理解しています。ちなみに、MB計画は現在どのようになっていますか?」

 

「ほぼ完成しているよ。ただ、今は試験運用中さ。最終的にはカバー範囲をミレニアム全域にする予定だが、現時点ではラボの内部だけになっている」

 

「まさか、この天才美少女病弱ハッカーのハッキングが弾かれたのは……」

 

「そういうことだろうね。ミレニアムの傑作といえる高性能演算機関〈ハブ〉の性能を遥かに越える性能であると自負しているよ」

 

 ヒマリはグレイの観察のために彼のラボへハッキングを仕掛けたことがあった。だが、コユキやMBによる妨害を受けて失敗に終わっていた。

 

「このように高性能なのだが、MBの開発を行うまでには葛藤もあった……」

 

「葛藤……ですか。ミレニアム最高峰の天才である私のハッキングを弾く程の高性能だというのに、迷う理由などあるのですか?」

 

「かつて、鳥人族が開発した生体スーパーコンピュータによる反乱があったのだよ。マザーブレインの反乱……それにより鳥人文明は滅亡寸前に追い込まれたのだ」

 

 かつて、鳥人族はマザーブレインという有機コンピュータを開発した。その目的は鳥人族のデータバンクを銀河連邦と接続し、膨大なデータを管理することだ。

 

 かなりの高性能であり、老衰した鳥人族に代わって様々な判断・決定を行い、鳥人族と銀河の未来に貢献しており、鳥人族は彼女に未来を託そうとした。

 

 鳥人族が未来を託そうとした存在はもう一人いる。その名はサムス・アラン。K-2Lにおけるパイレーツによる虐殺から唯一生存した少女であり、鳥人族に保護されて様々な教育を受けていた。

 

 マザーブレインは高性能であるが故に人間と同等の感情を持つようになり、自分以外にも未来を託そうとする鳥人族に不満を抱いた。

 

 やがて、マザーブレインは鳥人族の本拠地である惑星ゼーベスを襲撃してきたスペースパイレーツに寝返り、鳥人族と銀河連邦に対する攻撃を開始。その際に多くの鳥人族が死亡した。

 

(我が兄、グレイヴォイスも……)

 

 身内がその際に亡くなったことも語ろうとしたが、今話すべきことではないと判断して飲み込んだ。

 

「それで、その後マザーブレインはどうなったのですか?」

 

「破壊されたさ。サムス・アランによってな。それも二度だ。それと同時に惑星ゼーベスは宇宙の塵に変わったがね」

 

 マザーブレインは一度破壊されたが、ゼーベスのパイレーツ基地が再建された際に修復されたらしく、再び潜入してきたサムスの前に第二形態を引っ提げて立ちはだかったのだ。

 

 サムスは尊い犠牲を出しながらもマザーブレインを撃破。マザーとパイレーツの野望を粉々に打ち砕き、自爆する惑星ゼーベスから脱出した。

 

「宇宙の塵……それは……」

 

「文字通りさ。マザーブレインの破壊と連動する惑星破壊威力の自爆装置が仕掛けてあったのだ。何としてもサムスを屠るつもりだったようだな」

 

 ヒマリは絶句する。流石の超天才美少女ハッカーであってもスケールの大きな話に圧倒されていた。

 

「ヒマリよ、ミレニアムブレインの略称はマザーブレインと同じMBになっているが、これは戒めのようなものだ」

 

 二度とあのような悲劇を起こさない。その決意もあって略称が同じになるように名称を決定していた。

 

「MBはあくまでもミレニアムの生徒達を支援することを目的としてプログラムが組まれている。生徒に対して嫉妬されても困るのでな。未来を託すのではなく共に歩む。それがミレニアムブレインのコンセプトさ」

 

「そんなことを考えていたのですね。教授、あなたは信頼に値する人です。きっと、あなたなら正しい選択をしてくれる。そう信じています」

 

「これからよろしく頼む。特異現象捜査部顧問として、最大限の支援を約束しよう」

 

 こうして、教授と全知の初会談は終わった。これからグレイは、特異現象捜査部の顧問として様々な脅威と戦うことになるだろう。




何か、メトロイドのあらすじ紹介になったな……

2章はパヴァーヌ編とデカグラマトン編が混ざった感じになるかと思われます
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