『まさか、地底にも都市があるとはな……』
廃墟の地底に潜った特異現象捜査部の前に広がっていたのは、広大な地底都市であった。廃墟となったビルが乱立しており、かつてはここにも人が住んでいたのだろう。
「興味深いな……色々と見て回りたいところだが……そう言ってはいられないようだね……」
「うん、盛大なお出迎えが来てる……」
ここはケセドの本拠地なのだ。その分、配備されている戦力が多く、地上よりも強力な個体も確認できる。一向の目の前はあっという間に敵で埋め尽くされてしまった。
『いくらなんでも多すぎだろ……というか、どうしてゴリアテがいる?あれはカイザーの……』
機械の軍団の中には、白塗りとなった色違いのゴリアテも複数確認できる。地上では目撃されておらず、ケセドも本腰を入れているようだ。
「その逆だろう。おそらく、こやつらがオリジナルのゴリアテ。カイザーPMCはそれをコピーして戦力にした可能性がある」
「カイザーコーポレーション……私達が知らない間にかなり廃墟に入り込んでいたみたい」
『しかし、廃墟に入るには連邦生徒会かセミナーの許可が必要じゃないか?セミナーが奴らに許可を出すとは思えねえ』
「連邦生徒会の誰かがカイザーと内通していると考えるのが自然だろう……アビドスの時点でその疑いはあったが、ますます疑わしくなるものだね……」
これ以上、考察している時間はない。そうこうしている間に機械軍団はどんどん接近してきているのだから。
『スマートボムで一掃してやりてえが、地底では使えねえな。味方を生き埋めにする趣味は俺にはない』
やがて、ゴリアテの一体が主砲から極太ビームを放ってくる。それはグレイ目掛けて飛来するが、彼に避ける素振りはない。それどころか、胸を張って受け止めるような素振りだ。
『教授、何をやって?』
「まあ、見てなさい」
〈ライトニングアーマー、オンライン〉
ビームが直撃する刹那、パワードスーツの表面が電撃のような緑色のエネルギーに包まれ、眩い光を放つようになる。
そのままビームが直撃し、その衝撃で舞い上がった土煙にグレイの姿が覆い隠されてしまうのだが、晴れてきた視界の中に現れたのは、何事もなく立っているグレイであった。
『教授、今のは?』
「また新しいのが出てきたね」
「驚かせてしまってすまんな。これはライトニングアーマーといってね、チョウゾテクノロジーの一つさ。これを発動している間、私は無敵状態になれる。無論、限度はあるがね」
ライトニングアーマーはSR388のチョウゾが開発したテクノロジーであり、電撃のフォースフィールドをパワードスーツに纏わせることで、ダメージをシャットアウトするのだ。
「ああ、もう一つだけ試したいものがあるのだが……ヒマリ、構わんかね?」
『ええ、例のあれですね。構いませんよ。標的が多い方が、あれを試すには丁度よいでしょうし』
『例のあれって………何ですか!?』
『まだ何かあるってのか?』
「まあ、見ていなさい」
やがて、パワードスーツの背部に大型で長砲身の武装が出現し、アームで背部と接続して背負う形となる。それはアームによって自動的に動き、脇の下を通って使用時の位置まで移動した。
〈プラズマビーム砲、起動〉
グレイはそれを両手で保持し、腰だめで構えて発射体勢へと移行。HUDにはガンカメラの映像とターゲットレティクルが表示されており、その中央にはゴリアテが捉えられていた。
〈エネルギー、充填開始〉
この武装はプラズマビーム砲。かつて鳥人族が開発した最強の破壊兵器であり、その危険性から封印されていたものだ。その特性は、見てもらった方が早いだろう。
プラズマビーム砲の砲身が黄緑色の光を放ち始める。グレイの生体エネルギーがプラズマエネルギーに変換され、内部で集束されている証だ。
そして、エネルギーが解放される。
「プラズマビーム砲、発射!」
発射されたのは、黄緑色の電撃を伴う極太の光芒。それはゴリアテに向けて突き進み、進路上にいるあらゆる敵性存在を貫通し、同時に核融合反応で爆縮させていく。
そのままプラズマビーム砲を水平移動させることで扇状に薙ぎ払い、その範囲内の敵を完全に消し飛ばしてしまった。
『………』
「………」
『………』
「あら、物凄い威力ですね。パチパチパチ」
現場の惨状に、ヒマリ以外が唖然としてしまう。少々、刺激が強すぎたのかもしれない。皆、現実を飲み込むのに時間がかかっている。
「実験は成功だ、ヒマリよ」
「ええ。これなら預言者も怖くありませんね」
『なあ、教授……』
その時、今まで唖然としていたリトが言葉を発した。
「どうかしたかね?気分を害したのいうのであれば、謝罪しよう」
『その武器最高だろ!このままデカグラマトンの一味を片っ端から薙ぎ払っていこうぜ!』
『あの……リト先輩?』
「気に入っちゃったみたいだね。ところで部長、あの武器は何?」
『あれは、プラズマビーム砲です。教授がデカグラマトンなどの脅威に対抗するため、チョウゾの武器を復活させたもの。ですよね、教授?』
「ああ、そうだ。とはいえ、まだ完全ではないがね。これを見てくれ、砲身が融けてしまっているのが分かるかね?」
見れば、プラズマビーム砲の砲身が高温を帯び、赤熱化している。融け落ちた部分もあり、これでは一発撃つ度に砲身を交換しなければならず、合理的ではない。
「これでは単なるロマン兵器止まりさ。これから改良しなければ……チョウゾのエンジニアとして腕が鳴るね」
『はあ、こいつをケセドにぶち込めないのは残念だぜ……』
しかし、こんな所で道草を食っている暇はない。いち早くデカグラマトンの居場所を探るためにも、ケセドと交戦する必要があるのだから。
『教授、今の攻撃でケセドへの道は拓けました。座標が示している場所はその奥にある工場です。そこへ殴り込みをかけましょう』
「そうだな、ヒマリよ。ここから先は、私とエイミが突入しよう。リトには退路の確保をお願いする」
『ああ、任せろ!』
グレイはエイミと共に工場へと向かっていく。それにはコユキのドローンも随伴しており、引き続きデータの収集を行う予定だ。
彼らが工場に入った直後、どこからともなく沸いてきたオートマタの軍団が工場を包囲してしまう。連中を片付けることがリトの仕事だった。
『てめえら、スクラップにしてやるぜ!』
アーウィンが戦闘機に戻り、地底都市を飛ぶ。天井や壁という制限がある危険な環境にも関わらず、彼女は自由に舞っていた。
敵の頭上からレーザー砲の掃射をお見舞いし、時には歩行形態も使い分けて効果的に敵を掃討していく。彼女は仲間が戻るまで、戦いを続けた。
「教授、この先にケセドがいるみたい」
「あぁ、そのようだ」
グレイとエイミは工場内の敵戦力を蹴散らして進み続け、ケセドがいると思われる部屋の手前まで到達していた。
『いや~ケセドの姿を拝むのが楽しみですね』
彼らは最奥にある部屋へと突入する。そこは広めの部屋となっており、中央にぽっかりと大穴が空いている。
「あれが、ケセドか……」
そして、大穴の真上に浮かんでいる台座の上に奴は鎮座していた。それは白色の装甲に覆われた大きな球体であり、中央にはモノアイのようなパーツがある。
奴はデカグラマトンの預言者の一体。第四セフィラ、ケセドだ。デカグラマトンの戦力を生産する役割を担っている重要な存在であった。
「なんか、思っていたよりも可愛いかも」
ビナーのような恐ろしい奴が出てくるのかと思っていたのだが、実際に現れたのは戦闘力があるようには見えない球体だった。
『ぶふっ…!何ですかこれ!?全然強そうに見えないです!こんなの、イチコロじゃないですか!』
コユキはケセドの姿を見て、笑いだしてしまった。それどころか、馬鹿にしだす始末である。
「これ、あまり人を馬鹿にするでないぞ」
そんなことをしてると、ケセドに動きがあった。彼が乗っていた台座が変形し、本体を覆い尽くして保護する外骨格に転じたのだ。そして、その頭上にヘイローが出現する。
『も、もしかして……傷ついて引きこもっちゃった感じですか?』
「いや、流石にそれはないと思う。あれに感情があるようには見えない」
「見た目で判断してはいけないよ。一応、感情を持つAIも存在しているからね」
『ええ、その通りです。このスーパーコンピュータである私にも感情はありますよ』
『皆さん、ケセドのエネルギーが活性化しています。警戒してください』
コユキのドローンを通してケセドのデータ収集が行われている。それをモニターしていたヒマリは、ケセドが活性化していることに気がついた。
やがて、ケセドから水色のエネルギー波が発せられ、部屋全体を巡る。直後、奴の周囲に大量の敵が現れた。
敵が隠れていたとか、そういった部類の話ではない。彼らは何もない場所からいきなり現れたのだ。テレポートしてきたというのが適切だろう。
『うわ、いきなり出てきましたよ!?』
「これは、特異現象だね」
「どうやら、奴はこの部屋限定で戦力をテレポートさせる能力を持っているようだ。この空間は奴によって完全に掌握されている……」
ケセドは戦闘能力を持たない預言者である。その代わり、無尽蔵の兵力を生み出すことによって身を守り、その物量で敵を押し潰すのだ。
「教授、速攻で終わらせよう」
「あぁ、物量で押し潰される前にな」
二人は敵集団と交戦する。これまで通りに蹴散らし、グレイが隙を見て槍を手にケセドへと肉薄するが……
ガキンッ!!!
「何という堅牢さだ!?」
パワードスーツを着た鳥人族による槍の一撃であっても、ケセドの纏う外骨格には傷一つ付けることすらできず、容易に弾かれてしまっていた。
「どうにかして外骨格を開かなければ……このままでは、物量に押し潰されてしまうぞ」
「教授、このペースだと弾薬が切れるかも」
通常の銃器を使っている以上、いつかは限界が来てしまうだろう。キヴォトス人は基本的に格闘戦を重視しておらず、弾薬が切れることは敗北と同義といっても過言ではない。
ここまでは敵の多くをグレイとリトが倒していたのでエイミの弾薬消費は少なかったのだが、今はリトがいないために彼女の負担が増えている状態だ。
こうしている間にも、ケセドは第二陣を呼び出している。蹴散らした以上に多くの戦力が展開しており、ゴリアテも混じっていた。
このままでは、エイミの危惧が現実になってしまうだろう。そこで、グレイは彼女に新しい武器を渡すことにした。
「エイミよ、これを使うとよい」
「何これ?サブマシンガンみたいだけど……」
グレイが渡したのは、サブマシンガンのような形状の武器。グリップの下部には細長い板状のパーツが合体しており、そのシルエットは不自然に見えた。
「そなたが使うことを想定して作っていたものさ。グリップにスイッチがあるだろう、それを押してみてくれ」
グレイに言われた通りにすると、グリップ下部にある細長い板状のパーツがエネルギー刃を発振し、銃身と平行に長く伸びて展開する。
「これはガンソードだ。エネルギー武器だから弾切れの心配はいらないし、エネルギーブレードで近接攻撃にも対応している。そなたなら使いこなせるだろう」
「ありがとう、教授。初めての武器だけど、使いこなしてみせる」
そして、第二ラウンドが開始される。二人は同時に飛び出し、ケセドの左右にそれぞれ分かれて戦う。
エイミはガンソードを携え、敵へと駆ける。射撃で敵集団を蹴散らし、迫る銃弾はエネルギー刃で斬り伏せ、狙いを定めた敵の胴体を貫くと、振り上げることで真っ二つにしてしまう。
ガンソードは攻防一体の武装だ。ガンの部分が攻撃を、ソードの部分が防御を担当しており、場合によってはソードで敵を斬り付けることもある。
二つの形態の切り替えといい、キヴォトス人には不慣れなソードによる近接攻撃といい、簡単に使いこなせるものではないのだが、エイミは初めてにも関わらず、長年使い続けているかのように扱っていた。
「この武器、使いやすい……」
振り向き様にオートマタの首を斬り飛ばし、複数のドローンからの銃撃をエネルギー刃で防御し、逆に射撃で叩き落としていく。
途中からは本来の得物であるショットガンをもう片方の手で扱い、二刀流で敵を倒していく。エイミの猛攻は終わらない。射撃と斬撃を巧みに切り替えてオートマタ軍団を攻め立て、百人斬りを達成しそうな勢いだ。
「よいぞ、エイミよ!」
グレイはそう叫びながらも、ゴリアテをローリングソバットで蹴り飛ばしている。そして、周囲のオートマタを掃除しながら、仰向けに転倒したゴリアテに槍を突き立てて機能を停止させた。
『教授、ケセドと配下の間にはエネルギーによるリンクがあるようです』
『グレイ、配下を倒し続けることを推奨します。ケセドにエネルギーを逆流させることでオーバーロードを誘発し、外骨格を開かせることができるでしょう』
ヒマリとMBによる分析では、ケセドはこの場で呼び出した配下をマリオネットのように操っており、エネルギーを流して接続しているようだった。
それを逆手にとり、配下を短時間で大量に倒すことでエネルギーを一気に逆流させ、ケセドにダメージを与えて本体を丸裸にしてやるのだ。
そうと決まれば、大暴れするだけだ。すでに第二陣は壊滅し、今は第三陣が現れているところである。
グレイがビームガトリング砲による範囲攻撃で敵を薙ぎ払い、撃ち漏らしをエイミがピンポイントで排除していく。二人は役割分担で効率的に敵を倒していた。
やがて、ケセドによる召喚も四回目となり、その最後の一体が倒れた時、ケセドに変化が起きた。ようやく、外骨格が解放されて本体が剥き出しになったのだ。
ケセドは逆流してきたエネルギーによるオーバーロードでまともに動くことができず、絶えずスパークしている。今がチャンスである。
「教授!」
「あぁ!ケセドよ、これで終わりだ!!」
グレイはケセドに飛びかかり、カメラアイのような部位を槍で刺し貫く。外骨格には通らなかった槍の一撃も、本体に対しては効果抜群だった。
槍を引き抜いてグレイが離脱した直後、ケセドは何度も小爆発を起こし、黒煙と電撃を放出すると、奈落の底へと落下していった。
ガンソードのイメージは、〈罪と罰 〜地球の継承者〜〉に出てくる同名の武器です。原作だとベースが拳銃ですが、ここではサブマシンガン型になった上、エネルギー兵器に改変されてます
なお、サブマシンガン部分についてはネルのツインドラゴンと同じMPXをイメージしてますね