チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

42 / 65
1000文字程度の短い話を集めました。一部は文字数が足らなくてボツになった話の再利用だったりします


短編集①

シャーレ特別教室

 

「そうか、ついにそなたの計画が動き出したのだな……」

 

「ええ、何とか。連邦生徒会のみんなを説得するのには骨が折れましたが、やっとシャーレ特別教室を動かすことができます……」

 

「これで、学籍を持たぬ子供達も救われるであろうな……」

 

 シャーレの先生、三澤ケイジはとある計画を進めていた。それは、何らかの理由で学籍を持たず、生徒としての権利を持たない子供達を救うためのセーフティネットの構築だ。

 

 その中心となるのが、シャーレ特別教室と呼称される施設である。シャーレビルの近郊に新しく建てられ、宿舎を併設したそれなりに大きな施設となっていた。

 

 シャーレ特別教室では、先生の呼び掛けに応じて集まった学籍を持たない子供達を面接した上、生徒に準ずる身分を付与し、特別に授業を行うものになっており、ヘルメット団などの不良も救いたい先生の願いを形にしたものである。

 

 シャーレ特別教室が動き出してから数週間後、グレイは見学のためにシャーレビル近郊を訪れていた。

 

「ようこそ教授、シャーレ特別教授へ」

 

「あぁ、お邪魔させてもらうぞ」

 

 グレイは先生の案内でシャーレ特別教室の見学を開始する。最初に通されたのは……

 

「ここは、授業用の第一教室です。今は生徒も少ないのでここしかありませんが、今後は第二、第三と増やしていく予定です」

 

 先生の後に続いてグレイは第一教室へと入る。そこでは授業が始まる直前だったようで、生徒達が席に着いていた。

 

 そこには、明らかにスケバンだったり、ヘルメットを被った元ヘルメット団と思われる生徒がおり、談笑しているのが見える。

 

「お?先生じゃねえか?」

 

「本当だ。その後ろの大きい人は、どこかで見たような……」

 

「テレビで見ただろ。あの有名なミレニアムの教授だよ」

 

 先生とグレイは特別教室の生徒達に近づいて話しかけた。

 

「やあ、みんな。今日はミレニアムからお客さんが来ているから、よろしく頼むよ」

 

「こんにちは、お嬢さん方。私はグレイバード、ミレニアムで教授をしている者だ。今日はここの見学に来た次第さ」

 

「よろしくっす!」

 

「よろしく~」

 

 やがて、授業の時間が来る。

 

 そういえば、学園都市キヴォトスの授業では、ブルーレイディスクを使うことが一般的になっており、先生が教壇に立って教えるのではなく、生徒が動画を見て自習する。

 

 だが、ここでは特別教室用に用意したBDの他に講師による授業も採用されており、先生やシャーレ所属の有志生徒が教壇に立って教えていた。

 

 特別教室用BDや授業プログラムの作成には、ミレニアムサイエンススクールと山海経高級中学校という二つの学園が関わっている。

 

 山海経高級中学校という学園は教育に力を入れており、幼児の頃から高度な教育を施しているほどだ。先生はそんな彼らに監修をお願いし、彼らの作成したプログラムを元にミレニアムが仕上げたものを使用していた。

 

 本日の授業は先生が行う。グレイは教室の後ろの方に立ち、まるで授業参観のように見学することにした。

 

 

先進医療部

 

 グレイには定期的に立ち寄る場所があった。それは、ミレニアムの医療を司る部活動である先進医療部だ。

 

 先進医療部はキヴォトスで最も高度な医療技術を有していると言われており、通常の医療を提供すると同時に先進医療や医療機器の研究をしており、最新の機材を取り揃えている。

 

 戦闘において獅子奮迅の活躍をしていることから忘れられがちだが、グレイは老人である。そのため、定期的に先進医療部に通って検査を受けていた。

 

〈スキャン完了〉

 

 グレイの肉体の表面を光が走る。電子音声と共に透明なカプセル状のデバイスが開き、検査衣に身を包んだ彼が出てきた。

 

 これは先進医療部が保有する人体スキャナーの鳥人族用モデルだ。先進医療部の工学部門とエンジニア部がグレイの助言を受けながら開発したもので、スキャンバイザーの技術が使用されている。

 

 従来の検査機器では検査に時間がかかっていたが、この人体スキャナーでは一瞬でスキャンが完了し、結果が出るのもかなり早い。怪我だけでなく病原菌の存在も看破できるので、万能といってもいい。

 

 生産コストが高いために少数配備に留められているだけだが、数機だけでも生産医療部の効率化に貢献している。検査結果の方も100%完璧ではないので通常の診察も必用だが、いずれはデータの蓄積が解決してくれるだろう。

 

「教授、私が何を言いたいのか分かりますか?」

 

 グレイの目の前にいるのは、白衣を羽織って首から聴診器を下げ、頭に額帯鏡を付けている女医のようなメガネの生徒だ。凛々しい顔つきで、綺麗な茶髪をボブカットにしている。

 

 彼女の名は杏林マリ。先進医療部の部長であり、最も腕の良い医者であり、グレイの主治医を担当している3年生だ。そんな彼女は今、少しばかり怒っているように思われた。

 

「どうやら、無理をし過ぎたようだね?」

 

「ええ。スキャン結果を参照しましたが、全身の骨格に細かなヒビが入っています。そして、筋肉と内臓にも細かな傷や内出血が見受けられました。まさか、ここ最近は連続でパワードスーツを?」

 

「そうさ。ここのところはパワードスーツの出番が多くてね。機密に当たるので詳しくは話せないが、色々とあった」

 

「ハブの消失やミレニアムを襲った巨大な機械……あれの関係でしょうか?おそらく、教授はその関係による脅威と水面下で戦っていた。違いますか?」

 

「あぁ。ここ数ヶ月はそうだった」

 

「そうですか。教授の肉体がこのようになるのも納得ですが、しばらくは戦闘は控えて安静にした方がいいかと」

 

「そうさせてもらうよ。ここで倒れるわけにはいかないのでな」

 

 パワードスーツの装着が短期間に集中し、その間に預言者やその眷属との戦闘を繰り返したため、グレイの肉体にはダメージが蓄積している状態だ。

 

 たまに装着して戦闘を行う分には問題ないのだが、それでも少なからずダメージは蓄積してしまう。グレイはしばらく、戦闘を控えることにした。

 

「お大事に、教授。貴方に倒れられたら困る生徒も多いです。私もその生徒の1人ですので、お忘れなきよう……」

 

「ああ、気を付けよう」

 

 

柴関ラーメン

 

 ある時、グレイのスターシップはアビドス自治区の上空を飛行していた。その下からは太いロープ状のビームが伸びており、コンテナを吊るす形となっている。

 

 やがて、スターシップはアビドス高校の校庭上空でホバリングする。校内を埋め尽くしていた砂は完全に取り除かれており、校舎も綺麗に修復されているのが見えた。財政状況が改善し、施設の保全に回せる資金が確保できたのだろう。

 

〈シップグラップリング解除〉

 

 コンテナが地表に着陸したため、それを吊るしていたビームを解除する。その隣にスターシップを着陸させ、降りてきたグレイを待っていたのはアビドスの生徒達と柴関ラーメンの大将だった。

 

「こんにちは〜教授。お久しぶりです~☆」

 

「やあ、ノノミ。あの時以来だね。ところで、何人か生徒の姿が見えないのだが……」

 

 今、この場にいるのはノノミとセリカ、大将と新しく入ったであろう生徒達のみであり、他の主要メンバーの姿がなかった。

 

 なお、新しい生徒達は元ヘルメット団のようだ。被っているヘルメットは水色に塗装され、アビドスの校章が大きく入っていた。

 

「ホシノ先輩はおそらく何処かで昼寝していると思います。シロコちゃんはロードバイクでキヴォトス縦断中でして、アヤネちゃんはクレーンの免許を取りに行っているんですよ~」

 

「クレーンの免許か……なるほど、今後の復興を見据えているのだね」

 

 アヤネは1年生ながらも多才である。車の運転はもちろん、ヘリコプターやミレニアム製のVTOL機を操り、複数のドローンを同時に操作し、ディガーノートの制御も担当している程だ。

 

「ねえ、教授!例のアレが早く見たいんだけど!」

 

「セリカちゃん、あまり教授を急かしちゃ駄目だぞ。早く食べないと冷えるラーメンじゃないんだからさ」

 

「でも、新しい柴関ラーメンの屋台が来るって聞いてワクワクしちゃって……」

 

 柴関ラーメンの店は一度、ちょっとした手違いというか事故というか、結果的に便利屋68によって爆破されている。殺してやるぞ、陸八魔アル……!

 

 現在は屋台で営業しており、人力で引いて移動するタイプになっているのだが、それでは大変ということで自走可能な屋台を作ることになり、ミレニアムに依頼したのだ。

 

 その費用の半分はグレイが出している。彼も柴関ラーメンのファンであり、ファンの1人として寄付していた。そして、今日になって納車されることが決まったのだが……

 

「では、お見せしよう」

 

 コンテナが開き、中から全長10メートル程の車両が姿を現す。車体には柴関ラーメンの文字が大きくペイントされていた。

 

 キッチンカーというよりは、大型のトレーラーに近い見た目だ。全体に装甲が施され、車体の上部にはCIWSのような武装が載せられているのが見える。

 

「わぁ!とてもおっきいです~☆」

 

「ちょっと、いくらなんでも大きすぎでしょ!これじゃ屋台どころか移動式のラーメン屋じゃないの!それに、何で武装があるのよ!」

 

「こいつは気に入った!俺は一度、こんなロマン溢れる店でラーメン屋をやってみたかったんだ!」

 

「ちょっと、大将!?」

 

 セリカのツッコミが何度も校庭で炸裂する。ノノミと大将は大喜びであり、新入生達はその勢いと巨大車両のインパクトに押されっぱなしで唖然としていた。

 

「気に入ってくれたようで何よりだ。この車両には襲撃対策に武装を載せていてね、装甲もあるから戦車が来ても大丈夫さ」

 

「襲撃って、何と戦うつもりなのよ!」

 

「セリカちゃん、落ち着け。安全に営業できるに越したことはないだろう?」

 

「それはそうだけど……」

 

「よし、今日は俺の奢りだ。みんな、ラーメンを食べていってくれ。昼頃にはできるから、待っていてくれよ」

 

 その後、戻ってきたホシノとアヤネと共に柴関ラーメンを食べた。グレイ用の特製ラーメンも出され、食事を通してアビドスの生徒達と交流を深めることができた。




時系列
・シャーレ特別教室(百鬼夜行出張と2章の間)
・先進医療部、柴関ラーメン(2章の直後)

さらっとオリジナル生徒が登場しましたが、ゲヘナやトリニティと違ってミレニアムには医療系の生徒がいないので生やしました。EXスキルはドローンで回復薬を散布して範囲持続回復するイメージです

次回からは出張編となります。行き先はお楽しみに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。