チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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ミレニアムエキスポのイベントで出てきたスミレ、日が暮れても追いかけてくるのが怖すぎた思い出が……割と逃げるのも難しかったし……


飛鳥馬トキとトレーニング部

「トキ、私はこれからトレーニング部に向かうのだが、そなたも来るかね?」

 

「トレーニング部ですか。危険だという噂は聞いていますし、魔境だとコユキが言っていましたが、興味はあります。是非、私も……」

 

「そうかそうか、興味があるか。色々なものに興味を持ってくれて、私としては嬉しいものだよ」

 

 トキがグレイの元に来てからというもの、彼女は戦闘や武器、メイドとしての能力以外にも興味を示すようになっていた。

 

「では、運動に適した服装に変えてきますので、しばらくお待ちください」

 

 ちなみにトキの現在の服装はミレニアムの制服である。その姿で戦闘する生徒もいるとはいえ、運動となると非効率な服装だった。

 

「お待たせしました、教授」

 

 そして、グレイの目の前に戻ってきたトキは、ブルーのショートパンツと同色のタンクトップに身を包み、上着を羽織るという出で立ちになっており、髪型はポニーテールに変更されていた。

 

「ほう、よく似合っているではないか」

 

「当然です。私は完璧で究極のメイドなので」

 

 そんなことを言いながらドヤ顔でピースをするトキ。グレイは彼女を連れてトレーニング部の部室へと向かった。

 

 

 

「ここがトレーニング部ですか。トレーニングのマシンがいくつも……会長のところにはこんなにありませんでした」

 

 トレーニング部の部室には様々なトレーニングマシンやダンベル、バーベルが置いてあった。ランニングマシンやチェストプレスマシン、ショルダープレスマシンなど、挙げたらキリがない。

 

 そこに話しかけてくる生徒がいた。

 

「こんにちは、プロフェッサー。先進医療部から話は聞いています。直近の検査記録を見せていただいても宜しいですか?」

 

「やあ、スミレ。これが検査記録さ」

 

 グレイは一枚のタブレット端末をその生徒に渡す。彼女の名は乙花スミレ、トレーニング部の部長をしている2年生だ。

 

 トレーニング部の部長に相応しく、黒髪ポニーテールの彼女はスポーツウェアに身を包んでおり、引き締まった健康的な腹部が綺麗だった。

 

「拝見します。うむむ、これは……」

 

 グレイがスミレに渡したのはこれまでの検査記録が入っている端末だ。ホドとの戦い後に行った検査の内容に、彼女は目を通していく。

 

「分かりました。プロフェッサーのトレーニングはしばらく期間を空けましょう」

 

「すまんな」

 

「いえ、プロフェッサーの健康管理は私の役目ですから」

 

 スミレはセミナーからの依頼でグレイの健康を管理するトレーナーをしている。医療系の部活と連携し、ミレニアムらしく科学的な知見に基づいて彼のトレーニングや食事を調整するのだ。

 

「そういえば、こちらの方は初めて見る顔ですが」

 

 やがて、スミレはトキに意識を向けた。

 

「あぁ、うちで預かっている生徒さ。トキ、自己紹介を」

 

「1年生の飛鳥馬トキです。宜しくお願いします、先輩……」

 

 なお、トキはリオの元にいた関係で留年しているのでスミレとは同い年なのだが、それを知る者はいないのでスミレを先輩と呼んでいた。

 

「トキさんですね。ところで、貴女はトレーニングに興味はありますか?」

 

「ええ、一応それなりに鍛えている自負はありますが……是非、専門家に見てもらいたいと思いまして」

 

「それは良かったです!トレーニング部ではいつでも部員を募集しています!そうだ、少し体を触らせてもらっても!?」

 

「か、構いませんが……」

 

 スミレの目の色が変わる。トレーニング部は人数が少なく、とある理由から来てくれる生徒がいないため、何としても彼女を獲得しようとしていた。そして、スミレはトキの身体を触り始める。

 

「これは、かなり鍛えているようですね。それも、実戦向きな鍛え方……一切の無駄がありません、一言で言うなら“合理的”でしょうか」

 

(C&Cの方々に近い気がします……おそらく、彼女はそれに類する戦闘要員……合理的な鍛え方といい、まさか……)

 

 スミレは触診だけでトキが鍛え上げられた戦闘員であることを見抜いてしまった。そして、そのトレーニングを監修したであろう人物についても検討をつけている。

 

 だが、それでもトキを獲得することに変わりはない。それほど、トキという存在は有望な人材として写っていたのだ。

 

「トキさん、これから私が考案したトレーニングを一緒にしましょう。貴女にはまだ鍛えられる余地があります」

 

「では、宜しくお願いします」

 

 こうして始まったトキとスミレの合同トレーニング。そのトレーニングは数時間に及び、普通の生徒なら根をあげるようなものもあったが、二人が止まることはなかった。

 

「まさか、私のトレーニングから逃げずに最後まで続行できる人が現れるとは思いませんでした……」

 

「先輩、いいトレーニングでした」

 

 トレーニング部に人が来てくれない理由は、スミレによるトレーニングにある。彼女が監修するトレーニングは科学的知見に基づいたものだが、体力の基準が彼女になっており、かなりストイックなものだ。それに誰も耐えられず、皆が逃げ出していたのだ。

 

 だが、今は違う!そんな彼女と肩を並べるような体力の持ち主が現れたのだ。彼女は誰もが逃げだしていたトレーニングを完遂し、スミレの目の前に立っていた。

 

 そして、自身のトレーニングを乗り越えたトキに対してかける言葉は決まっている。

 

「是非、このトレーニング部に入ってくれませんか?」

 

「はい。これからお世話になります、先輩」

 

 この日、トキは新しい自分の居場所を見つけることができた。彼女はきっと、一度は無くなったはずの青春を取り戻すだろう。




今回のトキの服装はメトロイドフュージョンのエンディングで出てくるサムスの服装がモチーフになってます。ポニーテールにしたのもサムス要素ですね
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