ある日、グレイはヴァルキューレ警察学校の分署に来ていた。別に何かをやらかして自首しに来たわけではない。
「ここに、チヒロの後輩が……」
ここに来た理由は、ヴェリタスの副部長であるチヒロの後輩を迎えにいくことだ。どうやら、何かをやらかして勾留されてしまったらしい。
「お疲れ様です、教授。先ほど、連絡があった件についてでしょうか?」
受付に向かうと、ヴァルキューレの生徒が敬礼し、挨拶してくれる。すでに連絡はしているのでスムーズだ。
「そうだ。うちの生徒が迷惑をかけたようだな」
取調室に案内されると、そこには赤髪を二つのお団子にした小柄な生徒が座らせられていた。机の反対側にはヴァルキューレ生徒がおり、先ほどまで取り調べをしていたようだ。
赤髪の彼女は小塗マキ。チヒロの後輩で、ヴェリタスに所属する最年少メンバーの1年生である。絵を描くのが得意であり、ヴェリタスのロゴを作ったのも彼女だ。
「君がマキか。チヒロから話は聞いているよ」
「あっ、教授!?助けに来てくれたの?あたし、何もしてないのに、いきなり捕まって連れてこられて……」
「何もしてないって、まだ反省していないんですか!」
「いったい、うちの生徒が何をしたのだね?」
「落書きです。無断で私有地に侵入しまして、勝手に外壁や柱に落書きしました」
「落書きじゃない!グラフィティだもん!立派な芸術だもん!」
「などと供述していますが、消せない油性ペイントを大量に振り撒いたのです。それも、落書きは今回が初めてというわけではありません!消す人がどれだけ苦労していることか……」
「だから、落書きじゃなくて芸術だよ!私はただ、この薄暗い都市を明るくしようとしただけなのに!」
マキは反省していないようだ。いまだに落書きをしたことの正当性を主張し続けている状態である。
ちなみに、グラフィティはスプレーやフェルトペンで公共の場所に描く行為であり、許可なく行えば犯罪となるものである。
「やれやれ……マキ、謝りなさい」
「わ、分かったから……その、ごめんなさい」
「次はないですから。場合によっては矯正局行きも覚悟してくださいね?」
マキは解放された。グレイは彼女を連れてヴェリタスの部室までの道を行くことにした。
「ありがとう、教授」
「お礼ならチヒロに頼むよ。ところで、どうして落書き……いや、グラフィティだったかね?そのようなことを、どうして?」
「グラフィティって言ってくれたの、教授が初めてだよ。あの時、灰色の壁が語りかけてきたんだ。可愛い色にしてほしいって……」
「だが、人様のものに勝手に絵を描くのは……」
「もちろん、それは分かってた。でも、燃え盛る芸術魂が私を駆り立てて……」
「芸術は悪いことではない。だが、場を弁えなければそれはただの犯罪となってしまう。それを肝に銘じなさい」
「迷惑をかけて、ごめんなさい……」
「分かればよい。だが、芸術魂というものは簡単に抑えられるものではないだろう。マキ、もしも自由に描いていい空間があるとしたら、そなたはどうするかね?」
「絶対に描く!それ、何処にあるの!?」
「マキはアビドスを知っているかね?」
「砂漠の方にある自治区でしょ?最近、復興が進んでいるって聞いたよ!」
「実を言うと、アビドスでは町おこしの一環として一部の廃墟を綺麗にして観光名所にしようとしていてね、芸術を得意とする人材を探している」
アビドスは復興を進めており、生徒数も増えつつあるのだが、さらに人を呼び込むための決め手に欠けていた。そこで、放置されていた廃墟に目を付けたのだ。
「もし良ければ、そなたを紹介しよう」
「いいの?ありがとう、教授!」
マキは自由にグラフィティを描ける空間を手に入れた。今後、彼女はグラフィティで人助けすることに喜びを見いだし、勝手に落書きをすることは無くなったそうだ。
マキの絆ストーリーが大元になってますが、警察をヴァルキューレ警察学校の生徒に変更してます。キヴォトスの警察の設定ってどうなっているんですかね?