数日後、グレイ達はスターシップで海上を飛行していた。何処までも海が広がっているように見え、位置が分からなくなってしまいそうだ。
「皆、そろそろオデュッセイアの生徒会艦と接触する頃だ」
グレイは球状の操作デバイスを動かしながら、三人の乗客に状況を伝える。スターシップのレーダーには艦隊と思われる反応が表示されていた。
「オデュッセイア……楽しみですね!せっかく夏に海へ来たわけですし、海で遊びたいです!」
「海ですか……私は行ったことがありませんが、興味はあります」
「コユキちゃん、楽しみにするのもいいですけど、仕事はきちんと終わらせましょうね?」
「はっ、はい……」
操縦席の後部に設けられた客人用の席にはコユキ、トキ、ノアの三人が乗っている。個人用の船とはいえ、鳥人族サイズなので人間大であれば客を乗せることもできた。
『オデュッセイア海洋高等学校の艦隊より飛行物体が接近中です。レーダーの反応から、小型機と思われます』
「事前の話にあったオデュッセイアからのお迎えか。ここからは向こうの指示に従うとしよう」
遠隔でMBも付いてきている。ミレニアム自治区の範囲外ではあるものの、スターシップを中継局としてある程度の支援を受けられる。
そして、スターシップの十二時方向から二つの機影が飛来する。それはスターシップとすれ違うと反転し、それぞれ機体左右の斜め後方に随伴する形となった。
「これは、オデュッセイア海上保安部所属の攻撃機AV-8BハリアーⅡですね。V/STOL機なので、狭い艦上でも運用できるため、重宝されているようです」
ノアが解説してくれる。ちなみに、ジェット機を運用しているような学園は多くはなく、基本的にはヘリコプターを採用しているのが普通だ。
『こちら、オデュッセイア海上保安部所属、セイレーン隊。これより貴機を護衛し、生徒会艦へと誘導する。ルートを外れず飛行されたし』
スターシップは2機のハリアーⅡに挟まれたまま、飛行を続ける。やがて、前方に見えてきたのは全通甲板を備えた大型艦であった。
それは、オデュッセイア海洋高等学校の生徒会が保有し、生徒会機能が収められた中枢ともいえる生徒会艦オデュッセウスである。
オデュッセウスの全長は250mを誇り、オデュッセイアに存在する船舶の中でも最大級に近いものとなっている。中枢を収めるためにはこれくらいは必要だろう。
その周囲を固めている何隻もの駆逐艦や巡洋艦を視界に入れつつ、スターシップはオデュッセウスの甲板に着艦する。
「お待ちしておりました、教授。閣下がお待ちですので、ご案内します」
降りてきたグレイ達を案内してくれたのは、まるで水兵のような白い制服と帽子を着用した生徒だ。彼女についていき、格納庫と甲板を繋ぐエレベーターの上に乗る。そのまま、床が下がり始めた。
「やあ、教授。待っていた」
そこで待っていたのは、透き通るような銀髪のロングヘアーに軍帽を被り、ノースリーブとミニスカートの上に黒い軍服を羽織った美少女だった。そして、その左腕には一羽の鷲を留まらせていた。
「ようこそ、生徒会艦オデュッセウスへ。私は海鷲ツバサ、オデュッセイアの生徒会長……いや、提督をしている。以後、お見知りおきを」
「ほう、そなたが……」
「あなた方をお呼びしたのは、遺物を共に調査するためだ。先日、とある場所の海底に巨大な構造物が急に現れ、海上に浮かび上がってきた」
ツバサは状況を詳しく説明してくれる。どうやら、これまで存在していなかったはずの構造物が出現し、海上に今も鎮座しているのだという。
「当然、我々は臨検隊を派遣した。だが、そこで事件が起きた」
「事件?」
「臨検隊がお化けと人魂を見たというんだ」
「ま、まさか、お化けなんているはずないですよね?にははは……」
「だが、ボディカメラにそれらしき影が映っていた。実際、青い人魂のような物体に襲われ、数人が火傷を負って帰ってきた……何かあるのは間違いないだろう」
「あ、やっぱり帰っていいですか?」
「ダメですよ、コユキちゃん?」
「ですよね……」
コユキは再び、笑顔のノアに威圧される。お化けや幽霊なんかよりも、彼女の方が怖かった。
「なるほど、これは教授の案件ですね。ところで、その目撃者に会うことはできますか?」
「君は……飛鳥馬トキといったか?あぁ、目撃者に会うことは可能だ。近くの病院船にいる……そちらへ飛んでくれ」
「そちらから話を聞くのも重要なことであろうな。ノアとコユキはここで待機、私はトキと共に事情聴取に向かおう」
グレイとトキが降り立ったのは、真っ白な船体の各所に大きな赤十字がペイントされた病院船パナケイアだった。
パナケイアの全長は270mと生徒会艦オデュッセウスよりも大きく、その内部には1000床ほどの病床を備え、複数のオペ室やら様々な医療機器が満載されている。医療機器の中にはミレニアム製のものも多い。
何かを目撃したというオデュッセイア海上保安部海兵隊の生徒達はここに収容されており、治療を受けている最中だという。二人はそこで、1人の生徒から事情を聞くことができた。
「ええ、私は見ました、見たんです。奴は暗闇にぼんやりと浮かんでいて……まるで、単眼の巨人の生首だけが自由に動き回って……」
「なるほど……それは壁をすり抜けて動いていたのかね?」
「ええ、そうです。奴は目を閉じた状態で壁や天井を無視して動き回り、開眼した瞬間に青い火の玉を乱射してきました」
彼女の頭に浮かんでくるのは、暗闇の中で奴に襲われた記憶だ。
『◼️◼️がやられた!』
『いたぞぉ、いたぞぉぉぉぉ!!』
『スマートガンをくらえ!』
『全く手応えがないんだけど!?』
主力小銃が、分隊支援火器が火を吹き、グレネードが炸裂するが、全く当たった感覚がしない。全ての攻撃が奴をすり抜けていたのだ。
「奴には攻撃が当たりませんでした。まるでお化けのように半透明になり、銃弾も爆発もすり抜けていきました……」
お返しと言わんばかりに返ってきたのは、何処からともなく現れて飛来する大量の青い鬼火。迎撃を試みるが多勢に無勢。隊員の多くが火傷を負い、敗走することになったらしい。
「ふむ。もしかすると……」
「教授、何か心当たりでも?」
「鳥人族の記録に類似したものがある。こちらでも目撃例が少なく、未知の部分ばかりということで断定は難しいのだが、可能性はある」
グレイには少し心当たりがあった。完全に彼の世界の存在なので可能性は低いのだが、完全に否定することはできなかった。
「トキ、奴の正体なのだが……」
スターシップに戻って来た後、グレイは海兵隊が遭遇したと思われる存在についてトキに話した。
「あれは◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️と呼ばれる存在の可能性が高い」
「それは、どのような存在なのですか?」
「あぁ、それは……」
そして、どのような存在であるのかトキに伝える。主に、判明している生態や特性、弱点などについてだ。
「トキ、調査の際はコユキと共に活動してもらう。もしも奴と遭遇した場合は頼んだぞ」
「イエス、マイロード」
オデュッセイア海上保安部海兵隊の装備のイメージは、エイリアン2に出てくる植民地海兵隊だったりします
エイリアン2を最近見た影響ですね…