チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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調査は次回になります


オデュッセイアの名物と計画

 その日の夜、グレイ達はオデュッセイア生徒会の保有する豪華客船に招待されていた。VIPを接待するための船であり、貸し切り状態だ。

 

 海は漆黒の闇に染まっているが、甲板は灯りに照らされて煌びやかに輝いており、闇に浮かぶ光のオアシスのようだ。

 

「今日はオデュッセイアの名物をご馳走しよう」

 

 ツバサが指を鳴らすと、グレイ達の座る席に料理が運ばれてくる。それは、野菜と海の幸がゴロゴロと入っているカレーライスであった。

 

「にはははっ、大好きなカレーです!!」

 

「これはシーフードカレーですね」

 

「オデュッセイアの名物はカレーでしたね。オデュッセイア海上保安部では毎週金曜日にカレーを食べる決まりがあると記憶しています」

 

「ご名答だ。うちの名物はオデュッセイア海洋カレーさ。船上での曜日感覚を維持するため、毎週金曜日にカレーを食べるようになったことが始まりさ」

 

 オデュッセイアではカレーが名物として宣伝されている。何代か前の生徒会長が海上保安部の出身であり、大のカレー好きだったために保安部伝統のレシピを改良し、そのまま名物として制定したのだとか。

 

 使われる食材は普通のカレーと同様にジャガイモやニンジン、玉ねぎとなっているが、ここではそこにイカやタコ、エビや貝類などを加えてシーフードカレーにしている。

 

 農業が盛んな自治区より輸入した野菜や米、オデュッセイアの海で採れた海産物を組み合わせたものであり、栄養満点である。

 

「「「いただきます!」」」

 

 三人はシーフードカレーを食べ始めた。よく効いたスパイスが食欲を増進し、スプーンの動きを止めさせない。

 

 食べ方は三者三様だ。コユキはガツガツと食べ進め、トキは福神漬を大量に投入して淡々とカレーを口に運んでいる。そして、ノアは丁寧に食べながら時折笑顔を浮かべている。

 

「教授も食べるといい。特盛をどうぞ」

 

 グレイはカレーを食べている三人の様子を眺めていたが、そこにツバサがカレーを運んでくれる。皿の大きさは特大サイズであり、山のようにカレーとライスが盛られていた。

 

「では、頂くとしようか」

 

 グレイはこれまた特大サイズのスプーンでカレーライスを掬い、口へと運んでいく。よく効いたスパイスの風味を感じ、食欲が刺激される。

 

「美味い!」

 

 カレーを一口食べた瞬間に感じたものは、溶け込んだ野菜の甘みと魚介類の出汁の旨味。それがスパイスの風味と組み合わさり、グレイに刺激を与えた。

 

 その美味しさはグレイが珍しく目を大きく見開く程であり、次々とスプーンを動かして口に運んでいき、特大容器が空になるのに5分もかからなかった。

 

「おかわりはあるかね?」

 

「勿論さ。好きなだけ食べてくれ!」

 

 その後、グレイは何杯もカレーを平らげてしまった。さらに、レトルトのオデュッセイア海洋カレーを注文し、自分で食べる以外に生徒達へ配ることにしたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「教授、海はフロンティアだ。宇宙よりは簡単に行けるが、未知の部分も多い」

 

 翌日、グレイはツバサに連れられてオデュッセイアの最新鋭技術を研究する海上プラントに来ていた。

 

「うちは今、海洋探査に力を入れているんだ。あぁ、あれを見てほしい」

 

 すると、海中より潜水艇が浮上してくる。1人乗りでドーム状のコックピットが特徴的だ。

 

「海底の探査に使う1人乗りの潜水艇〈ケローネ〉さ。将来的に量産することを考えているよ」

 

「どのくらいまで潜れるのかね?」

 

「最大で1000mといったところさ」

 

 ケローネには2本の作業用アームやライトが搭載されており、モジュールを変更することで様々な任務に対応可能だ。また、個人用の移動手段としての販売も視野に入れている。

 

「それは凄いではないか。しかし、そこまでして海底を求めるのには理由があるのかね?」

 

「ロマンの側面も否定できないが、やはり資源を手に入れるためさ。我々は船を輸出する代わりに資源を輸入しているが、万が一供給を絶たれる事態になれば立ち行かなくなってしまう」

 

 オデュッセイアは資源に乏しい。広大な農地も鉱山も存在せず、その殆どが輸入頼り。そこで目を付けたのが海底に眠る鉱産資源であった。

 

「我々はケローネを使って海底を探査し、そこに建設した基地を足掛かりに鉱産資源を採掘するのさ。そして、その際に大きな役割を果たすのが……」

 

 すると、海中からケローネとは別の何かが浮上してくる。それは背部からウォータージェットを吹き出して滞空すると、プラントの床へと降り立った。

 

「海中探査パワードスーツ〈ポセイドン〉さ。潜水艇よりも航行能力は下がるが、その代わりに水中作業に特化させている」

 

 ポセイドンはパワーローダーのような形状で、乗り込むタイプのパワードスーツだ。ケローネ以上に深い場所まで潜ることができ、装備可能なモジュールも増えている。当然、採掘にも使用される。

 

「採掘用のドリルアームや移動用のワイヤーを射出するグラップリングアームなどがあるのだが、それに加えて魚雷といった武装も搭載させた。教授はその理由が分かるかい?」

 

「深海に脅威がいるということだろう?宇宙も同じさ。数多くの脅威が潜んでいる場所に非武装で赴くのは自殺行為だからね」

 

「その通りさ。かなりの深海や人の手が届かない外洋には巨大な化け物が潜んでいることが分かっていて、我々はそれらをリヴァイアサンと呼んでいる」

 

「リヴァイアサン……巨大な海の怪物か」

 

「海に進出する上で、リヴァイアサンとの遭遇は避けられないだろう。それでも我々は海というロマンに挑むつもりさ」

 

 ツバサは海洋探査に対して強い情熱を持って臨んでいた。オデュッセイアに利益をもたらすという目的もあったが、その原動力はロマンを追い求める気持ちだった。

 

「共にフロンティアへ挑む者同士、今後とも協力していきたいと思っている。互いの強みを持ち寄ることで、互いの目的も達成できる。私はそう信じているよ」

 

「そうか。もしも何か困ったことがあれば、気軽に私へ連絡してほしい。海洋工学は専門ではないが、相談に乗ったり、助言くらいはしよう」

 

「その時はお願いしたい。だが、私はミレニアムの生徒ではない。それでも良いのであれば……」

 

「なに、フロンティアへと挑む若者を応援するのは当然のことさ。それがミレニアムの生徒でなくとも変わらんよ」

 

「本当に面白い人だ……」

 

 その後、海上プラントにおける最新鋭技術の見学は日が沈むまで続き、若者達の情熱の結晶の数々を見ることができてグレイは感動していた。

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