グレイ達は難破船の内部を探索していた。
「この船の内部は私達が通るには大き過ぎる程ですね。昔は教授のような鳥人族が大勢闊歩していたのでしょうか?」
当然ながら、この船は鳥人族が使用していたのでサイズ感はそれ相応のものになっている。身長が3メートルもある鳥人族と人間ではあまりにも差がありすぎた。
「そうだな……昔は同族も大勢いたのだがね……今となっては散り散りさ。いつかは存在も忘れられるだろうな……」
「なら、記録して残すだけですね。教授のことは忘れませんし、後世まで残します」
「そうか、それは頼もしいな」
「はい、お任せください」
グレイ達は広い艦内を進み続けるが、所々で行き止まりや電源が落ちて開かないドアと遭遇し、代わり映えのしない景色に迷いそうになる。
だが、こちらには完全記憶能力を持つノアがいる。一見、同じにしか見えない通路にも僅かな違いがあり、一度通れば覚えるので問題なかった。
「あら、これは教授にそっくりですね」
ある場所でパワードスーツを装備したグレイによく似た像をノアが発見する。それは、俗に言う体育座りの体勢で鎮座していた。
「おや、鳥人像ではないか。鳥人族のバイオテクノロジーで作られていて、一種のクローンでもある。動き出して侵入者を迎撃するようになっているのだが、これは老朽化して動かないようだね……」
「動かないみたいで安心しました」
「私がいれば敵対してくる可能性は低いがね。ただ、老朽化したものは見境なく襲ってくることもある。鳥人像は痛覚がない、もしもの場合は循環系を完全に破壊しなければならぬ」
鳥人像の戦闘力はそのオリジナルである鳥人族に準ずる。近接戦闘能力は勿論のこと、ビームやボム、衝撃波を使用してくる他、高性能なものではミサイルを掴んで投げ返してくる程の反射神経を持つ。
こうして、色々と探索していると……
「教授、動体探知機に反応が」
同行しているデルタチームの隊長が手にした小型機械のディスプレイを見せてくる。それはレーダーのようになっており、四方八方からいくつもの小さな反応が接近していることが分かった。
「これは……皆、全方位を警戒せよ。これから戦闘になるぞ。ノア、そなたは孤立しないように気をつけるのだ」
「はい、教授」
ノアは愛銃を準備する。彼女もキヴォトス人なので銃器で武装するのは当然のことだ。ストックを装着した拳銃を所持しており、〈書記の採決〉と名付けられていた。
「教授、来ます!」
グレイがシールドと槍を構えていると、周囲の空間が歪んで謎の存在が溢れ出てくる。見た目は異形の手であり、手の平の中央には眼球が存在していた。
「何なんだこいつらは?」
「レイジハンド……やはり送り込まれてきたか」
「知っているんですか?」
「あぁ。この船を掌握している存在……ファントゥーンが呼び出す分身のようなものさ。詳しい正体は不明だが、物理的な攻撃は効く」
「それなら、やりようはあるか」
異形の手、レイジハンドはその数を増やしていき、通路の前方と後方を完全に塞いでしまう。そのまま、ジワジワと接近してくる。
「ここは正面突破しよう。私が道を切り開く……皆、私についてくるのだ!」
「「「イエス、サー!!」」」
グレイは先頭に立ち、一番槍としてレイジハンドの軍団に挑む。彼の肉体のことを考えると戦闘は極力減らす必要があるため、戦力を集中させて短時間で突破することを選択したのだ。
グレイが先頭に立ち、鼓舞したことで海兵隊の士気は高まっている。物語に出てくるような勇猛な戦士の姿を見て、興奮していた。
「さあ、死にたい者から来るがいい!」
グレイは勇猛果敢に敵軍へ斬り込んでいく。槍を突き出して串刺しにすると、そのまま振り回してレイジハンドを蹴散らし、活路を拓いた。
その姿は一騎当千の武将そのもの。槍だけでなく、シールドや強靭な手足も駆使して暴れまわっており、シールドで叩き潰し、その脚力で踏み潰して無双する。
「教授に続け!」
生徒達もグレイの後に続いていく。彼が暴れたお陰で敵は疎らであり、最小限の弾薬の消費で敵を突破することができた。
「きゃ!?」
しかし、中には空間の歪みから急に出現して奇襲を仕掛けてくる個体もおり、その一つがノアに襲いかかる。
普段の彼女からは想像できない可愛い悲鳴を上げたノアは愛銃を発砲するが、突然の出来事に弾が全て外れてしまう。だが……
「させるか!」
デルタチームの隊長がそこで動いた。オデュッセイア海兵隊の主力小銃であるM41Aパルスライフルが火を吹き、レイジハンドを蜂の巣に変えてしまう。
「ありがとうございます。助かりました」
「今はここを切り抜けることが先決だ。礼なら後でいい」
そんな中、隊列の最後尾に配置されている殿の隊員達が後ろに向き直り、分隊支援火器M56スマートガンを掃射して敵を阻止する。
「グレネード!」
さらに、置き土産としてパルスライフルの下部に装備された30㎜グレネードランチャーを数人で発射し、爆発の隙にその場から離脱した。
一方その頃、トキ達はというと……
「で、出たぁぁぁぁ!?!?」
「対処します」
トキ達もレイジハンドの群れと遭遇していた。現れた異形の軍団を前にしてコユキが悲鳴を上げ、その傍らではトキが冷静に対処していた。もちろん、海兵隊も一緒だ。
トキの持つ愛銃〈シークレットタイム〉は、珍しく薬莢が存在しないアサルトライフルだ。トキは角張った形状のそれを片手撃ちし、正確に敵の眼球へ叩き込んで撃破していた。
「弱点は手の平の眼球です。それを狙ってください」
敵の弱点や能力はグレイから全て聞いている。海兵隊の生徒達は彼女から共有された敵の情報を元に戦うのだ。
「コユキ、散弾を使ってください」
「うわぁぁぁ!悪霊退散!」
コユキが特性の爆弾を投げつける。今回は施設内なので散弾にセットしてあるものであり、レイジハンド多数の肉体をズタズタに引き裂いた。
「なんか、全く数が減っていないような……」
「このままでは押し潰されそうです。コユキ、この場から離脱しましょう。殿は私が務めますので」
レイジハンドの数が一向に減る気配がない。そこでトキは、グレイと同じく包囲を突破して離脱することを提案する。
「殿って……一人で大丈夫ですか?」
「心配いりません。私、最強なので」
トキはドヤ顔でピースすると、紺色のパワードスーツの姿に変化する。彼女の保有する切り札である、アビ・エシュフ・システムだ。
「それ、教授の言っていたエビピラフ?でしたっけ?」
「アビ・エシュフです」
そして、彼らは動き出す。コユキの爆弾で包囲に穴を空けて突破し、殿を務めるトキが敵の前に立ち塞がると……
「アームギア、装着」
パワードスーツの右腕に更に大きな腕を装着する。これはアビ・エシュフの武装モジュールの一つで、保有する中で最もコンパクトな武装である。
〈リパルサーレイ、オンライン〉
トキは手の平を敵に向ける。アームギアの手の平にはレンズのような部品が埋め込まれており、ビーム兵器となっている。
手の平からビームが連続で発射され、レイジハンドをほぼ一撃で次々と倒していく。リパルサーレイは彼女の生体エネルギーを動力にしているため、弾は無限だ。
「そろそろ、潮時でしょうか」
そして、トキもこの場を離脱すべく最大の攻撃を放つ準備をする。エネルギーを臨界点ギリギリまでチャージして手の平を輝かせ、アームギアの装甲をスライドさせ、多数の小型ミサイルの姿を覗かせる。
「アームギア、フルバースト」
次の瞬間、解き放たれたのは極太のビームと小型ミサイルの嵐だ。敵集団の中央は閃光に飲み込まれて消滅し、その他はミサイルの爆風によって粉砕される結果となった。
「では、スタコラサッサと撤退します」
重いアームギアを解除してから撤退する。その場に残されたのは、広範囲に渡って大きく抉られた床と黒焦げになった破片だけであった。
動体探知機とパルスライフル、スマートガンはエイリアン2に出てくる海兵隊の装備です
今回でようやくファントゥーンの名前が出せました。スーパーメトロイドとメトロイドアザーエムに登場するボスでして、レイジハンドはアザーエム版ファントゥーンが呼び出す分身体になります