チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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今回はグレイとアリスの親密な時間を書けたと思います


アリスの冒険

 グレイは監視も兼ねてアリスと共に行動することにした。聞いた話では、彼女は冒険と称してミレニアムを歩き回っており、クエストという形でお手伝いをしているのだという。

 

「あっ、長老とエンカウントしました!こんにちは、長老!」

 

「やあ、アリス。こんなところで会うなんて奇遇だね」

 

 なお、奇遇でもなんでもない。MBにアリスの移動経路を監視させ、タイミングを合わせて出てきただけである。

 

「皆から聞いたぞ。毎日、冒険をしてクエストを受けているのだと」

 

「はい、アリスは勇者ですから!クエストを達成して、レベルを上げなければなりません!」

 

「そうかそうか。その冒険、同行してもいいかね?私もそなたのようにレベルを上げてみたくてね」

 

「長老が来てくれるなら百人力です!パンパカパーン!長老がパーティに合流しました!」

 

 アリスは純粋無垢な瞳でグレイを見上げ、無邪気に微笑むと人力でファンファーレを鳴らす。その姿は本当に可愛らしい。まるで娘か孫と接しているような気分だった。

 

「では、冒険をしようか。勇者殿は何処へ行かれるのかね?」

 

「町に行きましょう!沢山のクエストがそこに転がっているはずです!」

 

 こうして、グレイとアリスはミレニアム自治区の中心部へとやって来る。そこには大勢の生徒達がおり、賑わっていた。

 

「あっ、アリスちゃんだ!教授も一緒みたいだけど……」

 

「アリスちゃん、今日も冒険?」

 

 中心部に着いて早々、アリスは生徒達によって捕捉されて話しかけられる。既に有名人らしく、可愛がられているようだ。

 

「はい!でも、今日の冒険は一味違います。パーティーメンバーとして長老をお迎えしました!」

 

「やあ、しばらくアリスの冒険に同行することになってね……付きっきりになるが、何かあれば連絡しても構わんぞ」

 

「クエストならいつでも大歓迎です!」

 

「なら、早速お願いしたいことが……」

 

 こうして、クエストが発生する。それは、荷物を代わりに持っていってほしいという依頼だった。

 

「届け物クエスト発生です!」

 

 アリスは段ボールを抱えて歩き出す。彼女だけに任せるわけにはいかないため、グレイも大きめの荷物を抱えて移動した。

 

 アリスとグレイはいく先々で様々なクエストを受注し、その全てを達成していく。お礼として色々と物を貰う機会もあった。

 

「さて、アリスよ。少し休憩しようか」

 

「はい!勇者には休息も必要ですからね!」

 

 二人はベンチに座る。アリスのレールガンは近くに立て掛けてあり、グレイの膝の上にアリスがちょこんと座っている状態だ。

 

 二人が手に持っているのはオレンジジュースの入ったペットボトル。冒険の道中で貰ったものであり、グレイのものは2リットルになっていた。

 

「アリスはアイテム、オレンジジュースを使用した。HPが全回復した!」

 

 これまたゲームでアイテムを使用するような感覚でオレンジジュースをゴクゴクと飲むアリス。微笑ましい姿を見つつ、グレイもジュースを飲んだ。

 

 また幾つかのクエストを達成し、お昼の時間となる。その正体が機械だというのにアリスのお腹が鳴り、腹時計が時間を教えてくれる。

 

「よし、腹ごしらえといこうか」

 

 二人は飲食店が集まっている地区へと向かう。お昼時なので人は多く、どの店に入るか考えていると……

 

「きゃぁぁぁ!!!」

 

「騒ぐんじゃねえ!」

 

「腹が減ってイライラしてるんだ!」

 

「そうだそうだ!唐揚げ弁当を寄越しやがれ!」

 

 町の一角に響き渡る悲鳴と怒号。店員を脅すために行ったと思われる威嚇射撃の銃声も聞こえてくる。

 

 隠れてその現場を覗き込むと、ヘルメットを被った生徒達が店の一つを包囲し、店員に詰め寄っているのが見える。キヴォトスでは一般的な不良集団、ヘルメット団である。

 

「あれは盗賊です。アリス、討伐してきます!」

 

「ま、待つのだアリス……」

 

 グレイの制止を聞かず、アリスは普通に飛び出していく。そのまま、ヘルメット団と接敵して交戦を開始してしまう。その現場を見なくとも、音だけで様子は容易に想像できた。

 

「な、なんだこのチビは!?」

 

「こんなやつ、やっちまえ!」

 

ドドドドドッ!!!

 

ズガンッ!ズガンッ!

 

「光よ!貫け、バランス崩壊!」

 

ズガガガガガガッ!!!

 

「「「「「う、うわぁぁぁ!?」」」」」

 

 その場が閃光で包み込まれ、轟音と共にヘルメット団が悲鳴を上げて吹っ飛ばされ、地面に倒れ伏す。そこに立っていたのは店員とアリスだけだった。

 

「助かりました、ありがとうございます」

 

「アリスは勇者ですから、盗賊を討伐するのは当然です!」

 

 その後、店員はお礼として唐揚げ弁当をアリスに無料で提供すると言ってくれたが、グレイが普通に代金を支払っている。

 

 さらに、二人で唐揚げ弁当を食べていると、サイレンを鳴らしてやって来たミニパトが近くに停車し、ヴァルキューレ警察学校の生徒が降りてくる。

 

「ご協力に感謝します!ヴァルキューレ警察学校、生活安全局の中務キリノといいます!あなたは、ミレニアムの教授さんですね!」

 

「やあ、お巡りさん。この子がたった一人でヘルメット団に立ち向かったんだ」

 

「たった一人で?お恥ずかしながら、本官には大勢に立ち向かえるような力もなく……射撃が壊滅的に下手でして……」

 

「大丈夫です!最初はみんなレベル1です!修行して経験値を積めばレベルも上がります!」

 

「なるほど!それを聞いてやる気が出てきました!本官、もう少し頑張ってみます!」

 

 そして、キリノと名乗ったお巡りさんは後から到着した仲間や保安部と共にヘルメット団を連行していく。彼女によると、この件でアリスには報酬が出るそうだ。

 

「盗賊討伐クエスト、達成です!」

 

 近場にあるヴァルキューレ警察学校の分署へと向かい、手続きを終えて報酬を受けとる。ヘルメット団に指名手配犯が混じっていたため、その分の上乗せもあった。

 

「アリス、こんなに貰ったの初めてです!アリスが貰っていいのでしょうか?」

 

「アリスよ、ただ単純に貰ったわけではないぞ。そなたの働きに対する正当な報酬なのだ。好きに使うとよい」

 

「分かりました!アリス、みんなにプレゼントを買います!もちろん、長老にもです!」

 

「そうかそうか、それは楽しみだ」

 

 二人はヴァルキューレ警察学校のミレニアム分署を後にする。まるで親子のような彼らの後ろ姿には、ヴァルキューレの生徒達からの微笑ましそうな視線が向けられていた。

 

「アリスよ、今日はどうだったかね?」

 

「はい!アリスは楽しかったです!運搬クエストを達成したり、盗賊を倒したり、長老と一緒に機械のモンスターを討伐したり、思い出が一杯でした!」

 

 ここまで語られていなかったが、ヘルメット団を倒した後に事件が起こっていた。それは、エンジニア部から脱走したワニ型戦闘ロボットが街中で暴れるというものだ。

 

 この緊急クエストを達成するため、動き出したのはグレイとアリスだ。ミレニアムの治安組織が来る前に駆けつけた二人は連携して戦い、ワニ型戦闘ロボット…通称メカワニを討伐することに成功していた。

 

 他にも色々とあったが、ここでは語りきれるようなものではない。その全てはアリスのセーブデータに保存されているだろう。

 

「楽しかったようで何よりだ。もし良ければ部室まで送っていこう」

 

「アリス、お言葉に甘えます!」

 

 グレイはアリスと共に歩き出す。すでに時間帯は夕方であり、地面には大小二つの影が映し出される。夕日に照らされながら二人は帰路についた。

 

 

 

 

 

『グレイ、アリスはどうでしたか?』

 

「MB……彼女は純粋無垢で善良な子であった。彼女が世界を破滅させる兵器であるとは、到底信じられんほどだ」

 

『しかし、いざというときには破壊するのでしょう?』

 

「あぁ。だが、できれば破壊したくはないな。私は、みんなに笑顔のままでいてほしいのだ」

 

 アリスが敵になれば、多くの笑顔が消えるだろう。アリスと親しい生徒達やゲーム開発部の皆、破壊を実行しようとするリオ、彼女と対立するヒマリ……グレイが自分の手でアリスを破壊しようと決めたのは、起こるであろう生徒達の対立を防ぐためだった。

 

「MB、私はアリスを破壊する手段を持っているとリオ達に言ったね?」

 

『ええ、そう記録されています』

 

「だが、私はそれと同時にアリスを救うための手段の開発に着手している。彼女の危険な部分を切り離し、安全化するためのものをね」

 

 グレイはアリスの破壊のみをゴールとしていない。仮に兵器として覚醒してしまっても、その部分を切り離すことも視野に入れていた。

 

「切り離しの際はMB……そなたの力も必要となる。どうか、私に力を貸してほしい」

 

『無論です。ミレニアムの生徒を支え、共に歩むことが我が使命。そのためなら、いくらでも使っていただいて構いません』

 

 アリスを破壊するのか、アリスを放置して破滅を呼ぶのか。トロッコ問題のように片方だけを選ぶのでは、必ず救われない者が出てしまう。グレイは全てを救うため、その命を賭けてでも奔走するのだ。

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