チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

56 / 64
ゲーム開発部とリオが接触する回です


告げられた真実

「命に別状はないでしょう。しかし、いつ目覚めるのかは私にも分かりませんが……」 

 

 あの事件の後、モモイはグレイによって先進医療部へと担ぎ込まれた。部長のマリによると、とりあえず命に別状はないらしい。

 

 流石はキヴォトス人の耐久力と言いたいところだが、それにも個人差はある。モモイ自身はそこまで頑丈ではない上、最大級の威力を持つレールガンの余波を受けたのだ。

 

 肉体の方には間違いなく大きなダメージが入っており、精神的なショックもあったことから眠りについている状態だ。いつ、彼女の意識が戻るかは分からない。

 

「分かった。モモイのことは頼めるかね?」

 

「教授の頼みでしたら預かります。ですが、教授は今回も無茶をしたようですね……」

 

「私が動くしかなかったのでな……」

 

「最近は抑えていたとはいえ、気を付けてくださいね。命さえあれば、我々は全力で繋ぎ止めますから……」

 

「あぁ、その時は頼む」

 

 そう言って、グレイは病室から出ていく。その背中からはかなりの覚悟が感じられた。

 

 

 

 

 

「よお、爺さん。ちょっと面貸してくれよ」

 

 先進医療部から出てきたグレイを待ち受けていたのは、C&Cのネルだった。彼女は有無を言わさずグレイの上に飛び乗り、肩車の形になった。

 

「ネルよ、もしかしてアリスについてかね?」

 

「そうだよ、爺さん。チビのあの姿は何なんだ?元から、普通じゃねえのは分かっていたけどよ……」

 

 あの事件の時、ネル達C&Cは別の場所に現れた戦闘ロボットと交戦しており、その後にヴェリタスの部室へと駆けつけてきていた。

 

 そこでネルが見たものは、グレイと交戦する異様な状態のアリスだ。リオからもアリスの詳細は知らされておらず、当事者であるグレイに聞こうと思ったのだ。

 

「一言で言うのならば、古代文明の破壊兵器さ。アリスはあのロボットに触れたことで、本来の人格が蘇ってしまったのだ」

 

「破壊兵器って……あたしからすれば、あのチビは人間と変わらねえ。あんなに楽しそうにゲームをやってる奴が破壊兵器なんて、信じられねえな……」

 

 実は、アリスとネルは仲が良かった。最初は戦う相手としての出会いだったが、ゲーム開発部に興味を持って接触しているうちに一緒にゲームをするようになったのだ。

 

「なあ、爺さん。あたしはあのチビを救いたい。あたしにできることはあるか?」

 

「強いて言うなら、アリスを守ることだ。あのロボットと接触しなければアリスが本来の姿になることはない。その保証はないがね、現状でやれることはそれだけさ」

 

 一度、ロボットと接触して覚醒している以上、再び接触しなくとも勝手に覚醒する可能性はあるのだろう。

 

「実を言うと、アリスを要塞に移送して保護し、本来の人格を分離させる計画がある。ネルよ、そなたらC&Cにアリスの護衛を依頼したい」

 

「へへ、言われなくてもやってやるよ」

 

 ネルはやる気満々だ。アリスからチビメイド先輩などと呼ばれて煽られ、格ゲーではハメ技を連発されることもあるが、それでもアリスのことを気に入っているのだ。

 

「教授、お迎えに上がりました」

 

 すると、前方から誰かが現れる。金髪のクールビューティーのメイドで、正統派なロングスカートの裾を両手でつまみ上げて一礼している彼女は、飛鳥馬トキだった。

 

「トキか。リオの方は?」

 

「ゲーム開発部に向かいました。単独では何かトラブルになりそうなので、同行していただけると……」

 

「そうだな。リオは誤解を招きやすいからね」

 

「それはあたしも同感だな。ところで、そいつは誰だ?何度か爺さんといるところを見てるが、メイド服ということは……」

 

「はじめまして、先輩。コールサイン04、飛鳥馬トキと申します」

 

「なるほどな、アカネの言っていた秘密のメンバーというのはてめえのことだったのか」

 

「ええ、そうです。今後は、C&Cとして正式に活動することになりました」

 

 トキは本日をもってC&Cのメンバーとして正式に名を連ねることになる。今回の任務で顔を合わせることになる以上、隠す意味合いがなくなってきたからだ。

 

「へえ、おもしれえじゃねえか。後であたしと戦ってくれよ」

 

「それは楽しみですね」

 

 そして、グレイは二人のメイドを連れてゲーム開発部の部室へと向かった。

 

 

 

 

 

 時間は少し遡る。シャーレの先生、三澤ケイジはゲーム開発部の部室の前に来ていた。そこで待っていたのは、ミドリとユズだった。

 

「アリスはどうしたの?」

 

「その……アリスちゃんは……まだ……」

 

「部室から出てきません……何度も声をかけてみたけど……どうにも……」

 

「こ、こんなとき……どうすればいいのか、分からなくて……ううっ……」

 

 あの後、部室に運ばれたアリスは目を覚ましていた。ゲームが大好きな少女としての人格を取り戻していたのだが、自分のしたことを知ってショックを受けていた。

 

「私が話をしてみるよ」

 

 先生はアリスと話すことにした。ドアをノックし、中にいるアリスに声を掛ける。

 

「アリス、私だ。入ってもいいかな?」

 

 返事はない。だが、拒絶までは感じられなかったので「入るよ」と言ってからドアを開けた。

 

 部室の中は暗かった。照明は点いておらず、ホーム画面のままのディスプレイが青く光っているだけだ。アリスは体育座りで頭を垂れた状態でその奥にいた。

 

「アリス……大丈夫?」

 

「せ、先生……?」

 

「みんな心配しているよ。行こう?」

 

 しかし、一筋縄で行くものではない。

 

「……アリスには、できません」

 

「どうしてかな?みんな、アリスのことを待っているよ」

 

「アリスは……アリスのせいで……アリスの……せいで……モモイが怪我をしました……」

 

「アリス……」

 

「全て、アリスのやったことです。どうしてこうなったのか……アリスにも分かりません。あの時のことは思い出せませんが、一つだけ確かなのは……アリスが……アリスが、モモイを……!!」

 

 無意識のうちに自分が大切な友達に大怪我を負わせていた。その事実は、彼女のメンタルに深い傷を残したのだ。

 

「先生、アリスはどうしたら……」

 

「アリス……」

 

 アリスは涙を流す。目から止めどなく涙が溢れ出し、床を濡らした。その時だった、部室に第三者が入ってきたのは。

 

「貴女は彼女に怪我をさせた。それは、逃れられない真実……」

 

「だ、誰?」

 

「やはり、危惧した通りになってしまったようね。あなたはシャーレの先生かしら?教授から話は聞いているわ。私は調月リオ、セミナーの会長よ」

 

 そこに現れたのは、リオだった。後ろからミドリとユズが慌てた様子で追いかけてくる。彼女がゲーム開発部の部室に現れた理由は……

 

「あなた達に、真実を教えにきたわ」

 

 やがて、リオは告げた。アリスの正体を。

 

「未知より侵略してくる〈不可解な軍隊(Divi:Sion)〉の指揮官であり、〈名もなき神〉を信仰する無名の司祭が崇拝した〈オーパーツ〉であり、古の民が残した遺産。その名も……」

 

 彼女の口から紡がれた言葉は、先生達からしたら意味不明なものばかり。彼らの脳内にはクエスチョンマークの嵐が吹き荒れた。

 

「名もなき神々の王女AL-1S。それが貴女、天童アリスの正体よ」

 

「アリスは……アリスには……理解できません……」

 

「そうですよ!何を言っているんですか!?一方的に脳内の独自設定を話さないでください!勝手にアリスに変な設定を付与しないで」

 

 一般生徒であるミドリからしたら、リオの話は気の狂った奴の考えた妄想にしか聞こえない。用語を並べて結論を真っ先に述べてしまったのも悪手だろう。

 

 そもそも、よく分からない用語で大切な仲間であるアリスのことを好き勝手言われている状態であり、印象は最悪だ。

 

 先生とユズも困惑している状態だ。この場にはリオの話を信じられるような者はおらず、彼女が悪者のようなものだ。だが、そこに助け舟が来た。

 

「ミドリよ、リオの話は事実だ。彼女なりに説明したらしいが、混乱させてしまったようだね」

 

「「「教授?」」」

 

 丁度、そこにグレイが到着したのだ。彼はリオとミドリの双方を立てる形でその場を執り成した。

 

「皆、どうかリオのことを信じてやってほしい。無論、彼女に対する評価があまり良くないことは理解している。だが、私は知っている……」

 

 グレイはリオについて語った。今まで、彼は触れてきた。他人には殆ど見せたことのない彼女の内面に。良いところも、悪いところも全て見てきた。だからこそ、彼女のことを助けるのだ。

 

「彼女はたった一人でキヴォトスのため密かに動いてきた。理解してくれとは言わない。だが、私は皆に知ってほしかったのだ……」

 

「教授……その、ありがとう……」

 

 グレイの言葉に、リオは恥ずかしそうにしながらもお礼を言って頭を下げる。その姿を見た面々の反応は……

 

「リオ会長が謝ってる!?」

 

「い、イメージと全然違う……」

 

「二人はどんなイメージしてたの……でも、リオには信頼できる人がいるんだね。自分の気持ちに素直になれるくらいの……」

 

 ゲーム開発部の二人が驚く一方、先生はリオがグレイに対して素直になっているのを見て、微笑ましく感じていた。

 

 そして、先生はアリスにも話を振った。

 

「ねえ、アリス。アリスはリオのことをどう思う?」

 

「あ、アリスにはリオ会長が怖そうに見えてました。でも、アリスは長老のおかげで知りました。本当はみんなを助けたい勇者だと……」

 

 アリスは最初、リオのことを意味の分からないことを言ってくる怖い人だと思っていた。だが、グレイが彼女について話すのを聞いて、悪い人ではないと理解したのだ。

 

「会長、アリスは、アリスのことを知りたいです。それに、会長とたくさん話をしてみたいです」

 

「アリス……私は貴女に謝らなくてはいけないわ。私は、貴女のことを問答無用で破壊するつもりだったの……教授が止めてくれたから、そんなことはしなかったけれど……」

 

「アリス、会長を赦します……勇者は人を恨んだりしないので……アリスは光の剣にだって誓います!」

 

「アリス……そなたは良い子だ。だからこそ、私はアリスを破壊兵器にはしたくない。そこで、そなたらの力を貸してほしい」

 

 最後に、グレイはアリスを救うための協力を要請し、頭を深く下げる。それを見て、断れる者などこの場にはいなかった。




メトロイドプライム4が楽しみで夜しか眠れない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。