「ゴミは掃除しねぇとなぁ!!」
裂帛の気迫と共に吐き出された、二挺のサブマシンガンによる銃撃がDivi:Sionの軍勢に牙を剥き、装甲を食い破って撃破していく。
「ツインドラゴンの名は伊達じゃねぇ!!」
飛来する幾多のビームを避けて敵の真っ只中にネルは飛び込み、超近距離戦闘を繰り広げる。銃撃だけではなく、時には蹴りを入れて連中をひしゃげさせる場面もあった。
「すごいね、部長!よし、アスナもいっくよー!!」
アスナはスライディングで敵の股を潜り抜けつつ、近距離からの銃撃で撃破する。並外れた勘の良さを最大限に発揮してビームを回避し、トリッキーな動きで翻弄していた。
時折、カリンの狙撃が飛来して球状の機体が風船のように弾け飛び、アカネの放り投げた爆弾が炸裂して複数体を吹っ飛ばしていく。
「皆様方、補給ドローンが到着いたします。リロードの時間は私と陸戦ドローンが稼ぎますので、お任せください」
戦闘には当然ながらMBやエリドゥに配備された陸戦ドローンも参加している。流石に四人だけでは押し切られる可能性があるため、撃破された側からドローンの集団が戦線に投入され続けている状態だ。
MBもC&Cの面々に劣らぬ活躍を見せている。30mm機関砲を手持ちして大火力を投射し、その剛腕で殴りつけて一撃で叩き潰していた。
やがて、弾薬類を乗せた大型のドローンが到着する。リロードのために下がる暇など与えてもらえなさそうなものだが、ここで彼らの出番だ。
「ミサイル、発射します」
MBの両肩が開き、多連装小型ミサイルが斉射される。それは敵集団に着弾し、多くを屠ることで時間稼ぎに貢献した。陸戦ドローンも撃破されながらも前進を続け、戦線を押し上げている。
「恩に着るぜ!」
「これが私の任務ですので。防御フィールド、展開します」
MBが片手を突き出せば、掌から防御フィールドが展開される。飛来したビームは全て吸い寄せられて彼女の後方に向かうことはない。
「では、お返しします」
フィールドに受け止められたビームは、撃ち返すことが可能だ。防御フィールドから逆に発射されたビームが敵を貫く。彼女が暴れている間にC&Cは補給を済ませ、戦線に戻ってきた。
さらに、戦いに参戦する者がいた。
「先輩方、私も加勢します」
連中の頭上から銃撃が降り注ぎ、濃紺のパワードスーツを纏ったトキが着地する。アームギアで殴り、リパルサーレイを発射してネルにも匹敵する戦闘力を発揮していた。
「トキ、イカしたパワードスーツじゃねぇか!」
「お褒めいただき光栄です。先輩方には特別に、このスーツの真価をお見せします」
すると、上空に一瞬だけ光点が灯る。そこから落下してきたのはコンテナらしき大きな物体であり、トキの真後ろに着陸した。
「バスターモジュール、装着」
トキはコンテナに飛び乗ると、所定の位置に両足を合わせる。すると、コンテナは独りでに変形を開始して人型に近い形状となったため、彼女はそれに乗り込むと両手両足を挿し込んで完全に一体化した。
こうして、完成したのは両腕にそれぞれ二基のビームガトリング砲、両肩に連装ビーム砲、両足にミサイルランチャーを装備した濃紺の巨人だった。
「かっけぇーー!!」
ネルは目をキラキラさせる。これこそ、アビエシュフシステムの真価ともいえる武装モジュールだ。現在はバスターモジュールという火力投射に特化したものである。
「攻撃、開始します」
多連装ミサイルランチャーと4門のガトリング砲が火を吹き、ビームの嵐と爆風がDivi:Sionの軍勢を薙ぎ払っていく。両肩のビーム砲から高出力のエネルギーが投射され、連中をバターのようにドロドロにしてしまった。さながら、移動式の要塞である。
「てめえら、後輩に負けていられねぇなぁ!?あたし達も行くぜ!」
トキという強力な味方が加わり、Divi:Sionの軍勢との戦いは優位に進む。一方その頃、エリドゥ中央のタワーでは別の戦いが起こっていた。
「頑張って、アリスちゃん」
「アリス……」
現在、中央タワーの一室では処置が行われている真っ最中だ。アリスの意識は眠りについており、周囲ではロボットアームが動いて光を浴びせかけ、彼女のスキャンをしている。その様子を二人の友人が心配そうに眺めていた。
『スキャン完了……該当プログラムを発見しました』
ここまで長い時間がかかったものの、アリスを暴走させたと思われるプログラムを発見するに至る。
『分析の結果、プログラム名はKeyであることが判明しました』
「Key……アリスを覚醒させる鍵といったところか。MB、すぐに捕獲を頼む」
『了解。これより捕獲を試みます』
ここからが正念場だ。MBが精神感応能力を用いてアリスの内部に侵入し、そのプログラムを強力な障壁で囲むことで捕獲しようとする。
『該当プログラム:Keyからの抵抗はありません。捕獲進行率、50%……60%……』
「よし、これならアリスちゃんも……」
「だといいのだけれど……」
「その通りですね、リオ。あまりにもスムーズに進み過ぎて、少し違和感があるような……そんな気がします」
「そういうの、フラグっていうんじゃ……」
「うむ……」
リオ、ヒマリ、先生、グレイの四人に緊張が走る。MBは分離装置と共に最大限のパフォーマンスを発揮して事に当たり、確実に進行させている。だが、あまりにも処置が順調過ぎて怖いのだ。
『80%……90%……99%……………100%……該当プログラム:Keyの捕獲、成功しました』
「どうやら、装置は上手く作動したようね……」
捕獲が完了し、一同は胸を撫で下ろす。後はこれを完全にアリスから分離させ、完全に捕えるだけである。
『これより、該当プログラムを完全に切り離し、器に移し替えます。作業開始……』
ディスプレイを確認してみれば、C&CとMB、エリドゥ内の陸戦ドローンによりDivi:Sionの軍勢は順調に駆逐されつつあることが分かる。このまま、アリスのことも救えるのではないかと思われた。
しかし……
『こ、これは…………警告、該当プログラム:Keyの活性化を確認。障壁、このままでは破られます……!』
「何だとっ!?いかん!!」
それは唐突だった。完全な分離を開始したタイミングでKeyが暴れだし、自身を囲んでいる障壁の突破を試みたのだ。
『障壁を強化…………失敗しました。障壁を再生成………駄目です、侵食速度が上回って……!?残り10秒……いや、5秒で破られます、注意してください!』
「どうやら、私達を油断させるつもりだったようね……完全にやられたわ……」
「一枚上手でしたか……」
バキバキィッ!!!
次の瞬間、アリスを拘束していた器具が一瞬で破壊される。彼女は目を瞑ったまま上半身をベッドから起こすと、開眼して赤く輝く瞳で周囲を睥睨した。
「アリスちゃん……?」
「あ、あぁ……」
同時に、室内のディスプレイ全体が赤みがかったピンク色に埋め尽くされ、全面を使って大きくDivi:Sionという白い文字が映し出された。
「エリドゥのシステム全体が……ハッキング……いや、単なるハッキングではない……都市全体が何かに変質していっている?」
「不味い……アリスを機械から切断しなくては……!」
「その行為は推奨されません。現在、“王女”の表層人格は内部データベースの深層部に隔離されています。強制的に接続を解除すれば、取り返しのつかない損傷が起こるでしょう」
パワードスーツを装着し、何としてもアリスを機械から切断しようとしたグレイを踏み留まらせたのは、目が赤くなったアリス……いや、Keyだった。
「もう、アリスちゃんじゃない……?」
「アリス……それは、あなた達が私の“王女”を呼ぶ際の名称……“王女”に名前は不要です。名前は存在の目的と本質を乱します」
「そなたが……Keyなのか?」
「その通りです。私の個体名は〈Key〉……王女を助ける無名の司祭達が残した修行者であり、彼女が戴冠する玉座を継ぐ“鍵”〈Key〉です。彼女は“王女”であり、私は“鍵”。それが私達の存在であり目的……」
「これよりエラーを修正し、本来あるべき玉座に“王女”を導かせていただきます」
アリスの、AL-1Sの、名も無き神々の王女としての覚醒が、ここに始まってしまった。
うちのアビ・エシュフは武装モジュールを切り替えるタイプです。今回のモジュールは原作のアビ・エシュフに近い感じになります