チョウゾ・アーカイブ   作:ウエストモール

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ブルアカで2部の発表がありましたが、この作品はデカグラマトン編が終わるまでを書く予定です


勇者の帰還

〈プラズマビーム、オンライン〉

 

 グレイのビームマシンガンが絶えず火を吹き、緑色に妖しく輝く死の光がDivi:Sionの軍勢に降りかかる。

 

 鳥人族の開発した最強の破壊兵器、プラズマビームの前では大抵の装甲は無意味となる。一切の抵抗すら許さずに防御を貫き、即座に分子レベルに分解してしまうのだ。

 

 Divi:Sionの軍勢は悲惨な運命を迎えた。最強の矛ともいえる攻撃を受け、一瞬で連中は蒸発させられ、跡形もなく消滅する。苦し紛れにビームを放ってくるも、彼は最強の盾を持っていた。

 

〈ライトニングアーマー、オンライン〉

 

 グレイの全身に纏われた電撃のフォースフィールドが全ての攻撃を無効化し、彼は仁王立ちのまま平然と大火力の投射を続ける。

 

「お返ししよう」

 

 さらに、グレイは多くのダメージが蓄積したライトニングアーマーを活性化させ、その全てを増幅・変換した衝撃波を撒き散らし、360度全体を囲む敵集団を一瞬で粉砕してしまった。

 

「先生達よ、幸運を祈るぞ……」

 

 グレイはアリスの精神世界にダイブしている先生やゲーム開発部の身の安全を祈りつつ、自らも敵の真っ只中という危険地帯に身を投げ出す。これが、今の自分のできることなのだから。

 

「あれは……初めて見る顔だ」

 

 そんな中、空間が歪んで新たな一体のDivi:Sionが姿を現す。これまでの個体は球状のボディに触手のあるメカだったのだが、今回は一味違った。

 

「サソリ……といったところかね」

 

 それは、昆虫を思わせる六本の足があり、サソリのような尻尾を持つ、紫色のモノアイのメカだ。サイズは巨大で、脚部だけでも生徒達の平均的な背丈よりも上だった。

 

「だが、どんな敵であろうとも……!」

 

 グレイはサソリ型に向けてプラズマビームを撃ち放つ。しかし、奴の装甲はこれまでの個体とは一線を画す防御力を持っていた。貫くことはできず、ビームが消散してしまう。

 

「対光学シールドに匹敵する防御力……プラズマビームに対抗するためか……ならば、することは一つ……」

 

 グレイはビームマシンガンを格納し、入れ替わりにシールドと槍を装備する。

 

「……白兵戦だ」

 

 グレイは駆け出す。サソリ型の頭部から連続発射されるビームをシールドで受けながらも前進し、奴の頭部にシールドを叩きつけた。

 

 車同士が衝突するような音が響き渡り、頭部のモノアイに大きな亀裂が入る。どうやら、物理攻撃には弱いらしい。

 

「はぁっ!!」

 

 間髪入れずに繰り出されたのは、踵落としだ。長く強靭な脚部を天高く振り上げて放つ強烈な一撃である。それは頭部に直撃し、奴の胴体を地面に勢いよく接触させるに至った。

 

 奴の頭部を踏みつけて拘束したまま、グレイは脚部と胴体を繋ぐ関節部を狙って槍を突き降ろそうとする。しかし、サソリのような尻尾が持ち上がって輝いたかと思えば、そこから強力なビームが彼に向けて発射された。

 

「なっ!?」

 

 咄嗟に攻撃を中断して上半身を大きく傾けると、そのすぐ横をビームが通り過ぎていく。頭部からのビームよりも高い威力を持つそれは、グレイに危機感を覚えさせた。

 

「その動き、理解したぞ」

 

 再び尻尾の先端が輝き、少し遅れて強力なビームが発射される。グレイはそれをシールドで受け流しつつ、槍を突き出して切先を尻尾先端の砲口に捩じ込んだ。

 

バキバキィッ!!!

 

 砲口に突き刺さった槍は空間を無理矢理押し広げ、内部構造と外装を一緒くたに滅茶苦茶な状態に仕立て上げる。これにより、危険な武装は無力化された。

 

「終わりにしようか」

 

 グレイは奴からバックステップで距離を取ると、シールドを構えたまま低い位置でタックルを繰り出す。奴はひっくり返ってジタバタするのだが、脚部の一つに槍を突き下ろして破壊し、それをぶっこ抜いてしまう。

 

「ぬうんっ!!」

 

 さらに、破損した尻尾を両手で掴んで何度か地面に叩きつけると、ジャイアントスイングを仕掛けてDivi:Sionの軍勢に向けて投げ飛ばす。複数体をボーリングのピンのように薙ぎ倒して仰向けで停止したところに、グレイは容赦なく最大火力を浴びせた。

 

〈ビームバースト、オンライン〉

 

 度重なる物理攻撃で破損した装甲は防御力が低下し、集束したプラズマエネルギーによる侵食を受けざるを得ない。そのまま蜂の巣となり、盛大に爆散した。

 

 

 

 

 

「ここは、あの時の部屋かな?」

 

 アリスの精神世界に飛び込んだ先生達が最初に見たものは、彼女を発見した廃墟にある地下室の景色だった。

 

「これがアリスの……」

 

「心の中?」

 

 内部を見渡してみると、部屋の中央に機械的な椅子が設置してあり、例の部屋と全く同じ構造だ。そして、その椅子には彼女が座ってまま眠りについていた。

 

「ねえ、お姉ちゃん、ユズ、先生!あそこ……!」

 

 真っ先に発見したのはミドリだ。アリスを最初に発見した状況と同じく、精神世界の彼女はそこで眠っている。

 

「アリス!!」

 

 思わずモモイは駆け出し、アリスの側に行くと彼女を起こそうとして揺さぶる。しばらくして、彼女の目が開いた。

 

「だれ……?」

 

 皆、モモイに続いてアリスに駆け寄っていく。ミドリもユズも、全員が涙目だった。

 

「私たちだよ!」

 

「アリスちゃん、私たちが来たよ!」

 

「アリスちゃん!」

 

「アリス、大丈夫かい?」

 

 やがて、アリスも状況を把握したようだ。仲間達の名を口から紡ぎ、彼らがここにいる理由を震える声で問いかけた。

 

「モモイにミドリ……ユズ……先生まで?どうして、ここに?」

 

「そりゃ、アリスを現実に連れて帰るためにきまってるでしょ!」

 

「アリスちゃん、早くここから出よう!」

 

「帰ろう、アリスちゃん」

 

 先生は敢えて口を出さない。自分自身はシャーレの先生であり、部外者であるため、ただ彼女達を見守るだけだ。

 

「アリスは……アリス、は……」

 

『王女よ、あなたが見てきた光景を忘れましたか?』

 

 すると、アリスと全く同じような声が聞こえてきて、彼女の隣にもう一人の赤い瞳のアリスが現れる。その中身は〈Key〉であろう。

 

「〈Key〉なのかい?」

 

「あれが、アリスを……閉じ込めた?」

 

 モモイは呟く。アリスが再び暴走した瞬間には立ち会っておらず、遅れての参加だったので詳しいことは理解していないが、それだけは分かった。

 

「アリスが見てきたという光景って、一体何の話?」

 

『文字通りの意味です、シャーレの先生。王女様がこの空間で見聞きした光景の数々……』

 

 次の瞬間、景色が切り替わる。それは、エリドゥ内部で生徒達やMB、グレイが敵と戦闘を繰り広げている光景だ。

 

 決して一方的な戦闘ではなく、彼らは敵を打ち倒しながらも少しずつだが手傷を負い、傷ついていく。そんな戦いだった。

 

『エリドゥの監視網から見ている光景。今も彼らは追従者の大軍と戦い、少しずつですが傷を負っていく……何故、彼らが戦わなければならないのか、傷ついてしまうのか、その答えを王女はご存知のはずです』

 

「アリスは……帰れません。アリスが近くにいるだけで、みんな戦いに巻き込まれて傷つきます……」

 

 アリスは思う、自分がいるから戦いになるのだと。自分さえいなければ、友人達が戦って傷つく必要はないのだと。

 

「アリスちゃん!それは違うよ!」

 

「ミドリの言う通りだよ、アリスちゃん。私たちはそんなこと……」

 

「ミドリ、ユズ……でも、アリスはモモイを大怪我させました……長老に光の剣を向けて攻撃しました……ネル先輩たちは今、傷つきながら戦っています……」

 

 アリスは回想する。自分が暴走したことで昏倒するレベルの大怪我をモモイに負わせ、そのまま止めに入ったグレイを攻撃したことを。そして、今は自分のためにネル達が戦って傷ついている……

 

「アリスは勇者ではなく魔王です。いつかキヴォトスに終焉をもたらす魔王として生まれたから……みんなの側にいてはいけません……アリスのせいで大切な人が苦しむなら、いっそのことアリスが消えてしまえばいいのです……」

 

 アリスは目を瞑り、辛そうな声で自分自身の存在を否定し、そのまま消えてしまおうとする。誰もが返す言葉を見つけられない中、誰かが声を上げた。

 

「テイルズ・サガ・クロニクル2は……!私たちが一緒に作ったゲームは!特別賞をもらったよ!!」

 

「も、モモイ……?」

 

 それは、モモイだった。彼女はさらに話を続ける。

 

「キヴォトスの終焉?なに言ってるの?アリスがいるだけでみんなが傷つく?誰がそんな馬鹿なことを言っているの?」

 

 モモイはアリスの詳しい事情までは把握していないし、あまり考えるタイプの人間ではなく、直情型である。だからこそ、即座に彼女はアリスの自己否定にNoを突き付けることができたのだ。

 

「アリスがいたから!私たちはゲームが作れて、ミレニアムプライスで賞を貰って、部活を守ることができたんだよ!」

 

「うん、そうだよ」

 

「……うん!」

 

「そうだね、アリスがいたからこそだ」

 

 アリスの存在は悪いことばかりではないのだ。彼女によってゲーム開発部は生き残ることができたし、交友関係も広がった。モモイのおかげで改めてそれに気付くことができた。

 

「アリスが世界を滅ぼす魔王だとか、そういった生まれつきだとか、消えなきゃいけないとか!全く意味分かんないよ!そんなの納得できない!」

 

「うん、絶対に……」

 

「消えるのを……放ってなんか……おけないよ……」

 

「……な、な、何故ですか?みんな、どうして……アリスは魔王で、みんなを傷つけたのに……」

 

 ゲーム開発部の仲間達は、アリスが消えることを望んでいない。何としても彼女を助けたいのだ。何故なら……

 

「だって、アリスちゃんは……私たち、ゲーム開発部の仲間で友達だから……!」

 

 ユズは精一杯の声でそう叫ぶ。そうだ、ただ友達を助けたい……それだけの理由で人は動けるものなのだから。

 

「この前、アリスちゃんは言っていたよね。どんなゲームでも、主人公たちは決して仲間を諦めないって……」

 

「たとえアリスが魔王でも関係ないよ……!そんなのただのジョブに過ぎない!自分が誰なのか、それを決めるのは自分自身でしょ!天職すればいいじゃん!」

 

「だからアリス、君はどんなジョブになりたいかな?聞かせてもらってもいいかい?」

 

「……こんな私でも、冒険を続けてもいいんですか?世界を滅ぼせる魔王の力があっても……」

 

「勿論。力はどう使うかだからね。私だって、シャーレの権限を良いようにも悪いようにも使える。教授だって強い武器を持っているけど、良いことに使っているよね。アリスも同じさ」

 

 先生もグレイも、方向性は異なるが強い力を持っている。下手すればキヴォトスを支配することだって難しいことではないだろう。しかし、彼らは生徒達のためにそれを使っていた。

 

「……それなら、アリスも勇者になって……!みんなと……モモイ、ミドリ、ユズ、そして先生や教授と……冒険を続けたいです!魔王であるアリスが、そうしても、許されるのなら!」

 

「アリス、よく言えたね。偉いよ」

 

 それがアリスの本音だ。彼女はただ、仲間達と冒険を続けたかっただけなのである。

 

「アリス、君はなりたい存在になっていいんだ。それは君自身が決めていいんだよ」

 

「先生……アリスは勇者になります!」

 

 その瞬間、室内の床に大きな物体が突き刺さる。それはアリスの使用するレールガン、スーパーノヴァと全く同じものだ。

 

「勇者の剣……アリス!」

 

「勇者の剣を!」

 

「抜くんだよ、アリスちゃん……!」

 

「はい!アリスは勇者の剣を装備した!」

 

 勇者アリスは剣と呼ぶには大きすぎる武器を手に取る。そして、Keyに向けて構えた。

 

『それは……王女よ……あなたのその能力は……世界を滅ぼすために存在するというのに……!』

 

「違います!これは勇者の剣で、今のアリスは光属性の勇者……!」

 

 そして、勇者アリスは魔法を放つ。

 

「光よーーーーー!!!!」

 

 勇者の魔法を受け、Keyは光の中へと消えていく。部屋全体が閃光に包まれ、辺りは完全に真っ白となった。

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