「モーモーイー!!!」
それは、エリドゥでの戦いからどれくらいたった頃だろうか。ゲーム開発部の部室にて怒声が響いていた。なお、ユウカの声ではない。
「何度言ったら分かるのですか!?こんなに散らかして……これから教授が来るのですよ!?」
モモイに対して怒っているのはケイだった。彼女はゲーム開発部の一員ではないものの、アリスの侍女としての使命から定期的に訪問しており、まるでオカンのような立ち位置になっていた。
「直前にやれば大丈夫だよ、すぐに片付くって……」
モモイの周囲にはスナック菓子の袋やゲーム機、ゲームカセットがいくつも乱雑に転がっており、領域展開されている状態だ。
「そうやっていつも慌てるのがオチですよ!アリスやミドリ、ユズを見習ってください!」
見れば、散らかしているのはモモイだけであり、他の三人がいるところは綺麗になっている。これから来客があるので、早めに片付けているのだ。
「お姉ちゃん、流石に片付けない?」
「そうです!モモイ、これからお掃除クエストを受注しましょう!」
「今日は大事な日だから、片付けてくれると助かります」
グレイがゲーム開発部を訪ねるのは、招待されているからだ。何を隠そう、ゲーム開発部は新作のゲームを開発しており、公開する前にグレイに見せることにしたのだ。
「わ、分かったよ……」
四人に色々と言われ、モモイは渋々動き出す。完全に片付けが完了したのは、グレイが到着する1分前のことだった。
「やあ、お邪魔するよ」
「トキちゃんも一緒ですよ」
「ついでにコユキちゃんもいます!」
やがて、部室に姿を現したのはグレイとトキ、コユキだ。本来はグレイ単体の予定なのだが、面白いもの見たさについてきたらしい。
「教授、よくぞいらっしゃいました」
「ケイよ、どうやら苦労したようだね」
「はい……モモイにはいつも手を焼いています」
ケイはグレイに苦労を吐露する。一目見ただけで、かなり苦労していることが見て取れた。
「では、ゲーム開発部の新作を発表するよ!」
「待ってました。パチパチパチ」
「いや〜楽しみですねトキちゃん」
小さなテレビの前はギュウギュウ詰めだ。グレイを中心にして全員が集まり、グレイの膝にはコユキがちょこんと座っていた。
やがて、画面に光が灯った。これから始まるのは、ゲームのオープニングである。
〈コスモ歴20X5年、世界は狂気の機械生命体ビッグマザーによって支配された〉
〈絶体絶命の危機に陥った人類だが、彼らには切り札があった。それは、パワードスーツの宇宙戦士トリロイドだ〉
〈緊急指令……〉
〈トリロイドよ、地球に居座る機械生命体ビッグマザーを破壊し、世界に平和を取り戻せ〉
そして、オープニングの最後に画面に大きく表示されたのはアルファベット表記のタイトルロゴだった。
〈TRIROID〉
「では、これから実際のプレイをお見せします」
ミドリはコントローラーを手に取ると、基本設定を済ましてゲームをスタートする。やがて、BGMと共に現れたのはエレベーターから降りてきたドットの人物だった。
「まるで私のようだな」
その人物はパワードスーツを纏った鳥人で、臨戦態勢のグレイによく似ている。影響があるのは間違いない。
「はい!戦士トリロイドのモデルは長老になってます!長老はカッコいい最強の戦士なので、リスペクトしています!」
「このゲームはサイドビュー型の2Dアクションゲームになってます。キャラを上下左右に動かして、探索と戦闘、パワーアップを進めていきます」
ミドリの操作でキャラクターが動き、ジャンプして移動し、射撃でエネミーを倒して先へと進む。しばらくすると、アイテムを発見した。
〈ファイアショットを入手しました。昆虫や植物系統の敵に高い効果がある他、氷を融かしたり木々を焼き払うことが可能になります〉
「このゲームの見どころはアイテムを入手してパワーアップしていくところなんだ!このファイアショットなら、通れなかった所も……」
すかさずモモイが解説する。ゲームプレイの最中に氷で塞がれて通れなかった場所があったのだが、炎を撃ち込むことで新たな道が開かれた。
「よくできているではないか」
「褒めてもらえて……嬉しいです……」
部長のユズはとても嬉しそうにしている。これまで開発してきたゲームが批判を浴びて引き篭もった状態から、ここまでの冒険を経て随分と立ち直ったようだ。
「あ、あの……ちなみに遊ばせてもらえたりは?」
すると、コユキがゲームで遊んでみたいと要望を出す。見るだけでは満足できるはずがないのだ。
「コユキも是非、遊んでください!面白さはアリスが保証します!」
「では、トキちゃんもテストプレイに立候補します」
こうして、トリロイドのテストプレイが開始される。コユキとトキだけでなく、ケイやゲーム開発部の面々も交代で遊び、夕方くらいまで楽しんだのだった。
余談だが、このゲームは発表されると高い評価を受け、次回のミレニアムプライスにて見事入賞し、ゲーム開発部の新たな実績となった。
それは、グレイ達が帰る直前のことだった。突然、グレイがとある話を切り出した。
「アリス、実はそなたらに会わせたい者がいるのだが……」
「アリス達にお客さんですか?」
「そうだ。彼も会うことを楽しみにしていてね……取り敢えず、全員で外に出よう」
グレイ達の後に続き、ゲーム開発部の面々も外に出る。そこで待っていたのはグレイにも匹敵する巨体だった。
それは、ドラム缶のような寸胴に、伸縮性のあるバネのような長い腕、宇宙飛行士のヘルメットのような頭部をしている大きなロボットだ。
『お久しぶりです……アリス、モモイ、ミドリ、ユズ……破壊工作用ロボット〈オメガ〉改めレムです』
「「「「レム(さん)!!」」」」
その瞬間、四人は笑顔で迷わず駆け寄り、勢いよく飛びついていた。
「レム……レムなんですね!?」
「教授!レムさん、直せたんだ!?」
「あぁ、何とかね。危険なプログラムは排除し、レムとしてのメモリーもサルベージできた。ミレニアムの警備ロボとして登録もしてある」
一応、機体の修理は早く終わっていた。プログラムやメモリー関係に着手できたのはエリドゥ防衛戦以降であり、MBとケイの協力もあって完全に元通りになった。
「パンパカパーン!レムがパーティーメンバーに復帰しました!」
この日、アリスの勇者パーティーに屈強なゴーレムが加わった。ゲーム開発部もまた、新しい冒険を始めることになりそうだ。
完全にメトロイドな新作ゲームでした