ガンダムSEED DESTINY 優しくて、暖かい世界   作:^U^

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そろそろ本概念で自分が一番やりたかったベルリンが近づいてきたので初投稿です

任務失敗に関するあれこれは完全にこうなるのかなみたいな自分の印象で書いてるのでツッコミどころはあるかもしれませんがどうかご容赦を


感想、お気に入りありがとうございます!



12話

 

 

「あん?」

「む」

 

吹き荒れる吹雪の中佇む地球軍の地上母艦、『ボナパルト』

その艦の通路を歩いている2人の兵士の前を担架に乗せられた少女を連れた集団が通った

 

「……ふふ……シン……あいにいく…シン……シン、シン……ふふ」

 

「……なぁんだ?ありゃあ」

強化人間(エクステンデッド)というやつだろう……多分、もう長くはない」

「はぁーん……」

 

通り過ぎた集団を眺めながら銀髪の男の言葉に対し黒い肌の男はどうでも良さそうに、声を漏らした。

 

「しっかしまあ気色悪ィね。

遺伝子弄ったバケモン共を殺してやろうってのにテメェでバケモンみたいなの作ってるってんだからよ。ま、コーディネイターどもよかマシだが」

 

「あぁ、気味悪いといやぁアレ何だったんだ?ぶつぶつぶつぶつ、ずぅっと喋ってやがったぜ」

「……聞こえたのは、シン、とだけ」

「あぁ?何だそりゃ」

 

そんな会話をしながら彼らは再び歩き出した。

ファントムペインの一員として仕事をする為に。

 

 

───

 

「アスラン・ザラによるFAITH権限を行使した緊急命令により強化人間の護送、その最中待ち伏せに遭いインパルスは行動不能、そして強化人間(エクステンデッド)は奪取……これが今回の事の顛末、という訳?」

「はい」

 

深夜、突如インパルスが発進し出す事態が発生した。

誰の指示だ、なぜ発進を止めないとあちこちで騒ぎが起き、ブリッジに現れたのはアスランだった。

 

強化人間の生命維持が困難でありジブラルタルにアレを届けるには時間が足りないかもしれないという報告を聞き、ならばとアレが懐いているシンに護送を命令したというのがアスランからの事後報告でだった。

 

「……命令が下された以上、部下である貴方は従うしかない。

でも……出来すぎた話だと思わない?

アレの状態を知るのは衛生兵と報告を受けるこの私しかいないと言うのに、何故アスランはそれを知り、何故貴方に命令を出したのか」

「……」

「聞いていたのね?」

「はい」

 

毅然とした態度でシンが答えた。

迷いなく私を見据えるその目はその問いに肯定を示している。

アレはシンに好意を抱いていた。だからこそシンにアレの状態、そしてアレが迎える末路を伝えるわけにはいかなかったというのに。

 

「………頭が痛いわ」

 

思わず溜め息がでる。

よりによってそのシンに聞かれていた。

そしてアレを逃した。

ジブラルタルへいち早くアレを届ける、と言う最もらしい理由とFAITH命令という建前まで貰って。

 

「何故こんな馬鹿げた事をしでかしたの?

アスランにレイを巻き込んでまでアレを逃すだなんて……」

「……『アレ』じゃありません」

「何ですって?」

「人です。あの子は。物みたいに言うのはやめて下さい」

 

………解っていた事ではある。この子があの少女に対して入れ込んでいた事は。

この私も、後ろに控えているアーサーも、そしてミネルバにいるほとんどのクルーがアレをただ敵だ、人の形をした兵器だと。そう認識していた。

ただ、シンだけはアレを1人の人として接していた。

だからこそあの少女は彼を気に入っていたという事も解っている。

 

だからと言って彼の行いが軍人として正しいものであると言う事にはならない

 

「………とにかく、いくらFAITHであるアスランからの命令とは言え、同じFAITH権限を持つ私へ話を通す事なく事を運んだ事と、最高評議会が欲していたサンプルを損失した事の重大さを考慮し上へ報告します。明確な処分が決定されるまで貴方は自室にて待機。この措置はアスランとレイも同様に下されています。いいわね?」

「はい。……失礼します」

 

最後まで毅然とした態度を崩すことなく返事を返したシンは敬礼を取り艦長室から退出しようとする。

ようやく終わったかと言わんばかりに一息つくアーサーをひと睨みし、

 

最後に一つ、シンに質問をする。

 

「最後に聞かせて頂戴。……もしも、再びあの子と戦場で会った時……貴方、討てる?」

 

その問いにシンは、びくりと肩を震わせ立ち止まった。

まだ終わらないんですかと小声を漏らすアーサーを黙らせシンの答えを待った。

 

「それは……」

「答えなさい」

 

シンは言葉を詰まらせる。だがこれはFAITHを巻き込んでまで起こした捕虜の返還劇。

『敵に奪還された』などという建前まで用意したのだからそうなる事は想定できる筈。むしろ答えて貰わなければ困る。

 

「……………………………止めます。俺が……俺が絶対に止めて見せます」

「………その言葉が、嘘では無い事を祈ります」

 

しばらく黙り込み肩を震わせた、そして覚悟を決めたのか、その場しのぎの口八丁か、シンはそう答えた。

質問に対する答えとしては正直足りない。

だが、そんな事あり得ないなどと答えられるよりはよほどマシではある。

 

話は終わり、そう言い終わると同時に飛び出すようにシンは部屋を出て行き、それに続いてアーサーも部屋を出たことで室内に自分以外誰も居なくなった。

「ハァー……嫌になるわ、色々」

 

頭が痛い、本当にうんざりするほど頭が痛い。

まさか、こんな事態になるとは思いもしなかった。

だが、アスランが関わった事で曲がりなりにも緊急を考慮した命令という形式を取った上、今までシンが上げた功績がある以上そう重い処罰は下らない筈ではある事を考えると多少はマシだと思う事にした

 

「それに、そうね…アレが居なくなった事自体にも一安心……と言ったところかしらね」

 

この艦の空気を変えていたあの少女が居なくなった事にだけは正直、感謝している。

現実を逃避するようにそんな事を考えながら報告書の作成を始めることにした

 

 

───

 

 

 

「帰ったか、シン」

「あ、うん。……ただいま」

 

部屋に戻ると、自分のベッドに腰掛けたレイが居た。

俺たちは相部屋で、自室で待機という同じ措置を

取られた以上当たり前ではあるけど

 

「返せたか?」

「うん。……約束もしてくれた」

「………そうか」

 

あの後、艦長にも言われた事だが勝手に行動を起こした事で

アスランはFAITHで艦のMS隊を率いている者の取る行動ではないとして特に厳重な注意を受けたとの事だ。

 

「後でアスランに謝っておけよ」

「わかってるさ。……世話んなったし」

 

無理矢理にでもステラを連れて連合に返しに行く所を任務という形で連れ出すようにしてくれた。

本来なら間違いなく営倉入りさせられるような事を謹慎程度に抑えられたのはアスランのおかげだ。

どんな処分が下るにしても、ちゃんとあってお礼が言いたい。

 

「これでステラは死なずに済む。暖かな世界へ帰れる。だからこれで万事OK……の筈なんだ」

「不安か?」

「うん……」

 

レイに話した。さっき艦長に言われた事と先の戦闘で俺が殺したアウルの言った事を

 

戦わないと生きられない彼ら

再び戦場で会った時に彼女を殺せるのか

そんな事有る筈ない、でももしかしたら……

そんな不安が楽観視する俺を刺すように頭の中にこびり着く。

 

あの時俺は結局アウルを殺した。無我夢中で、死んでたまるかと彼を刺殺した。

 

艦長には俺が止めると言った。同じ事をしないと言い切れるか?守ると言った自分自身の手で彼女を殺してしまうんじゃないか?

本当にこれで良いのか?もっと良いやり方があったんじゃないか?今になってそんな考えばかりが頭に浮かぶ。

 

「なら、お前はあのまま見殺しにする方が良かったと思っているのか?」

「そんな訳ない!あのまま実験動物みたいにされるなんてそれこそ……!」

「なら、せめて祈ってやれ。……どうなるにせよ過ぎた事は変えられない……。ただ明日を、待つしかないんだ」

 

レイは、そう言った。

確かにどうなるかわからない以上、今俺にできることはそれくらいだ。

 

どうせしばらく部屋にいなきゃいけないんだから、

それくらいなら…良いよな。

 

「…………うん、そうだな……さんきゅ、レイ」

「気にするな」

 

それから話は終わり、俺は自分のベッドに腰掛け、目を閉じた。

 

祈ろう、彼女の幸せを。

彼女が暖かな世界へ帰れることを。

優しい世界で、また出会える日が来る事を。

 

 

その後、アーサー副長からアスランを含めた全員がお咎め無しの通達を聞くまで数時間が経つ頃だった

 

 

───

 

 

「やはり、ステラはもう保たんか?」

「ええ、長時間のメンテ不足が祟りましたね」

「そうでなくともこの間の独断の行動は不味かったですからね。お上はカンカンでしたよ」

「これもあの『バグ』のせいなんでしょうかね?大佐」

「……」

 

地球軍が……いや、ブルーコスモスが作り出した強化兵士

 

不要な記憶を消し、必要な情報だけを残し、必要な薬を投与し万全の状態の道具として調整する。

ただ、この子にはその『不要な記憶』が『必要』となってその処理ができなくなっている。

研究員達はこれをバグと呼称し、衰弱したステラを収納したゆりかごによる調整作業を行なっていた。

 

「そのバグも今や酷いもんですよ。ご覧ください」

「これは?」

「いまの『ステラ・ルーシェ』のメンタルデータです」

 

研究員の1人がデータをモニターに映した

以前まで最低限の記憶操作により精神面の安定性を調節出来ていたものが、今やそれすら受け付けなくなっているというデータらしい。

あの坊主と出会ったせいで起きたものだろう。

 

「ここまでくるとこれはもう使い様が有りませんよ。いっそ廃棄した方がよろしいかと」

 

廃棄

このまま、あの子を殺すと言う事。

坊主と交わした約束を、破ると言う事だ

 

優しく、暖かい世界など存在せず

最初から守る事など不可能な約束なのだ

 

「…………なら、廃棄ついでにあの『新型』のテストをやらせてみよう。丁度その指令が下った所だ。

資源は最後まで大事に使わんとな」

 

だがせめて、最後の瞬間まであの子を生きていられるようにしてやろう。

悪く思うなよ坊主、あの子が生きるにはこうするしか無いんだ。

 

「『X1』のですか?確かにデータ上の適正ではアレが使うのが最適ではありますが……」

「最適な適正を持った強化人間(エクステンデッド)がアレを扱うデータがあればそれに合わせた強化人間(エクステンデッド)の強化調整もし安くなるだろう」

「はあ…」

 

 

だからせめて、お前さんが出てこない事だけは祈らせてくれ。シン・アスカ

 

 

 

 

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