ガンダムSEED DESTINY 優しくて、暖かい世界 作:^U^
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「インパルス、敵巨大兵器……共に動きを止めたまま……シンからの応答、ありません……」
「な、何が起こってるんです……!?シンに一体何が……!?」
騒然としているブリッジ、何が何だかわからずただ困惑する
沈黙したインパルスへメイリンが必死に通信を試みる。しかしシンの応答はなく依然、膠着したまま。
すでに連合の部隊の大多数は先客の
にも関わらず、あれは未だ動く気配を全く見せないのだ。
普通に見ればシンがやってくれたのだろうと、誰もが考える。こうなる直前のアーサーが、まさにそうだったから。
だがあまりにも動きがなさすぎるが故に、嫌な予感がする。とてつもなく、嫌な予感が。
───こうなったのは、幾多の都市に駐留するザフトを壊滅させ、ついにベルリン市街に侵攻してきた巨大兵器を破壊し地球軍の蛮行を阻止せよ、という司令部からの命によりジブラルタルへの進路を急遽変え残った戦力たるインパルスを引き連れ現場へと急行した。
これがミネルバの、この侵略行為を止めるためベルリンにまで来る事になった経緯だ。
件の巨大兵器はその圧倒的な質量、圧倒的な火力を誇るも、どこかその動きにはぎこちなさが見えるというのは誰もが感じていた。
映像資料を送ってきた司令部の人間はその脅威を目に焦りはしつつも、
『ザフトの猿真似を行い図に乗ったナチュラルはあのような巨大兵器を製造し、見た目に違わぬ鈍重な動きしかさせられぬ無能。あの程度の腕ならばいかに脅威的な性能であろうと我らコーディネイターならば……』
と、敵に対する蔑みと慢心を隠そうともしない態度であった。
地獄と化した戦場に一足早く現れ、護衛するMS隊はそれに足止めされていた
頭角を表し正にエースと呼ぶに相応しい実力を身につけてきたシンならばあの程度の腕のパイロットならば……と、ミネルバの誰もがそう思っていた。
だがそのシンが出撃した途端、事態は一変した。
映像で見ていた我が軍のMS部隊をちまちまと撃墜していた様子とは打って変わり、ありとあらゆる部位からいっそ笑ってしまいそうになるほどの馬鹿げた量のビームをインパルスに向けて放ち始めたのだ。
あまりにも資料とは違いすぎる光景にその戦闘を見ている者達は驚愕を隠せず、アーサーなどいつも以上に驚愕の叫び声を上げていたほどだ。
しかし、狙われていたシンは不意を突かれはしたもののそのビームの雨を掻い潜り誰も近づく事さえ出来なかった巨大兵器に一閃、その装甲に傷をつける事に成功した。
これに今度はアーサーが歓喜の声を上げクルー達は希望を見出していたのも束の間。
今度はそのシンの動きが一変した。
勢いに乗ったインパルスがそのまま剥き出しになった装甲の内部にビームサーベルを突き立てようとした瞬間を指揮官機と思われるウィンダムによる突進、そのまま組みつかれた事で妨害され、撃墜し損ねたインパルスはその動きを止めた。
……その間に撃墜すれば良いものを、光の雨を降らせた巨大兵器は直前までのその勢いが嘘のように静かに佇み、ただじっとその巨体をインパルスへ向け沈黙していた。
その後、ウィンダムはゆっくりとインパルスから離れたが、衝突の際に不備が起きたのか何かを細工されたのか、インパルスは先程の勢いが嘘のようにフラフラと今にも墜落しそうな動きであの巨人へと近づいているのが見える。
「い、インパルスが……!艦長!インパルスが!!」
「騒がないで!!」
一見自殺しに行くようにしか見えないシンの行動にアーサーが騒ぎ始める。
だがその蝿の止まるような動きしかしないインパルスを前にしても巨人はなんのアクションも取らないのが見えた。
「…………お、おお?あの兵器、攻撃しませんね……」
「さっきの一撃で倒した……んでしょうか?」
「や、やったの……?」
その様子に騒いでいたアーサーもすぐに落ち着きを取り戻し他のクルー達も緊張をしつつもその様子を見ていた。
「…………メイリン、シンに繋げて」
「は、ハイ!」
「アーサーはトリスタンをいつでも撃てるようにして」
「はっ!」
機体が動いている、ということはシンは無事……少なくとも死んではいない、という事だ。
ならば今どんな状況かを確認しなければならない
メイリンに通信を繋げてもらうように指示を出し、いつ巨人が動き出すともわからぬ状況の為アーサーに準備をさせた。
───これが今に至るまでの過程。数十分は待っただろうか、いくら待てどシンからの応答はなく、巨人が動くことは無かった。
味方の大半がやられたにも関わらず、だ。
インパルスが巨人を抑え、アークエンジェルがその他地球軍を無力化した事で蹂躙されるばかりだったザフト兵にも闘志が宿っていた。
「あの怪物、動かないぞ!!」
「ミネルバがやったんだ!!」
「好機だ!!押し返せェ!!奴らを許すなあああああ!!!」
「「「「オオオオオオオオオオ!!!」」」」
生き残った都市駐留軍の残されたディン、バビ、バクゥなどの損傷も少なく、戦闘続行が可能な機体達は今が好機と勢いに乗り、動かぬ的となった巨人にトドメを刺さんと一斉に攻撃を仕掛けに向かっていた。
『艦長!!!』
あの巨人にトドメを刺し、ベルリンを守る。
漸く決着がつけられると誰もが思っていたその時、使用できる
「どうしたの?ルナマリア何か……『収容したMSの使用許可をください!!シンを助けに!!』……落ち着きなさい。どうしたと言うの…」
シンを助けに、そう声を張り上げるルナマリアの表情は明らかに焦燥に駆られている様子だった。
すぐそばで待機しているレイもアスランも不思議そうに彼女を見ている。
確かに。避難先として一時的に収容した友軍機をFAITH権限を以てすれば待機しているパイロット達にそれを貸し与え出撃させられるだろう
しかし、現在例の巨大兵器は活動を停止し、残る連合の機体は不利を悟り撤退を行なっており、残存する都市防衛軍の戦力で十分に制圧その許可を負傷を負ったルナマリアに出すわけにはいかない。
「貴女の怪我はまだ治ってない筈よ。そんな状態での出撃は認めらないわ」
『お願いします!!早くしないと……早くしないとシンが……!』
「……シン?さっきからシンがどうしたと……」
そこまで言われて、タリアはハッとなった。
その中にいる、あれを操っているのは、
何故
あの巨人の脅威を取り除けたかもしれないと油断したが、
そう考えれば全て納得がいく。先ほどから感じていた嫌な予感にも───!
「───アスラン!!レイ!!友軍機の使用を許可します!!すぐに出──────
出撃命令を下すのと、
───
結局、再起動したと思われた巨人はその腕を切り離し自らとインパルスをただ横切らせた。
それだけ。
ただそれだけを行い、結局それ以上の行動を一切取ろうとせず、突如現れた災害はその動きを止め、その腕もそのまま地面に衝突した。
インパルスは回避行動も取らず、飛来し、横切った腕の風圧にバランスを崩して、電池の切れたようにフラフラと瓦礫の山へと墜落していった。
「インパルス!応答してください!!インパルス!!応答を!!……シン!!なんで応えないの!?」
「ああっ!インパルスが……!」
「シン!何をしているの!?シン!!」
『あぁ……そんな……シン……!シン!!!』
『……………な……!』
『な……………ん……?………ぁ……?ぇ………?』
メイリンとタリアが呼びかけるも、シンはなにも応えない。
人形の様に動かなくなったインパルスを見てアーサーは絶望する。
アスランはただその光景に驚愕を露にし、
何が起きたか、理解できない。理解したくない。レイはそんな様子でただ声を震わせ、
そして事態を理解していたルナマリアは、ただシンの名を呼び、泣いていた。
終ぞ、ミネルバからの呼びかけにシンが応えることはなく、回収されミネルバに収容した後、開きっぱなしであったインパルスのコックピットはもぬけの殻であり、
その後、謎の行動にでた巨大兵器の腕を解体し調査した事で、2人分の人間の潰された肉片を発見。
検査によりその内一つが、記録されていたシン・アスカのDNA情報と一致。
───こうして、シン・アスカの死亡と言う今のミネルバにとって致命症と言っても良いほどの大きな犠牲を払い、地球軍による都市侵攻はここに終息した。