ガンダムSEED DESTINY 優しくて、暖かい世界 作:^U^
高評価、ブクマ、感想ありがとうございます!
前書きで何書くか思い浮かばない初投稿です
「好き、かあ……」
医務室を出て部屋に戻る最中、俺の頭の中は先程のステラからの告白でいっぱいだった。
突然の事で驚いたが正直な所女の子に好きと言って貰えた事自体は嬉しい、と思う。
けど、彼女の事をそういう目で見ていたつもりなどなかった。
ただ、あの日ステラと出会った日に、俺が迂闊に発した「死ぬ気か」という罵声に酷く怯え、泣き叫んでいた彼女の姿が、家族の命がゴミの様に散らされたあの瞬間の俺を思い出させたから、何処か妹を、マユを思い出させたから、
ただ、俺がそうする事で、生き残ってしまった自分が許される様な気がしたから、彼女を励ましてあげた。そのつもりだった。
そして、敵とは言え彼女に嘘を付き、アウルを、あの子の友達の1人を殺した俺にそれに応える資格は無いと思ったから、あの告白に応えることが出来なかった。
「そう、あまり保ちそうにないのね?やはり」
「ええ」
「……ん?」
コーヒーでも飲もうと思い休憩室の自販機へ向かおうとしている最中、通路の先から話し声が聞こえ足を止めた。
艦長と医務室の先生が話をしている声だった。
(保ちそうに、ない?)
「これ以上の延命措置は解剖の際に正確なデータが取れなくなってしまいます。死体から取ったデータの方がまだ良いのが取れますよ」
「そういったサンプルは嫌という程あるでしょう」
解剖 正確なデータ 死体からの方がマシ
何を言っているのか、艦長達が話す内容が理解できない。
いや……理解したくない。
これじゃあまるでただの実験動物のような扱いを───
「やはり、評議会が欲しているのは生きたエクステンデッドよ。措置はこれまで通り続けて頂戴」
「わかりました」
「艦の修理も、もう少ししたら終わるわ。明日の朝には出航します。
ジブラルタルへ到着すればあれを移送して本件は終了。……シンが居なければもっと遅くなって間に合わなかったでしょうね」
明日の朝
ジブラルタルへと辿り着けばそこでステラは現地、もしくはプラント本国へ送られ……解剖される
つまり明日がタイムリミット、という事になる。
人ですらない、ただの実験動物として、ステラは殺される
(俺が、連れてきたせいで……!?)
身勝手な理由で身体を弄ばれ、死にたくないと怯え
それでも友達を想って単身で挑んでくるような優しい女の子。
敵であるはずの俺に、好きだと言ってくれた女の子が
(そんなの……!)
「シンといえば…あの子にはこの事、絶対知られてはならないわ。わかってるわね?」
「勿論ですとも。……
「頼むわ」
「……ッ!!」
バケモノ、バケモノと言ったのか!?
今すぐ怒鳴り込みに行きたい、ステラはバケモノなんかじゃないと訴えたい、そんな衝動に駆られた。
…今盗み聞きをしていたのがバレてステラに近づけなくされる方が問題だと考え、なんとか踏み止まり静かに踵を返し、その場を去った。
(何とかしなきゃ……!何とか……!)
ステラを見殺しにしてしまう前に、何とかしなければならない。先程の彼女の告白を頭の片隅にし、今俺の頭にあるのはどうやって彼女を守るか、それだけだった
───
多くの被弾を受けボロボロになったミネルバの甲板、そこで何をするでもなくただそこに立ち、物思いに耽る。
ユウナ・ロマの意思により地球軍と同盟を結びミネルバを襲うオーブ軍
それを止めようと戦場へ介入し、軍を引けと説得しようとしたカガリとその力で戦場を制圧しようとしたキラ。
彼らの介入により戦場は混乱し、抵抗手段を失い死んだ仲間もいた。
彼らの行いを見過ごせず俺はそれを止める為動いた
「俺は、何をやっているんだろうな」
彼らの行いを止めたかった、馬鹿な事は止めろと。
ミネルバにいるクルーを死なせたくなかった、
そうやってフリーダムを抑える為にキラと再び銃を向け合った、その結果がこの有様だ。
『終わるさ!!ナチュラル共を討てば戦争は終わる!!』
『何故気づかぬか!我らにとってパトリック・ザラの取った道こそが唯一正しいモノと!!』
父の憎しみに引っ張られた者達に砕かれた世界の為に何かしたくて
『カガリは、今泣いているんだ!!』
オーブを出てザフトへと再び戻ってきたというのに、結局カガリを泣かせてしまった。
そしとあっさりとセイバーは切り捨てられミネルバを守る事もできず危うく海の藻屑になる所だった。
自分は何もできず、艦やクルー達を守ったのはシンの奮闘あってこそだった。
……こんな場所でウジウジしていても何もならない。
(シミュレーションルームにでも行こう)
「どうすればいい…どうすれば……」
「……シン?」
踵を返した直ぐ後、シンが焦燥した様子で甲板に出てきた。
明らかにおかしな様子を見せる部下に声をかけると、シンはようやく俺の存在に気づいたように視線を向けた。
「アスラン…」
「どうか…したのか?」
「あ、いえ……ただちょっと…」
あまり答えたくないのかシンは言葉を濁している。
なら、これ以上聞くのは野暮なのかもしれないな
「…そうか……」
「……アスランは、大丈夫なんですか?」
「え?」
「メイリンが言ってました。フリーダムを抑えてくれてた…って。だからその後落とされたって聞いたから……」
正直言って驚いた。
彼は俺を嫌っているものかと思ってたしこんな言葉を掛けてくるとは思わなかった。
「…まさかと思うが、心配、してくれてるのか?」
「そんなんじゃ無い!…ぁ、いや、アンタ程の人が何やってんだ、っていうか…」
「フッ…わかったわかった、そういう事にしといてやるさ」
「わかってないでしょアンタ!!」
いつもの様に騒がしく噛みついてくるシンの姿を見て思う。調子を取り戻した様で良かったと。
この所、あの少女を連れてきてからのシンはずっと思い詰めていた様子だった。
休暇中に知り合った、という事しか知らないが、それだけ敵であった事実を受け入れられなかったのだろうというのはなんとなく自分でもわかる。
……かつての自分がそうだったから
「ったく……。そうだ、ルナがアンタの事心配して探してましたよ。自分だって怪我してんのに……」
「そうか……また、顔出しておくよ」
「そーしてください!……じゃあ俺、部屋に戻りますんで」
そう言ってシンは艦内へと足を向け歩きだした。
「……アスラン」
「なんだ?」
シンは足を止め、俺を呼ぶ。
背中越しのシンから聞こえてくるその声は少し、震えていた。
「アンタは、その……」
「ああ」
「………いえ、何でも無いです。すみません」
……何だったのだろう
結局何も伝える事なくシンは去っていった。
───
あの後俺はアスランに相談しようと思ったが、結局できずにそのまま部屋へ戻った。
1人で考えたってどうしようもないのに、頼る事ができなかった。
「このままミネルバに居させても連合の強化技術は今のザフトじゃどうすることもできない」
幸い、レイはまだ戻ってないから独り言を聞かれる事はない
「ならステラを連合に帰すしか助ける方法は、無い」
…本当にそれで良いのか?
先の戦闘で俺が戦ったアビスのパイロット、アウルの『戦って勝つしか生きられない』という言葉を思い出す。
人の命をそんな風に扱う連中のいる場所に彼女を帰して本当に良いのか、と。
そこで、ステラと出会った時の事を思い出した。
「………そうだ、ネオ」
ネオ、あの日洞窟でステラが話していた人の名前。
家族は居ない、けどアウルとスティング、そしてネオが一緒に居ると、そう言っていた。
彼らが連合の人間だったならそのネオという人物は十中八九上官の筈だ。
ステラが信頼を寄せている人なら、きっと───!
「そうとなれば……!取り返したガイアのデータから何か……」
彼女を死なせたくない。
ほんの少しでも生きていける可能性があるなら、それに縋りたい。
そんな思いで俺は一心不乱にPCを開き、ガイアのデータを調べ始めた。