ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」 作:群缶
とっても明るい日常回です。ギャグです。
「うへぇ〜、もう暑くて無理ぃ……。シュウくん、おんぶ〜〜」
「体温たっか!? てか、俺も暑いんですが。自分で歩いてくださいよ、ホシノ先輩」
「いやぁ、シュウくんの背中は冷やっこいねぇ〜……」
「もう乗ってるし……。はぁ……」
「なんだかんだ言って、許してくれるキミがおじさんは好きだよ〜?」
「落としますよ?」
「うへへ」
「全く……よいしょっと」
「ん。暗黒銀行を襲う」
「マジで?」
「シュウ、これ」
「ナニコレ」
「必須アイテム」
「覆面が?」
「ん」
「…………どう?」
「よく似合ってる」
「そ、そっか」
「なぁ、ヒフミさんや」
「は、はいぃ……」
「アズサさんにプレゼントしたいのはわかるんだ」
「うぅ……」
「それがモモフレンズってのもわかる」
「あ、あの……」
「だからってブラックマーケットに行くのに前相談なしはダメだろうが!!」
「ごめんなさいぃぃ!!!」
「社長、社長」
「あら、何かしら見習い社員?」
「社員じゃないよ? いや、それよりこの爆発も計画のうち?」
「……当たり前じゃない!」
「ならさ。なんで味方だけやられて、敵は無傷で俺たちの方に向かって来てるんだ?」
「……………」
「社長? アル社長?」
「撤退!!」
「ちょ、置いてくなぁ!!!」
「はいシュウくん、次はこれをお願いします」
「……はい」
「終わりましたら、今度はこちらから」
「…………はい」
「ふふふ。お手伝いさんがいると助かりますね」
「………………あのノアさん。あとどれくらい?」
「そんなにありませんよ」
「ホント!?」
「ええ。今のペースならざっと3時間程度で終わります」
「ウソ……?」
「ホント、ですよ。ユウカちゃんがお休みなので焦りましたが、シュウくんに頼んで正解でしたね」
「…………」
「ちゃんとご褒美もありますよ?」
「が、頑張ります」
以上。ここ2週間ほどでこなした依頼の内容だ。
それを聞いていた先生は心配そうになったり、笑ったり。随分と感情豊かに反応してくれた。
ちなみに上から順番に。
・砂漠での探し物の手伝い
・ブラックな銀行への突撃
・友達へのプレゼント大作戦
・悪徳企業への復讐 〜社長のポカを添えて〜
・山積み資料のチェック&提出
である。報酬は良くても、概ねが色々な角度でヤバい案件だったり、そうじゃなかったりする。
「だから、そんなに疲れた顔してるんだ」
「まぁ……。言っておきますけど、先生も隈ひどいですからね」
カタカタとタイピング音が響くシャーレ。
先生のお手伝い中に、昨日までの出来事を報告がてら話しているわけだが。
ざっと自分がこなした書類を確認しつつ、先生の進捗も確認する。
「そっちはどうです?」
「もうちょっとで終わるよ」
「了解です。ならその後にでも俺のやつを確認してもらえると」
「うん。ありがとう」
先生からの言葉と同時に、すっかり座り慣れた椅子から立ち上がってケトルがある簡易キッチンの方へと向かう。
キッチンにはコーヒーから紅茶、それに緑茶と多くの飲み物が用意されており、シャーレで当番をこなす生徒は自由に使っている。
中にはスナック菓子などもあり、これは先生が買い出したものから生徒が各々で置いて行ったりするものなど。
一応、公的な機関であり、そこそこ硬いイメージがあるシャーレ。でも実際にはトップが先生ということで、どこかサークル、部活動の部室的な雰囲気だ。
どれにしようかな、なんて迷いつつも手は勝手にコーヒーを選んでいるあたり、体はカフェインを欲しているんだろう。
棚からマグカップをふたつ取り出して、インスタントのコーヒーを作る。
それを持って先生の元へと戻ればちょうど終わったのか、腕を伸ばしておじさんのような声をあげていた。
「んん〜〜! ふぅ……」
「お疲れさまです、先生。ずいぶんとおじさんくさい唸り声ですね」
「あはは。やっぱり事務仕事は疲れるからねぇ。あ、入れてくれたんだ。ありがとう」
「いえいえ」
まだ熱すぎるくらいのコーヒーをずず〜っと啜る先生。疲労たっぷり、睡眠不足な顔で美味しそうに飲むなぁ。
デスクに自分の分のコーヒーを置いて、痛そうに肩を回す先生の肩を軽く揉んでみる。
「忙しくて大変なのはわかりますけど、しっかり休んでくださいよ」
「うん。あ〜〜、そこそこ」
「かっちかちじゃないですか……」
凝り固まった肩の筋肉を少し強めに、ほぐすように揉んでみれば気の抜けた声が出る。
いくら大人といっても先生、そこまで歳とってないはずなんだけど。
「いくらなんでも凝りすぎですよ。先生ってまだ20代ですよね?」
「そうだよ。でもPCとか紙の書類といつもにらめっこしてるから、もう体はバキバキなんだ」
「うわぁ……。こうはなりたくないや」
「はは。でも、私が見てる限りシュウも似たようなことになりそうだと思うよ」
俺に肩を揉まれて軽口を挟みながらも、気づけば仕事を進めている先生。
今しているのは俺が提出したものの確認で、ゆったりとした口調とは裏腹にすごい速度で目を通しているのが背中越しに伺える。
「……うん、問題ないね。これはこのまま私の方で預かるよ」
「うっす。これで今日の分は終わりましたか」
「そうだね、いやぁ20時前に仕事が終わるなんて久しぶりだぁ」
「わぁ、遠い目……」
「でも仕事は終わったわけだし……」
ただでさえ隈で顔色が悪く見えるのに、死んだ目になった余計にひどい。
ここに住んでいるから、先生がよく夜中まで仕事をしているのは知っているけど。
そのうちの何割かは趣味で徹夜になっているわけで。大概、自業自得な場面もある。
でもって今日の当番は帰り時間を気にしなくて良い俺。なぜかソワソワしながらデスクを探る先生。
ここから導き出される答えは。
「シュウ、シュウ」
「はいはい」
「この前の続き、観よう!」
まるで子どもに戻ったかのように輝いた目で、片手に持った特撮のBlu-rayを掲げる。
先生が好きなもの、趣味のひとつ。それは特撮モノの鑑賞。
怪獣からロボット、バイクにまたがるヒーローなどジャンルは様々で、その辺に関連するグッズもシャーレには数多く飾られている。
時折、コレクションを増やしすぎてユウカさんに怒られている姿も見るが、懲りずに買っちゃうのは日常茶飯事。
そんな趣味に付き合っている、というか。むしろお供させてもらっているのが俺。
「ひとまずポテチとコーラを用意します!」
「さすがシュウ!」
この瞬間だけ、俺と先生はまるで同年代の友人のような間柄になる。
きゃっきゃと忙しなくテレビの前に座り、お菓子を片手に映し出される憧れのヒーローたちの活躍に一喜一憂。
やられそうになれば固唾を飲んで見守り、大逆転を決めた時は肩を組んで盛り上がる。
本当に幼い子どもに戻ったように、ただはしゃぐ俺と先生。
まだ俺はこういったことを普段からしているから、なんとも思われないだろうけど。
先生はここまでテンションが高い姿を他の生徒、女の子の前では見せないから、みんなが見たら驚くだろうなぁ、なんて内心では思っている。
「うおぉぉ!」
「やっちゃえー!」
ただ今日のこれは、お互いに徹夜明けで深夜テンションに入っているので、かなりひどかった。
本来ならすぐに休め、と言わなければいけないし、俺も寝た方がいい。けど、つい楽しいから何も言わずに付き合ってしまうのだ。
青春、とは少し違うかもしれないけど。こんな何事もない日常で、先生とはしゃぐ時間は決して悪くない。
この日、時計の針が0を超えるまで存分に遊んだ俺と先生。
次の日の起床時刻を確認してお互いに泣きそうになるのは、また別のお話。
【先生。疲労蓄積度が普段よりも数%高まっています】
「数少ない私の趣味を理解してくれる“同性”の子だからさ。調子に乗っちゃったかな」
【…………】
「はは。ちょっとはしゃぎすぎたね」
【いえ。先生が楽しいのであれば私は構いません】
「ありがとう、A.R.O.N.A」
【はい。では、お疲れさまでした】
「うん。おやすみ」
楽しかった日々の別れは唐突に。
“あの日”に至るまでの儚い1ページ。
いずれ辿る終わり。その時まで。
この輝かしい日常は続いていく。
————【#IF:“奇跡”が起きない世界での日常】
今まで読んでいた明るいシャーレルートの日常は!?
シロコ*テラーの世界線?? 私わかんなーい。