ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」   作:群缶

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明るい日常の裏側。


いつも感想やメッセージ、評価をありがとうございます。正直、投稿当初はこんなに来るとは思っていなかったので、凄くびっくりしています。

感想とか無かったら多分、途中で投稿をやめてた可能性大なのでマジ感謝。みんな大好き!

そして、誤字脱字の修正もホントに感謝。見返してても気づかないところ出てきちゃうので、助かってます……!





0.4:日常の影

 

 

 

 

 

 時刻は朝の7時45分。ホシノを学校の近くへと送り届けたあと。人気がまだ薄いとある市街地の道路。

 

 カシャン、とハンドガンのマガジンを新しいものに入れなおしてからセーフティを掛け、周囲を見渡す。

 

 足元と少し離れた電柱の影、計2体のオートマタが力無く壊れた人形のように転がっている。

 

 この1週間少しの間、毎日ではないが朝方に妙な視線を感じると思って釣ってみれば案の定、あの夜にホシノを襲っていたアンドロイドたちが後をつけていた。

 

 しゃがみこんで手持ちの装備を確認すると、武器の他に縄やら目隠しなんてものが出てきてため息を吐く。

 

 

「捕獲、いや誘拐か? そもそもこんな装備と数じゃ、ホシノに勝てるわけないだろうに」

 

 

 昼夜数えてこれで5回目。頻度は変わらないが、相手の数が減ってきているのが妙だ。

 

 初めは2桁の数で後方から執拗につけてくるから分かりやすくて、逆に助かっていた。けれど、襲撃の数を増すごとに敵の数が減っていくから、普段よりも感覚を鋭くしておかなければ気づくことができない。

 

 敵の数が減っている、そして攻撃せずにこちらを後方から観察しているのは、何かを警戒しているからだと思うが……それが何かなど俺にわかるはずもない。

 

 今朝も危うく俺よりもホシノが先に気づきそうになり、慌てたものだ。自分が人よりも視線や気配に鋭くなければ、とっくに不意を突かれていただろう。

 

 

「……ふぁ」

 

 

 あくびがまた出てしまい、噛み殺す。コイツらがこっちを狙ってくるのは人気がないタイミング、つまりホシノが1人になる時や真夜中。

 

 あちらとしてもなるべく誰にも気づかれたくない、公にはせずに動きたいのだろう。この辺は連邦生徒会の抑止力に感謝だな。

 

 ホシノが学校にいる間や、人目があるときは安全。俺が気を張っている必要があるのは、登下校と真夜中だけ。

 

 おかげでだいぶ寝不足だったりするが、これで彼女を守れるならプラマイゼロだ。

 

 思い出すのは出会ったあの夜、ホシノを背負っていたとき。口や表情では強気だったが、手や体が微かに震えていた。

 

 当たり前の話だが、まだ彼女は中学生。あんな目に遭えば怖いに決まっている。……誰かがその不安を取り除いて守らなきゃいけない。

 

 

「よいしょ、っと」

 

 

 2体のオートマタをゴミ捨て場の近くにまで運び、装備品だけを剥ぎ取る。まだ早いとはいえ、それなりにドンパチしたがこの世界ではただの日常風景のひとつ。

 

 現場を見られないで音だけなら、誰も気づかないというのはこちらとしても都合が良い。

 

 変にヴァルキューレとか呼ばれようもんなら、身分を証明できない俺の方が怪しい。悪いことなどしていないのに捕まるのはごめんだ。いや、ちょっと悪いことしてるかも……。

 

 手元にある剥ぎ取ったばかりの武器、そこそこ良い素材で出来たサブマシンガンやナイフを片手に、今日もブラックマーケットへと足を運ぶ。

 

 目的はこの装備をクレジットに変えるため。表ではまともに捌けないものだが、あそこなら話は別。今来ている服や装備、過去に来てからまともに使えなくなったスマホを買い替えるのに、必要な経費だったのだ。

 

 

「……金欠ゆえ、やむなし。うん、しょうがないことだ」

 

 

 頭の中で先生にこっぴどく怒られるのを想像してしまい、誰にいうわけでもない言い訳が口から出てくる。

 

 ……さて、今日も今日とて情報集めとその整理かな。

 

 

 

 

 

 

 時刻は16時まえ。ホシノが通う学校の近くで待機しているとピンクのぴょこぴょこしたアホ毛を揺らした小柄な少女、ホシノがとことこ歩いているのが見えた。

 

 あちらも俺に気づいたようで視線がぶつかると早歩き、いや小走りくらいの勢いで向かってきた。表情は特に変化していないけど、どこか嬉しそうに感じる。

 

 うーん、なんだか懐いた子犬が駆け寄ってきた感じ? そう思うと不思議とないはずの尻尾を、激しく揺らすホシノの姿が見えてくる。普段はツンケンしている時とかあって気ままな感じが猫っぽいのになぁ。

 

 ……懐いてるとか、犬猫に例えているなんて、絶対に本人にはいえないけどね。たぶん、叩かれる。

 

 

「何を考え込んでいるんですか」

 

「ん、ちょっとな。おかえり」

 

「まだ家じゃないですよ。……ただいまです」

 

「あいあい。学校、どうだった?」

 

「特に何も。昨日も同じこと言ってましたよ」

 

「普段通りなら良かった良かった」

 

「ちょっとおじさんくさいです」

 

「ホシノから見たら俺はおじさんかもなぁ……」

 

「だから歳変わらないでしょ、私と先輩」

 

 

 呆れたように言われてしまったが、この数年後には自分を“おじさん”と自称するようになるんだよね。

 

 改めて、本当に未来の小鳥遊先輩とこのホシノが同一人物なのか? と疑問に思う。

 

 けど、笑い方や時折見せる表情、寝顔は知っているものなのだから、人に歴史ありってところなのだろう。

 

 

「今はこんなに生意気なのになぁ」

 

「なんです、藪から棒に。喧嘩売ってます?」

 

「素直じゃないし、喧嘩っ早いとこもあるし」

 

「やっぱり挑発していますね? 受けてやりますよ」

 

「顔は可愛いのにもったいない」

 

「……はい?」

 

「ん?」

 

 

 握り拳を作って額に怒りマークをつけていたホシノが、訝しげなものに変わり口調も困惑した感じに。

 

 

「どした」

 

「え、あ……いえ」

 

「?」

 

 

 聞き辛いことでもありそうな顔で、少し視線を左右に揺らしたあと、おずおずと口を開く。

 

 

「可愛いって、私がですか?」

 

「ほかに誰がいるんだよ」

 

「その、初めて言われたもので……ちょっとびっくりしました」

 

「嘘つけ。そんだけ可愛いなら言われ慣れてるだろ」

 

「そんな物好きな人いませんよ。……私の顔、好みなんです?」

 

「好みって……どうだろうな」

 

 

 思い出すのはキヴォトスに来てから出会ってきた女の子たち。みんな可愛いからなぁ……というか顔面偏差値が高すぎて、外との違いには大いに驚かされた。

 

 その子たちとホシノを見比べる。

 

 ……うーん、なんて言いながらじっと彼女の顔を見つめる。この質問に大きな意味はないようで、ほんの興味程度なのか、頭を横に傾げてはいるが無表情なホシノ。

 

 本当に顔はいいんだよな、こいつ。性格が未来の小鳥遊先輩と同じだったら……。

 

 

「……」

 

「なんですか、急に黙って」

 

「割と真面目にストライク?」

 

「……ロリコン」

 

「とんでもない誤解を招くような発言はよせ」

 

 

 ちょっぴり頬を染めてジト目になりつつ、とんでもないことを言われてつい早口になってしまった。

 

 キョロキョロと周りに人がいないのを確認して一安心している中で、ちょっと語気を荒めたホシノがまた世間に聞かれたら不味すぎる言葉を連発し始める。

 

 

「中学生の私が好みの時点で誤解も何もないですよ!」

 

「顔! 顔の話!! 中学生が好みとか言ってない!」

 

「私には女性としての魅力がないと!?」

 

「そこで俺が“ある”って答えたらマジモンになるだろ! ……てか、なんで怒ってるんだ?」

 

「……確かに。私、なんで怒っているんです?」

 

「知らんがな」

 

 

 急に冷静になったホシノに俺も似非関西弁になる。……なんで俺たち、道端でお互いの顔を見ながら同じように顔を傾げているんだ。

 

 

「……買い物、行きましょう」

 

「……おう」

 

「で、顔以外はどんな人が好みなんです?」

 

「なんで掘り返すんだよ……足とか魅力的だと嬉しいかな」

 

「ヘンタイ」

 

「聞いてきたのお前だろ!」

 

 

 わいわいと少し騒ぎながら買い物へ。……やっぱりコイツが小鳥遊先輩の過去って嘘だろ。

 

 

 

 

 

 

「……ぅん……」

 

「おっと……」

 

 

 船を漕ぎ出し、フラフラしはじめたホシノをそっと受け止める。時計を見ればもうすぐ23時で良い子は寝る時間だ。

 

 横で本を読んでいたホシノをぼーっと眺めていたら、気づけばこの時間帯に。途中からよく頭が揺れるなー、とは思っていたがおねむだったのか。

 

 グリグリと胸元に頭を擦り付けてくるホシノの頭をぽんぽんと撫でて、ベットで寝るように伝えるが反応が鈍い。どうやら、もう半分くらい意識が落ちかけているようで、ヘイローが点滅していた。

 

 

「風邪ひくぞ。引っ付いてないでベッド入っちゃえ」

 

「う、んん……」

 

「おーい……」

 

「うる、さいです……」

 

 

 これも過去に来て知ったことだが、この頃のホシノは一度寝る体制に入ると全く動かなくなる。今のように限界まで何かをしていることは、見たことがなかったが“眠い”とポケ〜っとしたまま、布団にそのまま倒れるのは何度か見た。

 

 厄介なのは、歯を磨く前や髪を乾かしている最中にそれが発生するとき。温かい風があてられて気持ち良いのはわかるが、ドライヤーの音が聞こえている中で爆睡した時は“コイツまじか”となった。

 

 今も寝るポジションが悪いのか、頭を擦り付けて良いところを探している様子。……ってこのままだと座ったまま、俺の上で寝ちゃうじゃん。

 

 

「風邪ひくって……ほら起きろ」

 

「や……」

 

 

 いやいやと頭を振ってしがみつかまれてしまい、ため息をこぼす。これも厄介なところで、眠くなったホシノはなんだか幼くなる。

 

 言葉、仕草が小さな子どものようになり、やたら甘えてくるのだ。

 

 最初のうちは全くだったのに、俺への警戒心が完全に解けたときからこんな無防備な姿を見せ始めた。

 

 しかも、起きたら概ね全部忘れているので、“眠いとき、やたら甘えてくるよな”と指摘しても“何言ってるんですか?”と冷たい目で言われたのは記憶に新しい。

 

 仕方がないとしがみつくホシノを抱っこして、ベッドの上に連れて行く。そして布団へと入れようとして……。

 

 

「ホシノ。ホシノさんや、おてて離して?」

 

「や……」

 

 

 冷たい布団が嫌なのか、小さな拒絶の言葉とともにまた目を閉じてしまう。……手はぎゅっと俺のジャージを掴んだまま。

 

 侮ることなかれ。いくら小柄とは言え彼女はキヴォトスの住人。

 

 ビビるぐらい力は強く、掴んでいる効果音を“ぎゅっ”なんて可愛く表現しているが、実際は“ぎゅ〜〜!!”くらいはあるのだ。

 

 ぶっちゃけ、ちょっと首しまってて苦しいです。

 

 しかし、普段は絶対見れない素直で年相応の可愛らしい姿、安心しきった寝顔は疲れた体に癒しをくれる。ふと、テーブルの上にあるスマホが目に入った。

 

 …………。

 

 

「……動画撮っておこ」

 

「んにゅ……うへへ……」

 

 

 ピコン、という音とともに録画開始。随分と幸せそうな寝顔でつい保存したくなってしまった。

 

 ……うーん、バレたら絶対にしばかれるだろうね、俺。

 

 ほんの数秒ほど動画を撮り始めたくらいで、ホシノがぽろっと布団の方に体を落とす。小さく丸まりながら本格的な寝息が立ち始めるのを見て、そっと布団をかける。

 

 

「おやすみ」

 

「すぅ……ん……すぅ……」

 

 

 しっかりと寝ついたホシノを横目に俺は上着をきて、外に出る準備を始める。

 

 ハンドガン、少しのお金、それからスマホを持ってそっと家を出れば、綺麗な月と星が空に広がっていた。

 

 

「……よし」

 

 

 行くか、と意識を切り替えて集中し、感覚を鋭くさせる。

 

 あんな可愛い寝顔をする子どもを襲おうとする奴がいるなら、それを守るのが歳上である俺の役目。

 

 また、夜の戦いの時間が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 ——23.00.39.41

 

 






もう少しだけ、ホシノとの日常が続きます。というかそろそろ本格的にいちゃつきます。

あ、それとこの物語(1章)の終わりまでもう少しだったり。エピローグは2通り用意していますが、どっちにするかはその時に決めます。


1.ほろ苦いビターなバッドよりエンド
2.砂糖食ってるのかなってなるくらいのイチャラブでちょいとえちちなザ・ハッピーエンド
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