ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」   作:群缶

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突然ですが、この2日ちょっとで来た感想とメッセージを一部ご紹介。

・(黒服)来るな——!
・やだやだ!ぼくまだ甘いのがいい!
・貴様(作者)さては黒服か?
・お前も愉悦部にならないか?
・コッチヲ見ロォ〜(SHA)
・自害しろ、黒服
・作品タイトルはネタなのに中身がガチ
・作品名と内容の温度感で風邪ひく
・(いい意味で)タイトル詐欺じゃねぇか!
・えっちなこと、するんですね?
etc……

みなさん、大変お元気ですね。
スタンドやら鬼やら愉悦部の神父からの感想にツッコミが間に合いません。

ただ、これだけは言いたいんですが……作品タイトルは詐欺じゃないもん!



0.6:ココロに出来た小さな“ひび”

 

 

 

 

 様子がおかしい。昨日までとはどこか違う。

 

 

「先輩、何かありました?」

 

「……ん? いや、特に何もないよ」

 

 

 私の視線に映るシュウ先輩。彼自身はいつも通り、普段と同じようにしているつもりなのだろうけど……雰囲気や話し方、そのほかの部分で小さな違和感を感じさせる。

 

 ふとした際に見せる思いつめたかのような表情、私を見て笑う顔に写る小さな影。前までの私にはわからなかったけど、心も体でもたくさん近づいて、求めた/甘えた今なら先輩の変化はすぐに感じ取れるようになっていた。

 

 絶対に何かがあったのに隠すようにして、決して言ってくれない。

 

 

「そんな不満そうな顔するなよー」

 

「んぐ……髪、ぼさぼさになっちゃいます……」

 

「おっと失礼。……なんで手を掴む?」

 

「……やめて欲しいとは言ってません」

 

 

 可愛いやつめー、とより強くぐしゃぐしゃしてくる先輩に心がぽかぽかする。

 

 シュウ先輩に触られるのが好き。シュウ先輩と話すのが好き。……ぎゅっとされたら飛び跳ねてしまいそうになる。

 

 たった、これだけのことなのに、今までにないくらい嬉しくなってしまう自分がいる。

 

 とても心地がいい先輩との生活。……だけど、最近は同時に彼が隠していることが気になって純粋にそれを味わえない。

 

 

「……」

 

 

 目に映る先輩は本当にいつも通り。でも、少し視線をそらせばピリピリとした……何かを警戒している、恐れているような雰囲気がある。

 

 こうなり出したのは今日の放課後から。朝はちっとも違和感などなく、私の知っている少し意地悪でとっても優しい……かっこいい先輩だった。

 

 ……それを向けている先はなんなのだろう、と思っていたけど。勘違いでなければ。

 

 

「わた、し……?」

 

 

 きっと勘違い、そう言い聞かせて残り少ない先輩との日常を楽しもうと余計なことに蓋をする。

 

 耳を塞いで、不安を隠して目の前のものだけを見る。

 

 そうしないと、心のどこかから聞こえる嫌な声が私のココロを支配しそうになるから。

 

 

 

 

▽時間は巻戻り、朝へ

 

 

 

 

「今日はいない、かな」

 

 

 ホシノを学校へと送り届けて再度、辺りの気配を探る。数日前まで頻繁に現れていたオートマタたちはめっきり姿を見せなくなり、文字通り平穏な日常となっているこの頃。

 

 

「……平穏、平穏かなぁ?」

 

 

 頭を悩ませることは減ったはずなのに、別のことで最近は悶々としている。

 

 その原因はズバリ、ホシノ。だってあいつ、甘えるの限度がおかしいんだもん!

 

 あーんとか頭撫でるくらいは構わないけど、くっ付いてきたり一緒に寝るのは本当に良くない。

 

 見た目はちっこい小学生みたいな感じなのに色々と柔らかいし、匂いも女の子特有のこっちの欲を掻き立てる危険なもので、別の意味で眠れなくなっている。

 

 しかも寝言の甘いとろんとした声で名前とか呼ばれた時は、もう目はギンギンに覚めた。下半身もギンギンに覚めてたよ!

 

 

「……はぁ」

 

 

 女の子と一緒に、しかも同じ部屋で暮らすというのは、思春期真っ只中の俺にはあまりにも毒。かてて加えて、同居相手が気になり始めた先輩と同一人物とか新手の拷問なの?

 

 ただでさえ、このひと月“処理”が出来ていない俺はもうムラムラと……メラメラと欲が激っているのだ。

 

 抜きたい。切実に。

 

 発情期の動物みたいな思考になりかけた俺だが、背後から音もなく突然のように出現した気配を感知して瞬時に思考を切り替える。

 

 腰のホルダーからいつでもハンドガンを取り出せるようにしながら、覚えのある黒い気配の方へと振り返る。そこには。

 

 

「クク……初めまして、ですね。由九咲シュウさん」

 

「……黒服」

 

 

 全身を黒一色に染め上げ、ひび割れたような目をもつ人物。本名は知らないが、その外見とスーツを着こなす様から黒服と呼ばれている男。

 

 異様な空気と圧を感じる怪しすぎる人物であり、未来で俺をこの世界へと連れてきた張本人。前回にあった際、嫌というほどの嫌悪感と悪意を感じた大人。

 

 でも、こうして対面した過去の黒服にはあの時のような威圧感がない……いや薄い?

 

 だが油断はできないと固唾を飲んでいると、ひとつ息を吐いた黒服が口をひらく。

 

 

「そう身構えないでください。今日はただ話をしにきただけです」

 

「こっちに用事なんてないけどな」

 

「クククッ、私にはあります。いえ、もうほとんど済みましたが」

 

「……? 何を言って……」

 

「この目で確かめたかったのですよ。貴方の神秘の輝きを」

 

 

 グルンと、異様な速度で俺の顔へと視線を向ける黒服に体が勝手にたじろぐ。

 

 目と思われる部分の濁った光は興奮したかのように激しく点滅し、口調は穏やかだが語気は鋭い。

 

 

「素晴らしい。聞いてはいましたが、私の想像以上です……!」

 

「……聞いた?」

 

 

 誰かから俺のことを聞いていた? まだこの世界に存在していないはずの俺のことを?

 

 自然と漏れた疑問に黒服は答えず、ひとりトリップしたように言葉を並べ続ける。

 

 

「神秘の大きさ、強さという観点では圧倒的に小鳥遊ホシノが上です」

 

「しかし、一研究者として興味を惹かれるのは貴方です」

 

「まるで蝋燭のような儚く小さな火ですが、アプローチはいくらでも存在している」

 

「クククッ……羨ましい、実に羨ましい限りです。結果を知っているとは言え、私が貴方を研究できなかったことが残念でなりません……!」

 

 

 言葉の意味が全く理解できない。でも、何か重要なことを言っている気がして聞き逃さないように黙って聞き続ける。

 

 

「神秘には色があります。例えば小鳥遊ホシノは橙黄色、しかし中身は激しい赤。一方で恐怖にもまた色がある。……あまりにも美しく、凍えるような暗い色が」

 

「貴方は淡い翠色のようなものを秘めている……あらゆる可能性を内包した、まさに原石」

 

「手に入れることができないのが残念で仕方がありません。……クク、失礼。興奮しすぎました」

 

 

 ふぅ、と息を吐き理性が戻った様子で乱れたネクタイを整える黒服。

 

 ……気づいていなかったが、俺という人間の価値は目の前の研究者、探究者を名乗る男にとってはよほど大きいものだったと認識させられる。

 

 

「さて、貴方の元へ来たのはもうひとつ聞いてみたいことがあるからなのです」

 

「……銃は売っぱらったからないぞ」

 

「クク……別にあんなもの構いませんよ」

 

 

 奪われた武器とかじゃない、ということは。

 

 

「ホシノ、か」

 

「察しが良いようで助かります。小鳥遊ホシノについて、です」

 

「なんで、あの子を狙うんだ」

 

 

 ずっと気になっていた。本来、コイツがホシノを狙うのはアビドスへと入った後で、本格的に動き出すのは先生が来てからのはず。

 

 一体、何がねじ変わって3年前にホシノを狙ったのか。その答えが目の前にあるとわかり、焦りが出始める。

 

 

「クク……私としても早急だとは思っています。が、事情が変わったのですよ」

 

 

 事情? 話が見えてこない。答えているようで何も情報を与えてくれない、それが黒服のやり方。相手をイラつかせ、冷静さを失わせた後、巧みな話術で騙される。

 

そんなことはわかっているが、“でも”と焦りは加速していく。

 

 

「ホシノに手を出すな」

 

「クク……いいでしょう」

 

「……は?」

 

 

 今、コイツはなんて言った?

 

 

「なぜ貴方がそのような顔になるのです。クク……構いませんよ」

 

「……本当に、手を出さないんだな?」

 

「ええ。……私から武力を持って彼女を攫うことはない、とお約束します」

 

「……そう、か」

 

 

 怪しい。その一言に尽きる。

 

 けど、黒服は信用はできないが嘘はつかない。結果的に騙されることはあっても、嘘はつかないのだ。

 

 だからホシノはもう安全、なのだろうけど。

 

 胸に沸る不信感と不安、一言で表すなら嫌な予感。自分の第六感が警報を鳴らせ続けている。

 

 

「しかし、わかりません」

 

「何が、だ」

 

「貴方はなぜ、小鳥遊ホシノを守り続けるのです」

 

「何……?」

 

「この数週間あまり、オートマタを通して貴方の活躍は見てきました。だからこその純粋な疑問です」

 

 

 疑問、何を疑問に思うことがあるのだ。

 

 

「シュウさん、貴方が彼女を守るということは、外の世界への帰り道を阻害しているようなものですからね」

 

「……どういう意味だ?」

 

「クク……」

 

 

 俺が外に帰ることとホシノになんの関係性があるというのだ。脈絡がない。

 

 ……落ち着け、冷静なれ。

 

 沸騰したように熱くなり、血が昇っている頭を振って冷やす。関係のないことを言って、こちらの思考を乱そうとしているだけに違いない。コイツは信用できない。……できないんだ。

 

 

「さて、これで私は失礼します」

 

「……ああ」

 

「クククッ……後日、またお伺いします。それまでこの世界を楽しんでください。……夢のような世界を」

 

 

 くるりと背を向けた黒服。俺もこのままでは冷静さを取り戻せないと、背を向けて深呼吸をしようと——。

 

 

「——それではまたお会いしましょう。未来の研究対象よ」

 

「——————」

 

 

 呼吸が止まる。体が凍らされたかのように動けなくなった。

 

 時間にすれば一瞬だが、その一瞬があまりにも長く感じられる。

 

 

「っ!!」

 

 

 振り返るが当然、そこに黒服はいない。

 

 つまり、今の言葉の真意を尋ねることはできない。

 

 心にシミができる。疑問と疑惑。

 

 真っ白な紙へ一滴だけ垂らされた墨。それはゆっくりと心の中へと広がり、恐怖と化していく。

 

 なぜ、知っているのか。なぜ、ホシノから手を引いたのか。

 

 なぜ、なぜ、なぜ。

 

 疑問と言いようもない寒さが、この瞬間からずっと体を蝕んでいった。

 

 

 

 

 だからかな。ホシノの変化に気づけなかったのは。

 

 もう少し早く彼女が胸の内に秘めていた俺への疑念に気づけていれば。

 

 あの時、一言でもしっかりと否定できていれば。

 

 また違ったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 ——06.14.59.57

 





お話が面白いと言っていただけるのがすごい嬉しい理由なんですが。実は私、過去にえちちなゲームのシナリオとか齧ってたからだったり。

あ。実はあと数話で1部完結です。シュウ、童貞捨てるってよ。
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