ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」 作:群缶
さっき起きたんですがね? すっごく感想と評価きてて泡吹いて倒れかけました。
大変、満足していただけたようなので、嬉しい限りです。
なので、感謝の念をお伝えするために2日後に予約していた“エピローグ”を投稿しちゃいます。つまり、ストックが0になります。
みんなのパワー(感想と評価)をオラに分けてくれ……!
そして、後書ではちょっとしたおまけも置いとくね! 良かったら覗いてみてください。
あ、これは余談ですが、シュウくんことバカタレはまだ、ホシノへ好きとはひと言も言ってません。最低です。
「…………ぅ」
瞼に刺すような陽の光で目がさめる。映るのは自分の部屋の天井。
体は重く、自分の格好を手や目で確認すれば見覚えのある元の私服。
「っ……。いたた……」
寝ていた場所を確認すれば、自分は椅子を下敷きにして倒れるように寝転んでいた。
腕、左手首をみればもう着け慣れてしまった黒時計が目に入り、少し緊張したまま画面に触れる。
液晶には“--.--.--.--”と表示された後、解けるように消えて“□□□□,□□,□□ 14:38:22”という画面に切り替わる。
「……日付は変わってないけど、しっかり3年経ってる」
自分の部屋の窓を開けて外を確認すれば、ほんのり懐かしいアビドスの景色が目に入る。
道を歩む少ない人々、ところどころ砂に覆われた建物。
まだ完全に確信したわけではないが、安堵が胸の中に溢れてくる。
「戻って、来たんだよな」
改めて日付を確認する。忘れもしない日にち。ホシノと別れた日であり、俺が過去の世界に飛んだ運命の1日目。
偶然かはたまた必然か。俺がアビドス高等学校に転入した日付が、ホシノと出会った日で。
小鳥遊先輩との約束した日が、ホシノと別れた日にちだった。
この日が特別だと言った彼女の言葉と想いの意味。
たった2日前の自分にはわからなかったけれど、今は……あの1ヶ月間を過ごした俺には違うものに映っている。
「……あ」
待て、今日が小鳥遊先輩との……ホシノと約束した日?
時刻は14時40分。
俺は先輩と何時に約束していた?
急いでメッセージを確認しようとバッテリーが残りわずかになった携帯を開く。
画面にはモモトークの通知。何時間かに分けて、同じ人から数件のメッセージが届いていた。
ホシノ『起きてるかな。今日、楽しみにしてるね』
ホシノ『まだ寝てたらごめんね』
ホシノ『もし、私と会うのが嫌だったら、無理しなくても大丈夫だから』
「先輩からの、メッセージ……」
不安そうな言葉に申し訳なさを感じるが、それ以上に“元に戻っている”という確かな実感が得られて、心の底から安心した。
だが今はそれよりも果たさなきゃいけない、ふたつの約束がある。
メッセージをスクロールし、約束した時間を確認し直せば、15時となっている。
「まずい……っ!」
スマホですぐに返信しようと文字を入力しようとして、ちょうど画面が真っ暗になる。なんてタイミングが悪いんだと、作為的な悪意を感じてしまう。
メッセージを開いたことで既読はつく。でも返信はできていないという状況は、誤解を生み出すに決まっている。
「くそっ……」
寝癖はついているし、服もシワだらけ。でもそんなことはいい。
小鳥遊先輩を、ホシノを不安になんてさせたくない。
それだけの思いでスマホを放り投げて、勢いよく家を飛び出す。
ろくに鍵もかけずにひたすら足を前へと動かす。向かう場所はわかっている。
初めて見た時は何の因果もない、ただの寂れた公園が指定されていた。
でもあそこは。黒服に嵌められてホシノと別れ、深い後悔を残した場所であり、自分が通っていた因縁ある公園。
「はっ、はぁっ……!」
体が限界だと休めと訴えかけてくる。酷く息が切れるが、どうでもいい。
3年前と変わらないコンクリートの道、より寂れてひとけのない住宅街の景色が流れるように目に映る。
——絶対、また会えるって信じてますから
涙を流しながら、見送ってくれた女の子の顔が脳裏にずっと焼き付いている。
——……良かったら、会えないかな
夕陽を背に寂しそうに笑って別れた先輩の顔が胸を締め付ける。
時計はすでに15時を回っている。もう、帰ってしまっているかもしれない。
最低だ、何をしているんだと後悔が心の中を占める。でも、行かなきゃいけない。
違う、俺自身が行きたい。小鳥遊先輩と、ホシノと会いたいんだ
今になってようやく理解できたことがたくさんある。
例えば、小鳥遊先輩が俺の名を呼ぶときに敬称を付けづらそうにしていた意味。
俺にとっては彼女は先輩だ。でも、ホシノにとっては俺が先輩だった。
歪んで捻れた時間の中で紡いだ奇跡のような、神様のイタズラのような出会い。
絶対に離れるのが確定しているのに、また会えるという運命。
キヴォトスの神様は本当に意地悪なやつだ。
「……はぁ、はぁ……っ」
目に入るのは、全く変わらないあの公園。
ろくな遊具もなく、休日だというのに遊んでいる子どもひとりいない、寂れた公園。
あるのはボロっちい、小さな木のベンチだけ。そこに。
「…………」
「……ホシ、ノ」
数メートルの距離。たったそれだけの、歩けばすぐに到達できる場所。
ぼーっとどこか遠くを見ている、長く伸びた髪以外が全て同じの少女が視界に入る。
表情に色がない、とホシノのことを知らない人がみればそう思うだろう。
でも、あの横顔は寂しさと不安を隠した不器用で強がりなものだと俺は知っている。
何より、その表情が昔の彼女とダブっていて一瞬だけ足が止まってしまった。
けど、足音はしてしまう。ぼーっと視線を揺らがせていた彼女の瞳に光が灯り、俺の方に視線が向かう。
「ぁ……もう、遅刻だよ?」
にへら、と笑ってさっきまでの感情を奥底に隠す姿を見て。そんな顔をさせてしまった自分に心底、腹が立って。
頭で考える前に足を進める。
「おじさんとはいえ、女の子を待たせるのは感心しないなぁ。待ってたんだよ〜?」
言われた通りだ。あまりにも長く待たせすぎた。
とん、と立ち上がり俺の元に歩いてくる先輩。普段通りを演じて、俺に気を遣おうとする彼女の姿があまりにも痛ましくて。言葉を返す前に体が動いていた。
「せめて連絡くらいは……ぇ?」
ぎゅうと、強く包むように抱きしめる。困惑した彼女の声が聞こえた。
本当に華奢で小さな体。これでずっと戦ってきたのかと思うと、より込み上げてくるものがある。
「ど、どどどうしたの!? う、嬉しいけど……でも、急になんで……?」
慌てたような声を出している割に、しっかりと抱きしめ返しているホシノ。
内心、本当はあの出来事は全部が夢で俺の酷い妄想なんじゃないかな、とか思った瞬間もあったけど。
ああ、やっぱり。全部、本当のことだった。
なら、まずは謝って約束を果たそう。
「ホシノ」
「ぇ……?」
「ごめん、本当にごめん」
「何、を……?」
一月前まで、自分でも忘れていた……忘れさせられていた記憶に困惑し、俺との距離感がわからなくなっていた小鳥遊先輩。
でも、消えてなかった。どうしてかはわからないけど、本来はなくなるはずだったものを奥底に抱えて、思い出して。
けど、俺はまだそれを知らなくて。結果的により、苦しめる思い出にさせてしまって。
ずっと。3年と1ヶ月の長い時間を経ても待っていてくれた大切な少女に心の底から謝罪する。
「遅くなってごめん。ずっと待たせて、悪かった」
「————」
ゆっくりと体を離して、改めて彼女の顔を見る。
信じられない、けどもしかして。
不安と期待の眼差し。口元は震えていて、眉は下がりまだ確信が得られていない、そんな表情。
何かを言おうとして、躊躇するホシノ。だから俺から語りかける。
「“3年も待たせて”ごめん」
「ぁ、え……」
「卒業するまでには会いに行くって、約束だったもんな」
目が大きく見開かれて。次にはくしゃっと“見慣れた泣き顔”になったホシノ。
大きくなっても、心が成長していても。寂しがり屋で泣き虫なのは変わっていないみたいだ。
それがどこか嬉しくて。“昨日”と同じようにぽんぽんと頭を撫でて慰める。
「……ほん、とに」
「ん?」
「……せんぱい、ですよね?」
「ああ。それ以外に見えるか?」
口調が、顔が、声音が。
すべてがとてもよく知っている後輩のものに変わって、つい笑みが溢れる。
ホシノに言われた言葉。ほとんどはあっているけど、ちょっとだけ間違いがある。
「今は、お前が俺の先輩だろうに」
「ぐす……イジワル、言わないでください……っ」
「本当のことなんだけどなぁ。泣くなよ?」
「むり、です……っ!」
俺の胸に飛び込んで顔を押し付けたまま、激しくぶんぶんと頭を振る姿に愛しさが込み上げてくる。
「もうどこにも行かないからさ、泣きやんでくれよ」
「……ん」
「たくさん、話したい事があるんだ」
「私も、です」
「だよな、はは……」
「……でも、まずは」
「ん?」
まだ泣き腫らした目で、ぐちゃぐちゃな顔なままだけど。
晴れやかな笑顔と高揚した声音で。
「また、あえて嬉しいです」
なんて言われてしまった。凄く照れてしまったし、俺も嬉しかったけどただ頷いただけにしておいた。
だって、言葉にしたら軽くなりそうだろ?
「黒服……やっぱりアイツのせいで……!」
「まぁまぁ……」
さっきまでの甘酸っぱい空気はどこへやら。ぐむむ、と唸って怒るホシノを落ち着ける。
ベンチに座って多くのことを話した。
ホシノにとっては昨日はただの1日。でも俺にとっては、とても長い夢のような1ヶ月間。
俺にとってはつい最近のこと。でもホシノにとっては3年も昔のことで、懐かしそうに聞いていたんだけど。
“そもそもどうやって過去に?”
という質問に黒服のことを話したらこの有様だ。ただ、怒っているのは間違いないし、嫌っているのもわかっている。
だけど、どこか複雑そうな顔をしていて、それが気になった。
「どうした、難しい顔して」
「だって……黒服のせいで酷い目にたくさんあったのに。アイツがいなかったら、私はシュウ先輩と出会えなかったってことじゃないですか」
「あー。確かに」
黒服には随分な目に遭わされたが、逆にそれがなければ俺とホシノとの出会いは、ごく普通のものになっていたのだろう。
それこそ、当たり前の先輩と後輩。小鳥遊先輩と後輩の俺。
どこで歯車が狂ったのか、今の俺とホシノの関係はとても複雑なものになっている。
まずは呼び方について。そこから話していかなきゃな。
「まぁ、今は俺が歳下でホシノが先輩だから傍から見れば至って普通なんだけど」
「? はい」
「明日から学校……うーん、やっぱり無難に“小鳥遊先輩”呼びかな」
「いやですだめです絶対イヤ!!」
「すごい勢いで喋るし、くっ付いてくるじゃん……」
プンスコと怒りながらほっぺたを膨らましたホシノにぎゅ〜〜っと腕にしがみつかれてしまう。
怒ってるのに可愛いというか、あざといというか……狙ってやってるのか?
……ちょっとの興味、それといたずら心が生まれる。
うん、みんなに変に勘繰られるのはまずいし、慣れさせるため、そしてお試しってことで。
「あまりわがまま言わないでくださいよ、小鳥遊先輩」
「……………」
あ、真顔になった。怒ったのかな……? と様子見しつつ、もう一度名前を呼ぶ。
悪気はない……いや、いたずら心はあるから全くないわけじゃないが。まさか
「えっと、先輩?」
「………………ぐす」
さっき以上にガチ泣きしそうになるとは思わないじゃんね?
親と逸れた迷子の子ども。知らない場所でひとりになってしまったような、あまりにも悲しそうな顔をされて冷や汗がとんでもないことになる。
「うわぁー!? ちょ、ごめん! 嘘! 嘘だから!!」
「そんな、他人行儀なの、いやです……シュウ先輩は、私の……私だけの先輩です……」
「本当に悪かった! ちょっとした出来心というか、いたずらというか!」
どうしよう、どうしようとひとりで慌てふためいていると、ふと違和感。
微かに聞こえた笑い声に“あれ?”と、顔をホシノの方へと向ければ。
「く、ふふ……」
堪えられなくなったように笑い涙を出す姿を見て、何が起きた? と混乱したがすぐに気づく。
こ、こいつ。
「からかったな……!?」
「“シュウくん”が、“おじさん”にいたずらしようとしたからだよ〜?」
「う……」
「ほら、先輩も違和感あるでしょ」
「…………うん」
言われた通り、俺を“くん”付けで呼ぶホシノに違和感とちょっぴりの寂しさが生まれた。
ジト目で怒られてつい、しゅんとする。いや100%俺が悪いんだけどさ。
それと、と言葉を続けたホシノに対して、落とした視線も元の位置に戻す。
「私がからかったことは本当ですが、言った言葉に嘘はありませんから」
「……おう」
「先輩は私だけの、特別な人なんです」
「えと、ありがとう?」
「だから次、たとえ冗談でも」
「冗談でも……?」
「私のこと、苗字呼びしたらその口を塞ぎます」
ずん、と顔を近づけてはっきりと言われる。気のせいか、目が据わっているような……?
「塞ぐって……その」
「ちゅー、します」
「ストレートな表現にしろとは言ってないよね?」
「どこであろうと……いえ。みんなの、先生たちの前でキスします」
「より具体的に状況まで言わないで?」
「べろちゅーです」
「なんでもっと具体的にしたの??」
とんでもないことを、メチャクチャに恥ずかしいことを言っているはずなのに、真顔。
……そして据わった目の瞳孔が開いている。ちょ、ちょっと怖い。
「冗談、だと思いますか?」
「冗談じゃないと困るんですが……?」
「なんでですか」
「いや、恥ずかしいじゃん。……俺もホシノも」
「……もっと恥ずかしいこと、シたじゃないですか」
「………ごもっともで」
ぷい、と目線を切って頬を赤らめるホシノ。
あ、そこは恥ずかしくなって顔を逸らすのね。キミの恥じらいの基準がわからなくてお兄さん、困惑してるよ?
話が逸れたが、元に修正する。俺が言いたいのは先生や対策委員会のメンバーに変に勘繰られないように、どうしようかという話。
あとこれは俺のわがまま、というか願望もあるのだが。
「前の、というか先輩だったホシノも可愛かったのになぁ……」
ぴくり、としがみついていたホシノの手が反応する。
おずおずと聞き辛そうにしている彼女に“どうした?”とこちらから声をかけてみると。
「その、今の私と普段の方……色々と違うじゃないですか」
「まぁな。おじさんだし、ぐうたらしてるし、ふにゃってるし」
「う、うぅ〜」
恥ずかしそうに頭を抱えて呻き声をあげ始めたホシノを見て頭に“ハテナ”が浮かぶ。
「どした」
「昔の私を知っている先輩とみんなが話すの、凄く嫌です……」
「え?」
「別にあっちが何かを隠しているとかじゃないんです。あれも確かに私です……でも、キャラが違いすぎます……!」
ああ、と合点がいく。
確かにクールっぽくて目つきが鋭いホシノと、ほんわかゆったりな癒しの小鳥遊先輩ではまるで別人だ。
うーん、でも。
「俺はどっちもホシノだと思うけどな」
「どこがですか……!」
「あ、別にからかってるとかじゃなくてな」
「……はい?」
「確かに雰囲気とかはちょっと……だいぶ違うけどさ。どっちも優しいし、可愛いところたくさんあるから、俺としては両方とも見たいなって」
「…………っ」
「なんで自分のほっぺた引っ張ってるの??」
「ちょろい自分に嫌気がさしただけです……!」
「そ、そっか?」
ぐにぐにともちもちなホシノの頬が伸びている。
痛そうにしているのになんでやめないんだ……? そっちの趣味でもあるのかな。
って、本格的に赤くなり始めてるし。
「もうやめとけって。せっかくの可愛い顔が台無しになるだろ」
「……っ! ……っ!!」
「なんでより強く引っ張るかなぁ!?」
なんて、少し馬鹿なやりとりをしていたら気づけば空は暗くなり始め、寒さを感じ始めた。
そろそろ頃合いかな?
「もう陽も落ちたし、帰るか」
「……ぇ」
「いや、寒くなってくるだろ」
「そう、ですけど」
寂しそうな顔をしてくれるのはとても嬉しい。名残惜しいのは俺もだが、明日は普通に学校がある。
ずっとこのままここで座っているわけにもいかない。
「明日になったらまた会えるだろ?」
「でもっ……まだ、一緒にいたいです」
「んなこと言ってもなぁ」
前と違って今は別々に住んでいる。公園で一晩明かすというわけにはいかないし……。
と、困った顔をしている俺にホシノが“なら”、と意を決したように口を開く。
「先輩のお家、行きます」
「なんでそうなるんだよ……?」
「まだ一緒にいたいですし……話しかたの練習、したいから」
途中から敬語が少し抜け、“小鳥遊先輩”のような口調になる。
でも、流石に男の一人暮らしに女の子を呼ぶのは……とためらっていると。
寒空の中なのに、熱い手のひらが俺を掴む。
「あの日の続き、したいなって……ダメ、かな?」
「……………いや、あの」
「今度はこっちの私を、抱いて欲しい、です……っ」
「………………」
目が泳ぎ、視線を右往左往させて、言葉に詰まりながら俺にしてほしいことを真っ赤に染まった顔と、期待した表情でおねだりされては……。
「……俺がダメって言えないの、わかってて聞いてるだろ」
「……うへへ。バレた?」
「はぁ……着替えと制服だけ、取りに行くか」
「! うんっ」
ぎゅっと繋いだ手。嬉しそうに見上げてくるホシノの顔。
それを見るだけで、感じるだけでこんなにも嬉しくなるのは、きっと。
上機嫌に鼻歌を歌いながら手をひく彼女に、なんの前触れもなく、ただひと言。
「なぁ」
「ん〜?」
「俺、ホシノのこと好きだぞ」
「そっか〜。……? ……はへぇ!!??」
これでようやく全ての約束を果たせた、のかな。
「ふむ。確かに記憶が残っているようですね」
暗闇に潜み、気配を殺して観察していた“実験途中”の被検体を見て、結論がでた。
長い長い、実験。それは3年前から行われていたもの。
スーツの内側からとあるものを取り出す。
それは実験体から作り出したひとつの装置。彼へと渡した試作機ではなく、私自身が使用したもの。
だが、それは役割を終えたとばかりに沈黙し、画面には鋭いひび割れができている。
しかし、彼の腕についたままの装置、クローン・デバイスは正常に動作している。
……いや、すでにあれは私が作ったもののままではない。まるで元の力の持ち主に引き寄せられるかのように、別のものへと変化……進化し始めている。
私のこれとは違って。
「まさか、内側から破裂するとは。クク……まるで拒絶されたような気分です」
弱すぎる由九咲シュウの神秘を増幅させるアプローチとして、他者の神秘を組み合わせたもの。
相性が良かった反応は“複数”あったが、手元にあったサンプルはひとつ。
幸いだったのは、それがもっとも強く反応した小鳥遊ホシノのものだったという点。
「他者との繋がり、信頼や感情……それを物理的な力や自身の成長へと促し……理の一端にすら触れかける力。あまりにも、可能性の塊と言える」
由九咲シュウの神秘は、自身と他の誰かを結びつけ、より高めるもの。興味深いのは、高まる力が何になるかが未知という部分。
シンプルな言葉で彼の力を表すならば。
「絆を具現化し、奇跡を起こす……というのはロマンがありすぎますか」
らしくもない言葉が己から出て、馬鹿馬鹿しいと笑う。だが、一方で探究者として期待してもいる。
「クク……。さて、貴方は次にどのようなものを私に魅せてくれるのでしょうか」
コツ、コツ、と靴がコンクリートを叩く音だけが響き。黒い大人は姿を消した。
To be continued……?
はい。ということで“Vol.1 過去からのメッセンジャー”はこれで完結となります。
約1ヶ月間で走り切った作品でしたが、いかがでしたか? 少しでも楽しめた、ホシノの可愛さや魅力が伝えられたなら本望です。
ちょっとしたおまけを用意していますが、その前に皆様への感謝を。
本当にたくさんの評価や感想、お気に入り登録、メッセージをありがとうございました。誤字脱字の修正、死ぬほど助かっていました。
たくさん語りたいことはありますが、こんな作者の後書きなんて読者さまは興味がないと思うので、ここまでで。
あ、でもこれだけ。ちょっとだけ来ていた“主人公の名前の由来は?”というものですが。
由九咲 シュウ
↓
行く先 終
↓
過去へ“行く”とともに、“先”へ進む。それが物語の“終”わり
というものでした。……さて、おまけです。これで期待してくれる人がいたら、またがんばります。
EX-1「私/おじさんで、童貞捨てたくせに……」
日常へと戻ったシュウとホシノ。でも、大きく変化したふたりに対策委員会のメンバーと先生が気づかないはずもなく。
「ん。先輩、大人になってた」
「急に呼び捨て!? 昨日の今日で何が……?」
「ホシノ先輩、シュウ先輩を見る目が艶やかと言いますか……」
「おふたりはあつあつ、ですね〜?」
「シュウ、正座しよっか?」
EX-2「クククッ……まさに愛の力、ですねぇ」
黒服との会話。なぜ、ホシノの記憶が消えないのか。なぜ、自分の体は突然、強くなり始めたのか。
「さぁ……本当にわかりませんよ」
「……今、なんと?」
「クク……なるほど、貴方は大人へと成長し始めているのですね」
「これは、1人の大人としてです。……避妊は大事ですよ」
以上です。これでおまけは終わり!
……
…………
………………
ここまでスクロールした欲しがりな貴方へ。本当に最後のおまけを置いておきます。
Vol.2 並行世界のラブロマンス
「ひぃ〜ん! 助けてぇ、ホシノちゃん、シュウくん〜〜!!」
「このバカ先輩! 栄養全部、乳に持ってかれてるだろ!?」
「“シュウ”、ユメ先輩はほっておきますよ」
「で、でも……」
「自業自得です」
「(ほんと、あっちのホシノと同じだなこいつ)」
「うぇ〜ん……“1年生ふたり”が冷たいよ〜……」
「(でも、結局のところ、あの先輩は誰だったんだろう?)」
というか、ここ過去じゃないよね? え、多世界解釈? なに、それは。