ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」   作:群缶

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※Vol.2より先のお話です。
※ラブコメ、ギャグ寄りです。

シリアスを書くのが疲れたので息抜き回です。本編の未来はこんな感じになるんだ〜くらいで楽しんでね。

ちなみにこのお話を読む上で、私のおすすめのBGMは“Unwelcome School”か“Usagi Flap”です。これで察して。





#番外編:トリプルブッキングだろうと俺は生き延びてみせるッ!

 

 

【シュウくん、次はホシノちゃんの方!】

 

 

 どうして。

 

 

【あ! ごめん、ヒフミちゃんも!】

 

 

 どうして。

 

 

【うぇ! 今度はシロコちゃん!?】

 

 

 どうして……?

 

 

【ひぃ〜ん!! 同じタイミング〜〜!? ……あ】

 

 

 どうして、こうなったんだ。

 

 右耳のインカムから聞こえる、泣きべそをかいて悲鳴を上げているであろうユメ先輩の声。

 

 彼女にサポートをしてもらって、運悪く被った3つの約束を掻い潜ろうとした。

 

 でも、それもおしまい。

 

 だってね。

 

 

「あ、あの……一体?」

 

 

 左には困惑した顔のまま、両手で買ったばかりの大きなハート付きペロロぬいぐるみを抱えたヒフミ。

 

 

「ん。しっかりと説明責任を果たすべき」

 

 

 右には無表情に見えながらも、眉をしっかりと顰めて不機嫌そうなシロコさん

 

 

 そして。

 

 

「……シュウくん、これってどういうことなのかな?」

 

 

 多分……いや、絶対に全てを察して満面の笑みを浮かべながら、ずいっと詰めてくるホシノ。

 

 笑顔、なんて言ったけど目が笑っていない。だって、いつかの日に写真で見た1年生の時の鋭い瞳になってるんだもん。

 

 

「は、はは……」

 

【あわわ……】

 

 

 自分の口から漏れる引き攣った笑い。耳のインカムから聞こえる焦り切った先輩の声。

 

 なんとか誤魔化そうと頭を回そうと右往左往する自分の視線。でも、こっちが口を開くより先に3人が同じ1人の名前を呟いて、声が喉の下に引っ込む。

 

 

「シュウくん……?」

 

「シュウ」

 

「シュウくん」

 

 

 悲しそうなヒフミの視線。

 

 冷たいシロコさんの視線。

 

 声のトーン以外、完全に過去のものに変わったホシノ。

 

 

「「「説明、してくれ(ますよね)る?」」」

 

「………………これはな、その。……違うんすよ」

 

【ひぃ〜ん……!】

 

 

 なんでこうなったのか。それは少し前に遡る。

 

 

 

 

▼ステップ1・ホシノとデートの約束

 

 

 

 

「ねぇ、シュウくん」

 

「おん?」

 

 

 ぼーっと自宅の窓から見慣れた景色を眺めていると、俺のベッドでゴロゴロしていたホシノが唐突に話しかけてきた。

 

 視線を外からホシノへ向けると、だらしなくグダっと力を抜いてうつ伏せでこっちを見ていた。

 

 

「今週の土曜日ってバイトとかなかったよね」

 

「おう、久しぶりに空いてるな」

 

 

 念の為に左手で携帯を操作し、シフトを確認するがしっかりと空白。

 

 ここのところ、俺の入院やリハビリ、ユメ先輩のトラブルで随分と忙しかった。

 

 それに加えてバイトもあったから、流石に辛くなって今週は休みにしたんだっけか。

 

 俺の返事を聞いてちょっとだけ嬉しそうな顔になったホシノは。

 

 

「それならさ、遊びに行かない?」

 

 

 と、どこか遠慮がちに誘ってきてくれた。

 

 これに対して嫌なんて返事をするはずもなく。

 

 

「いいぞ」

 

「うへへ、やった」

 

「どこ行く?」

 

「ん〜、それなら……」

 

 

 こうして、随分と久しぶりにホシノとデートに行くこととなった。

 

 

 

 

▼ステップ2・ヒフミからのお誘い

 

 

 

 

「うおぉぉぉぉ!!!」

 

「うわぁ〜〜ん!!!」

 

 

 ドカン、バコン。

 

 激しい銃声と爆発の熱風を背後から感じながらも、一心に前だけを見て走り続ける俺とヒフミ。

 

 場所はブラックマーケット。たまたま買い物をしていた俺の携帯に一件のモモトークがとんで来たことで、今の状況が生まれていた。

 

 

ヒフミ『シュウくん、たあskぇて!』

 

 

 酷い誤字まみれのメッセージに嫌な予感。同時に近くで起きた爆発。

 

 ああ、このパターンも久しぶりだな、と行ってみれば案の定、スケバンたちに追いかけられるヒフミの姿を確認した。

 

 ホント、すっごいデジャブ。

 

 

「本当にいっつもこうだなぁ!?」

 

「ごめんなさいぃぃ〜〜!!」

 

 

 どこかのギャグ漫画みたいに叫びながら逃げること数十分。

 

 ようやく落ち着いた俺とヒフミは、トリニティ自治区近くの喫茶店でお茶をしていた。

 

 軽い談笑の中で、“あっ”と何かを思い出したようなヒフミから。

 

 

「シュウくん、良かったらなんですが今週の土曜日、一緒にお出かけして欲しいんですが」

 

「えっと、その日なら確か空いているはず……」

 

 

 と言ったところでホシノとの約束を思い出す。

 

 

「あ、土曜日は」

 

 

 埋まっている、という前にヒフミが興奮したように嬉しそうな笑顔で。

 

 

「ホントですか! 実は限定のペロロさまぬいぐるみが出品されるらしくて!」

 

「え。あ、あの」

 

「以前のようにカップル専門のお店で行き辛かったんですが……。シュウくんが来てくれるなら、すっごく助かります!」

 

「…………うん」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 とっても良い笑顔で、すっごく高揚した声音でこんなことを言われては。

 

 

「……ハイ」

 

 

 ノー、と言えなくなったわけでして。ホシノとデートの日に、ヒフミとの約束ができてしまった。

 

 

 

 

▼ステップ3・シロコとナイショのおでかけ

 

 

 

 

「シュウ?」

 

「あれ、シロコさんだけか」

 

「うん」

 

 

 夕方の対策委員会の部室にて。

 

 ひとりでパイプ椅子に座って、銃の手入れをするシロコさんとたまたま出会う。

 

 放課後の遅い時間というのもあって他のみんなはすでに帰ったようで、俺はちょっとした忘れ物があったから戻ってきた。

 

 ホシノは何やら野暮用とかで珍しく先に帰ったが、きっとユメ先輩との約束でもあったのだろう。

 

 

「えーと……あ、これか」

 

 

 目的のものを見つけて、バッグにしまっていると視線を感じて顔をその方向へと向ける。

 

 その先には、どこか驚いた顔で俺を見つめるシロコさんが。

 

 

「どした」

 

「ちょうど良いタイミングでシュウが来たから、少し驚いてた」

 

「良いタイミング?」

 

「うん」

 

 

 短い返事と同時に、珍しく困ったような顔をしているシロコさんからひとつの相談を受けた。

 

 

「ユメ先輩に?」

 

「そう、贈り物」

 

 

 なんでも、来週の頭にみんなでアビドスに復学したユメ先輩にサプライズでお祝いのものを送るのだとか。

 

 他のみんなはすでに贈り物が決まっているが、シロコさんはまだ決めかねているようで、俺に相談してきたらしい。

 

 でも待ってほしい。

 

 

「俺、それ知らないんだけど」

 

「言い忘れてた」

 

「おい」

 

 

 しれっと言われてつい突っ込むが、一旦は置いておき。

 

 

「だから一緒に買いに行けたらって」

 

「そりゃ構わんけど、なんで俺?」

 

「え?」

 

「はい?」

 

 

 何を言っているんだ? とでも言われそうな表情をしたシロコさん。

 

 単純にどうして俺に相談したのか、と聞いただけなんだけど。だって適任はホシノだろ。

 

 

「ホシノ先輩は女の子の視点」

 

「はぁ」

 

「シュウは男の子の目線」

 

「うん」

 

「ユメ先輩が喜ぶこと、欲しいものに詳しいのもシュウ」

 

「うん?」

 

 

 おや?

 

 

「ホシノ先輩、ユメ先輩を落としたシュウがピッタリ」

 

「待って」

 

「違うの?」

 

「……いや、えっと」

 

「ん、優柔不断」

 

「…………」

 

「たらし」

 

「人聞きが悪いっ!!」

 

 

 怒涛の罵詈雑言に思わず口を開く。

 

 今のこの状況、関係性はとっても、と〜〜〜っても複雑な経緯があって出来たものなのは、シロコさんも理解しているはずなのに、嬉々としてからかってくる。

 

 

「でも、ユメ先輩のこと、詳しいでしょ」

 

「う……」

 

「だから、お願い」

 

「別に構わないけど……」

 

「やった」

 

 

 安心したように笑うシロコさんを見て、ため息を吐きながらも“しょうがない”と笑って許してしまう。

 

 同級生だが、末っ子感とでも言う雰囲気を持つ彼女には甘くなってしまう自分がいる。

 

 

「来週の月曜日ってことは明日か明後日に行くんだよな?」

 

「うん。日曜日はノノミと約束があるから明日」

 

「了解……ん?」

 

 

 明日? と日付を確認した瞬間に背筋に冷や汗が落ちる。

 

 

「あ、あのさ」

 

「うん?」

 

「明日なんだけど」

 

「うん、ギリギリだからすっごく助かった」

 

「……」

 

 

 ほっとした表情で滅多に見せない笑顔のシロコさん。

 

 これに、ノーと言えと?

 

 

「最近、シュウも大変だったから久しぶりに遊びたいのもある」

 

「……ウン」

 

「楽しみにしてる。……じゃあね」

 

 

 鞄を肩にかけて小さく手を振ったシロコさんを見送り、そっとパイプ椅子に座る。

 

 

「…………ふぅ」

 

 

 机に肘をついて、どこぞの司令官のようなポーズで大きな息を吐く。

 

 さて、状況の確認だ。明日1日に詰まったものは。

 

・ホシノとお出かけ

・ヒフミとお出かけ

・シロコさんとお出かけ

 

…………。

 

………………。

 

 

「……詰んだ?」

 

 

 カーカー、とカラスの鳴き声。ほぼ落ちた陽の光が照らす部室でひとり途方に暮れた。

 

 

 

 

▼ステップ4・助けて、ユメ先輩!

 

 

 

 

「助けてユメ先輩ぃぃ!!!」

 

「ひゃあぁぁ!!??」

 

 

 隣の部屋に住むユメ先輩の部屋に制服のまま突撃し、スライディング土下座をかます。

 

 時刻は夜の8時過ぎ。もうすでにお風呂を終えたであろうパジャマ姿のユメ先輩が悲鳴をあげた。

 

 

「うぇ!? シ、シュウくんっ!?」

 

 

 突然の登場に加えて土下座をした俺を見て、きっと慌てながらあわあわしているユメ先輩の姿が簡単に想像できる。

 

 知っている仲とは言え、一人暮らしの女の子の家に無断で入り込み、突然の土下座。

 

 失礼で無礼なのはわかっている。だが、今は焦りでそんなことを考えている暇も余裕も俺にはなかった。

 

 というか、ユメ先輩も俺の家にいつも勝手に突撃してくるし、大目に見て欲しい。

 

 

「どうしたの……? 何かあった?」

 

 

 おっかなびっくりと言った声で、地におでこをつけていた俺の頭を撫でてくるユメ先輩。

 

 第三者から見れば、相当シュールな光景に違いない。

 

 どう見ても通報案件だし、こんなことをしてきたヤツなど追い出されてもおかしくない。

 

 けど、ユメ先輩は優しく声をかけてくれる。

 

 

「私にできること、ある? なんでも言って?」

 

「う、うぅ……」

 

「わわ……。だ、大丈夫だよ〜、よしよし」

 

 

 優しい……。これならきっと今の俺の状況を理解してくれるし、相談に乗ってくれるはずだ。

 

 意を決して、今起きてしまっていることをユメ先輩に打ち明ける。

 

 

「——ということがあってホシノ、ヒフミ、シロコさんと予定がかぶってピンチなんです!」

 

「……」

 

「あれ?」

 

 

 特に返答がなく、頭を上げてユメ先輩を見ると。

 

 

「む〜」

 

 

 ぷくーっと頬を膨らませて怒った顔の先輩とこんにちはした。なぜ?

 

 困惑した顔をしていたであろう俺の顔を見たユメ先輩は、撫でていた手をこっちの頬に伸ばして。

 

 ぐに〜ん

 

 

「ふぇ(せ)、ふぇんはい(先輩)?」

 

「それって全部デートだよね?」

 

「ひがいまふよ(違いますよ)!?」

 

「女の子と2人で出かけるのに?」

 

「…………」

 

「ほらー!」

 

「いはい(痛い)! いはい(痛い)!!」

 

 

 もう! と怒ったままより強く頬を伸ばされる。

 

 そのまま正座+お説教に。

 

 

「経緯的に断りづらかったのはしょうがないけど。とっても悪いことしてるよ、シュウくん」

 

「は、はい」

 

「あのね、よく考えてみて?」

 

「はい……」

 

 

 これまた珍しく真剣な顔で怒られてしまい、落ち込む。

 

 だが、そのおかげでいかに自分がとんでもないことをしているかに気づいた。

 

 確かに慣れすぎて意識していなかった(主にキヴォトスの人が女性だらけゆえに)が、これって女の子を引っ掛けまくってるヤバいヤツなのでは?

 

 

「しかも、それを私に相談するのもよくないよ?」

 

「う」

 

「ホシノちゃんはまだしも、他の子とでしょ」

 

「はい……」

 

 

 今度は別の意味で怒られ始めた。まずい、本当にまずい。

 

 色々となあなあになっているが、ただでさえ先生にユメ先輩とホシノのことでお叱りを受けたばかり。やってしまった、と反省する。

 

 謝ろうと顔を上げると、膝を抱えて座り、同じ目線になったユメ先輩と近距離で視線が交わる。

 

 

「もぅ……私だってシュウくんとお出かけしたいんだよ〜?」

 

「え、そっち?」

 

「嫉妬もしてるもん。ばか」

 

「う、うっす……ごめんなさい」

 

 

 困ったような笑顔でそう言われて。

 

 反省しなきゃいけないのに、心のどこかで“嬉しい”という気持ちが芽生えた自分を殴りたい。

 

 変な空気になりかけて、ユメ先輩がハッとした顔をした次にはコホン、と咳払い。

 

 いつもの表情になった先輩は両手でグッと拳を作り。

 

 

「でも、もうしちゃったものはしょうがないし。なんとかしよ!」

 

「せ、先輩……!」

 

 

 と頼りになる言葉をくれた。

 

 で、これは後日の話になるけど。

 

 あの最悪の相談をどうして受けてくれたのか、とユメ先輩に聞いたところ。

 

 

「シュウくんが私を真っ先に頼ってくれたの、実は嬉しかったんだ。えへへ……」

 

 

 なんて、頬をかきながら照れた顔で言われてしまって、何も言葉を返せなかったのは、また別の話。

 

 

 

 

▼ユメ・プレゼンツ“わくわく!トリプルブッキングなんとかしちゃおう大作戦”

 

 

 

 

 さて、そこからはユメ先輩と明日の決戦に向けての作戦会議がスタート。

 

 まずは状況を整理して、誰とどこに行くか、時間はどうするかなどを詰めて行った。

 

 でもいくらここまでスケジュールを詰めても、ホシノたちがどう動くかなどを把握して、それを随時おしえてくれる人がいないと難しそうだった。

 

 ユメ先輩と2人で顔を見合わせて、難しい顔をしているとピコン、と何かを思い出したかのように先輩の表情が明るくなる。

 

 バタバタと部屋のタンスやらをひっくり返し始め、“あった!”と何かを取り出してテーブルの方に戻ってきた。

 

 

「これ!」

 

 

 元気な言葉とともに手渡されたのは、2つのインカム。

 

 なんとなく見覚えがあったが、これ前に先生から渡された緊急連絡とかに使うやつか。

 

 

「確かにこれがあればユメ先輩の声は聞こえますけど、みんなの場所とかは……」

 

「もちろん考えてるよ! ちょっと貸してね」

 

「? はい」

 

 

 俺の携帯を何やら弄り出したユメ先輩。何をしているのだろうか。

 

 ロックを外されて、モモトークを開いたところまで黙ってみていたが、“あれ?”と一瞬、違和感を覚える。

 

 でもその疑問が出てくる前に、ユメ先輩が作業を終えた。

 

 

「えーっと、こうして……あとはモモトークを……完成っ」

 

 

 そう言って見せられたのはユメ先輩のスマホ。画面には“俺のモモトーク”が入っていた。

 

 

「あー、同期したんですか」

 

「そうそう。あとはこれでシュウくんが他の子たちと連絡を取らなくても、私がなんとかできるよ!」

 

「おー! 天才!」

 

「いえーいっ!」

 

 

 深夜1時。もう子どもとは言えない見た目、年齢の2人がキャッキャと喜んでいた。深夜テンション?

 

 俺が携帯を操作しなくても、ユメ先輩がトークから他の2人に会話で誤魔化してもらい、動きがあればインカムで指示。

 

 あとはうまいこと時間を調整しつつ、トイレなどの言い訳を混ぜて3人に付き合えば……。

 

 

「「完璧〜(だな)!!」」

 

 

 もう一度言おう。俺たちは深夜テンションだ。

 

 どうみても穴だらけの作戦だが、テンパってポンコツと化した俺。元からポンなユメ先輩。

 

 コイツらが考えた急ごしらえの作戦がうまくいくと思う??

 

 ……では、答え合わせへ。

 

 

 

 

▼以下、ハイライト。

 

 

 

 

「シュウくん、またトイレ?」

 

「あー、えーっと」

 

【まずいよぉ〜、ヒフミちゃんから場所聞かれてる〜〜!!】

 

「も」

 

「も?」

 

「漏れるーーー!!!」

 

「え、ちょ……!」

 

 

 

「シュウくん、体調が悪いんですか……? 無理せず休んだ方が……」

 

「モーマンタイ! めっちゃ元気!」

 

「そうですか? えへへ、それなら……」

 

【ひぃ〜ん! シロコちゃんから鬼電っ!】

 

「バチクソに吐き気がっ!」

 

「へ?」

 

「トイレぇ〜〜!!!」

 

「あ、え!?」

 

 

「シュウ、顔色悪い」

 

「はぁ……はぁ……そ、そうか?」

 

「息も上がってる」

 

「はぁ、はぁ……んなこと……はぁ……ないぞっ!」

 

「ん。大丈夫……?」

 

「全然、へい——」

 

【うわぁ〜ん! ホシノちゃんとヒフミちゃんがぁ!!】

 

「きじゃないからトイレ!!!」

 

「…………む」

 

 

 これを何度繰り返したのか。

 

 元々無理があるし、前とは違って完全に貧弱な体になった俺には、あまりにも過酷なスケジュール。

 

俺の走るペースは落ちて、だんだんと3人の居場所は自然と近くなり……まぁ、なんだ。

 

 

「へぇ、私たち3人同時に?」

 

「むぅ……なんだかモヤモヤします……!」

 

「シュウ、最低」

 

「……………」

 

「目を泳がせても逃さないよ〜〜?」

 

「おこですっ!」

 

「ん、きっちりお仕置き」

 

 

全部バレてばっちりシバかれたってワケ

 

 

 

 

▼

 

 

 

 

「う、うぅ……」

 

「……ふふ」

 

 

 ボロボロのまま家に帰ってきて、気を失ったシュウくんの頭を膝に乗せてそっと撫でる。

 

 うなされるように顔を顰めて、寝言で何やら呟くのが聞こえて耳を澄ませる。

 

 

「ごめん……なさ………」

 

「もぅ、夢でもホシノちゃんたちに謝ってるの〜?」

 

 

 小さな声で問いかけるが、もちろん返事はない。

 

 思ったよりも酷い目にあったようだし、疲れているからか本当にぐっすり。

 

 

「……う〜ん」

 

 

 ちょっとだけ“やり過ぎちゃった”かな?

 

 手元にある携帯に目を向ければ、そこにはシュウくんのモモトークのアカウントが表示される。

 

 通知は全部で3件。相手はホシノちゃん、ヒフミちゃん、シロコちゃん。

 

 軽く確認しただけでしっかりとは読んでないけど、要約すると全部“やり過ぎちゃってごめんね”というもの。

 

 

「みんな良い子だねぇ〜。……悪いのはシュウくんなのに」

 

「ぅぐぐ……」

 

 

 苦しそうないびきを出すシュウくんのほっぺをむにゅーっとつまむ。

 

 こうしているだけで楽しくなっちゃうのは、どうしてなのかな。

 

 

「……わかりきってること、だね」

 

 

 いっぱい走って、怒られて。きっとすごく疲れたと思うけど、これも罰。

 

 ほんの少しの嫉妬も混ざっているけど、これが良い薬になれば、なんて思惑もちょっぴりあったり。

 

 だって、そうしないと。

 

 

「これ以上、私やホシノちゃんみたいな子が増えたら……お互いに困っちゃうでしょ?」

 

 

 撫でていた手を離して、ぎゅっとシュウくんの頭を抱きしめる。

 

 今日の日中は、みんながシュウくんと一緒にいたし。

 

 

「夜は、私の番だよね?」

 

 

 

 

 

 この状況が果たして、彼女の“ポン”によってできたのか。

 

 はたまた、何か別の誰かによって作られたものなのかは……みんなの想像次第。

 

 

 

 

 

 

 






「お痛はめっ、だよ?」

「はい……」






ちょっとだけ未来の騒がしくも楽しい……楽しいのかな……まぁ、そんな日常のお話でした。

またちょこちょこ番外編は更新していきます。こっちは基本コメディなので、本編のシリアスに疲れたら覗いてみてね。


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