ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」 作:群缶
プロローグからここに続くってワケ。
ということで、これにて完結。これまでありがとうございました!
……あとがきの次回予告は気のせいです。
「あーあ……」
「…………なんすか」
「痛いでしょ、それ」
「……………甘んじて受け入れてます」
「クク。お似合いですねぇ」
「お前の顔にも同じ痕をつけてやろうか??」
ベッドに座り直した俺。対面には備え付けの椅子に座った大人ふたり。
話している内容は、さっきまで行われていた……と言うか俺が原因で起きたどんちゃん騒ぎについて。
とんでもない勘違いをしたホシノにこってり怒られ、意気消沈している。
今の俺の顔には、まるでアニメに出てきそうなほど綺麗な赤い手形が残っている。
「うーん、手を出すのは良くないけど」
「アレはシュウさんの失言と“やらかし”のせいですから。今回ばかりは私も同情できません」
「……だから甘んじて受け入れてるし、言い訳をするつもりもない」
何があったか、それはね。
“は? ユメ先輩と学校生活?”
“そのうえ、ずっと一緒に寝泊まり?”
“……ユメ先輩、何をニヤけているんですか”
“全部ゲロってください。ほら、早く”
“……………へぇ。私と言うものがありながらユメ先輩に”
“うへ!? ま、まぁ……そうですよね! 私が一番ですもんね!”
“……まってください、今なんて言いました? もうひとりの私? 告白?”
“は? は? そんなことまでしたんですか??”
“……シュウ先輩のばかぁ!!!”
やめよう。思い出すだけで鬱になりそうだ。
どんよりした俺を見て苦笑いをこぼす先生。さっきまではお叱りモードのようだったが、今は慰めてくれている。
「流石に同情するよ。厄介だね、シュウの体質は」
「もう諦めてますよ。でもこれ以上はないでしょ? タイムスリップに死者との会話、果てに復活とかSFにも程がありますし」
「ク、ククク……」
「そ、そうだね?」
「おい、2人して顔を逸らすな。こっちを見ろ」
不安になるからこっち向いて? フラグじゃないから、ほんとだから。
……閑話休題。話題は変わって、つい先ほどまでこの場にいたホシノとユメ先輩について。
「とりあえず病衣を借りたけど……すごかったね、ユメ」
「その、まぁ……そうっすね」
「私からはノーコメントで」
随分と酷い下ネタを先生からぶち込まれて、突っ込むか否かを悩んだ果てにひとまず同意した。
下世話なものだが、先生は本当に“すごい”と思っているようで、セクハラの雰囲気がなかったから、変に踏み込んだことを言えなかった。
……“どこ”とは言わないけど、もうね。溢れるというか、すでにはみ出しているというか。
サイズはぴったりのはずなのに、一部分の存在感が凄すぎて目を丸くしたよね、うん。
「あそこまで大きいと羨ましいって感情が湧かないよ。いやー、上には上がいるんだなって」
モミモミと自分の胸を揉んで考え深く頷く先生を見て、すごく居た堪れない気持ちになってくる。
うーん。やっぱり持たざる者からすると、アレは羨ましいものなんだろうけど、規格外すぎてそんな気持ちも生まれないのか。
あの黒服ですら我関せず、ってな感じで虚空を見上げてるし。
“ホシノが死んだ目になった気持ちもわかるなぁ”とか呟いている先生に、言いにくいながらも遠回しに男性陣の気持ちを伝える。
「あの、その……異性からするととっても触れ辛いこと、と言いますか」
「……シュウさん、勇気ありますねぇ」
「ああ、ごめんね。でも、シュウからしてもアレはすごいんじゃないの?」
「すっげぇです、でっけぇです。最高でした」
「は?」
「失礼しました、失言です……!」
「口を滑らせる達人ですか、貴方は」
思わず反応してしまった。だってアレに包まれたことがある人間からすると、あの感動をついつい共有したくなると言うもの。
人工的には絶対に再現できない温もりと柔らかさの暴力。触れないと味わうことができない快楽の極致だよ、ユメ先輩の胸は。
なんてひとり頭の中で考えていると、訝しんだ顔をした先生が懐疑的な声音でひとつの質問を投げかけてきた。
「あのさ。その口ぶり、もしかして触ったことあるの?」
「そんなわけないじゃないですか、はははは」
「“最高でした”って過去形の言葉だよ」
「ははははは」
「シュウ?」
「は、はは……」
まずい、まずいぞ。
ユメ先輩とホシノがいないからって気を抜いていた。
ホシノとの関係を応援、と言うか……“責任取らなきゃだよ?”と日頃から言っていた先生に、今の俺の反応は悪手すぎる。
どうする、どうやって誤魔化す? じっと見つめてくる先生から視線をずらし、この場にいる男側である黒服につい目線を向ける。
愉しそうに俺と先生の会話を聞いていた(?)黒服は口元を歪めてひと言。
「黙ったままでは、きっと先生からホシノさんに報告されますよ?」
「俺、ユメ先輩の胸に飛び込んだんです」
「より悪い未来が予感できたからって、唐突に告白するのはびっくりするからやめよ?」
「あと一緒に寝ましたし、ぶっちゃけ揉みました」
「より深刻になりそうなことまで言わないで!? ホシノが聞いたら卒倒するよ!?」
「なので黙っててくれません……?」
「それとこれは話が別だよ」
「素直に話したのに……?」
「うん」
「クク、愉快ですねぇ」
……。
…………。
………………。
「……はぁ。うん、まぁね」
「……はい」
「あくまで夢の出来事で、現実のことを忘れていた……なら仕方ない部分もあるのかな」
「ですよね!」
「急に元気にならない」
「はい」
まだわからないことはたくさんあるけど、とりあえず自分が理解している範囲で何があったかを説明した。
あの世界での出来事、俺から神秘が消えた理由、それから……その。
「最後だと思ったとはいえ、そんなことをユメに言ったの?」
「違うんです……アレは俺じゃない俺というか……」
「ですが、その時点でシュウさんの記憶は戻っていたのでは?」
「……………いや?」
「シュウ」
「………戻ってました」
違うんすよ、本当に。あのときは俺の中にもうひとつ人格があったと言うか。
なんと表現すれば適切かはわからないが、“アビドスに1年生として入学した別の自分”が出来上がっていた、みたいな。
「だから、あの世界での自分の気持ちに嘘を吐きたくなかったんです。最後になるなら、しっかり伝えたかったんです」
「かっこいいこと言ってるけど、ユメはこっちにいるよ?」
「ホシノが嬉しそうで良かったですね!」
「責任って言葉、しっかり理解させてあげようか」
「ひぇ……!?」
にっこり笑顔、でも目が笑っていない。
「まぁまぁ。落ち着いてください、先生」
「む」
「く、黒服……?」
まさかの助けの手に、もう上がることはないと思っていた黒服への好感度が上昇していくのがわかる。
お前、こんな俺を助けてくれるのか?
「あくまで夢の世界の話ですから。そこも含めて多少は情状酌量の余地はありますよ」
「うーん……まぁ、たしかに」
「黒服……!」
足を組み直し、手のひらを振りながら先生へ俺の擁護を話してくれる。温情を感じる言葉に感動すら覚え始める。
俺、ずっとお前のことを勘違いしていた……! ありがとう、黒服————
「ですが」
「ん?」
「え?」
「シュウさんも男です。たとえ幻の世界だったとしても、一度口から出した言葉を誤魔化すことはないでしょう?」
「ふむふむ」
え? あれ? 流れ変わった?
今の今まではフラットな口調で理性的な声音だったのに、突然早口になり始めたんだが。
「黒服……?」
「しかもそれが女性相手。さらには夢ではなく現実に現れたのです。しっかり幸せにする義務がある」
「うんうん」
「黒服さん、ちょっと?」
「シュウさんもユメさんのことをずっと……いえ」
一度言葉を区切った黒服。その表情は今日……いや、今までの中で一番晴れやかで。
「一生をかけて、最後まで責任をとって幸せにするでしょう。ホシノさんとともにね……ククク」
溢れるほど邪悪で愉快そうな笑顔だった。こ、こいつ。
「は、謀ったな!?」
「おや? ではユメさんを幸せにする気はないと」
「シュウ?」
「最後まで
「クク、それが聞けて安心しました。これからも愉しみにさせていただきますよ」
では、と言いたいことは全て言ったとばかりに立ち上がり、背を向けた黒服。
この野郎、結局のところ俺の今の状況を楽しんでいただけだな?
本当にタチが悪いし、ムカつくけど……うん。
「黒服」
「はい?」
俺の声に反応して足を止め、振り返った黒服。
その顔には純粋な疑問が浮かんでいた。きっと俺が呼び止めるとは思っていなかったのだろう。
言いたい文句は山ほどあるし、本来なら絶対に交わらないような敵という間柄。
でも、今回の件に関しては。
「世話になったよ。セトの件とか、俺のトラブルとかさ。だから、ありがとう」
「…………。クク、ククク……貴方は本当に面白い人だ」
「へ?」
意表を突かれたような顔をしたと思えば、顔を押さえて笑い出した黒服。
どうかしたのだろうか、と頭にハテナを浮かべていると。彼は珍しく悪意のない笑みを浮かべて口を開いた。
「なんでもありませんよ。その言葉は、素直に受け取っておきます」
「おう。またな」
「ええ。では」
何かおかしなことを言ったのかな、と自問自答。
いくら敵とは言え、そこそこ交流があったし助けてもらった。なら感謝を伝えるのは当たり前のこと、だよなぁ。
「って、なんですか。変な顔して」
視線を感じて横を向くと、口をもにょもにょさせて眉を顰めた先生がジッと俺を見つめていた。
端的に表現するとその顔は、怒りを通り越して呆れているみたいだった。
「さっき私さ、“シュウは体質のせいで苦労してる”みたいなこと言ったよね」
「? はい」
「前言撤回。キミ自身にも原因あると思う」
「へ?」
「人たらし」
「はい??」
なんかすっごく不名誉なことを言われた気がする。
大きなため息をついた先生はそのまま椅子から立ち上がる。
「そろそろ私も行くよ。夜も遅くなっちゃうし、ユメとホシノを迎えに行かなきゃ」
「はい。お願いします」
あの2人は今ごろ屋上とかその辺りで話をしているはず。
チラチラとユメ先輩を見ては口を開き、閉じていたホシノに俺から“2人で話してくれば?”と提案したことがきっかけ。
詳しくは知らないが元々は交流があり、とても仲が良さそうな間柄だったし。
複雑な顔をしたままのホシノを見て、そんな提案をしたのだが随分とビビっていたなぁ。
一方で“ホシノちゃん、行こう!”なんて、病衣の姿で元気に走り去っていたユメ先輩には、つい苦笑いをこぼしてしまった。
本当に死んでたの、あの人?
「ひとまず経緯が経緯だし、ユメのことは私の方でなんとかするね」
「その、できれば」
「わかってるよ、しっかりアビドスに行けるようにするから」
「はは……ありがとうございます。察しがいいですね」
前代未聞の事情を持つユメ先輩。彼女にはなるべく平穏な生活を送ってもらいたい。
だから先生に頼もうとしたが、俺が言い終える前に頼み事を察して了承までされてしまった。
本当に生徒思いというか、優しい人というか。なんでここまで察知できるのだろうか?
「私は先生ですから。まぁ……あとはシュウの場合は顔に出過ぎ」
「今まさに心を読まれて動揺しました」
ドヤ顔でウィンクしながらふざけるように言われて、俺も素直に賞賛の言葉とともにふざけかえす。
それが心地よかったのか、笑みを浮かべた先生はどこかご機嫌だ。
「ふふ。じゃ、退院したらまた詳しく聞かせてもらうね」
「はい」
じゃあね、と手を振って去っていく先生を見届けて、息をひとつ吐き出す。
突如として静かになった病室を見て、少しの寂しさと安らぎを感じつつ、立ち上がる。
「……っとと」
地に足をつけて腰を上げるのと同時にふらつく。
そういえばずっと寝たきりだったな。なんて思い出して、腕を触れば明らかに筋肉が落ちていることに気づく。
2週間も寝たきりだったなら仕方ないことか、と割り切って少し伸びをする。
窓を見ればもう暗くなっていて、自然と足が窓の方へと向かった。
「……」
思い返せばまた随分とすごい経験をしたものだ、と他人事のような考えが頭に浮かんで笑ってしまう。
多くの奇怪な運命を辿った人はいると思うけど、俺も中々なものなんじゃないかな。
ぼーっと窓から見える夜の景色。薄い灯りと街並み、何かのお店と賑わう人々を見て日常を感じつつ、ここが現実だと改めて実感する。
あの世界では俺とユメ先輩にホシノしかいなかったからか、この当たり前の景色が実に心地良く感じる。
「シュウくん」
どれくらいぼーっとしていたのか、唐突に名前を呼ばれてほんの少しだけ驚きつつも振り返る。
目に映ったのは、病衣に身を包んだユメ先輩。
あれ、先生たちと一緒にシャーレに向かったはずでは。
「これから行くとこだよ。でも、その前に会いに来ちゃった」
えへへ、と笑いながら頬をかくユメ先輩。
ああ、そう言えば現実に来てからはまともに話していなかった。
「そうだよ? いっぱい話したいことあるんだから」
「俺もです。あ、ホシノとは話せました?」
「うんっ。ちょっとだけ私の知ってるホシノちゃんと変わってたけどね」
「あー、昔は尖ってましたもんね」
「あれ、シュウくんも知ってるの?」
そう聞かれて簡単に俺とホシノが出会ったきっかけや、何があったかを話す。
めちゃくちゃ端折ったものだったけど、目を輝かして聞いてくれたユメ先輩は。
「へぇ〜。すっごいロマンチック! もっと聞きたいけど……」
「先生とホシノが待ってるんでしょ? 今度話しますよ」
「うん! でも残念だなぁ」
「何がです?」
うーん、と悩ましげな声を出し、惜しむような表情になったユメ先輩が気になって、どうしたのかと聞いてみる。
「だって、昔のアビドスにシュウくんが来てたなら、もしかしたら私も会えてたのかな〜って」
「……」
つい、言葉が出なくなってしまった。
ああ、そっか。当たり前のことだけど、今のユメ先輩は知らないもんなぁ。
ちょっぴり残念な気持ちになった俺を見て、何を勘違いしたのか。
慌てるように両手をぐっと握ってふんす! とポーズしたユメ先輩は気合いたっぷりに。
「そんな状況のシュウくんを見たら、きっと力になってたよ!」
「……ぁ」
「それで“また会おうね”って仲良くなれてたと思う!」
“じゃ、またね! もしアビドスに来ることがあったらよろしくね〜!!”
「……ぷ」
「はぇ?」
「く、ふ……ははは」
「え、え?」
突然笑い出した俺を見てオロオロし出したユメ先輩。まぁ、彼女からしたら意味不明か。
でも、許してほしい。まさか記憶がないはずなのに同じようなニュアンスの言葉を、本人から言われるとは思わなかったのだ。
困惑した顔のまま、握った手をどうしたらいいか分からなくなっているユメ先輩を見て、また笑いそうになって。
うん、なんだ。うまく言葉にできないけど。
「すみません。その、なんというか」
「ん? なぁに?」
「俺、先輩とこうしてこっちで会えてよかったです」
「へ……?」
「
「……………っ」
「え、先輩?」
ぶんっ! と効果音が出そうなほど素早く顔を背けたユメ先輩。
何か機嫌を損なうような言葉を言ってしまったのだろうか。
ちょっとだけ不安になり、恐る恐るユメ先輩の顔を見ると何かをぶつぶつと呟きながら。
「なんで顔を赤くしてるんですか?」
「羞恥心の無いシュウくんには、一生わからないもん……!」
「えぇ……」
ぷっくりと頬を膨らませて、“おこです”みたいな顔になった先輩の言葉に困惑の声が出てしまった。
「ストレートなのは嬉しいけど、シュウくんにはホシノちゃんがいるでしょ!」
「? はぁ」
「……わかってないのに返事するのは良くないと思うよ、私」
「え、だって本当に意味がわからないというか」
「…………ふ〜〜〜ん?」
あ、嫌な予感。
今の今までしていた乙女っぽい顔はどこへやら。珍しく黒い笑みになったユメ先輩がずん、と迫って口を開く。
「シュウくん、あのね」
「は、はい」
「私、シュウくんのこと好きなの知ってるよね?」
う……。その話を持ち出します?
蘇るのは、あの夢が覚める一瞬での告白。……急に恥ずかしくなってきた。
「……まぁ」
「でも、キミはホシノちゃんがいるよね?」
「……はい」
「そんな男の子から“一緒にいれて嬉しい”って言われた私は、どう思うでしょうかっ!?」
言われてハッとする。
まずい、今日は失言を連発しすぎだな、俺。
あまりにもデリカシーがないというか、酷い勘違いをさせそうな言葉というか。
…………でも、なんだ。
「その」
「反省すること! だめだよ、そういうのを気軽に言ったら————」
「さっきの言葉も、“あの世界で最後に伝えた想い”も嘘じゃないですよ」
「勘違い、しちゃう……から」
「言わないと、伝わらないですし。やっぱり俺、ユメ先輩とまた会えてすっごい嬉しいです」
ここは嘘の世界、夢じゃない。全部が本当の現実。
だから、あっちでしか伝えなかった偽物には別れを告げて、本物をしっかりと伝えたかった。
まだどこか“自分はこっちの住人じゃない”、みたいな物言いをするユメ先輩に“貴女はここにいる”と言いたくて、そんな言葉を送った。
「………………」
「あの、先輩?」
本当に他意はなく、ただそれだけ。
振り返った今だから言えるけど、そりゃ先生も呆れるし、ホシノもブチギレるわなぁと。
だって、“勘違いするから言うな”と警告してきた直後に、こんな言葉を言ってしまったら。
「……もう、本当に」
そっと両肩を掴まれる。力はほとんど入ってないし、優しいものだったが不思議と振り解ける気がしない。
「せ、先輩?」
どこか怖い雰囲気になったユメ先輩。顔は下を向いているせいでわからないけど、声が少し震えている気がする。
「我慢、ってね。限界があるの」
「限界……?」
「ホシノちゃんからは、その辺はゆっくりシュウくんを交えて後日に話そう、って言われてたんだけど」
「待ってください、その辺って」
なんですか、と言う言葉は口から出なかった。
音が出るはずの部位は、とてもしっとりして柔らかなもので塞がれて。
視界は儚げで美しい少女の赤くなった顔がめいいっぱいに映っていて。
たぶん、時間にしたら数秒だったはず。けど体感ではとても長く感じて。
ゆっくりと離れていく、切ない感触と自分以外の体温にハッとする。
「な、ななな………!」
何をしたんですか、なんて分かりきったことを白々しく言おうとしたがうまく呂律が回らない。
驚くくらいの動揺の中で、さっきの数倍は顔を赤らめて眉を八の字に下げたユメ先輩は。
「これに懲りたら、他の子にはしちゃダメだよっ」
とだけ言って、踵を返す。気づけばすでに病室から出てしまっていたユメ先輩。
焦って待ったをかけるが、その言葉を遮るように。
「こっちではファーストキスだけど、シュウくんとは“2回目”だから。……また、ね」
ドアから少しだけ顔を覗かせて、小悪魔チックな笑みとともに聞き逃せない言葉を残して去ってしまった。
残された俺は立ち尽くして、自分以外には誰もいない部屋の中で。
「ホシノと何を話したの……?」
絶対に俺が知ることはない会話内容を、絶対に返事が返ってこない状況で尋ねるようにつぶやいた。
▼
「梔子ユメです! みんなよろしくね!」
「ん、先輩が増えた」
「よろしくお願いします〜」
「うわ、おっき……」
「せ、セリカちゃん……!」
「うへ、みんな仲良くしてあげてね〜」
「えへへ。今度は同級生だね、ホシノちゃん!」
「側から見たらユメ先輩が留年したみたいですけどね」
「ひぃん……辛辣……。シュウく〜ん!」
「おー、よしよし。怖かったですねー」
「えへへ〜」
「イチャつかないでください近すぎます叩きますよ」
「すっごい早口………」
「シュウ先輩の目は死んでますし、すっごい棒読みですけどね」
「ホシノ先輩の殺気は
「う〜ん、また賑やかになりそうですねっ」
失ったもの、消えた彩がアビドスへと芽吹き、モノクロの夢は、色彩を得た現実へ。
青色に染まった春の物語はどこまでも続く。
また慌ただしい日常で多くの困難とトラブルに見舞われることがあるけれど。
俺たちの未来はきっとどこまでも、うるさいくらいには続くんじゃないかな。
Fin....?
▼あとがき
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。作者の群缶です。
Vol.1に比べて完結まで長くかかってしまいましたが、失踪せずに終わることができて安心しています。
はい、大事なことなのでもう1度。完結です!!
これも読んでくれている読者さま方や、評価、お気に入りをしてくれた貴方さまのおかげです。
書きたいことは結構あるんですが、そんなに長いこと書くのも良くないので、みなさまへの感謝だけで。
あとはちょっとした補足や、来ていた質問への回答。そして完結後といえばな、“次回予告”を挟んでおきます。
Q.プロローグの“重大な欠陥と矛盾”って?
A.そもそも並行世界の話じゃないよ! ということ。あと、ユメ先輩が生きているという点です
Q.これ浮気ですよね?
A.付き合ってない!シュウとホシノ付き合ってないもん!! ごめん。
Q.ユメ先輩と夢の中で何したの?
A.ユメの中には入ってませんが。まぁ、ちゅーくらいはしたんじゃないですかね
Q.ホシノ(クローン・デバイス)ってどうなったの?
A.寝てるんじゃないですかね? あの世界で出来た人格、生命は夢ですから。とはいえ、意思は残ってますし寝てるシュウの夢には出てくるんじゃないかな。
Q.あの世界のシュウはなんだったの?
A.本来(現実)のシュウ70%、夢の世界での生活を経てできたシュウ30%で構成された、ある意味では偽物です。
Q.シュウは最後、ユメ先輩になんて言ったの?
A.「例え偽物の世界で、俺自身も偽物だったとしても。ここで俺は貴女に恋をしていました」とかじゃないかな。答えは、ぼかした方がロマチックですしね。
Q.Vol.3、もしくは番外編やIFみたいな続きはあるの?
A.その答えは、下へスクロール!!!
▼(いつになるか分からない)次回予告
EX-1:「ん。責任はしっかり・ばっちり・どっかりと取るべき」
「えへへ……その。これからよろしく、ね?」
「やだやだやだぁ!! シュウ先輩は私のだし、ユメ先輩も私のなの!!」
「うわ、あまりのストレスに幼児退行……」
「私、考えを改めるよ、シュウ。……
「ん。責任はしっかり・ばっちり・どっかりと取るべき」
「俺、今ほど追い詰められたことないかも」
EX-2:え、多世界解釈? なに、それは
「そもそもシュウさんが手を出したのでは?」
「大も小も欲しがるのは、些か強欲すぎるかと」
「多世界解釈ですよ。他の世界では貴方が選ばなかった結果があるはずです」
「……まぁ、なんです。そう気を落とさずに。ですが、“幸せにする”というのは男の役目ですよ」
「うるせぇ!!」
以上です。またね!!
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τ...IFルート[トリニティ]:燃ゆる熾天使の檻の中で
「私が信じます。どんなことがあっても……例えシュウくんが嘘をついているとしても、絶対に」
α...IFルート[ミレニアム]:鍵が得る不確定で不条理な感情
【理解不能、です。どうして、こんな
Δ...IFルート[SRT]:兎は不変の心を貫き通す
「私の恋心は、私の手で守り通します。……大丈夫ですよ、貴方が側にいてくれるなら絶対に負けませんから」
β...IFルート[ア■ドス]:黒狼がいずれ辿る死の結末
「……今度こそ、私を殺して。そうじゃなきゃ、みんないなくなる」
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Vol.3 / Vol.1 IF 暁の彼方へ送るレクイエム
「反転、って……」
「“愛と憎しみは紙一重”。妾が言ったこの言葉の意味をしっかりと噛み締め、もう一度やり直すのじゃな」
「できれば普通の女の子として、シュウくんの隣に居たかったな……っ」
「悪いけど、好きな子の前なんだ。格好付けさせてもらうぞ」
本当にいつになるかわかないのは、こっちなんですけどね!!!!!
まだ読みたい、もっと欲しい、みたいな声があれば書くかもくらいです。
そもそも、どれから書くかは未定も未定。もしたまにでも私の作品を思い出してくれて、のぞいてみたら上がってるかもです。
それでは、ここまで本作『ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」』にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
またいつか!!!
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