ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」 作:群缶
感想がいっぱい来て嬉しかったので早めに投稿しておきます。
みんな、ヒフミ大好きだね。私も好き。
あと、質問来てた。
Q.ヒフミ以外のルートってあるの?
A.(構想は)あるよ! 具体的にはナギサとかね。(書くかは知らないけど)
目の前に映るのは、何十人もの生徒が横並びで上がることができそうな階段。
そのさきには、大きな2つの塔が建った校舎と思われる建物。
横を見れば、宮殿のように広がった広大な校庭に白を基調しつつ、屋根は青緑色のカラーが光る聖堂。
反対には、これまた目を見張るほどに大きな図書館がある。
圧巻な規模の学園に少し口を開きながらも階段を登り、足を歩める。
もはや都市とも言える大きさのトリニティを歩み、中央までやってきて、改めてぐるりと一周するようにこの場所を見回す。
「ここが、トリニティ総合学園」
自分がいるのは、トリニティ総合学園の施設が一望できる中央の場所、噴水が目印となったここ。名前は“トリニティ・スクエア”というらしい。
若干、強めの風は涼しく心地いい。噴水に溜まった水が揺れ、そこに映った自分の顔はどこか緊張した顔持ち。
俺というか、男の生徒が珍しいからか、遠巻きにはトリニティの生徒からの視線を感じる。
歩いているときにすれ違った子たちには、露骨に顔を見つめられた。
でも、この場所の光景があまりにも綺麗で、その辺のことが抜け落ち、ただトリニティの校舎などを眺めてしまう。
ここで俺を待っているはずの少女のことを少しだけ忘れて、物珍しげにキョロキョロしていると。
「あ! シュウくーーん!!」
「お」
校舎の方角から、聞き馴染みのある可愛らしい声が聞こえて、振り返れば。
「ごめんなさいー! お待たせしましたっ!」
大きく手を振って、満遍の笑みを浮かべた少女の姿を発見する。
トリニティの制服をしっかりと着こなし、ふたつにまとめ上げた金に近いクリーム色の髪を揺らして駆けてくる。
目は大きくクリクリ。どこか幼い顔立ちで、何も知らない人が彼女を見かけたのならば、どこぞのお嬢様?、とか思うんじゃないかな。
でも実際はかなり活発的で、行動あるのみな性格。お嬢様っぽいと表現したが、彼女の好きなものであり、愛用している奇妙な顔をした鳥のリュックサックを見たらそのイメージもすぐに崩れるであろう。
そんな、おもしろ……お嬢様っぽく可愛らしい女の子の名前は阿慈谷ヒフミ。
縁あってキヴォトスに来てから何かと関わりがある子だ。
「あはは……すみません、待たせちゃいましたね」
「大丈夫だよ。こっちこそ案内を頼んで悪いな」
「いえいえ! 私が言い出したことですし」
走ってきたからか、ほんのり頬を染めて息を切らしたヒフミ。
こちらも、よいしょ、とリュックを背負い直す。ここだけの話、俺は内心で、待ち合わせ相手と無事に合流できたことにホッとしていた。
口では言わないが初めての場所、顔見知りがほとんど居ないとこに来るのは心細く、ヒフミの顔を見た瞬間に安堵を覚えていた。
“それじゃ、行きましょう”、と背を向けたヒフミの後に続いて歩き始めて。
……おや。
「ヒフミ、ヒフミ」
「はい?」
なんでしょう? と振り返った彼女の背中側を指差す。本人が気づいていなかった様子なので自然に教える。
「髪、すっごい跳ねてる」
「ふぇ!? ど、どこですか?」
活発的だが年ごろの女の子。案外、オシャレには気を遣っているようで、普段は綺麗にまとまっているカントリースタイルのツインテールだが、今は乱れていることを伝える。
俺からの指摘に慌て始め、より乱れていく髪に苦笑い。
「まぁ落ち着けって。はい、そのまま立ってる」
「は、はい」
ギュッとリュックサックのベルトを両手でもったまま、ピンと直立不動になったヒフミ。
そんな硬くならなくても、とは思いつつ動かないのは好都合と乱れた髪をさっと直す。
相変わらず、一切に指に引っかからないサラッとした綺麗な髪だこと。
跳ねた場所などを軽くほぐすだけで元に戻るのだから、如何にヒフミが普段から手入れをしっかりしているかが伺える。
「ん、もういいぞ」
「えへへ……。ありがとうございますっ」
「あいあい」
ちょっと前の方にいたヒフミは何が楽しいのやら、ご機嫌な様子で俺の横まで下がってきて、同じ歩幅で歩き始める。
気のせいでなければ普段よりもテンションが高い気もする。
「随分と楽しそうだけど、どうしたんだよ」
「そうですか? そうかもです!」
「え、ほんとにどうしたの」
間違いなくテンション高め。RPGだったら高すぎてダメージの値がすごいことになりそう。
訝しげな目をしていた俺に気づいたのか、ヒフミは頬をかきながら少し照れ気味に口を開く。
「その、シュウくんがトリニティの制服を着ているのと、ここにいるのもあって……。本当にいっしょに通えるんだなぁって」
「……」
「な、なんです?」
「ずいぶんと可愛いこと言うなぁと」
「そう、ですかね」
不思議そうに首を傾げるヒフミに対して俺は、思いもよらない回答にちょっとびっくりした顔。
仲は良いと思うが、こんなに好かれるほどとは思ってもいなかったというか。
ちょっぴり気の抜けた顔をしていたこっちをよそに、ふんす! と手を握ったヒフミは。
「シュウくんと学校に行けるのも嬉しいですし」
「ですし?」
「ブラックマーケットも行き放題です!」
「貴様、さてはそっちが本音か」
「あうぅ〜! 髪をぐしゃぐしゃにしないでくださいぃ〜〜!」
▽
それからヒフミとともにトリニティ内に存在する多くの施設を見て回った。
例えば、びっくりするほど大きな図書館。
「ここはキヴォトスの中でも一番大きな図書館なんです。いろんな本があるんですよ」
「ほえー。にしても広いなぁ」
「はい。広すぎて遭難する人もいたり……あはは」
「笑い事か、それ」
例えば、大きな十字架と静寂に満ちて、神聖な雰囲気を醸し出した大聖堂。
「こちらにはシスターフッドに所属されている方々がいるんです」
「あー、あのヤバいと噂の」
「そうなんですか?」
「なんでも秘密主義で物騒なこととかを裏で解決してるとか」
「へー……」
例えば、一際目立って中央に位置する校舎。
「ここで普段は過ごしているんです。シュウくんもここに通うことになります」
「……」
「どうかしました?」
「いや、視線がね……」
「あ。確かにシュウくん、男性の方ですし珍しいかもですね」
時間にしておおよそ5時間ほど。
昼前には到着していたはずなのに、気づけば陽は落ち始めて美しい赤の夕陽がトリニティの白い校舎を彩っていた。
時計の針はもう17時前。俺たちはきりが良いと言うことで、再びトリニティ・スクエアへと戻り、噴水の近くにあるベンチに座っていた。
「いやぁ、疲れたな」
「あっという間でしたねぇ……」
2人揃ってグーっと伸びをしつつ、駄弁っている最中。
今日のことを振り返りつつ、この後はどうしようと考えていると。
「シュウくん、このあとは何かありますか?」
タイミングよくヒフミに予定を聞かれる。
今日は特に何も決めていない。何せ知らない場所への引越しを昨日済ませ、今日は案内をお願いしていたし、トラブった際のことを考えて予定は開けていた。
「特に何も。ヒフミは? 部活とかさ」
「私、帰宅部ですよ?」
「そだっけ」
「はい。なので帰るだけですが、シュウくんはどこに住んでるんですか?」
「えっとな……」
携帯を取り出して、マップを開く。
まだしっかりと地図を覚えられていないので、先日に入れたばかりの地図アプリは、この辺りに来るだけでも一苦労だったりする俺には必須となっている。
ブックマークした自分の家のピンを表示し、“ほれ”と隣に座るヒフミに見せると驚いた顔をしていた。
「シュウくん、シュウくん」
「2回も名前を呼んでどうしたのさ?」
「すっごくご近所さんです、私たち」
その言葉とともにヒフミが指差したマップの位置は、徒歩にして数十秒程度で行けそうなほどの距離にある場所。
「え、ここ?」
「はい! これならいっしょに学校へ行けますし、帰れますね!」
「お、おう。……あ」
そんな偶然、ある? と思ったところで思い出す。
トリニティに引っ越す際にやたら心配性な先生は、多くの手配をしてくれた。
そこには俺の住む場所も含まれており、昨日の引越しの際に“何かあったらご近所さんを頼ってね?”と、ウィンクとともに意味深なことを言っていた。
ようやくその意味を理解して、ヒフミにも伝えようとしたが。
「すっごい偶然ですが、ラッキーですね!」
「……そうだな」
これをたまたまだと思い込み、嬉しそうにしている彼女を見て、“まぁ、そう言うことにしとくか”と言葉を飲み込んだ。
俺と家がほぼ隣という関係を知り、ウキウキなヒフミはぴょん、とベンチから立ち上がり、ポカンとした俺の前にくる。
「なら、いっしょに帰りましょう! あ、せっかくなのでご飯も行きませんか?」
思えば異性のはずなのに、随分と気兼ねない付き合い方をしているなぁと思いつつ。
「はは……。いいぞ、行くか」
そんな間柄が心地良い俺は、新たな生活へのほのかな不安と大きな期待を胸に、彼女に誘われるままトリニティをあとにした。
とっても明るい導入のお話でした。とっても、とっても明るくてハッピー。
書いた本人が言うのもアレですが、ナチュラルにいちゃついてない? この2人(付き合ってない)。