ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」 作:群缶
推し(ケイちゃん)が尊かったので初投稿です。
時系列はパヴァーヌ2章の後です。
AI:ばか、あほ、いくじなし。三拍子そろって愛しい貴方へ
ミレニアム自治区のショッピングモール。
平日でも多くの人々が訪れるこの場所は、休日ということも合わさって本日は実に賑やか。
家族連れでのショッピングから、お友達同士で楽しげに遊ぶ姿、そしてみているだけで微笑ましいカップルなど、本当に多くの人々が訪れている。
共通しているのは皆、“楽しい”という感情を持っているところ。休日に映画やゲームセンターで遊んでいるのだ、そりゃそうなる。
一方で、そんな楽しいはずの施設で、冷や汗たっぷりの笑顔で空元気を発揮している
「け、ケイはどこに行きたい?」
「……貴方が決めてください」
「え、えーと……」
「これは“デート”なのでしょう。シュウがエスコートするべきでは? まさか、何も予定を考えていないとでも?」
「は、ははは。そんなわけないじゃんか〜」
いや、ないんだけども。というかデートなの、これ?
むすっとした顔、不機嫌そうな硬い声。明らかに俺との今日が嫌そうな少女の名はケイ。
自分と同じミレニアムサイエンススクールの制服に身を包み、長い黒髪と人形のように整った綺麗な顔。そして妖しさと美しさを内包した機械的な幾何学模様が目を惹く赤紫色の
まさにザ・美少女な女の子なのだが。今は眉を顰めてジト目、呆れるような声音になっている。そこに加えて苛立っているのか、ずっとソワソワしているような気もする。
いや、まぁ。俺とふたりで休日に出かけるとか、ケイは嫌だろうなぁとは覚悟していたけども。
「あの、さ」
「なんです」
「で、デートってモモイに言われたからだったり……?」
「ええ。……聞いていなかったのですか」
おっかなびっくり、なるべく刺激しないように。声をできるだけフラットにして聞いてみる。
なぜここでモモイが出てくるかといえば、このデート、もといお出かけのきっかけにまで話は遡る。
数日前、ゲーム開発部の部室でちょっとした遊びをした。やったのはアナログな王様ゲーム。
ゲームはなんともシンプルだが、出てくる罰ゲームは結構エグいもので、危ういものばかり。その場にたまたま訪れた早瀬さんに“え……シュウってやっぱり、ロリコンなの?”なんて真顔で聞かれた。
“違う!”と否定したが。膝の上に笑顔の王様こと、アリスを乗せていた状況では信じてもらえず、無言で部室のドアを閉められた。
真横でずっと冷たい目で見てくるケイも相まって、もう泣きそうになったのは忘れたい記憶。
……話を戻そう。
とにかくその場では王様ゲームを遊んでいたわけだ。そして何巡目かの番でモモイが王様になった。
で、王様の命令は“3と5が次のお休みにふたりで遊びにいくこと!”なんて、まるで罰とは思えない命令を下した。
ほんと、その瞬間は罰ゲームではない、と思っていたんだけどね。3と5は誰だ、という話になって。自分の番号が3で声を出して手を挙げたところ。
『あ、俺が3だ』
『……5です』
『え゛』
真横のケイが今日よりもずっと不満げな声と共に手をあげた時は、すごい低い声が出てしまった。ケイの顔は、怒りからか頬を少し染め、むくれていて、“ケイにとってはしっかり罰ゲームじゃん”と絶望したものだ。
この後に一悶着あったものの、結果的にお出かけはすることになり。今こうやって横にはケイがいる。
彼女からすれば不本意極まりないだろうが、来てはいるし、せっかくの休日。
普段は誘っても塩対応なケイがいくら命令とはいえ、“デート”なんて言葉まで使ってくれたんだ。お互いに楽しめるように頑張るしかない。
「とりあえず、ゲーセンでもいくか?」
「はい。……久しぶり、ですね」
「そういえば、あの時以来か」
「貴方に騙された時が最後です」
「言い方に悪意あるよね??」
「そう捉えるのは罪の意識があるからでは?」
「……ゴメンナサイ」
「いえ。……ふふ」
痛いところを突かれて苦い顔になる。うーん、藪蛇。
今でこそこの距離感で話しているが、最初は“意味がわかりません”、“貴方になんの得が?”、“暇なんですか?”などなど、機械的で冷たい言葉を山盛りでもらっていた。
友人、と言えるかは怪しいけど。アリスたちを通じて交流も増えたし、前よりも話したり遊ぶ機会も増えた。
けど、ふたりきりとなるとずいぶん久しぶり。ちょっとの緊張はあったけど、呆れるように“笑った”ケイを見て。
「俺のやってきたことは間違ってなかったんだなぁ」
「なぜしんみりした顔になっているのですか」
「いやはや。ケイちゃんは成長したねぇと」
「次にちゃん付けしたら、折ります」
「何を!?」
せっかく感情豊かになったはずなのに、今の体で会った初対面時にひけを取らないレベルの真顔になったケイ。
他の人がちゃん付けしてもちょっと怒るくらいなのに……俺に関してはマジギレなの、なんでなん??
ああ、ゲーム機の画面越しに文字で会話していたころが懐かしいぜ……。
▽
「お!シュウが先導してる!」
「お、お姉ちゃん……! 見つかっちゃう……!」
「ユズ、モモイとミドリはなぜ興奮しているんでしょう?」
「えっと……野次馬根性、みたいなものかな」
「? よくわかりませんが、アリスもシュウやケイと遊びたいです!」
「だ、だめだよ! こんなおもしろ……貴重な参考資料なんだから!」
「そうそう。次のゲームで使うスチル素材の参考に写真撮らなきゃ」
「なら邪魔をしてはいけませんね!」
「み、みんな……声がおっきい……!」
ショッピングモールにある柱から顔を出して、シュウとケイちゃんを密かに監視するゲーム開発部の子たち。私の視線の先にはそのふたつの光景が映っていた。
「先生も何してるの! 隠れて!」
「はいはい」
手を引かれてお団子のように縦一列で並ぶ私たち。それを見た他のお客さんは、ギョッとしている。
なんでこんなことになっているかは、ある程度把握している。
モモイたちがシュウと仲良くなりたいけど、素直になれないケイのためにこの状況を作ったらしく、“次に作るゲームの参考にもなるし、一石二鳥だね!”と相談を持ちかけられた時はびっくりした。
ちょっとばかり細工した棒を使っての王様ゲームは上手く行ったようで。目論見通りに何も知らないシュウと、ちょっぴり察しているであろうケイちゃんがデートしている現状。
「なぜ先ほどからケイは手を伸ばしたり、引っ込めたりしているのでしょう?」
「もうシュウくんのバカ……!ケイちゃんのこと察してあげて……!」
「なぜミドリは楽しそうに怒っているのですか?」
「シュウのあほー! せっかくケイの伸ばした手を見たのに、首をかしげるなー!」
「な、なぜモモイは満面の笑みで腕をふって怒りを表現しているのですか?」
「……あれは察したけど、気づいてないフリをしたんだ」
「うわーん!ユズの顔が怖いです!」
「あ、あはは……」
泣きついてきたアリスの頭を撫でながら思わず苦笑い。
うーん、アリスにはまだ早かったかな、と考えながらもシュウたちの方に再び目をむける。
半歩ほど前を歩くシュウの手を握ろうとして、恥ずかしさで引っ込めてしまうケイちゃん。
けど、なんとか勇気を振り絞ったタイミングで間の悪いことにシュウが振り向く。
ふふふ、必死に誤魔化すケイちゃんの姿がこれまた微笑ましい。
「うぅ、先生が変な顔をしています……」
朝からずっと楽しみにソワソワしていたケイちゃんを思うと“シュウ、もっと察して!”と声をかけたくなるが、あのくらいの距離感がきっとこそばゆく楽しいもの。ここは大人としてしっかり見届けなければ。
「先生、なんで急に何度も頷いてるのさ……」
待ち合わせの30分前から待っていたケイちゃんの様子を見るに、今日をずっと心待ちにしていたはず。シュウも彼女のことを気にかけているのは知っているし、今日で何か進展してほしい……!
「わかります。わかりますよ、先生……!」
というか、あんないじらしく君を思ってくれている子がいるのに察さないのは罪だよ? なんでシュウ本人以外はみんな気づくレベルの好意を向けられて、まったく気づかないの??」
「声……! 先生、気持ちはわかりますけど、声に出ちゃってます……!」
「おっと」
「先生も鬱憤が溜まってますね……」
「あ、やば!」
「っ!」
モモイの声を聞いたのと同時にさっと柱に隠れるゲーム開発部メンバー+私。今、一瞬だけどケイちゃんがこっちに振り向いたような……?
こそこそと顔を出して確認すると、どうやら見つかっていないようで、変わらずシュウと会話する姿を見て一安心。
「む、移動するみたい」
「こっそり見つからないようにだよ!」
「アリス知っています! 見つかったらCQCですね!」
「それだとシュウくんたちがゲームオーバーになっちゃうかな……」
▽
「……まったく。
「んぁ? なんか言ったか」
「なんでもありません。次はどこに行くのですか」
「うーん……」
「本当に、シュウは鈍いですね」
「なんで今罵倒されたの、俺」
「さぁ?」
「えぇ……」
「ふふ」
まさかのトリニティと同時並行での投稿です。とはいっても、どちらの頻度が高くなるかは未定。
また、どちらもプロットは全部組んであるので、完結だけはするのでご心配なく!
そしてミレニアムルートはマジのラブコメ。頭空っぽでニヤけて楽しんでいただけると嬉しい限りです。
では次回、“α-1:シュウはアリスの従者ですっ!”でお会いしましょう。