ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」 作:群缶
『いいかアリス。これは最高の“萌え”なんだ』
『萌え、ですか?』
画面に映るは露出高めな猫耳メイド。喋ったセリフは“べ、別にアンタのためじゃないんだからっ!”。
ゴリゴリのギャルゲー。その操作をしているのは俺。見たことが無い文化に目を白黒させて、必死に理解しようとしているのはアリス。
なんでこんな事になっているかは単純明快。俺の持っていたゲームで、アリスが知らないジャンルがあって“見たい”と言われたから。
『別名、男のロマンとも言う』
『ろまん……ロマン……』
はじめはアリスにギャルゲーとか教育に悪いのでは、とためらったものの。真っ直ぐな視線で気になると言われては、断ることもできず。
結果的に一緒に肩を並べ、シャーレで借りている部屋の中で“にゃんにゃんメイドのご主人様!(全年齢版)”をプレイ中。
赤裸々な趣味を自分から話すのは、ひどく恥ずかしかったが、アリスは笑うことなく理解しようと真剣に話を聞いてくれた。
ゆえに俺は、はっちゃけた。
『(俺にとっての)神ゲーとは、いかに高純度の萌えが詰まっているかなんだ!』
『アリス、理解しました! シュウは変態さんなのですねっ!』
『……あ、アリスさん?』
……兎にも角にも。これが俺とアリスの仲を深めるきっかけになったわけだ。
自分の好きな物(ゲーム)の知らない世界を見るのは、アリス自身も楽しかったようで、シャーレで遊ぶときはこれに似たことがたくさんあった。
そして結果的に。俺の性癖、もとい“萌え”のすべてをアリスの知恵として授けたんだ!
▼
「その話を聞いてさ。シュウ先輩がピッタリだってアリスに教えてもらったの!」
「…………」
「あ、あれ。お姉ちゃん、シュウ先輩うなだれちゃったよ……?」
「シュウ、HPがなくなってしまいましたか?」
モモイさんがドヤ顔とともに語った俺の赤裸々な話。それはあまりにも強いダメージ。
膝をついて項垂れる俺へ、しゃがんで心配そうに声をかけてくれたアリスに、手だけで大丈夫と伝える。
現在、場所はミレニアムにある寮。俺に割り当てられた部屋。
数十分前まではゲーム開発部の部室にいたわけだが……まぁ振り返ろう。
『お! アリス、その人がアドバイザー!?』
『アドバイザー?』
『はい、最強の助っ人です!』
『助っ人?』
笑顔のアリスに手を引かれてやって来たのは、噂のゲーム開発部。
少し薄暗く至る所にゲーム機やPC機材、あとはお菓子とかが散らかっている。……部室かこれ?
そして、部屋に入るや急に飛んできた質問に混乱する俺、横には何かを疑っている早瀬さん。
目の前には質問をしてきた初めましてのミレニアム生。元気いっぱいなピンクカラーと猫耳チックなヘッドホンが目立つ、これまた小柄な少女。
アドバイザーやらなんやらと心当たりのない単語が羅列され、混乱しているとピンク少女とそっくりなグリーンカラーの女の子が申し訳なさそうな声で、アリスたちを落ち着かせてくれた。
『お、お姉ちゃん……! 説明しないと!』
『そっか、何も聞いてない……ってユウカ? なんでここにいるの?』
『はぁ……なんでも何もこれよ』
『何それ? ……あっ』
早瀬さんの持つ部費申請書を見て顔色を悪くしたピンク少女。そこから、冷酷な算術使いさんの怒涛のダメ出しでボロボロにされる姿は、ちょっと可哀想だった。
『うぅ……』
『そんな顔してもダメなものはダメよ。とにかく、しっかりと書き直して提出して。……っと、それじゃ私は次に行くところがあるから』
『え、もう行くのか』
『ええ。次はエンジニア部の方よ』
『……が、頑張って』
『……行ってくるわ』
なんとなくゲーム開発部と同じ理由なんだろうなぁ、と察した俺は静かに応援だけ。変なことを言ったら巻き込まれそうだし。
疲れ切った顔で背を向けた早瀬さんを見送ったあと、ようやくここに呼ばれた理由についての話に移り変わった。
ひとまずソファーに座ってみんなと自己紹介を済ませたのち、ゲームシナリオを作っているというピンク少女もとい、才羽モモイさんと妹のミドリさんの話を聞いた。
『シュウ先輩は私たちがゲームを作ってるのは知ってるよね』
『うん。主にアリスとか先生から』
確かちょっと前まで先生はゲーム開発部の子たちと何かに巻き込まれた気がする。なんだっけ、すごいゲームを作ったとか、秘密都市でロボットが〜〜みたいなことを聞いた覚えがある。
彼女たちのことを知ったきっかけである先生の名を出すと、ミドリさんの方から質問が飛んできた。
『シュウ先輩、先生ともお知り合いなんですか?』
『今はミレニアムにいるけど、前までシャーレにいたんだ。アリスから聞いてないのか』
『初耳でした。えっと、アリスちゃんとは……』
『うん、シャーレで。初対面はゲーセンだったけど』
『シュウはなんでも知っている攻略本ですっ!』
『えっと、ゲームの攻略を手伝ったってこと?』
『そんな感じだけど、今のでよくわかるな……』
アリス独特の言い回しを完璧に捉えるモモイさんに少し驚いたが、それだけ仲良しということなんだろう。
で、ちょっぴりの交流のあとで本題に。俺が呼ばれた理由は、次に彼女たちが作ろうとしているゲームが関わっているらしい。
『いろいろゲームを作って来たんだけど、せっかくなら次は今までとは違うものにも挑戦したいなって話になったんだ』
『今までだとRPGだっけ。あれだ、“テイルズ・サガ・クロニクル”?』
『知ってるんですか?』
『遊んだこともあるよ』
『え、ホント!?』
『アリスと一緒にな』
なんというか、個性的で刺激が強いゲームだったな、うん。
何回ゲームオーバーを繰り返したかわからないけど、アリスの助言でなんとかエンディングまでは頑張った。
ぶっちゃけ何度かコントローラーをぶん投げようとしたんだけども。アリスの“やめちゃうんですか……?”という言葉と、悲しげな顔に逃げることはできず、夜から朝までぶっ通しでプレイした。
なぜか俺よりもアリスが喜んでいたのは今でも覚えている。内容はともかく、あれだけのプログラミングやらを彼女たちだけでやったというのだから、驚きだ。
『それで、今度は何作るんだ? 今までにないってことはRPGとは別ジャンルなのか』
『うんうん、話が早いね!』
『はい。それで、そのジャンルが私たちだと難しくて』
『どうしようかな、って悩んでたらアリスが詳しい人がいるって教えてくれたの』
モモイさんとミドリさんの期待がこもった視線にむず痒くなり、アリスの方に目を向けると。
『シュウはなんでも知っています!』
もっと輝いた目が飛び込んできて、のけ反りそうになった。
何をそんなに期待されているのか。不安はありつつも、こうやって頼られるのは満更でもない俺は、モモイさんに何を知りたいのかを尋ねてみた。
『俺でよければ力になるけど、そもそも何を手伝えばいいんだ?』
『ホント!? なら——』
嬉しそうに身を飛び出したモモイさん。そして、可愛らしい声できかれたのは。
『最高の“萌え”を教えて欲しいの!』
『…………はい?』
こうして俺は、ゲーム開発部が次に作ろうとしている恋愛シミュレーションゲームの助っ人として呼ばれたことを知った。
そして流れのままに、サンプルとして俺が持っているゲームを見たいというモモイさんたちの言葉にNOと言えず。
流されるままに自室へと3人を招くこととなったわけだ。
でもって、アリスがみんなに俺の性癖、もとい趣味で遊んでいたときの熱量を話したようで、その結果。
「うわわ……!」
「ちゅー、しちゃう……!」
「アリス、知っています。これはツンデレというものですね」
「……………」
初対面の女の子ふたりと、すでに知り合いなアリスに囲まれて。
アリスが選んだ俺のお気に入りである、ドが付くくらいキツいフェチが詰まった作品を死んだ目で遊んでいるわけだ。
……地獄か?
▽
ゲームがひと段落ついて。
モモイさんとミドリさんのふたりはカルチャーショックを受けつつ、顔を赤くしたまま今経験したことを語り合っていた。
「す、すごい世界だったね」
「私たちには早かったかも……」
一方、アリスはというと。
一時停止したゲーム画面を凝視して、真面目な顔で俺に質問をしている最中。
「シュウ、なぜここの選択肢は“押し倒す”か、“抱き寄せる”なんでしょう?」
「は、ははは。なんでだろうね……?」
きっと全年齢版じゃない方なら、そういうシーンになるからなど言えるはずもなく。アリスの質問をなんとか誤魔化して、いかにこの場を切り抜けるかを必死に考えていた。
「うーん、こういうツンデレっていうのがウケるのかな」
「どうなんだろう、先生とかは好きそうだけど。シュウ先輩もやっぱり好きなんですか?」
「シュウはこのタイプをよく攻略しています」
「あ、アリス……あの、勘弁して……?」
純粋な目で質問してきたミドリさん、そこに冷静な意見と真実で追い討ちをかけるアリス。もうメンタルボロボロなんだけど、俺。
アリスにこのことを口止めしてなかったのは、完全にミスだった。過去の自分をぶん殴りたい。
何はともあれ、目的のゲームを見ることができたゲーム開発部のメンバーはやんややんやと意見を出して、俺に質問を投げかけて。あっというまに時間が過ぎていく。
気づけば陽は落ちかけていて、流石に解散かなと声をかける。
「みんな時間は大丈夫なのか? もうすぐ18時だけど」
「へ? ……もうこんな時間!?」
「流石に帰らないとまずいよね?」
「アリス、まだシュウと遊びたいです……」
寂しそうな顔になったアリスにちょっと罪悪感を覚えるが。この時間まで女の子を部屋に入れていたとバレたら……。
“シュウ、どういうことか説明あるのよね……?”
イマジナリーな早瀬さんのキレた姿が簡単に想像できたので、また今度と約束してお開きにすることに。
「あ、なら連絡先交換しようよ!」
「別にいいけど」
「アリスも交換したいです!」
「え、アリスちゃんはしてなかったの?」
モモイさんの提案で3人とモモトークのアドレス交換を行った。ミドリさんに突っ込まれていたけど、なんやかんやアリスとは連絡先を交換していなかったので、良い機会になったかな。
今日とかも俺を探してミレニアム中を冒険していたようだし、何かあればこれで簡単に会うことができる。
あとはミドリさんから。
「あの……もしよかったら、ゲームをひとつ貸していただけませんか?」
遠慮気味にそんなことをきかれたので。なるべく刺激が弱く、ノーマルなものを渡した。
さっき遊んでいた最中で、言葉は少ないものの一番興味を示していたし、ミドリさんはもしかしたらこういった系統のゲームが好きなのかもしれない。
借りたゲームをモモイさんと嬉しそうに受け取った際は、趣味を理解されたようで嬉しいような、恥ずかしいような不思議な気持ちになった。
だが、まぁいいかと頷いて静かになった部屋で、少し休憩してから片付けを始める。
時間にして3時間ほどだが、お菓子とかを出したのもあって結構散らかっている。モモイさんとか普通に俺のベッドで暴れてたけど、年頃の難しい感情とかないのかな。
主に恥ずかしいシーンで悶えて、モモイさんにしっちゃかめっちゃかにされた布団を整えていると。
「あれ」
ぽろ、と何かが出てきた。危うく床に落ちそうになったものを、キャッチして拾い上げるとそれは。
「ゲームガールズアドバンスSP?」
とても見覚えのあるゲーム機が自分の布団からドロップした。俺はこのゲーム機は持ってないし、十中八九これはゲーム開発部の子の落とし物だろう。というか、モモイさんのだと思う。
返しに行こうかと思ったが、時間が遅いのもあってとりあえず連絡することに。
モモトークにはすぐに既読がついて、返信もパッと返ってきた。
モモイ『それ私の! 忘れちゃった!』
『オッケー。すぐ届けに行こうか?』
モモイ『今度でいいよー。私たちもゲーム借りてるし、好きに使っちゃって!』
「好きに使っていい、と言われてもなぁ」
手元にあるゲームガールズアドバンスSPを見て、どうしたものかと考える。
ま、遊んでみてもいいかと気が乗ったタイミングで、携帯から別の通知が聞こえて確認してみる。
複数回のバイブ音でトークではなく、着信なのがわかっていた。だから特に名前も見ずにスワイプで電話に出てみる。聞こえてきた声は見知ったもので、わりと久しぶりな相手。
「こんばんは。今時間は大丈夫かな」
「ども、先生。大丈夫ですけど、どうしました?」
電話の相手は先生。俺がシャーレから離れて、1ヶ月ちょっとぶりに聞いた声は、相変わらず少し疲れてそうな感じ。
けど、急にどうかしたのだろうか。今は別件で忙しく、シャーレの方にもあまりいないと聞いていたが。
「ミレニアムに入って、そこそこ経つから様子でも聞こうかなって」
「別に何もありませんよ。ちょっと忙しないくらいで」
「そうなんだ。学校、楽しんでる?」
「はい。賑やかすぎるくらいですけど」
先生との通話をスピーカーにして、適当に夕食を準備する。簡単にカップ麺でいいかな。
「ミレニアムは賑やかだろうね。たくさん実験してるし、気になるものとかあった?」
「んー。かっこいいものは結構ありますよ。先生が好きそうなものもたくさん」
俺も結構はっちゃけてるし。いやぁ、バイクで爆走するのも意外と悪くなかった。
「うんうん、いいよねぇ。シュウもそりゃ暴れちゃうか」
「……はい?」
「なんだっけ。レールガンにとんでもスピードのバイクとか」
「え、あれ?」
おかしいな、なんか先生の口からとても聞き覚えがある単語が聞こえたような。
「楽しんでるね、シュウ?」
「は、はは……」
「ユウカから色々聞いてるよ。あんまりやり過ぎちゃ、ダメだよ?」
「す、すみません……」
声は優しいけど、ちょっと困っている雰囲気を感じて素直に謝る。
今回は大目に見てもらえているけど、これは“次は怒るからね?”と暗に言われているのだろう。
「アリスとも会えた?」
「ちょうど今日に。ゲーム開発部のモモイさんとミドリさんとも会いました」
「おや、ユズは?」
「まだ部員がいるんですか?」
ついでに飯を済ませつつ、久しぶりの会話の中で近況報告も兼ねて先生と雑談。
話題はゲーム開発部の子たち。先生は随分とあの子たちと仲がいいみたいで、色々な情報が入ってきた。
過去にモモイさんと遊んだゲーセンの話や、ミドリさんとのクレーンゲームの思い出、あとは各々の好みやら。
というか、知りすぎじゃない? なんて思っていると、今度は先生とゲーム開発部の初対面の話に。
その話は聞いたことがなかったので、ちょっと興味があった。
「G.Bibleってそんなのあったんですか?」
「うーん、一応は」
「へぇ。廃墟にそんなのがあるのはロマンチックというか」
「でしょ? アリスとはそこで出会ったんだ」
「どういうことですか、それ?」
「知らないっけ。えっとね、実は————」
話してもらったのは、先生たちが出会った不思議な少女との出会い。
ミレニアム自治区郊外にある廃墟、そこの立ち入り禁止区域で眠っていたアリスのこと。
そして、ゲーム開発部のみんなが立ち向かった困難と、友情と勇気が詰まった素敵な物語。
「————ってことがあったんだ」
「全部初耳なんですが。というかC&Cの飛鳥馬さんって最初は敵だったんですね」
「あれ、トキとももう知り合い?」
「え、あ、いやー……。よく捕まってますけども」
「あはは……。よくない知り合い方をしてるね」
今日も縄でぐるぐる巻きにされたし、しっかり煽られたよね。
なんだ、あのピース。ちょっと可愛いせいで煽りより、そっちの感情が勝っちまうじゃないか。
「ま、そんなこんなでみんなが無事にゲーム作りをできているなら、私としても安心なんだ」
「特に心配しなくていいと思います。いや、名もなき神々の王女とか、Divi:Sionなんかは知らないですけど」
成り行きや起きた事件はなかなかに悲惨なものだけど、出てくるワードはくすぐられるものばかり。
なんというか、字面からしてかっこいい。厨二心を刺激されてしょうがない。
「そこら辺は平気かな、とは思ってるけど一応ね。モモイのゲーム機に入ってたデータとかも無くなってるはずだし」
「物騒なAIもいるもんなんですね。俺個人としては、そこも含めてロマンがありそうで気になるんですが」
「シュウは好きだと思ったよ。……一応言っておくけど、あんまりあの子たちの前で“変な趣味”は見せちゃダメだよ」
おっと、なんか急にゾクッとした。きっと気のせいだな!
「……はい、もちろん!」
「…………まぁ、いいや。それじゃ、またね」
「はい、おやすみなさい」
先生との通話をそっと切ってから胸を撫で下ろす。先生からの疑うような間が、あまりにも心臓に悪い。
これは今度こそみんなの口止めが必要だな。
色々あって疲れた俺は食後にも拘らず、ごろんとベッドに横たわる。時間を確認しようと頭を横に向けると、モモイさんから預かったゲームガールズアドバンスSPが目にとまる。
先生からさっき聞いたばかりの話を思い浮かべて、ゲーム機を持ち上げる。
「これにAIの……なんだっけ。Key、ケイ? が入ってたんだっけ」
仰向けの状態でかがけたもの。見た目はただのゲーム機。8コア16スレッドカスタムCPUを搭載したもので、なかなかに高価な代物。
とはいえ、そんな物騒なAIが入るほどの容量があるとも思えない。今はもう消えてしまっているとかで、普通のものだけど。
「うーん……。縁があれば会ってみたいもんだなぁ」
なんて。実際にKeyと対面して、酷い目にあった先生たちの話を忘れたかのような呑気なひと言がこぼれた。
ひとりのオタクとして。敵サイドだった悪なアンドロイドの美少女とか、生きているうちに1度は出会ってみたい。
純粋なただの願望。けれど、確かな本心。
まぁ、ありえないか。なんて自分が口に出した言葉を鼻で笑って。
同時にちょっと遊んでみようかな、と試しに電源ボタンを押した瞬間。
「痛っ!? うがっ!?」
ビリ、なんて生優しいものではなく、ビリリリッ! としっかりとした電気の衝撃が指に走る。
でもって手から離れたゲーム機は俺の顔面に激突。2度の痛みに涙目になる。
「うぅ……。ついてないな、今日……」
鼻をさすりながら、散々な1日だったとため息を吐き、落ちたゲーム機を拾い上げる。
画面とか割れてないよな? そんな心配をしながら液晶を確認する。
特にひび割れもなく、ひとまず安心したものの。電源はついているのに、真っ暗なままの画面を見て“あれ、やっちまったか?”と一気に不安になる。
ボタンを押してもゲームは起動せず、画面には暗闇だけ。いよいよもってまずい、どうしよう、と焦り始めた瞬間、ゲームの液晶に文字が現れた。
【#<=1*@+*6}-;7+a"!'(~?】
「うわ、文字化け……」
完全にやっちまった……。借りたゲームを壊してしまったと落ち込みかけて。
【$^Xに#(&$した*|~Sすか?】
「あれ」
意味不明の文字列が少しずつ、読み取れるものにリアルタイムで変化していることに気づいて。
【何を……したのですか?】
「……はえ?」
明らかにゲームの導入とは違う、俺に対してと思われる質問が映し出された。
これが、特になんの変哲もないひとりの一般男子高校生と、世界を滅ぼす力の鍵との初対面だったりする。
かなり先の話かつ、余談になるが。
「私を認識してのひと言目が“君が噂の敵アンドロイド美少女!?”だったのは、正直に言って不快でした」
とのこと。しょうがないじゃんか、混乱してたんだよ。
「……今は別に不快ではないですが」
なんて?
「いえ。馬鹿にはわからない言語ですから、気にしないでください」
こんな感じで終わりましたが、ミレニアムルートにシリアスなんてないよ!
次回、ケイちゃん視点でお送りします。