ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」 作:群缶
お久しぶりです。群缶です。
今日で本作の投稿からちょうど1周年。なので、記念として少し早めにVol.3のプロローグをお届けします。
Vol.1で今のホシノ、過去のホシノをヒロインとして物語を展開しました。
Vol.2では、ユメ先輩とホシノ(高校一年生)をヒロインとして再構成しました。
では、Vol.3は?
まだホシノという女の子で救うべき、そしてヒロインにしたいと私が思ってしまう、“恐怖に染まった子”がいたのです。
さて前書きはこの辺で。それでは、短いですがプロローグをお楽しみください。
プロローグ:RE Aoharu
吹き荒れる強風。昼間のはずなのに暗く染まった空。
生暖かい不快な温度の砂漠地帯。汗と血でぐしゃぐしゃになった衣服が気持ち悪い。
朦朧とし始めた意識の中で、足をしっかりと砂の上に押し付けて踏ん張る。
「————ぁぐ……っ!?」
鋭い一筋の痛みと熱が、肩を貫通する。
崩れ落ちそうになる足。すでにそこもボロボロ。力が抜けた拍子、関節を曲げた瞬間に、激痛が全身を走り抜けていく。
だが、倒れることなんてできるわけがない。口の中の肉を噛みちぎる勢いで歯にかけて、別の痛みで意識をはっきりとさせる。
チカチカと点滅するような視界。その先に映るのは、憎しみに満ちた顔で俺を睨みつける……黒く染まった少女。
今しがた、こちらの肩を撃ち抜いた拳銃は己のもの。
キヴォトスの
でもそれは、持ち主の命を簡単に奪う凶器。
「いい加減、倒れてください」
聞いたことがない、記憶にない……いや。“記録として知らない”、彼女の冷たく憎悪に満ちた声音。
長い髪は過去の姿のように短くなり、身に纏ったものは禍々しい黒。
ヒビの入ったヘイローは本来のものとは大きく変質したものになっており、恐怖を覚えるような暗い瞳に見える。
彼女が一歩足を進めるだけで空気が悲鳴をあげ、澱んだオーラが撒きちる。
正直に白状してしまえば。俺は、今とても怖い。
もう倒れてしまいたい。諦めて楽になってしまいたい。
また、最初のときのように“優しい死の世界”へと向かってしまってもいいのではないのか。
「バカなこと、いうなよ」
「……」
これは自分自身の弱い部分から出たものと、諦めてしまえと言う彼女に向けた言葉。
今の俺に……すでに“間違えて”ラストチャンスとなった自分に、諦めるなんて選択肢は存在していない。
「なら————大人しく死んでください」
「ッ!」
実際には一瞬。だが、俺の目にはゆっくりと銃を持つ彼女の手が持ち上がるように見えた。
きっとこのままでは、また彼女の放つ凶弾で命の雫をこぼすことになる。
「それでも」
絶対に死ぬわけにはいかない。
だって、それならば……なんのためにここに戻ってきた?
致命的な失敗をして、大切だった彼女との約束を破り、挙げ句の果てに3年も待たせ続けた。
終いには、“ケジメをつける”と、また笑顔を取り戻したいと胸に誓った己すら裏切ると?
「が、ぁ……」
左膝に熱。斜めに逸らした体がうけた傷は決して致命傷ではない。でも、流れる血はより多くなる。
けど、まだ動ける。
感覚が、神経が擦り切れた足に無理やり力を入れて、倒れそうになった体を踏ん張らせる。
そして、絶対に目線を彼女から反らすことをしない。
「……なんで。どうして、まだ立ち上がるんですか」
顔に憎悪と絶望が満ちているのは変わらない。だけど、そこには困惑の感情が僅かに残っている。
一瞬だが、ここにきて初めて声にかすかな震えを見せた。なら、まだ希望はある。
足を前に進めながら、口を開く。彼女からの問いかけに答えるために。
「だって、まだ————“ホシノ”は満足してないだろ」
「ッ!! 今さら……今さらそんな言葉で……!!!」
一心に向かってくる殺意と悲しみ。
視線に乗せられた黒い感情を受けて、ここに辿るまでの記憶が一瞬で蘇る。
大きな勘違い、犯した罪。そして、裏切ってしまったホシノの心。
……全てを元に戻すことはできない。
『“完全に反転した者”を元に戻すことはできぬ。例外はあるとしても……今回のようなものは不可能じゃ』
縋った希望は消え去り、“ひとつ前では全てを失った”。
でも、まだ。最初で最後のやり直しが残っている。
ああ。やり直しというのは間違っている。これはマイナスをゼロに戻して、
『だが。変わらぬものもあると其方は見たはずじゃろ?』
どんな形になったとしても、ホシノはホシノ。そして、そうなったきっかけ、原因は俺自身。
『ならば、最初ではなく今を視るべきじゃ。変えるべき場所を見定め』
だったら、そんな過ちを犯しても……大切だと思ったのなら。傲慢に、自分勝手に、また彼女と笑い合いたいと願ったのならば。
『暗く染まった空を、灰色になったお主たちの青春を取り戻して見せよ』
言われなくても、わかってるよ。色を失ったあの時間に再び、彩を灯す。
約束を呪いに変えてしまった責任を果たす。
これは、もう一度
「なんで、立ち上がるの……っ!」
「なんでって、言われてもな」
ただの強がり。限界なんてとっくに過ぎ去った体を無視して、顔に笑みを貼り付ける。
どうして、立ち上がるかなんて決まっている。
クサくて、反吐が出るようなカッコつけた言葉。でも、全てが本心でまともに思考できない頭から出した答えは。
「大切な女の子が泣いてるんだぞ? 全部受け止めるのは、先輩で男の役目だろ」
「——————嘘つきッ!!!」
憎しみ/愛情の詰まった言葉と、弾丸を目の前に。
決して後ろに下がらず、馬鹿正直に。
ただ、前へと足を踏み出した。
ここまでお疲れ様でした。Vol.3のプロローグとなります。
いわゆる“殺し愛”。どうしてこうなったのか、章タイトルになぜ“Vol.1 IF”と書いてあるのかは、続きをお待ちください。
私事ですが、気づけばお気に入りは8000を超え、評価もとんでもないことになっていました。
もしよろしければ、引き続きよろしくお願いいたします……! 評価などもぜひ!