ホシノ「私で童貞捨てたくせに……」「童貞ですけど!?」   作:群缶

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※超デタラメな話です。
※本編および、IFルートとは全く関係ありません。


▼前提条件
・概ね原作本編の事件は解決後。最終編はまだ。
・シュウ → 記憶なし。キヴォトスにきたばかりでヒヨコ。よちよち歩き。
・そのほかの人やヒロイン“たち” → ほか世界線の記憶持ち
・先生 → 記憶あり&胃痛
・黒服 → 記憶あり&超楽しい
・俺たちの青春はこれからだっ!




#番外編+IF:ヒロインたちには記憶あり+俺だけない世界線=重い愛だけが残る。

 

 

 

 

 

 

 童貞。

 

 性行為を経験していない男性を指す言葉。

 

 場合によっては大きな恥ともなる、男にとっての隠すべき印。

 

 私、由九咲 シュウ(16歳)は悲しきことに、未だ童貞である。

 

 つまり恋人はいない寂しい男なのだ。そのはずだ。

 

 これを踏まえて今の状況を見てみよう。

 

 

「ダメです! シュウ先輩はアビドスです! 私たちといっしょに過ごすんですっ!」

 

「と、トリニティもいいところ……かは断言できませんが、私もシュウくんといっしょがいいです!」

 

「何を迷っているのですか。あなたには私のそばにいるという大事な役目があるでしょう……!」

 

「別の世界とはいえ、私たちは体を重ねた仲です。……シュウ、ずっと隣にいてくれるんですよね?」

 

「………………」

 

 

 ああ、他の世界の俺よ。

 

 お前はどうしてこんなにも好かれている……?

 

 一体全体、何をどうしたらここまで、おっっっもい愛を向けられる?

 

 

「シュウ先輩!」

 

「シュウくん!」

 

「シュウ……!」

 

「シュウ?」

 

「…………助けて」

 

 

 

 

 

 

 

 俺は一般的な高校生・由九咲シュウ。

 

 幼馴染で同級生の女の子なんていないぼっちは、誕生日の前日に徹夜でゲームをしようと部屋に引きこもっていた。

 

 敵プレイヤーからの執拗なターゲッティングに嫌気が差し、日付が変わる直前に布団へとダイブをかました。

 

 誘惑的なクッションの柔らかさに夢中となって、夢の世界へと旅立ち、目が覚めたら……。

 

 怪しげな研究室の中で拘束されていた!

 

 

『貴方には私との契約があります。そして、ここではなく別世界線(他の場所)でやってしまったことの責任を果たさなければいけません。クク……ついでに楽しませてください』

 

 

 怪しさ満点、胡散臭さ100%の黒服と名乗った大人からの助言で、これから先に起きるトラブルに対応すべく、体を鍛え始めた。

 

 だが。

 

 

「シュウ!!」

 

【無事のようですっ!】

 

 

 また名の知れぬ大人に捕まってしまった。その人は自分を先生と名乗り、なぜか俺のことをよく知っていた。

 

 その後、黒服の元から連れ帰られ、住む場所が無くなった俺は、先生が所属しているシャーレという場所に転がり込んだ。

 

 よくわからんこの世界の情報と、黒服からの助言の行方を掴むべく、新しい日常が始まったんだけど。

 

 

「うわ……。シュウ、まだあの子たちと会ってないの……?」

 

「ふふ、どこでも変わりませんね」

 

 

 当番という制度で来た早瀬さん、生塩さんには呆れ顔で意味深なことを言われ。

 

 

「ん。……ん」

 

 

 ほぼ無言で“グッジョブ”と、親指を立てた謎のケモ耳アビドス生にエールを送られたり。

 

 

「おや。ここで会うのは初めてかな? 君のことはよく識っている。ナギサが世話になったね」

 

 

 またまたケモ耳だけど、ちっこくて難しい言葉を使う金髪幼女に身に覚えのないお礼を言われた。

 

 ほかにもいろいろあるけど、一番の衝撃はやっぱりこれさ。

 

 

「シュウせんぱ……くんは私の!」

 

 

 ピンクの長い髪をポニーテールにまとめ上げた、両眼の色彩が異なる少女と。

 

 

「うぅ……! こればっかりは譲れません……!」

 

 

 白い制服とふたつにまとめ上げた金に近いクリーム色の髪が特徴的な女の子。

 

 そのふたりに両手をそれぞれ引っ張られて、なぜか自己所有を主張された。

 

 ことが起きたのは、シャーレの室内。

 

 先生からは事前に。

 

 

「シュウに会わせたい……うぅん、会いたいって子たちがいるんだ」

 

「はぁ」

 

「あ、会ってくれる……?」

 

「別に良いですけど」

 

「そっか! なら連れてくるね。……それまでに覚悟は決めておいて」

 

「はい?」

 

 

 どういうこと? という質問の回答は得られず、5分後に現れた数人の女の子たち。

 

 で、気づいたらこうなってたってワケ。

 

 なんだ、これは。

 

 

「モテ期、モテ期なのか?」

 

「こんな状況でも呑気だねぇ、シュウくん」

 

「そうですかね。というか、貴女は……?」

 

「んー? んー……キミの先輩、かな?」

 

 

 何かを悩んだ後にしっくりくる答えを見つけたのか、随分とご満悦な笑顔でそう言われた。

 

 身長は高めで、膝ほどまで伸びた緑がかった薄い水色ロングヘアー、優しげな眼差しと見るだけでも男には毒な体つきの女の子。

 

 見覚えはないし、知らないはずだけど。この人も俺のことを知っているふうだ。

 

 ほぇ〜、モテ期ってすげぇなぁ。

 

 そんなことをまるで他人ごとのように考えていると、背中の方をどこか遠慮がちに引かれる。

 

 頭を動かして背後を確認すれば、これまた知らない女の子。

 

 

「…………やはり貴方は最低です。どこでも、それは変わってないのですね」

 

 

 長く伸びた黒髪と赤紫色の眼。一般的な制服に白いパーカーがよく似合う少女が、俺の学ランの裾を小さく摘んで引いていた。

 

 随分と整った顔を持つ女の子で綺麗すぎるからか、どこか人形チックな印象を受けるが気になったのはそれよりも、言われた言葉と。

 

 

「言ってることと表情が一致してなくないか、キミ」

 

「そう、ですか?」

 

 

 辛辣な言葉を言っているはずなのに、嬉しそうにはにかみながら上目遣い。何より、声の色が高揚しているのがすぐにわかる。

 

 俺の言葉を聞いて不思議そうな声を出したあと、少し考えて。

 

 

「少なくとも。この愛おしい、という感情に嘘はついてませんよ」

 

 

 なんて笑顔で言われてしまえば、押し黙るほかなかった。……というか、照れてしまった。ストレートなの、弱いんだよ俺。

 

 これに目ざとく気づくのは、左右の横にいたふたり。

 

 

「……何、照れてるのかな〜?」

 

「そういうとこは良くないと思います……!」

 

「なんで怖い顔してるの……?」

 

 

 笑顔なのは変わってないけど、圧が違う。

 

 あれか。笑顔ってもともとは威嚇とかそういうのだって聞いたことあるけど、それ?

 

 すごく重い感情を3方向から一斉に向けられて、嬉しいよりも困惑とほのかな恐怖を覚え始める。

 

 だって、本当に重そうな感情を感じる視線なんだ。うまく例えが見つからないけど、“死がふたりを分かつまで”的な重圧。

 

 重力マシマシ、愛憎カラメ。……なんか違うかも?

 

 とにかく、どうしたら良いかわからない以前に、なぜこの子たちが自分へ好意を持っているのか不明で、助けを求めるように先生へと視線を向けると。

 

 

「う〜ん……やっぱりダメかぁ」

 

「シュウだけ、ですね」

 

 

 これまたよくわからない会話を、これまた見知らぬ少女としていた。

 

 一部をサイドテールにした白銀色の長髪。青と白を基調にしたセーラー服っぽい制服。

 

 特殊部隊のようなゴテゴテの装備かと思えば、可愛らしいウサ耳のような通信ツールを頭に装備している女の子。

 

 少し童顔で薄青い大きな瞳と、シュンとした様にハの字になった眉に目を引かれていると、視線がぶつかる。

 

 

「……あ。……ふふ」

 

「へ? えと……」

 

 

 一瞬目を見開いて驚いたかと思えば、すぐに微笑んで小さく手を振られる。

 

 あいにく両手が塞がっているので、振り返すことはできないが、小さく頭を下げて会釈だけ。……あの子も俺を知っているのか。

 

 そんな俺をジーっと見つめたあと、何かを確信するように頷いて。……なんで、そんなとびきりの笑顔を向けるんですか?

 

 何か反応しようとしたタイミングで、先生が少し大きな声でみんなに話かける。

 

 

「まぁ、予想してたしね。さて……みんな、一回落ち着こっか? シュウ、混乱してるし」

 

 

 ぱんぱん、と手を鳴らしてそう呼びかけると俺のそばに居た子たちが名残惜しそうな顔をしたまま、先生の方へと向かう。

 

 シャーレにあるソファーやテーブルがある休憩スペースのような場所に各々が座った。

 

 それにほんのりホッとしつつ、流れで俺もみんなが座った方へと足を進めた。

 

 ……む。見事に4つに分かれて座っている。どこも1人分のスペースがあるが俺はどこに行けばいいのか。

 

 どうしようかな、と悩んだ俺を見た先生が不思議そうな顔で。

 

 

「どうしたの? シュウも座りなよ」

 

 

 と尋ねてきた。都合がいいと先生の方に足を進める。

 

 

「あ、はい。なら…………あの」

 

「…………なぁに?」

 

「…………な、なんでしょうか」

 

「…………何か」

 

 

 移動しようとした俺の裾を掴む手が複数ありけり。

 

 言わずもがな。先ほどの3人と。

 

 

「ほ、ホシノちゃん、ダメだよ。シュウくん困ってるよ?」

 

「ユメ先輩は自分の手を見てから発言してください」

 

「ふぇ?」

 

 

 あのほんわかな俺の先輩、と名乗った人。なんならピンクの髪の子に指摘されるまで気づいていなかったようで、ひどく慌てている。

 

 全員が“そっちに行かせない”とばかりに俺を離してくれない。いや、別に力は強くないし、なんなら優しいくらいなんだけど。

 

 

「どこ、座るんですか?」

 

「うぅ……シュウくん?」

 

「……決まっていますよね?」

 

 

 おっもーーーい!!!

 

 視線がすっごく重いのです。なんだこれ、呪いか?

 

 三者三様の感情を感じるけど、共通しているのは“逃さない”という意思。

 

 どうしよ。助けて、と先生に泣きそうな顔で視線を送ると。

 

 

「こーら。ダメだよ、みんな」

 

 

 こちらの思いを汲み取った先生が困った顔で助けてくれる。やっぱり先生だよなぁ!

 

 

「シュウが選ぶことだよ?」

 

「先生??」

 

「別に座る場所ってだけで、シュウの好みとか関係ないだろうし」

 

「先生????」

 

 

 余計な気と言葉が溢れてるよ? むしろ今ので懸念ができたのか、みんなの掴む手に力が入ってるよ?

 

 

「ほら、話を進めるからパッと座って」

 

「「「「…………」」」」

 

「鬼か、あんた」

 

「先生だけど」

 

「知ってるよッ!!」

 

 

 悪意ゼロ(いや、変な意図はありそうだけど)。本当に不思議そうな顔でそんなことを言われて、つい敬語が抜けてしまった。

 

 とはいえ、俺が座るのを待っているのは本当。ならどこに座るかなんだけど。

 

 期待を膨らませたかのような視線。

 

 絶対選んでくれると確信したような顔。

 

 それぞれの言葉ではなく、視線による訴えにたじろいだとき。ふと、フラットな視線で成り行きを見守っていた女の子を見つけた。

 

 

「……えっと、ここで。隣、いいかな」

 

「はい。……えへへ」

 

 

 あの、先生の隣にいた可愛らしい白髪の少女の横に腰を落とす。

 

 少し恥ずかしそうに微笑まれて、そこはかとなくこちらも羞恥を感じるが、この子は特に俺に対して何も思っていない様子だし、一番無難だろう。

 

 

「ミヤコの隣ね。……ちなみになんで?」

 

「やっぱり変な意図ありましたね???」

 

 

 気になった顔で先生に聞かれて、ついツッコミを入れる。

 

 ま、まぁ。その答えをはっきり口にする必要はあるかな。……だって。

 

 

「……………へぇ」

 

「……………むぅ」

 

「……………はぁ」

 

「ひ、ひぃん……怖いよぉ……」

 

 

 震えるくらい冷徹な視線が俺を凝視してるからね!! モテ期ってこんな目にも会うんだねっ!!

 

 3つの怖い視線と、それに挟まれてひぃんひぃん言って怯えている人に、こほん、と咳払いをひとつはらってから。

 

 

「別に深い意図はありません。単純に近かったからなのと、特に俺に対して何もなさそうだったからです」

 

「へ?」

 

「はい?」

 

 

 素っ頓狂な声に反応する。顔をそっちに向ければ、驚いた顔をした先生とこんにちは。

 

 

「なんですか、そんな声出して」

 

「え、いや……。ミ、ミヤコが何もないって……シュウは本当にそう思ってるの?」

 

「だって、他のみんなと違ってアクションないですよ?」

 

「…………そ、そっか」

 

 

 何をそんなに動揺しているのだろうか?

 

 横にずれた先生の視線を追って、隣の“ミヤコ”と呼ばれた少女の方を見るが。

 

 

「なんでしょう?」

 

「え。な、なんでもない……かな」

 

「そうですか」

 

 

 おかしな人ですね、とくすくす笑われてしまう。

 

 うむ、特に何もないじゃないか。

 

 

「……うわ、すごい」

 

【変わり身ですね……!】

 

「へ?」

 

「な、なんでもないよ!? ね!?」

 

【は、はい! 私は何も記録していませんっ!】

 

 

 変に焦った様子のふたりを不思議そうに見つつ、つい隣のミヤコさんに話かける。

 

 

「先生、どうしたんだろ?」

 

「私にも不明ですが……そうですね。シュウはそのままで良いんです」

 

「??」

 

 

 言っている言葉の意図がわからず、頭にハテナを浮かべるが……“ま、いいか”、と顔を正面に戻す。

 

 ……うぉ、なんかゾクッとしたぞ。

 

 とりあえず、色々とあったけど。ここからようやく、この子たちや先生が知っている“俺”という存在の話へと移っていった。

 

 

「とりあえず自己紹介からかな。えっと————」

 

 

 

 

 

 

 

 

「————さて、シュウ。私たちが知っている……というか、覚えているのはこんなとこだよ」

 

「えぇ……? いや……えぇ??」

 

「そりゃ、そんな反応になるよね」

 

 

 苦笑いで予想通りの反応、と言われるがむしろ“へー、そうなんですね”と俺が納得する方が怖くない?

 

 めちゃくちゃ簡単に話をまとめると。

 

 

・俺以外のみんなは、別の世界で俺と過ごした記憶がある

・完璧には思い出せないが、大切なことは覚えている

・中でもより親密な間柄だったのが、この4人(とこの場にいない数人)

・で、なぜか俺だけ知らない

・だからみんなで集まって話せば、少しは俺が思い出すかも、とこの場が設けられた。

 

 

 ……えぇ? 何それ、ゲーム? アニメ? あ、この世界がそれに類似したような場所だったか。

 

 まだ混乱したまま、目の前に座る小鳥遊ホシノさんと梔子ユメさんに一応、尋ねる。

 

 

「小鳥遊さんとは先輩で後輩、それで恋人?」

 

「はい。……名前で呼んでくれないんですか?」

 

「ぜ、善処します……。え、えと。それで梔子先輩ともただならぬ仲、だったんです?」

 

「う、う〜ん。そうかな……でも、私たちは納得してたよ?」

 

 

 時間遡行から夢をベースに作られた世界で起きた事件。果てには2人の女の子を囲っていた世界線がある、とのこと。

 

 その世界の俺、最低じゃない??

 

 次に、視線を右に向ける。

 

 

「で、阿慈谷さんとも恋人になったことがあると」

 

「はい。いっぱい、イチャイチャしましたっ!」

 

「…………そ、そうなんだ。ぐ、具体的にはどのような……?」

 

「ち、ちょっとこの場では……あはは」

 

 

 頬を赤らめて恥ずかしそうに、でも嬉しそうな表情でそう言われて胸が変にときめく。

 

 気になる。すっごく気になるぞ、何を……ナニをしたんだ俺……!!

 

 果てない好奇心を胸に秘めていると、視線を感じて真反対に向ける。そこには。

 

 

「えっと、ケイさん……だよね」

 

「……随分と他人行儀ですね。別に構いませんが」

 

「…………。ケイとも、俺は仲良かったの?」

 

「! え、ええ。……やっぱりシュウはシュウですね」

 

 

 むくれた顔から一転して、困ったような、でも嬉しそうな顔で返事をされる。

 

 もしかして、と思って言葉の裏にありそうな意図を汲んでみたけど、正解だったようだ。

 

 どうやらあまり素直な子ではないみたいだ。ちょっとツンとしたことを言っちゃうタイプだな、ケイは。

 

 うーん……全員が全員、俺に対して大きな矢印を向けていたのは、そういうことなのね。

 

 まだ半信半疑だけど、明らかに熱のこもった視線や言葉、態度を向けられると嘘とは言い辛いし。

 

 何より、こんな俺のことを好きと嘘をついてもメリットないだろう。

 

 

「あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、なら……月雪さんは?」

 

「あぁ〜……」

 

「なんですか、その“まだ気づいてないのか”みたいな声は」

 

 

 だって、ほかの子たちみたいに“私の!”みたいな言動や雰囲気はないし、何よりずっと静かに傍観しているだけだ。

 

 だから、この子は例外……。

 

 

「私もシュウとはいっぱい“育み”ましたよ」

 

「………はい?」

 

「はい?」

 

 

 今なんと?

 

 突然、言われた言葉に目を丸くして、真横に視線を向けると“なんでしょうか?”と不思議そうな顔をした月雪さんが。

 

 

「え、育んだ?」

 

「はい。それはたっぷりと」

 

「な、なにを?」

 

「ふふ。……なんだと、思いますか?」

 

「ナニを!?」

 

 

 さっきまでの雰囲気から180度変わって、なんとも怪しく……そして卑しい笑みを浮かべた月雪さんについ、声を荒げてしまった。

 

 

「聞きたいですか?」

 

「そりゃもちろん!」

 

 

 誘惑するように、勿体ぶるように囁かれて。ずい、と前のめりになって食い気味に聞いてしまう。

 

 だって! この俺じゃないとしても、確かに“俺”が成し遂げたことなんだろ!? 男の勲章だろ!?

 

 

「むぅ……! シュウくん近いよ!」

 

「あんまりくっつくのはダメですっ!」

 

「距離感のバグは相変わらず治っていないようですね?」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 

 くっそ怖い声と視線を聞いて、縮こまるようにもとの位置に座りなおす。

 

 重い……やっぱり愛が重い……! なんでこんなことになってるの、この人たち……!

 

 

「別のシュウのせいかなぁ」

 

「俺悪くないじゃん!」

 

「愛されてるねぇ」

 

「遠い目……? 何があったんですか?」

 

「…………今日までシュウが、みんなに偶然でも会わないように頑張った私の努力、わかる?」

 

「…………ありがとうございました」

 

 

 俺がシャーレに来てから、スケジュール管理は全て先生がしてくれていた。

 

 頼んでいなかったが、“危ないんだよ”とよく言われていた。

 

 それって、もしかしなくても“(性的な意味で)危ないんだよ”ということだった……?

 

 ギラつく視線を感じる。……この人たちを前に貧弱一般高校生の俺は、なすべもなく……なんてことは想像に容易い。

 

 ……あれ、でも。

 

 

「けど、月雪さんは普通というか……自分で言うのもアレだけど、他の人たちより冷静というか」

 

「そうですか?」

 

「だって、今日初めてあったとき何もなかったよね?」

 

 

 思い返すのはつい先ほどまでの出来事。

 

 俺の顔を見るや否や、飛びつく勢い……というか文字通り飛びつかれたわけで。

 

 ここまでの話を聞く限り、そこまで深い仲だったなら、月雪さんも同じような反応をしたり。

 

 

「あんなふうに嫉妬に狂った視線をシュウに向ける、そう思ったんですか?」

 

「うん、そうなんだけど。ストレートに表現するのは、まずいかなぁって俺思うんだ」

 

 

 あぁ……背中やらに感じる視線が酷いくらい痛い……。別に嫉妬に狂ったとか思ってないよ、本当だヨ。

 

 冷や汗を感じつつ、“実はこの子の隣に座ったのも不味かったのかな”と焦り始めていると。

 

 そうですね、と顎に手を添えて少し考えた月雪さんは。

 

 

「別に何も思わないとは言いませんが、特に心配もしていないので」

 

「へ? 心配?」

 

「はい」

 

 

 頷いてから姿勢をしっかり俺の方に向けた月雪さん。顔はとても信頼しきった優しい笑みで。

 

 

「何があろうとも、シュウは“最後には必ず”私の隣にいてくれる。それを私は知っていますから」

 

「そ、そうなの?」

 

「ええ。なのでシュウは自分の思うがまま、ここで過ごせば良いと思います」

 

「そうかな。そうかも?」

 

 

 やっぱり重くない子もいるのか。他の子たちはどこか独占欲が強そうな感じだったが、月雪さんはそんなことないみたいだ。

 

 いやー、ホッとした。

 

 

「シュウ、心底安心した顔してるけど……」

 

【一番重いのってやっぱり……】

 

「はい? 何か言いましたか、先生」

 

「な、なんでもないよ!?」

 

 

 何やら先生と月雪さんが話しているが、とりあえずは一旦置いておき。

 

 この話の本題はまた別にあるようで。

 

 ちょっぴり言い辛らそうに先生が口を開く。心なしか視線はチラチラとみんなの方をみていた気がする。

 

 

「えっとね。シュウってまだ学校を決めてないでしょ」

 

「はい」

 

「だから、そろそろどこかの学園に転入手続きをしなきゃなんだ」

 

「あー、そんなことも言ってましたね」

 

「い、行きたい学校ある?」

 

 

 確か数日前にそんなことを言われた気がする。今の今まで忘れていたけど。

 

 行きたい学校ねぇ……うーん。……そう考えたとき。

 

 

「シュウ先輩はアビドスに来るべきですっ!」

 

 

 小鳥遊さんがこの発言をしたことで、冒頭に繋がるってわけ。

 

 

 

 

 

 

「この世界では違いますが、私たちは先輩のことが大好きです! ですよね、先輩!」

 

「う、うん……そうだけど、ホシノちゃん一回落ち着こ?」

 

「わ、私もですよ!? 負けないくらい大好きです!」

 

「……好きかどうかを一度置いて、一般的な学校であるミレニアムに来るべきです」

 

「私のテントなら何があっても合意です。……好き放題ですよ?」

 

「…………」

 

「顔を押さえて俯いても解決しないよ?」

 

「なら助けてくださいよ……」

 

「私としてはみんなの味方だからね。……何か決める基準とか作ったら?」

 

「基準……基準……。うーん、なら逆にみんながいないとことか————」

 

「「「「シュウ(くん)(先輩)?」」」」

 

「————は論外だよねっ!?」

 

「弱いねぇ」

 

「うぐぐ……な、なら。俺と一番深い仲だった相手のところ、とか」

 

「あ」

 

「え?」

 

 

 

 

 この発言からさらに会話が暴走し、より燃え盛ることになるのは……またどこかで語ろうと思う。

 

 

 

 

「「「「私で童貞捨てたくせに……」」」」

 

「童貞だよ!?」

 

「うわ、これまた懐かしいやりとりだ。……人、増えてるけど」

 

 

 

 

 





仕事の際に書いた落書き。つまりは息抜き回でした

別名『ハーレム世界線』。絶対に本編では起きない事象です。


ええ、続きません(鋼鉄の意志)。

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