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最近、余所から来た二人組が最高難易度の依頼をドンドン成功させている。それだけでも苛つくのに、ソイツらは一匹狼を気取っているようで、先輩の俺らにも挨拶しにこねぇ。
ゴールドになったばかりで粋がってんだろうな。そこん所どうやら分からせてやる必要がありそうだ。序列っつうもんを身体によ。
特にあの黒ローブの男は気に入らねぇ。透かした態度しやがって。ああゆう奴が一番鼻につくんだよ。天使の方はよく分からんが、アイツら天使の羽はある筋で高く売れるという話を聞いたことがある。アイツからむしり取って酒代にでもしよう。
だが、実力だけならアイツらも一応ゴールドだ。できんことはないが、実力行使はちと手間がかかる。
そこでアイツらが一番嫌なことをして脅してやろうと決めた。どうやら過去を探られるのを嫌ってるらしい。いつか黒ローブの男が詮索するなと言っていたが、俺らにはそんな脅し通用しねぇ。
しかも過去については直ぐに調べられそうだ。だって天使がいるんだぜ?そんなもん隣国の宗教国家からしか来ねぇもんだ。そこで最近起こったことについてちょっと探れば、直ぐにアイツらの過去とやらが分かるだろう。
俺らもゴールドⅡなんだ。腕っぷしだけで生きてきた訳じゃねぇ。頭をフル回転させて、今までの鍛練の成果を全力で出し尽くして、漸く生き残れるのがこの世界だ。そんなおっかねぇとこで培ってきた俺らの全てを使ってアイツらの鼻を明かしてやろう。
やるなら徹底的にが俺らのモットーだ。その時が来るまで呑気に過ごしてな。
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日が沈み、辺りは暗闇に呑まれていく。夕暮れ時を過ぎた今の時間帯はすっかり夜に移り変わってしまった。道路には数多くの屋台が並び、屋台に吊るされているランプが暗闇を押し戻すように周りを照らす。
夕飯時の時間であるため、屋台は飲食中心の店が多い。その場で座って食べられるものや、商品だけを売り捌いているもの、中には屋台に収まらず、付近に椅子とテーブルを用意しているところも。
仕事終わりに寄ってきた工房の職人や、仲間達と呑みに来た冒険者、家族で食事するために来た者たち。そんな様々な人が楽しそうに笑い合ったり、言い争ったり、食事を楽しんだりしている。
そんな少し騒がしいが決して居心地が悪くはない、寧ろ和気藹々とした柔らかい雰囲気。
だがそんな雰囲気を微塵も感じていない、逆に底冷えしそうな程、冷たい雰囲気を纏っている二人組がいた。
あまりにもちぐはぐな状況の為、何人かの者が興味本位で彼らを見ているが、彼らの噂を耳にはさんだ者は決して彼らの方向を見ようとはしない。
そんな不用意なことをしていつ彼らの逆鱗に触れるかどうか分からない。故に、何もしないのがここでは懸命な判断だ。こんなことも分からないようであるならば、一般人は兎も角冒険者は生き残れないだろう。
注目の的となった二人は、そんな不躾な視線を意に介さずに屋台の席に座っていた。勿論、彼ら以外の客はいない。誰が殺気を撒き散らしている相手と席を共にしたいというのか。
黙々と串に刺さった肉を貪る二人。会話もせず一心不乱に目前の料理を食らう。
暫く食べ続けた後、口直しに水を飲んだシエルが唐突に口を開いた。
「ローグ、今更言うのもなんだけど、もっと味わって食べたらよかったね。つい癖で、早く食べちゃったよ」
「仕方ない。あの時は、食事を楽しむどころか落ち着いて食事をする事自体、儘ならなかった。今更治せと言うのも酷な話だ」
確かにそうかもね、と苦笑するシエル。
「けど、せっかく美味しい料理だったんだ。少し勿体無い思いをしたよ」
シュンとしたシエルに見かねたのか、グローがシエルの方に顔を向けた。
「ならまた今度でも食べにいこう。何も一回だけということはない。飽きるまで店に通おう」
そして、と少し間をおいて告げる。
「もし飽きたら、また別の店にでもいけばいい。いつでも付き合おう。それが俺の唯一の楽しみだ」
シエルはその言葉に一瞬瞠目して、直ぐに笑顔を浮かべた。
「うん。私も、グローと色んなお店に行ってみるの、とても楽しみ。最悪、一緒ならなんでもいいよ」
少々重すぎないか。屋台の店主は、そんな思いを抱いたが決して顔には出さない。この店の主なのだ。客がいる前でそんな反応はしない。しかもよりによってこの二人組だ。何をされるかたまったものではない。
その後も中睦まじく話し、珍しく楽しげな雰囲気が続いた。
しかしそれは直ぐに霧散した。傲慢な態度をした男を中心に、三人で構成されたグループが絡んできたからだ。
何か不穏な空気を感じた店主は、身を震わせた。
勿論、客に見せずに内心でだが。
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「よぉ、旨そうなもん食ってんじゃねえか。俺らにも食わせてくれよ」
そう言いながら私達の隣に乱暴に座った。許可も出してないのに……。嫌な人たちだなぁ。
ローグはさっきまでの雰囲気が嘘のように不機嫌になっていた。氷のような視線で相手を睨み付けている。
しかし、三人の中で殊更嫌な態度を取っている男は、意に介さずに話しかけてきた。
「俺はダリオ。この町のゴールドだ。最近ゴールドになったお前らのことが気になって態々出向いてやったんだぜ。感謝しろよ」
ダリオと名乗った男は、ローグの席に置いてある串に刺さった肉を取り、勝手に食べた。
しかも味が気に入らなかったのか、一口齧った後直ぐに道路に捨てた。
舌打ちをしたダリオがローグに荒々しく
「ゴールドなのにこんな不味い飯食ってんのか?貧乏舌っつうのは憐れなもんだな」
と言い放ち、小馬鹿にしたような溜め息をついた。
ローグはこめかみに青筋を浮かべ、拳を力強く握っている。今にも殴りそうだ。だが、私も同じ、もしくはそれ以上に怒っている。
ローグとの会話を遮られたのも、私達が美味しいと言ったこの店の料理を侮辱したのも、何よりその料理をあろうことか捨てたことも、全て私の怒りの原因となる行動だ。
努めて私の激情を表に出さず、私は告げる。
「何が目的でこんなことをしているのですか?用が無いならさっさと帰ってください」
ダリオは下卑た笑みを浮かべた。
「おぉ、こわいこわい。
ダリオは下品に笑い、腹を抱えていたが私はそれどころではなかった。
なんで、コイツがその事を知って………
過去の事がフラッシュバックして呆然としていると、ローグは静かに立ち上がり、そしてダリオの顔面を思い切り殴った。
吹っ飛ばされたダリオが辺りの机や椅子を巻き込んで倒れる。ローグはダリオの胸ぐらを掴んで叫ぶ。
「シエルのことを何も知らねぇ奴が、よくもぬけしゃあしゃあと……。二度と口開けなくしてやるよ」
ローグを押し返し、素早く離れたダリオが周りの人々に語るように話す。
「いいや、俺は知ってるね。その天使は隣国の宗教国家から逃げてきた奴だろ?ちゃーんと、自分の足で向かったから聞いてきたぜ」
野次馬たちがなんだなんだと、己の好奇心を満たすためにドンドン集まってくる。
それを確認したダリオはより饒舌になる。
「最近、宗教国家でこんな事があったらしいぜ。『内部争いによる殺人事件が続出』ってのがな。しかも殺されたやつらは『ある特定の人物』と関わっているというのもな。その『ある特定の人物』っていうのが………
そこの天使なんだとよ!!」
私を指差したダリオは、声高々に叫んだ。
俺も聞いたことがある、あの事件の首謀者ってことか?、なんでそんな奴が冒険者になってんだよ…。
ダリオの言葉を聞いた野次馬は、ざわざわと勝手な憶測をたて、私を見てくる。
あぁ、違う、私は………。いや、やめて、そんな目で見ないで、お願い、やめて、お願いだから!!!
私はその場に踞った。周りにいる野次馬の顔を見ないように。
けど分かってしまう。痛いほど肌に突き刺さるのだ。私を非難する視線が、私を疑うその視線が。
そんな視線から避けるために、その場でしゃがみ、頭を覆う私の前に誰かが立った。見上げて確認すると、ローグだった。私を庇うために前に出てくれたのだ。そして、周りから見えないように私の手を握ってくれた。
……そんな彼をとても頼もしく思い、同時に酷く情けない自分を許せなくなる。
いつまで、私は彼に頼りきったままなのだろう。早く立ち直らないとローグにも迷惑なのに。
自分を責めていると、ダリオは場を盛り上げるためか、次はローグに色々と言い始めた。
「そこの黒ローブもそうだ!アイツは宗教国家で殺し屋紛いのことをしていたんだ。ああ、成る程!隣国の事件は首謀者があの天使で、実行者が黒ローブって訳か!そんな奴らがゴールドになってたとはな。世も末だぜ!」
ローグはダリオの言葉に俯く。私は後ろにいるから彼が今どんな顔をしてるか分からない。
確かにローグは異端審問官だったから、誰かを殺すこともやっていたことがある。けど、決して殺し屋ではない。
それに、彼はその事を償い名を
そして、ダリオは一番してはならないことをした。
「なぁそうなんだろう?天使のシエルに、確か……そう。黒ローブのビエン」
なんで、ローグの、本当の名前を?
何処で、どうやって、何故、何故、何故!
その名は彼が自分を許せたときに、初めて呼んであげるって決めていたのに………
正直、その後のことは覚えていない。ローグが何も言わずに私を連れてその場を去った。どうやってその場を凌いでいたかも分からない。
多分、何もしていないと思う。あの時何かする余裕はお互いになかったから。
ダリオに広められた噂から逃れるために、私達はまた別の国に旅立つ。それなりの大きさの鞄に荷物を積めて、この国と分かれるのだ。
あぁ、あのお店の料理。もっと食べたかったなぁ。
・ローグ(本名ビエン)
当時の職業 異端審問官(処刑人)
性別 男
年齢 20
過去 宗教の内部の腐敗に伴う権力争い。上の命令により無実の信徒を何人も殺した。司祭や司教が死ぬ度にビエン含む多くの異端審問官は周りから白い目で見られた。次の標的がシエルに決まったとき、隣国への逃走を決意した。
大切なヒト、モノ シエル
・シエル
当時の職業 聖職者
性別 天使のため不明
年齢 20
過去 宗教の内部の腐敗に伴う権力争い。幾つかの派閥ができていたが無所属であり、優しく人気であったシエルは、他の派閥の聖職者に攻撃される対象となり、疑心暗鬼になる。そのとき起こっていた司祭や司教が殺される事件もコイツが指示したと根も葉もない噂を広げられる。精神がボロボロの状態の時、ビエンから隣国への逃走の誘いを受けてそれに乗った。
大切なヒト、モノ ビエン
多分次は、手に入れた力を上手く使えなかった人の話