帰ったらシロコお出迎え
スランピアってなんかフロムゲーのフィールド名にありそうだなって思って今回のタイトルはそれを意識しました
話は変わりますが、アイドルセリカのポニテが堪りません
すごく好きなんですよね…ポニテ…
『レイヴンお疲れ〜。モモカ先輩だよ〜。
今回、またあんたにお願いしたい依頼があってねー。
早速だけど、内容に入らせてもらうよ。
場所はとある廃墟。廃墟とは言っても、この間の《廃墟》とは違う場所だけどね(パリパリ)
《スランピア》って知ってる?
今、生徒たちの間で噂になってるんだけど、元々、モモグループが“ユートピア”って名前で建設したテーマパークだったの。
まぁ、経営不振で半年もしない内に廃棄しちゃったんだけど(パリッ)
問題は、最近、奇妙な噂が広まってて〜。
電気が絶たれたはずの施設の遊具がひとりでに動くとか、それに近付いた生徒を丸呑みにしちゃうとか…。
勝手に遊具が動くくらいならどうでもいいんだけど、生徒が消えちゃうのはさすがに問題だから、この現象の正体を調べて欲しいの。
何なら、その原因をぶっ飛ばしてもらっても構わないよ(パリパリ)
そういう訳だから早速、明日の夜、スランピアに行って調査して欲しいんだよね。
座標は送っとくから。
あっ、今回はオペレーターできないからそれもよろしく〜。
いやぁ〜最近ずっと残業続きでさ〜。
早く帰れって言われてるんだよね〜。ごめんね〜。
終わったら報告もよろしくね〜(パリッ)』
これが昨晩、風呂上がりに届いていた依頼だ。
モモカの相変わらずの舐めた態度は兎も角、連邦生徒会が生徒の間だけの噂話を信じて動くのは意外だ。
噂話を裏付ける何かがあったのだろうか?
それらしい情報はモモカからは届いていなかったが。
そういう訳で、依頼が届いた翌日、私は最近ではすっかり馴染みとなった風紀委員会の治安維持の依頼を日中に熟し、少し早めに上がらせてもらうことにした。
アコへの相談だったが、断られるどころか、逆にこちらの心配をしてきた。
まあ、先のシャワー室でのやり取りから私の手が減ってヒナの負担が危惧しているというのもあるのだろうが。
早めに上がった私は、風紀委員会の依頼で消費した弾薬等を補給し、依頼の目的地であるスランピアへと向かった。
それにしても、まさか、先日、チナツから話を聞いたばかりのスランピアにこうして出向くことになるとは思わなかった。
この依頼によって、あの時に上がった様々な謎について、何か分かるかもしれない。
青白いロボットの謎、スランピアに蠢く者たちの謎、この者たちが何処から現れたのか、という謎の数々が。
そうして廃墟と化したテーマパーク、スランピアに到着したのは、日没間際の黄昏時だった。
またの名を逢魔ヶ刻。
噂を信じている訳ではないが、
どういった原理かは分からないが、一先ず、青白いロボットには銃撃が有効であることは実証済みだ。
攻撃が効くのであれば問題ない。
正体が幽霊だろうと何だろうと、倒せばいいだけだ。
右手にアサルトライフル、左手にショットガンを持ち、スランピアへと視線を向ける。
夕陽を浴びて佇む外観は、物悲しい雰囲気が漂う寂れた遊園地そのものだ。
怖いとか、恐ろしいというよりは、ただただ、悲しい、寂しいという感情を胸に去来させる。
元々は、多くの観光客が訪れ、賑わっていたであろう入口のゲートは、すっかり錆が侵食し、蔦まで絡み付いている。
地面も本来はきっちりと整備され、多くの人々が行き交った石畳は、無惨に割れ、その隙間から雑草が生い茂っている。
時間の流れの無情さを感じさせる。
ブーツが石畳を叩く音だけが、虚しく響き渡る。
だが、今のところは脅威は感じられない。
少し早く来すぎただろうか。
少しずつ、だが確実に陽が沈んで行き、夜の帷が降り始める。
ゲートを越えた先には、噴水とメリーゴーランドがあった。
噴水の水は涸れ、メリーゴーランドも錆び付いてしまっている。
周囲には、元々は豪華に彩っていたであろう紅白の垂れ幕が、汚れ、千切れ、地面に垂れ下がっている。
他にも、食べ物を売る台車の残骸が散らばっていた。
遠くには動く気配の無い観覧車やジェットコースターのレールが望める。
太陽が完全に落ち、空が濃紺に染まる。
辺りが暗闇に包まれ、まるで夜の訪れを告げるように一陣の風が吹き、木々がざわめく。
その直後だった。
何処からともなく、陽気で、だが不気味な、テーマパークらしいBGMが流れ始める。
それと同時に、周囲の設備に青白い光が灯り、園内を明るく、だが妖しく照らし出す。
廃棄され、廃墟となったはずのテーマパーク、ユートピア。
だが、それはまるで、私という新しい客を出迎えるかのように、賑やかに、生まれ変わった姿を現す。
この姿こそが、人々の噂によって現実となった《スランピア》なのか。
「──あの者が来ると思っていたのだが…そなたが来たか」
突然、背後から聞こえた声に、反射的に振り向きつつ、飛び退く。
右手のARの銃口と共に、視線を向ける。
私の視線の先には、燕尾服に身を包んだ頭部が二つある木彫りの人形が立っていた。
その人形は、
「はじめまして、と言っておこう。《白と黒の狭間で燻る者》よ」
その声は、間違いなく大人の男性の声だった。
ロボットでも動物でもない存在。
先生の言っていたゲマトリアの要素に当て嵌まるが、さて。
そしてこいつは何を言ってるのか。
「白と黒の…なんでしょうか?」
とりあえず私は外行きの態度で接する。
敬語は相手を敬って使うものだが、時にその口調は、酷く他人行儀に映るものだ。
場合によっては、敵意の表れ、とも捉えられることもある。
今回は正しく敵意を示す為のものだ。
「あぁ、すまない。つい、
その言葉はまるで、あえて隔たりを作るような、自分は別の存在であると強調するようなものに私は思えた。
ゲマトリアであるということを隠す素振りも無いようだ。
「…貴方はゲマトリアですか?」
銃口を向けたまま、私は冷たく、鋭く、睨み付ける。
「その通り。私は《マエストロ》。“芸術”への敬意も含めて、そう呼んで欲しい。それとどうか、その物騒なものを下ろしてくれないだろうか?私はそなたと争う気はない」
私は先生が言っていたことを思い出す。
生徒を人とも思っていない連中だと先生は言っていた。
ならば、そう簡単には言っていることを信じることは出来ない。
「それなら答えていただきましょう。マエストロ、貴方はここで何を?」
私は逆に強調するように銃を突き付けつつ、双頭の木彫り人形──マエストロに問い詰める。
先程、こいつは何の前触れもなく現れた。
ならば、前触れもなく消える可能性もある。
銃を突き付ける意味はないかもしれないが、意思表示にはなる。
敵意を示し、威嚇にはなる。
マエストロは、諦めるように溜め息をひとつ吐くと、スランピアを見渡す。
スランピアは相変わらず視覚的にも聴覚的にも賑やかに、或いは騒々しいくらいに光と音を発している。
青白く、不気味な事を除けば、正しく遊園地そのものだ。
「──この閉鎖された遊園地には、かつて多くの人々の幸せが、歓喜が残滓として残っている。捨てられたドールに、ようやく意味が付与されたのだ」
「私はこれらを
「…レイヴンよ。私はただ、ここで観測していたに過ぎない。古来より、全ての感情には、その原初たる“根源の感情”が存在し、ありとあらゆる感情は、それを模倣する形で現れているのだという」
「幸せ、歓喜、熱情、怒り…いずれも、根源の感情のレプリカだということだ。芸術家として、私はこの考えにインスピレーションを受けた。この感覚が私を何処へ導くのかはまだ分からないが、深く、高揚に満ちた……」
「おっと失敬。芸術の話となるとつい耽ってしまうな。だが、これで分かっただろう。
専門用語のオンパレードでこちらの理解を阻害するのはやめていただきたい。
あいにくと、戦うことしか能がなく、頭が良い部類ではないのだから。
「それならば、何故、私の前に?わざわざ姿を見せる必要はなかったのではないですか?」
マエストロは最初、この場所に訪れる者は先生を望んでいたようなことを言っていた。
何故、私の前に姿を現したのか。
「…先生程ではないが、そなたもまた、知性、品格、経験を備えつつある。子供と大人の狭間に存在する者のようだ。礼儀と信念もまた、感じられる。そなたであれば、理解できると思ったのだ。この“芸術”を」
芸術とはスランピアのことを指しているのだろうか。
確かに、放棄され、廃墟となった、元は人々を喜ばせる為の建物が、今度は人々の恐怖の対象として姿を変えて蘇るのはどこか、退廃的でありつつ、皮肉めいた美しさを感じるが…。
…いや、理解するな、同調するな。
「…生憎と、私は学が無いもので。芸術の何たるかなどは存じ上げません。なにぶん、戦い、壊すことしか能がないもので」
「そうは言いつつ、そなたは価値を理解できる人間のはずだ。価値を理解しつつ、目的の為に躊躇なく破壊する…。何も、芸術とは創造することばかりではない。“破壊の美”というものもまた、存在する。特に、そなたには破壊の美こそが相応しい」
人を褒めるのか貶すのか、どっちかにして欲しい。
あなたは破壊することが似合ってます、なんて言われて誰が喜ぶのか。
少なくとも、私は喜べない。
「だからこそ、私は、これからそなたが、この“作品”を蹂躙し、破壊しようとも決して構わない。邪魔する気もない。それもまた、一つの芸術の形だからだ。形あるものはいずれ、壊れゆく。せいぜい、華々しく、散らせてあげて欲しい」
どうやら私の仕事を邪魔するつもりはないらしい。
私としては、そういうことであれば最早、こいつのことはどうでもいい。
何をしようと、何を企んでいようとも。
目の前に立ちはだかった時には、容赦はしないが。
「それに、一度破壊したところで、このスランピアという作品は、何度でも復活する。あぁ、一応、断っておくが、私が何かする訳ではない。そういう“仕組み”なのだ。この廃墟がこの場所に残り続ける限り、この場所を人々が心の中で想起し、何かしらの感情を抱く限り、《スランピア》は蘇り続ける。歓喜のレプリカは、
なるほど、インターバルはあるとは思うが、ここでスランピアの騒ぎを鎮めても、結局は対症療法でしかなく、原因療法にはなり得ないと。
だが、それでも対症療法ができるのであれば、それをやらない手はない。
「…そうですか。分かりました。最後に一つ、質問してもよろしいでしょうか?」
話の終わりの雰囲気を感じ取り、私はずっと内に秘めていた問いを投げかける。
「ふむ、私に答えられるものであれば」
「大丈夫。誰でも答えられる簡単な質問です。あなた方のゲマトリアに、エア…或いはルナシーという人物はいらっしゃいますか?」
先生の話を聞いてから、証拠こそ無いものの、ずっと脳裏に浮かんでいる推測。
その答え合わせ。
「…なるほど。ああ、いるとも。レイヴン、そなたの
専門家、か。
これはまた、彼女も大きく出たものだ。
だが、このキヴォトスに於いては、彼女ほど私に詳しい人物はいないだろう。
専門家という表現も、あながち間違いではない。
「…そうですか。お答えいただきありがとうございます」
これで、エアの居場所は分かった。
今は一先ず、これで良い。
ゲマトリアがあるところに、エアが関わっている。
「追求しなくていいのか?そなたは彼女を追っているのだろう?」
どうせゲマトリアの本拠地を聞いたところで答えられないだろうに。
「それならば教えていただけますか?貴方達の居城の場所を。それが何処にあるのかを。答えられますか?」
私が問い詰めると、マエストロは困ったように両手を上げた。
「…これは一本、取られたな。忘れてくれ」
最初から期待はしていない。
そもそも、この連中が、尋常の場所に拠点を構えているとは考えられない。
普通では辿り着くことができない場所に潜んでいる可能性もある。
それこそ、異空間とか。
「…どの道、彼女はその気が無ければ追ったところで捕らえることは出来ませんから。実体が無いので。ですから、私は彼女が現れた時に、全力を以て潰しにかかるだけです」
エアは以前、人型の姿を見せたが、あれも結局はコーラルでその形を模倣しているだけに過ぎず、実体がある訳ではない。
あれからそれなりに時間が経った為、模倣の精度は向上しているかもしれないが。
「それと、
それだけを言い残し、私はマエストロに背を向ける。
「…それは恐ろしいな。なまじ、そなたが言えば尚更、な。──レイヴンよ」
マエストロに背後から声をかけられ、私は足を止める。
「私の知り合い曰く、そなたの内には、様々なものが秘められている。それを統括して、我々はそなたを《黒と白の狭間で燻る者》と呼んでいる」
「そなたの内には、決して消えぬ“火”が燻っている。それは、“災禍”にして“罪”であり、そなたの“意志”と“選択”によって、この世界の命運を分ける」
「──これは、このキヴォトスからは遥か遠い世界。その遠い過去の物語だ。かつて、大いなる災いに呪われた土地があった。その災いは火の災いだったという。災いの火を封じる為に、その地に訪れたとある一人の人間は、白き都を造り上げ、白の王となった。しかし、火の力は強大であり、やがて、王は力を失っていった。それでも王は、火を封じ込める為に、自ら火の中に身を投げたという」
「そなたが、“火を解き放つ黒い鳥”となるか、それとも、“火を封じる白の楔”となるか、はたまた、消えぬ火を消し去り、“火の無い灰”となるか…。そなたの“選択”が、この作品の結末を変える。ゆめゆめ、忘れぬように」
一陣の風が吹き、最後の一言が響き渡る。
風が収まると、マエストロの姿は消えていた。
影も形もなく、まるで夢だったかのように。
だが、あれはきっと現実だった。
彼に言われた言葉が、いまだに耳に残っている。
“火を解き放つ黒い鳥”、“火を封じる白の楔”、“火の無い灰”──。
私の夢の中で“レイヴン”が言っていた“黒い鳥”との一致は偶然だろうか。
或いは、その偶然を運命とでも読むべきか。
私が辿る結末…運命が、この三つということを示しているのか。
ゲマトリアの言うことを鵜呑みにする訳ではない。
だが、身に覚えがあることもあって、バカバカしいとも捨て切れない。
今はそっと、胸の内に秘めておこう。
未来が見えない限りは、その先の運命など、識りようもないのだから。
私は思考を切り替え、走り出す。
今はただ、目の前の仕事を遂行するだけだ。
という訳でイヴとゲマトリア(マエストロ)の邂逅でした
次回からスランピア攻略に突入します
遊園地なんて久しく行っていないので、エリアはフィーリングで描いていきます()