ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

美食研騒動終幕


EP-14 予想外の再会

トリニティでの美食研騒動から数日が経過した。

 

相変わらず私は、エデン条約直前で混迷の中にあるゲヘナの治安維持の為に、風紀委員会からの依頼を受け、協力していた。

 

この日は、日中に過激派のデモ部隊を鎮圧し、一件落着かと思われたが、夕方から夜にかけて、温泉開発部が市街地の中心でどういう訳か爆薬を発破させたことで再び混乱状態となり、その収拾の為に風紀委員会の面々は日を跨いでまで奔走していた。

勿論、それには私も協力しており、風紀委員会が温泉開発部に集中する間、他の不良生徒や問題児が問題を起こさないか、市街外郭の哨戒を任された。

 

建物の屋上を飛び移りながら、私はゲヘナの市街地を見て回る。

要はパトロールだ。

地味な仕事だが、私の機動力と索敵能力を買われての采配だ。

文句はない。

 

ふと足を止め、市街の中心へと意識を向ければ、遠くからでも爆発音が耳に届く。

かなり手こずっているようだ。

私も温泉開発部制圧に協力を申し出たのだが、私は日中、デモ部隊の戦車大隊を相手に、鎮圧の為に派手な大立ち回りをしてしまい、頼むから夜は大人しくしていてくれと言い渡されてしまった。

 

もどかしいが仕方ない。

私は自身の任務を遂行する為、夜の街へと駆け出した。

 

****************************

 

「ここからはもう、ゲヘナの自治区ですね…」

 

時を同じくして、補習授業部と先生は、ゲヘナ自治区の裏路地に足を踏み入れていた。

何故かと言えば、彼女たちは第二回目の試験を控えており、その会場として言い渡された場所が、他でもないゲヘナ自治区の一角だったからだ。

明らかに、補習授業部を退学させたいナギサの思惑が絡んでおり、その他にも深夜三時からの試験開始時間であったり、試験の範囲を直前になって拡大した上で、合格点数を60点から90点に引き上げたりなど、理不尽な条件を次々と突き付けて来た。

しかし、だからと言って試験を受けなければ失格となって退学となってしまう。

彼女たちには、こうしてゲヘナに足を運び、試験を受けるしか、選択肢はなかった。

 

ゲヘナ自治区に足を踏み入れ、トリニティとは異なる空気感を感じたのか、ハナコは静かに呟いた。

 

「んー?なんだか見慣れない奴らだなぁ?」

 

そこに話しかける──否、絡んでいくのは、ゲヘナのごろつきとチンピラ。

相手にして足を止めては向こうの思う壺だと誰もが考え、歩みを進める。

 

「無視とは冷たいねぇ。そんな急いでどこに行くのさ」

 

ニヤニヤと賤しい笑みを浮かべながら、ごろつきがその進路上に立ちはだかる。

歩みを止めざるを得ない。

 

「わぁ、『無法地帯と言えばこれ』みたいな古典的な感じですねぇ」

 

「え、えっと…私たちは試験を受けに行く途中でして…」

 

ヒフミが健気にも説明するが、それをごろつきは鼻で笑う。

 

「はぁ?試験?頭大丈夫?」

 

普通に考えれば、そんなことがあるはずがなく、信じてもらえるはずもない。

 

「ま、まぁ、そうなりますよね…」

 

ごろつきに続き、チンピラも一緒に、ヒフミ達の前に立ち塞がる。

 

「まっ、理由はどうあれ、ここら一帯を歩くには、うちらの許可が必要──ん?よく見たらこの制服、トリニティじゃね?」

 

ヒフミの制服を見たチンピラが、目ざとく気付き、ごろつきと顔を見合わせ、下卑た笑みを浮かべる。

 

「…マジじゃん。ひゅーっ、お金持ちのお嬢様たちがこんなところにねぇ。あれ、ってことはこいつらを攫ったら身代金をたっぷりもらえるってこと?」

 

「おおっ、ナイスアイディア!」

 

「や、やっぱりまたこういう展開に…」

 

ヒフミは以前、ブラックマーケットで同じように身代金目的で不良に追いかけ回された時のことを思い出していた。

 

そんなヒフミを守るように、アズサが一歩前に出る。

 

「…時間の無駄だ。強行突破あるのみ──」

 

銃を手に、アズサが構える。

 

「ぐあぁぁぁぁぁっ!?」

 

──その直後、チンピラは上から降って来た何かによって地面に叩き伏せられる。

 

その何か──否、人物は、長い白髪を靡かせてスッと立ち上がり、もう一人のごろつきへと蹴りを見舞う。

 

「なんだテメ──がはぁっ!?」

 

ごろつきは壁に叩き付けられ、気を失った。

それを確認した白髪の人物──レイヴンは、補習授業部の面々へと振り向いた。

 

「こんなところでこんな時間に何をしてるんだ?」

 

****************************

 

パトロールの最中、普段よりも索敵範囲を広げて“眼”と“耳”を行使していると、集団の気配を察知し、そちらへと向かえば、不良に絡まれている補習授業部と先生の姿を見付けた。

何をしているのかと頭を抱えそうになったが、ひとまず救出して話を聞くことにした。

 

「い、イヴさん!?」

 

[“奇遇だね、イヴ…”]

 

いつもであれば気さくに挨拶でも交わすところだが、今はそういう訳にもいかない。

 

「…先生、それからヒフミ。これは別に脅す訳じゃない。でも事実だから言っておく。今の私は風紀委員代行としてここにいる。悪いが、馴染みだからと言って、ただで見逃す訳にはいかない」

 

私は二人…全員に見せ付けるように、左腕の腕章を見せる。

補習授業部と先生の表情が強張る。

私は今、一応は風紀委員会に雇われている身であり、更には見回りの最中。

そんな時に、先生が同伴とは言え、他学園の生徒の侵入を見て見ぬフリで見過ごすことはできない。

威嚇攻撃をしないだけ、かなりの譲歩している方だ。

 

「それは…その…」

 

ヒフミも自身の行動に後ろめたさを感じていたのだろう。

 

[“…そうだよね。それじゃあ、簡潔に状況を説明するね”]

 

先生は簡潔に、補習授業部の置かれている状況と、ゲヘナ自治区に侵入した理由を教えてくれた。

 

「…なるほど。試験で、な」

 

私が言えたことではないかもしれないが、かなり趣味が悪い。

よりにもよって、ゲヘナを試験会場に選ぶとは。

 

「そ、そうなんです。私たちはどうしても、この場所に行かなくてはならなくて…!」

 

私は思案しながら、ヒフミの顔を見る。

物怖じしながらも、固く口を結び、瞳には譲れない意志が籠っている。

 

「だからっ、どうかイヴさん──いえ、レイヴンさん、ここを通してくださいっ!」

 

ヒフミは懇願しながらも、決して頭は下げず、真っ直ぐ私の眼を見続けた。

 

「──断る、と言ったら?」

 

私の一言に、ヒフミの瞳が揺らぐ。

断られるとは思っていなかったのだろう。

──だが、そのヒフミの手を握り、隣に立った白銀の長髪の少女──《白洲アズサ》が、ヒフミに代わって言い放つ。

 

「無理にでも押し通る!!」

 

白洲アズサは、先程のヒフミと同じように、真っ直ぐと一切の物怖じを感じさせず、私の眼を見続ける。

それは最早、睨み付けると言ってもいい気迫だった。

白洲アズサの薄紫と水色が混ざり合った瞳と視線が衝突する。

 

私は視線を外し、他の二人…《下江コハル》と《浦和ハナコ》に顔を向ける。

 

「そっちの二人も同じ、ってことでいいのかな」

 

私の言葉に、下江コハルは猫のような目になり驚き、浦和ハナコも薄い驚きの反応を見せる。

 

「あ、あったり前じゃない!あんたが何者か知らないけど、私たちの邪魔をするなら容赦しないんだからっ!!」

 

下江コハルは、威勢よく私を指差し、啖呵を切る。

 

「はい♡私たちは一蓮托生、運命共同体として、深いところまで繋がっていますから♡それはもう、裸の付き合いをするくらいには♡」

 

「言い方ぁ!!しかも裸じゃないし!水着だし!エッチなのはダメ!死刑!!」

 

下江コハルが顔を真っ赤にして噛み付くが、浦和ハナコはそれを余裕のある微笑みで躱す。

そのやり取りに、私はすっかり毒気を抜かれてしまった。

思わず、溜め息が漏れる。

 

「ヒフミ、ごめん」

 

私はヒフミに謝罪する。

 

「えっ!?急にどうしたんですか!?」

 

当然、ヒフミはそれに困惑の反応を見せる。

 

「今、ゲヘナは色々と混乱状態でな。何が起こるのか分からない。だから、少し意地を悪く、覚悟を試すような真似をしたんだ」

 

補習授業部の目的地は、市街の中心を通る必要がある。

そこには、温泉開発部と風紀委員会がいる。

そのどちらもが、恐らく彼女たちの行手を阻むことになるだろう。

本当に、どんな災難が彼女たちを襲うのか、予測できない。

 

「…そうだったんですね。それは…確かにちょっとだけ怖いです…でも、大丈夫です!私には、補習授業部の皆さんと先生がついていますからっ!」

 

そう言って、ヒフミはいまだに手を繋ぐ白洲アズサの手を握り返し、笑顔を向ける。

白洲アズサもヒフミに微笑み返す。

その後ろでは、下江コハルと浦和ハナコが微笑ましく、その様子を見守っていた。

これが、補習授業部の絆か。

 

私はふと、先生に視線を向ける。

私の視線に気付いた先生は、力強い頷きを返した。

 

この子達なら大丈夫、といったところか。

 

「…そうか。なら、大丈夫そうだね。それじゃあ、私がその場所まで案内しよう」

 

「えぇっ!?でも、イヴさんは風紀委員会のお仕事中なんじゃ…?」

 

「…先生、これは必要なことなんだろう?」

 

[“…うん、そうだよ”]

 

「…それなら、道中の露払いも含めて、私がいた方が良いだろう。風紀委員会には私が話を通せるし」

 

今日は規模が大きな騒動ということもあって、イオリも出撃している。

もし彼女と鉢合うことがあれば、私がいた方が話を通しやすいはずだ。

 

[“でも大丈夫なの?イヴの立場が悪くならない?”]

 

一応、先生が絡んでいることを説明すれば、イオリも分かってくれるだろう。

最悪、戦うことになっても、イオリであればまだ、御し易い。

これがヒナとなれば、話は変わってくるが。

 

「…大丈夫。私にはこれまで積み重ねた実績がある。この程度のことで揺らぐ地位じゃない。それに、その時はその時で、また別の仕事を選べばいいだけだ。死ぬ訳じゃない」

 

それに、私は所詮、風紀委員()()だ。

派遣社員や、それこそ雇われ傭兵のようなものだ。

立場や地位が落ちたところで、痛くも痒くもない。

そんな私の事情よりも、この補習授業部が退学になった方がよっぽど寝覚めが悪い。

 

「えっと…それじゃあ、イヴさん、案内、よろしくお願いします!」

 

「ああ、任せてくれ。全員、私に遅れず着いて来い」

 

*****************************

 

「誰の許可を取ってここに居んだテメェ──うらばッ!?」

 

市街地の中心に向かう最中、裏路地から次々と不良や戦車が現れる。

この辺りはどうやら風紀委員会の()()が行き届いていないようだ。

まるで蟻の巣穴を突いた火のように、ワラワラと溢れ出して来る。

 

だが、所詮、蟻は蟻。

容易く蹴散らせる。

 

地面を蹴って勢いよく突進し、横並びの二人を蹴り飛ばす。

そこに飛んできた銃撃をクイックステップで身を翻しつつ体勢を低くして躱し、その状態から突進して銃撃して来た不良を蹴り飛ばす。

そこへ、背後から不良が殴りかかってくるが、背中を向けたまま脇の下を通してHGによる銃撃を見舞い、体勢を崩させると、その顔面を掴んで振り回し、残っていた不良連中に勢いよく投げ付ける。

 

ひと通り掃除を終え、両手を(はた)いていると、補習授業部の視線が私に集中していた。

 

「う、噂には聞いていましたが、これほどとは…」

 

「嘘でしょ…殆んど銃使ってない…っていうか何で平然と銃撃の中に突っ込めるの…?頭おかしいの…?イカれてる…」

 

「す、凄い…!これがレイヴン!戦況を常に把握し、戦術も戦略もなく、力で全てを捩じ伏せる!圧倒的だ…!!」

 

「あ、あはは…相変わらずですね、イヴさん…」

 

唖然とされるリアクションには慣れている。

それでも流石に下江の言葉には来るものがあるが…。

白洲はやはり、シロコと気が合うかもしれない。

問題は接点がないところか。

 

[“ふふふ…これがシャーレ直属特務戦闘員、レイヴンだよ!みんな!”]

 

そして何故か得意げな先生。

まあ、確かに私はシャーレの傭兵のようなものではあるから、先生が自慢するのもあながち間違いでもないが。

 

「なんで先生が自慢げなのよ…」

 

そこにすかさずツッコんでくれた下江。

ありがとう。

 

それはさておき、もうすぐ市街の中心に差し掛かる。

ここから先は、不良だけでなく、風紀委員会や温泉開発部の連中と出くわす可能性が非常に高くなる。

 

「みんな、ここから先は注意してくれ。風紀委員とか温泉開発部が出て来るかもしれない」

 

私が警戒を促せば、各々の表情が引き締まる。

 

路地を抜け、すっかり静まり返った通りに出る。

 

「ここはもう、ゲヘナの市街地の中心ということなんですね…」

 

まだ入り口に過ぎないが、ヒフミの認識でも間違いはない。

何せ、温泉開発部が発破した影響で、この辺りは人の気配が感じられないからだ。

 

「幾ら夜中とは言え、ひと気がなさ過ぎませんか?」

 

不気味な静かさに浦和も違和感を覚えたのだろう。

緊張した面持ちで呟く。

 

「これが先程、イヴさんがおっしゃられていた“混乱状態”、の影響ということでしょうか?」

 

まるで、ジッと息を潜めているかのように、この通りは一切の音も気配も感じられない。

 

そんな折、遠くから銃声が響き渡る。

私だけでなく、この場にいる全員が聞こえたことだろう。

 

「…銃声だ。風紀委員会と温泉開発部がやり合ってるのか?」

 

補習授業部と先生には、混乱の原因について説明済みだ。

白洲はその情報を参考に、疑問を抱いたのだろう。

十中八九、風紀委員と温泉開発部だろう。

 

「うーん…目的地に行くにはこのまま進むしかないんですよね?」

 

浦和の質問に、私は頷く。

補習授業部にとって、あまりにも今のゲヘナは状況が悪過ぎる。

ゲヘナ──それも該当の地区を試験会場に選んだ人間は、温泉開発部と繋がっているのではないかと疑いたくなってしまうような運の悪さだ。

他にもゲヘナには廃墟が多くあるのだが、よりによって市街地を通らなくては辿り着けない場所だ。

 

「ああ、行くしかない」

 

だが、彼女たちは今、前に進むしかない。

ならば、私はそれに応えるだけだ。

 

私たちは通りを進み、大橋が掛かる広い空間へと出る。

そこでは、風紀委員会が検問を行っていた。

 

ここを避けて通ることはできない。

また、見晴らしが良い場所である為、隠れられるような場所もない。

私を先頭に、意を決して検問をしている風紀委員に近付く。

 

「止まれ!ここから先は立ち入り禁止に──ってレイヴン?」

 

検問をしていた片方の風紀委員が私に気付く。

 

「業務、お疲れ様です」

 

私は当たり障りのないように軽く挨拶をする。

 

「市街外郭の巡回を指示されていたと思うが何か問題でも──ん?その後ろの連中は?」

 

「この人達は──」

 

「その制服は──トリニティ!?」

 

私が何かを言うより先に、気付かれる。

だが、これは問題ない。

隠さない以上、遅かれ早かれバレる。

下手に隠すよりはマシだろう。

 

「コイツらを捕まえたのか!レイヴン!」

 

「お手柄じゃないか!こんな時期にゲヘナにトリニティの生徒が来るなんて、何かの前触れだったかもしれない!」

 

二人は素直に喜んでくれるが、私はそれを裏切る言葉を発した。

 

「──私とこの人たちを通して欲しいのです。この人たちをゲヘナのある場所に送り届けなきゃいけないので」

 

私の言葉に、二人は固まる。

凍り付くと表現しても良いかもしれない。

 

「な、何を言っているんだ?レイヴン」

 

「何かの冗談か?そうだろう?レイヴン」

 

「冗談ではありません。大丈夫です。何か問題を起こす訳ではありません。目的の場所に辿り着き、用事を済ませれば、この方々はすぐに帰りますので。悪さをしに来た訳では無いのです」

 

「そ、そんな訳がないだろう!?」

 

「ですが私達は本当に、ただ試験を受けに来ただけなんです」

 

見かねた浦和が言葉を付け足してくれる。

 

「トリニティの生徒が試験を受ける為に、どうしてゲヘナの自治区に来るんだ!せめてもっとまともな嘘を吐け!」

 

だが、それは結局、火に油を注ぐだけの結果に終わる。

 

「せ、正論…あうぅ…」

 

ヒフミも自分たちがどれだけ脈絡の無いことを言っているのか、自覚があるのだろう。

縮こまってしまう。

 

「──ッ!?そこのお前!正義実現委員会じゃないか!?」

 

浦和の陰に隠れていた下江が見つかってしまった。

そう言えば彼女は正義実現委員会の制服だったな。

正義実現委員会はトリニティの武力組織。

風紀委員会が最も警戒する組織だろう。

 

「えぇっ!?いやその、そうなんだけど今は違うっていうか、うぅっ…!」

 

色々と事情があるのだが、それを説明したところで、風紀委員が果たして信じてくれるかどうか。

 

「なっ、ほ、本当だ!れ、レイヴン!こ、これは一体どういうことだ!?ま、まさか正義実現委員会の襲撃の手助けを…!?」

 

「落ち着いてください。彼女は確かに正義実現委員会の制服を着てはいますが、訳あって正義実現委員会とは連絡できない状況にあります。そうですよね?」

 

私が振り向きつつ問いかければ、下江は激しく首肯を繰り返す。

 

「…そうは言われても…私たちにも責任はある。そう簡単に通すことは──」

 

少しは落ち着いてくれたようだ。

しかし、納得させるにはもう一押し足りない。

 

「仕方ない、ここはもう倒そう」

 

後ろで早くも痺れを切らした白洲の言葉が小声で届く。

 

「えぇっ!?アズサちゃん!もう少しだけ待ちましょう!?イヴさんが頑張って説得しようとしてくれていますから!」

 

小声でヒフミが静止にかかっている。

白洲が動くより先に説得を終える必要がある。

 

ならば、ここで畳み掛ける。

 

「それならば、私が責任を持ちましょう」

 

私の言葉に、風紀委員二人の視線が集まる。

 

「「えっ!?」」

 

「後で、銀鏡隊長にも天雨行政官にも、何なら空崎委員長にも話を通しておきます。これなら、貴女たちの責任にはなりません」

 

私の言葉に、二人は絶句している。

幸い、三人には私はコネクションがある。

そして、先生が関係していることも付け加えれば、納得してくれる筈だ。

 

私はそれとなく、先生に視線を送る。

先生は不安そうにしていた。

 

「……それでも、ダメだ」

 

そう言葉を発したのは、風紀委員の片方。

 

「確かに、それなら私達は楽ができる。何があったところで、その全ての責任は、レイヴンに行くだろう…でも!」

 

その風紀委員は、勢い良く顔を上げた。

 

「私は一度、お前に助けられたんだ!レイヴン!あの、青白い炎を纏ったパワーローダーとの戦いの時に!」

 

そうか、彼女はあの時、あの場所にいたのか。

 

「そんなお前に、責任を丸投げして!私だけのうのうと澄ましていることなんて出来ない!お前もそうだろう!?」

 

隣の風紀委員にも、訴えかける。

何だろう、この、何とも言えない、チグハグ感は…。

いや、確かにそう思ってくれるのは嬉しいが、責任とは言っても、そんな大それたことにはならないと思うのだが…。

 

だが、その熱はその隣の風紀委員にも伝わる。

 

「…あぁ…あぁ!そうだな!レイヴンはいつも最前線で戦ってくれているんだ!自分たちの業務の責任まで押し付けるような、そんな恥知らずにはなれない!」

 

「だから!レイヴン!」

 

「私たちを倒して行け!」

 

「そうすれば、責任はレイヴンを止められなかった私たちにも向くことになる!」

 

「そうでなくとも、何の代償もなく、レイヴンが責任を負うことを許すことはできない!」

 

「そうとも!自分自身を許せないんだ!だから、レイヴン!」

 

「遠慮はいらない!私たちに、その代償を刻んで行け!!」

 

思わぬ展開になった。

だが、私には伝わった。

彼女たちの《覚悟》が。

その強い想いに、こちらも応えなくてはならない。

 

「分かった。行くぞ──」

 

その直後、二人は爆発で吹き飛ばされた。

 

「「のあぁぁぁぁぁっ!!?」」

 

私はまだ何もしていない。

 

「アズサちゃーーーーーん!?」

 

ヒフミの絶叫が響き渡る。

 

「…いや、私は何もしていない。私とレイヴン以外の誰かだ」

 

「そうですね。今のは私たちの遥か後方から飛んで来ました。しかし、一体誰が…」

 

浦和が疑問を口にした直後、背後からエンジン音が聞こえ始める。

それは真っ直ぐこちらに向かって来ており、それこそが先程の爆発を起こした張本人であることを窺わせる。

 

そして、見覚えのある車両と共に、見覚えのある者達が姿を見せた。

 

「あらっ★やっぱり先生でしたか!それに、レイヴンさんも♪」

 

「大当たりでしたわね。ご機嫌よう。トリニティ以来ですわね?レイヴン。お二人ともお揃いでここで何をされているのですか?先生?」

 

数日前に、トリニティで騒動を引き起こし、風紀委員会に引き渡された美食研究会の面々だった。




美食研の話が終わったと思ったら、また美食研が出て来ましたね!

美食研づくしです!
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