ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

補習授業部VSミカ


EP-19 星の呼び声

開戦直後、先生はすぐに嫌な予感を感じ取った。

 

[“ヒフミ!ペロロ人形を正面に!”]

 

「えっ!?あっ、はい!きゃっ!?」

 

ヒフミが転倒しながらも、先頭に立つアズサの前に動くペロロ人形を展開する。

 

その直後、その人形を中心に七色の光が弾けた。

 

ペロロ人形は、綿を散らして弾け飛んだ。

 

「ぺ、ペロロ様ー!?」

 

ヒフミの悲鳴が響き渡る。

 

「へぇ〜、流石にこの程度じゃ終わらせられないか」

 

感心したようにミカが呟く。

 

その間に、アズサは舞い散る綿の中に紛れ、ミカを狙って射撃する。

それはミカの頭部を狙っており、銃弾は見事に直撃した。

その凄まじい威力を物語るように、弾道の軌道は揺らぎ、爆発するような衝撃を生んでいた。

 

「ごめん、先生!こうするしかなかった!」

 

頭部を狙ったのは、危険だが致し方ないとも思える。

あのまま、マトモに戦っていたらどうなっていたかわからない。

いや、想像もしたくないような、恐ろしい惨事となっていたかもしれない。

以前、アビドスでレイヴンと敵対し、壊滅しかけた対策委員会のように──。

 

ダンッ、と床を強く叩く音が鳴り響く。

その出どころは、今、アズサにヘッドショットを受けたミカ。

 

ミカは力無く後ろに倒れたかと思った瞬間、片足を退いて床を踏み締め、転倒を堪えた。

いや、それよりも、あれだけ強力なアズサの狙撃をまともにヘッドショットという形で受けて、意識を保っていることに先生は愕然とする。

 

「いったーい!もう、痕になっちゃったらどうするの?」

 

ミカはまるで、歩いていて障害物にでもぶつかったかのような軽い反応で額をさすっている。

 

まるで手応えがない──。

 

[“コハル、手榴弾!”]

 

今はリアクションをしている場合ではない。

対策委員会の時は、そうしている間に、瞬く間を全滅に追いやられたのだから。

 

「わ、分かった!」

 

コハルがミカの足元に手榴弾を転がす。

 

[“ヒフミ、アズサ!ミカの足止めを!”]

 

すかさず、指示を出し、それに従って二人が動く。

ミカを手榴弾の爆発に巻き込む為の牽制射撃。

 

「!」

 

驚いた表情を浮かべたミカが爆発に巻き込まれる。

 

だが、補習授業部と先生の表情は険しいままだ。

それも当然。

何せ、相手はアズサの強力な一撃を受けても殆んど無傷だったような相手だ。

手榴弾一発でどうにかなるとは到底、思えない。

 

だからだろう。

アズサが畳み掛けるように黒煙の中に銃撃する。

黒煙を銃弾が貫き、そしてミカが姿を現す。

そこに、アズサは容赦なく銃を斉射する。

 

「うーん、これが大人の力か〜。まあ、予想外ではあったけど…うん、問題ないかな」

 

アズサの銃撃を煩わしそうに躱しながら、ミカは余裕の表情を浮かべている。

 

「セイアちゃんもナギちゃんもいなくなるんだし、これでようやく始められるっていうのに変に邪魔しないで欲しいなぁ」

 

「…!」

 

ミカの言葉に、ハナコが息を呑む。

 

「さて、それじゃあ、そろそろ終わりにしよっか?」

 

立ち止まったミカは、アズサの銃撃の合間を狙い、銃を放つ。

 

「…っ!?」

 

アズサはどうにか直撃を飛び退いて回避するが、追撃は中断され、ミカを牽制していた攻撃が止まる。

 

「アズサちゃん!」

 

飛び退いたアズサに、ヒフミが駆け寄る。

 

「私は大丈夫だ…」

 

補習授業部とミカは再び向かい合うことになるが、その均衡は平等ではなく、補習授業部側が圧倒的に不利だ。

人数では優っているのに、付け入る隙がない。

このままでは、一方的にミカに蹂躙されてしまう。

 

ヒフミの囮も、アズサの狙撃も、コハルの手榴弾もこれといって有効打を与えられない。

ハナコも攻撃専門ではなく、回復役だ。

先生は必死に思考を巡らせる。

この状況を切り抜ける為の策を。

 

「ミカさん!一つ聞かせてください!セイアちゃんを襲撃したのも、あなたの指示だったんですか!?」

 

先生が策を考える中、まるで助け舟を出すように目の前のハナコがミカに問いかける。

 

「んー?えっと…誰だっけ?ごめんね、私あんまり顔を覚えるの得意じゃなくってさ。…あぁ、思い出した。浦和ハナコじゃん。礼拝堂の授業に水着で参加して追い出された、あの。あははっ、懐かしいねぇ」

 

「……」

 

ハナコは無言でミカを見詰める。

それは最早、睨め付けるに等しいものだった。

 

「あはっ、ハナコもそんな目をするんだね。──うん、私の指示だよ。でも、ヘイローを破壊しろとは言ってないよ。私は人殺しじゃない。ナギちゃんとおんなじで、卒業まで閉じ込めておくだけのつもりだったんだけど…でも、自然とああなっちゃったの」

 

そこでミカは意味深にアズサへと視線を向ける。

 

「……」

 

「それ以上は、当事者に聞いた方が早いんじゃない?…ねぇ、白洲アズサ。何だか一部誤解があるみたいだし、私の代わりに説明してくれない?」

 

「セイアちゃんがあんなことになっちゃったのが、ここまで事態が大きくなったキッカケなんだよ?そこからもう色んなことがどうしようもなくなっちゃったんだし…ねぇ、その辺り、どう思う?」

 

ミカの言葉に、アズサへと視線が集中する。

隣のヒフミも、不安そうにアズサを見詰めていた。

 

「そ、それは…」

 

当のアズサは、何かを弁明しようにも、上手く言葉にできない。

それが更に、アズサの焦りに拍車をかける。

 

「アズサちゃん…?それはいったい、なんのお話ですか…?」

 

すぐ隣のヒフミが不安そうな視線を向けてくる。

 

「ち、違う…あれは──」

 

その瞬間、体育館の天井が爆ぜた。

 

「うわわっ!?な、何!?今度は何なの!?」

 

降り注ぐ土埃の中、コハルが困惑の声を上げる。

ヒフミとアズサもその下から退避する。

 

一方で、ミカは険しい表情で天井を見詰めていた。

 

そして、ミカと補習授業部の間に、何かが降り立つ。

立ち込める砂埃の中に、人影が浮かび上がった。

 

補習授業部側からは黒い背中と揺らめく白髪が、正面のミカからは砂埃の中に揺らめく二つの赤い残光が目に入る。

 

「…あーあ、ちょっと時間かけ過ぎちゃったか…」

 

心から面倒くさそうに、ミカが漏らす。

その言葉が示す意味を先生は悟る。

 

[“…イヴ…?”]

 

目の前に降り立った存在がレイヴンであると。

 

砂煙が晴れ、明確にその姿が露わとなる。

黒のロングコート風の制服を纏い、赤みを帯びた白のポニーテールを靡かせた、両手に銃を携えたその姿は、紛れもないイヴのものだった。

 

「あぁ!先生、ごめん!お待たせ!」

 

半身で振り返ったイヴは、満面の笑顔を先生に見せた。

 

普段、表情や感情が希薄なイヴは、滅多にそういった面を見せない。

長い付き合いの先生であっても、これまでまったく見たことがなかった。

声も明らかに抑揚がハッキリしている。

 

だからこそ、先生はそんなイヴに違和感を感じた。

 

[“…イヴ…?”]

 

ふと、眼を開いたイヴの瞳は、光を帯びていた。

真紅の残光に揺らめく瞳は、どこか妖しい色を放つ。

 

正面に顔を戻したイヴは、改めてミカと対峙する。

 

「貴女が聖園ミカですね?初めまして。こうして先生たちと対立しているということは、やはり今回の騒動の主犯と見て良さそうですね?」

 

イヴは変わらず微笑みながら、明るい声色でミカに話しかける。

 

「その通りだけど…随分と機嫌が良さそうだね?何か良いことでもあった?」

 

イヴが現れたことで、ミカの表情に余裕が無くなっている。

それでも、敢えて余裕を見せるように、ミカはイヴに話しかける。

 

「…?機嫌が、良さそう…?」

 

だが、まるでイヴは自身の様子に自覚がないかのように首を傾げる。

 

「そうだよ。そんなにニコニコ笑っちゃってさ…」

 

「笑って…?──!?」

 

イヴは手を口元に当てる。

それは本当に、これまで無自覚だった表情を指摘され、触って初めて理解したかのようだった。

 

ミカが不思議そうに首を傾げて眺める中、イヴは口元に当てた手を広げ、そのまま顔を覆い、俯く。

まるで顔を拭うように手を動かすと、イヴは顔から手を離した。

 

そこにあったイヴの表情は、先程までの笑顔が無くなっており、いつもの正常なものに戻っていた。

妖しい光を帯びていた瞳も、光が収まっている。

 

「…ごめんなさい。仕切り直しといきましょう」

 

やや険しい表情のまま、イヴは改めてミカに向き直る。

 

「何なの?もう、やりにくいなぁ…」

 

釈然としないといった様子で、ミカは溜め息を吐く。

 

イヴとミカが、互いに視線を交わす。

 

「…念の為聞いておきますが、投降する気はありますか?」

 

「何?今度はそういう風に揺さぶってくるの?そんな訳ないじゃん。ていうか何?そっちが優勢のつもりなの?まあ、確かにさっきまでのアレとは戦いたくなかったけどさ…」

 

「あー…でもそっか。アレじゃなくなったみたいだし、今の貴女ならまだマシか」

 

「…それは、投降するつもりはない、と捉えてよろしいんですね?」

 

「そうだよ。更に言えば、貴女が敗けたら、後ろの子たちも敗北同然だから」

 

ミカの言葉に、イヴは背後の補習授業部を一瞬だけ意識する。

 

「…聖園ミカ、貴女をそこまで掻き立てるものは何ですか?」

 

ミカを真っ直ぐ見詰め、イヴは問いかける。

 

「…ごめん、難しいことはよく分からないんだっ!!」

 

その言葉と同時に、ミカがイヴへと銃撃を放った。

虹色の輝きを放つ光弾は、ミカの力が付与され、ただならぬ威力を秘めていることを予想させる、

即座に躱そうとするが、背後には補習授業部が──。

 

「イヴさんっ!避けてくださいっ!」

 

その瞬間、ヒフミの声が聞こえ、イヴは反射的に横に飛び退いた。

直後、ペロロ人形が展開され、ミカの銃撃を受け止める。

 

「私たちの事は大丈夫です!イヴさんはミカさんだけに集中を!!」

 

ヒフミの言葉を受け、イヴは即座に思考を入れ替える。

 

ミカの側面へと回り込むように駆ける。

ミカはその場で動かず、イヴに銃口を合わせ、無数の光弾を発射する。

 

イヴはその弾道の軌道を“猟犬の耳”が受け取るあらゆる情報から予測し、その情報を受け取った“鴉の眼”が赤い線という形で可視化する。

 

それに従い、イヴは身を躍らせ、ミカの銃撃を躱していく。

回避し切ると、体育館の壁を蹴り、ミカへと突っ込む。

 

「…っ!」

 

ミカはそれに一瞬、驚くが、すぐに切り替え、迎撃する。

 

真っ直ぐ突っ込んでくるイヴへ光弾を放つが、対するイヴは空中で身を捩って躱し、蹴りを放つ。

 

その蹴りをミカは片腕で受け、防ぐ。

 

「…!!」

 

その直後、イヴは危険を感知する。

間を置かず、イヴの脚を受け止めたミカの腕がイヴの脚を掴みにかかる。

イヴはすぐに引っ込め、ミカの掴みを躱すが、それを待っていたと言わんばかりに、足を引っ込めたイヴへ銃撃を放つ。

 

イヴはクイックステップで身を翻すようにミカの銃撃を躱し、左手のSGによる広範囲射撃をミカに撃ち込む。

それはイヴの共鳴の幻視によって強化され、威力を増している。

 

「…っ!!」

 

ミカが銃撃の火花の中に消える。

イヴはすかさず、クイックリロードを挟み、追撃の銃撃を畳み掛ける。

 

だが、その直後、イヴの“耳”が危険を感知する。

 

七色に輝く銃弾が、高速で飛来する。

 

咄嗟にクイックステップで躱すが、先程の銃撃が穿った体育館の壁が輝き出し、そこに()()が生じる。

七色の輝きが無数に重なり、星々のような輝きが瞬く小宇宙を生み出すと、それはまるで超新星爆発のように盛大に爆ぜ、体育館の一角を吹き飛ばした。

 

もし、あんなものに巻き込まれていたら──。

降り注ぐ瓦礫のように、無惨に転がっていたことだろう。

 

イヴは背筋を冷たくする。

 

先生と補習授業部が追い込まれていたことから、只者ではないと思っていたが、火力は間違いなく一線級だ。

 

聖園ミカ。

彼女もまた、ホシノやヒナに次ぐ存在なのだと、イヴは警戒を強める。

 

そんな聖園ミカに視線を向ければ、マトモに散弾を浴びせたというのに、擦り傷程度しかダメージを与えられていない。

しかし、傷を負った為か、ミカの余裕は先程までよりも明らかになくなっている。

 

「あちゃー…当たらなかったか…良く避けるねー、ほんとに…」

 

先程の強力な攻撃も、追い詰められて咄嗟に出したものだったのだろう。

 

「…当たっていたら、私の負けでしたよ」

 

イヴは回避力に長けているが、その代わりにキヴォトスの生徒にしては耐久力が低い。

低い耐久力を回避力と先読みで耐えているのだ。

 

「そうなんだ。それじゃあ、当たるまでやれば良いわけだね」

 

そう言って、ミカはイヴへ銃口を向ける。

 

「…そうですね。ですが──」

 

イヴは感じ取っていた。

この半壊した体育館に近付く、新たなる闖入者の足音を。

 

「どうやら時間切れのようです」

 

直後、体育館の一角の壁が爆発する。

 

「…?え?誰?先生もレイヴンもここにいて、補習授業部以外?戒厳令に背く人たちはいないだろうし、他に誰が来るって言うの?」

 

「…いますよ。ティーパーティーにも命令できない、独立的な集団が」

 

そこで声を発したのは、まるでこの事態を予見していたかのような様子のハナコだった。

 

「…まさか──」

 

ハナコの言葉を受け、ミカは鋭く息を呑む。

 

「そう──」

 

「「《シスターフッド》」」

 

結論に辿り着いたミカと、静かに告げるハナコの声が重なる。

 

「っ、浦和ハナコ…!」

 

初めて感情を剥き出しにしてミカはハナコを睨む。

 

「…まあ、ちょっとした約束をしましたので」

 

その取り乱した様子が心地良いとばかりに、ハナコはしたり顔を返す。

 

「約束…?」

 

「貴女は知らなくても良いことですよ、ミカさん」

 

吹き飛んだ体育館の横穴から、無数の人影が流れ込む。

 

「けほっ、今日も平和と安寧が、皆さんと共にありますように…けほっ」

 

「す、すみません、お邪魔します…」

 

「“シスターフッド”、これまでの習慣に反することではありますが…ティーパーティーの内政に介入させていただきます」

 

現れたのは、“シスター”の名の通り、修道服風の制服に身を包んだ生徒たちだった。

 

「ティーパーティーの聖園ミカさん。他のティーパーティーメンバーへの傷害教唆及び傷害未遂で、あなたの身柄を確保します」

 

シスターフッドのリーダーと思しき銀髪の生徒がミカへと堂々と告げる。

 

「シスターフッド、歌住サクラコ…」

 

銀髪の生徒──サクラコと視線をぶつけ、ミカは険しい表情を浮かべる。

 

「…あはっ、流石にシスターフッドと戦うのは初めてだなー。なるほどね、これが切り札ってこと?」

 

ミカは無邪気に笑いながら、ハナコへと視線を向ける。

 

「…浦和ハナコ、どうやってシスターフッドを動かしたの?」

 

「シスターたちと仲が良かったのは知ってる。でも、あの子たちが何の得もなく動くはずがない」

 

「……」

 

ミカの質問に、ハナコは答えない。

ミカ自身も、そこから更には追及せず、身を引く。

 

「…うん、興味深いね。さて、片付けないといけない相手がまた増えちゃったなぁ。まあ、どうせホストになったら、大聖堂も掃除しようと思ってたところだし。うん、一気にやれるチャンスだって考えることにしようかな」

 

「…あくまでも戦うつもりですか、ミカさん。この状況での勝算がどれくらいか、分からないあなたではないですよね?」

 

「…うん、そうかもね。でも、ここまで来て、『大人しく降参します』なんてわけにはいかないでしょ?ねっ、レイヴン」

 

そう言ってミカがイヴへと顔を向ければ、イヴはただ静かに身構えた。

イヴはそれ以上、言葉を発することはなかったが、ミカは満足したように視線を外し、俯いた。

 

「…もう私は、行くところまで行くしかないの」

 

顔を上げたミカは、真っ直ぐとイヴを見据える。

 

イヴの後ろには、補習授業部とシスターフッド、先生が並ぶ。

 

「…やりにくいのは、お互い様だ」

 

その小さなイヴの呟きが、ミカに届いたのかは分からない。

 

だが、その言葉を発した直後、最後の戦いが始まった。

 

ミカが右手の銃を真っ直ぐイヴへと向け、弾き金を引く。

イヴは回避しようとするが、その直前にイヴの体を光が包み込む。

 

「全ての方にご加護を…!」

 

それは、加勢に来たシスターフッドの一人、《伊落(いおち)マリー》によるものだった。

イヴの体を包み込んだ光がミカの放った銃弾を相殺する。

イヴはこの光がパルスアーマーのようなものだと理解する。

 

「レイヴンさん、お下がりください!」

 

露出度の高めな、大きなカバンを持った黒髪のシスター、《若葉ヒナタ》が声をかける。

イヴは言われた通りに横に逸れると、ヒナタはカバンの中から武骨な銃火器を展開し、発射する。

放たれたのはグレネード。

連射されたグレネードが爆炎を噴き上げ、ミカの身動きを封じた。

 

爆炎が収まると同時に、イヴは改めてミカへと突貫する。

爆炎に怯むミカへと肉薄し、近距離から左手に持ったSGを見舞った。

ミカは煩わしそうに散弾を振り払い、空いた左手に光を生じる。

 

直後、ミカは()()()()()()

 

小宇宙を生み出した時と同じような光の渦と共に、無数の流星がイヴに降り注いだ。

直撃を避けるようにイヴは流星の隙間を駆けるが、余波がイヴを包み込む光の鎧を削っていく。

 

「ミカさん!悔い改めてください!」

 

そこへ援護射撃をしてくれたのはサクラコ。

サクラコの速射がミカの攻撃を中断させる。

 

更にそこへ、コハルが手榴弾を投げ込むことで畳み掛ける。

ダメージは無くとも、視界を封じるのには十分だ。

 

そこへイヴは、左手のSGをクイックチェンジで背中の武器と交換し、ミカへ詰め寄る。

その武器は、以前のようなSRではなかった。

イヴが引き金を引けば、放たれるのは連続射撃。

イヴの新しい武器、サブマシンガン。

レンカ製のものであり、SGと同じく爆発の特性を有している。

因みにSRはお役御免になった訳ではなく、エンジニア部によって調整中だ。

 

SMG故に、一点に集中して銃弾を叩き込むことができる。

或いは、ARのようにばら撒いて牽制にも使用可能。

今回のイヴは、ありったけの弾丸をミカに叩き込む。

 

一発一発はミカに大きなダメージを与えられない。

だが、それが蓄積していくことで着実にダメージを刻み込む。

 

しかし、ミカはこれを強引に突っ切ってイヴの目の前に銃口を突き付ける。

銃口が七色の輝きを放ち、光弾が発射される。

 

イヴは──右手のARを振り上げるように掃射して身を翻しつつ飛び退き、着地と同時に再び掃射しながら銃を振り抜く。

攻撃と回避が一体となった攻防一体の戦技、狼騎士の旋回。

これによって、ミカの光弾はイヴの頬を掠めるに終わり、対するミカはカウンターの二連射を浴びる。

 

「…ッ!!」

 

ミカが歯を食い縛る。

そして、目を見開き、イヴへと狙いを定める。

煌々と輝く光弾が連続で射出される。

イヴには、それは見覚えがあった。

 

それは先程、体育館の一角を吹き飛ばした、小宇宙を生み出す超強力な攻撃。

星々のように煌めく光弾が連続で襲い掛かり、やがて着弾地点でそれらの光が渦を巻いて収縮し、小宇宙を生み出す。

生じた小宇宙は間も無く、爆発し、超新星爆発の如き輝きを撒き散らす。

 

光が止んだ時には、無惨に転がったイヴが──いなかった。

 

代わりに、無惨な姿を晒していたのは、ペロロ人形だった。

 

あの瞬間、咄嗟に背後からヒフミがイヴを守るようにペロロ人形を展開していたのだ。

 

唖然と固まるミカ。

その胸元に銃弾が撃ち込まれる。

 

これまでに蓄積されていたダメージによって、ミカは限界が訪れ、糸が切れたように膝を突いた。

ふと顔を上げたミカは、銃弾が飛んできた方向を見る。

 

ミカの正面には、イヴが立っている。

その隣には、ヒフミと、煙を上げる銃を持ったアズサが立っていた。

最後の一撃は、アズサによるものだったらしい。

 

ミカは口元に笑みを湛え、俯いた。

 

「…あなたの攻撃で倒されるなら、そんな悪くないかもね…」

 

ガシャリ、と音を立てて、ミカは銃を手放した。

 




補習授業部VSミカ…レイヴンとシスターフッドの加勢によって勝利

色々と問題は山積みですが、一先ずはこれで幕引きとなります
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