ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

ヒナちゃんが力尽きました
先生大ピンチ
一方でイヴも何やら不利な様子

希望の見えない悪夢のような現実ですが、果たしてどうなるのか…!


EP-27 憎悪の確認

スコーピオンの全身を覆う黒い結晶は、不規則な棘のように生える訳ではなく、各部位に相応しい形状で構成されていた。

 

胴体であれば、もう一枚重なるように外殻を形成し、歩脚であれば硬い地面でも穿ち、アンカーのように固定するように鋭く尖る。

触肢の爪の鋏は、全体を結晶が覆いつつ、全体的に厚みと長さを増しながら、爪の外側に鋭い鋸状の返しが並び、爪で挟むだけでなく、裏拳の要領で殴る際にも殺傷力を与える形状になっている。

 

そして何より、尻尾を覆う結晶は、特に先端の針を覆うものが長く鋭く発達し、その様相は最早、大槍と言っても差し支えない。

 

黒い結晶の外殻に身を包んだスコーピオンは、結晶に覆われたことで太くなった歩脚によって、力強く跳ね、私へと飛び掛かってくる。

その際に、触肢を前に伸ばし、分厚い爪を同時に叩き付けてくる。

 

単純に範囲が広いことも厄介だが、より面倒なのが緩急の激しさ。

 

歩脚を曲げて身をゆっくりと沈めたかと思った直後、急激に飛び掛かってくる。

当然、その威力は地面を叩き割り、捲り上げる程だ。

 

紙一重の回避では捲り上げた岩盤に巻き込まれてしまう為、余裕を持った回避が必要となる。

 

飛び掛かり後のスコーピオンへ、反撃の爆炎を伴ったSGを側面から浴びせる。

それはスコーピオンの半身を飲み込む程の小爆発の連鎖を引き起こすが、黒い結晶外殻──“黒晶殻”には微かな傷しか与えられていない。

 

恐らく、以前のスイーパーの黒い結晶同様に、ダメージを蓄積させて破壊することが出来れば有効打を与えられると思うが、結晶が密に重なって形成された黒晶殻は、真紅の火を付与した攻撃でも、散弾のような(まばら)な範囲攻撃では破壊は厳しそうだ。

“面”の攻撃ではなく、より範囲を狭めた“線”や“点”の攻撃が必要になってくるだろう。

 

例えば、先程のSRのフルチャージ光線に火を付与した熱線のような──。

だが、その為にはフルチャージが可能となる大きな隙を作らなくてはならない。

 

しかし、そんな隙を目の前のスコーピオンが簡単には許してはくれないだろう。

 

私に側面を向けるスコーピオンが、左の触肢の爪を地面に突き立てると、そこを視点に反転する。

その際に、槍のように伸びた尾部の針の結晶を薙ぎ払う。

 

私はそれを後方宙返りで回避するが、反転して向き直ったスコーピオンは続けて、尾部の槍を突き出してくる。

 

「…っ!」

 

着地のタイミングの胴体を狙ったその刺突を私はどうにか半身を逸らして直撃を避けるが、胸の上部を切先が掠める。

貧しくて良かったと複雑ながらも安堵するが、同時に冷や汗を感じずにはいられなかった。

 

明らかにスコーピオンの動きが良くなって来ている。

もっと分かりやすい言い方をすれば、戦いの中で成長して来ている。

動きのキレが増し、狙いが精密になってきている。

 

半身を逸らした体勢から身を翻し、左手の変形銃をSMGに変形させ、一点集中の連射を叩き込む。

真紅の火を纏った銃弾が無数の爆発を起こすが、スコーピオンはそれをものともせず、左の爪を振りかぶり、飛び掛かってくる。

 

振るわれる爪の下を潜り抜けるように回避すると、私はクイックチェンジで左手の銃をSRへ切り替え、チャージを狙う。

 

しかし、やはりスコーピオンはそれを許さず、複眼が怪しく光ると、私に向いている方の足を持ち上げる。

私が咄嗟に飛び退けば、その直後に鋭い結晶に覆われた歩脚が地面を穿つ。

 

私はフルチャージ出来ず、単発の熱線を放った。

威力そのものは申し分ないが、やはりスコーピオン相手には破壊力が足りない。

それでも、攻撃を繰り返していれば、きっと破壊は可能だろう。

 

しかし、今の私には悠長に長く戦っていられるような時間は残されていない。

一刻も早く、この戦いを終わらせなければ、私の敗北が濃厚となる。

 

スコーピオンの成長が私を上回る可能性があると言うこともあるが何より──。

“歯車”と“残り火”──これには、代償の他に、限界時間がある。

それは、私の持久力が関係しており、これまでの戦いでは、すぐに決着が付いた為、問題なかった。

だが、今回、私は最初から全力でエアを仕留めに掛かり、それからずっと維持している。

これほどまでに長く“歯車”と“残り火”を維持したことはなかった。

まだ、限界まで時間があるとは言え、余裕がある訳ではない。

“歯車”と“残り火”が切れるまでにスコーピオンを仕留められなければ──。

 

歩脚を使って私へと振り向いたスコーピオンが、上体を持ち上げる。

その口元から、鋏角が展開される。

その鋏角もまた、黒い結晶が纏わり付いており、禍々しい姿となっていた。

 

黒い結晶に包まれた鋏角を展開したスコーピオンは、それによって私を挟み込もうと鋏角を大きく広げて向かってくる。

残念ながら、黒い結晶に覆われている為か、“鴉の眼”は弱点であることを示してはいない。

 

厄介な事に、スコーピオンは鋏角と同時に触肢の爪も大きく広げて突進してくる。

鋏角に挟まれるか、或いは爪に挟まれるか。

スピード自体はそこまででもないが、当然のように追尾して来るため、回避は難しい。

 

だが、先に痺れを切らしたのは向こうだった。

突進の最中に急に勢いを増し、前のめり気味に突っ込んで来ながら、鋏角で挟み込もうとする。

 

私はそれに対して、狼騎士の旋回で攻撃しながら、紙一重で鋏角を躱す。

宙を舞い、着地と同時に、追撃の掃射を浴びせる。

 

スコーピオンは鋏角を仕舞おうとする。

 

私は、そのタイミングに好機を見た。

 

地面を蹴り、一気にスコーピオンの懐に飛び込み、至近距離で私はヘイローに真紅の火を集中させる。

真紅のアサルトアーマーが展開され、その爆炎がスコーピオンを飲み込む。

真紅の爆炎と稲妻が、スコーピオンの体表の黒晶殻を舐める。

 

黒晶殻から明確な軋みの音が鳴る。

着実にダメージを与えることが出来ている。

 

だが、スコーピオンも反撃の行動を起こす。

歩脚の後ろ2本を杭のように地面に突き刺して立ち上がり、勢い良く上体を叩き付ける。

 

その危機をいち早く察知した私は、スコーピオンの背後へと通り抜ける。

その際に、私の通った後の地面に無数の燐光が残り、間を置いて爆発の連鎖を引き起こす。

 

追憶の再現、地雷設置。

噴き上がる爆炎がスコーピオンを包み込む。

だが、やはり決定打とはならない。

 

スコーピオンが起き上がるより早く、私はARをリロードしながら懐から取り出した強化手榴弾、黒火炎弾を投げ付け、その盛大な爆炎が黒晶殻に更に負荷を蓄積させる。

しかし、負荷限界には至らない。

 

その間にスコーピオンは起き上がり、私に振り向く──ことなく、次の攻撃へと移った。

 

スコーピオンが先端を上に向けて尾部を伸ばす。

そして、その針の根元の部分──槍となった針とその下の棘で縦に二股に分かれた部分──その装甲の間に、深紅の光が収束する。

 

ここに来て、新たな大技。

私は下手に動けず、その挙動を見極める為に、集中せざるを得なかった。

やがて、収束した深紅の光が光線となって尾部の先端から放たれる。

それは、尻尾の動きに合わせ、私を狙って振り下ろされる。

 

私は横に跳んでレーザーを回避するが、それだけでは終わらず、V字を描くように、再び私目掛けてレーザーが一直線に振るわれる。

 

その一閃を身を(よじ)って躱す。

眼前を通り過ぎる光線の熱が肌を僅かに灼く。

どうにかV字光線を回避し切った私だが、スコーピオンのレーザーはそれだけでは止まらず、振り上げたレーザーを今度は薙ぎ払う。

 

向かって左方向から迫り来る光線に対し、私は真っ直ぐスコーピオンへと突っ込んだ。

 

そして、深紅の光線が私の胴体を分断する直前に、スライディングで体勢を低くしてスコーピオンの懐へと潜り込む。

上体を反らし、地面を滑る私の眼前を再び光線が通り過ぎ、その熱によって肌が灼かれる。

 

「──ッ!!」

 

炎に包まれるような感覚を味わいながらも、私はどうにか堪え、光線が通過すると同時に起き上がる。

 

そこから、真正面のスコーピオンへと、ARの攻撃を見舞う──。

 

その直前に、スコーピオンが鋏角を()()展開する。

短いがために挟む動作までが速く、また私はスコーピオンの眼前、至近距離まで迫り、回避の余裕は無い。

 

「──ッ、ぁああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

展開された鋏角が私を挟み込もうと閉じられる。

私はその中心、内部へと繋がる口元へと、ARによる全弾発射──フルファイアを叩き込む。

 

それと同時に、私の胴体を黒い結晶がびっしりと並んだ鋏角が挟み込む。

 

──それと同時に、体表の真紅の火の膜が爆発した。

 

フルファイアによる爆炎と、咄嗟に展開したリアクティブアーマーにより、スコーピオンは負荷限界に陥り、動きが止まった。

 

それと同時に私は、《追憶》を燃やした。

スコーピオンをこれで確実に仕留める為に。

 

《追憶》を燃やし、得られた“力”は、まさにこの時の為と過言では無いものだった。

 

私が燃やした《追憶》は、“武装採掘艦”《ストライダー》の記憶。

 

そうして得られた“力”によって、私は左手に握るSRに真紅の火を収束させる。

銃口をスコーピオンへと向け、収束した火が稲妻を迸らせる。

 

「…これで、終わりだ…っ!!」

 

放たれたのは、フルチャージ熱線にも匹敵する、真紅の雷光のレーザー。

 

規模こそ違うものの、そのレーザーは武装採掘艦ストライダーが搭載していた巨大レーザー砲台、《アイボール》のものと同じだった。

 

迸る真紅の雷光がスコーピオンの顔面に直撃し、そのまま黒晶殻を砕き、その下の本体へと撃ち込まれる。

黒い結晶が砕けると同時に内部のコーラルが自爆現象を起こす。

真紅のレーザーはスコーピオンの本体の装甲を貫くことはなかったが、外殻を次々と砕いて剥がして行き、その度に変異コーラル機体にとって深刻な自爆を引き起こす。

頭部から尾部へと外殻を剥がしながら突き抜けたレーザーは、やがてか細い稲妻を残して掻き消えた。

 

スコーピオンは、最後まで触肢を動かして抗おうとするが、内部のコーラルが引き起こす自爆によって無数の爆発に包まれ、やがて全身を飲み込む程の爆発の果てに力無く崩れ落ちた。

 

「はぁ…はぁっ…ぐっ!」

 

それを見届け、完全にスコーピオンが停止したことを“猟犬の耳”を通じて感じ取った私は、足から力が抜け、その場に膝を突く。

それと同時に、“歯車”と“残り火”が解除され、凄まじい疲労感が全身を包み込む。

 

“歯車”と“残り火”による体力の消耗による疲労もそうだが、肉体的ダメージも深刻だ。

元々、ミサイルの爆発に巻き込まれて万全とは言えない状態での連戦によって、更に負傷が積み重なっている。

 

スコーピオン戦では爆発の余波や光線の熱に炙られ、胸元を槍が掠めた比較的軽傷のものから、最後の鋏角の攻撃はリアクティブアーマー込みとは言え、マトモに喰らってしまったものまである。

特に鋏角攻撃は、結晶の棘が無数に突き刺さったようで、両脇から腰にかけてが痛む。

 

だが、まだ倒れる訳にはいかない。

“歯車”と“残り火”が切れたとしても、まだ、この戦いの元凶──エアは残っているのだから。

 

私は膝を突き、銃を支えにした状態から、正面上空にスカートを揺らして漂うエアの幻影を睨み付ける。

 

『…スコーピオンを倒し、それだけの負傷を負いながらも折れぬ闘志。さすがです、レイヴン。ですが──』

 

エアはスコーピオンの残骸に降り立ち、無機質な視線を私に向ける。

エアの声は、心なしかどこか悲しみを孕んでいるように感じた。

 

『非常に残念なお知らせです。──先生が、撃たれてしまったようです』

 

「……は…?」

 

自然と口から洩れた声は、自分でも驚くほど気の抜けたものだった。

 

****************************

 

「シャーレの先生…貴様もまた、計画の支障になりそうだと“彼女”は言っていたからな」

 

サオリの持つARが火を噴いた。

 

「ああぁあぁぁぁっ!!!」

 

その瞬間、先生を庇うようにヒナが飛び出した。

 

「…っ!まだ動けるのか、空崎ヒナ!」

 

完全に意識外に追いやっていたヒナが突如として現れ、サオリは僅かにたじろぐ。

 

「セナっ!こっち!!」

 

ヒナがあらぬ方向を向いて叫ぶ。

その方向からは、一台の車両が向かって来ていた。

 

「救急車…!?」

 

アリウス・スクワッドが驚愕し、困惑している間に、救急医学部の車両はヒナの元まで迫り、その荷台部分からセナがしがみ付きながら手を伸ばす。

 

「先生!手を!」

 

「逃がすかっ!!」

 

サオリを含めたアリウス・スクワッドが妨害しようと銃撃するが、そこへヒナが最後の力を振り絞って黒紫の銃撃を放つ。

四人は回避を余儀なくされ、その間に救急車は銃撃が届かない距離に離れていった。

それを見届け、ヒナは今度こそ力尽き、倒れた。

 

「ま、まだそんな力が…」

 

最後の鬼気迫る勢いで力を振り絞ったヒナに、ヒヨリは愕然としていた。

 

「…逃げられた」

 

救急車の後ろ姿を眺めながら、ミサキが淡々と呟く。

 

「まあ良い。空崎ヒナに妨害はされたが、銃弾は当たっている」

 

サオリは視界の端で、先生の腹部を貫いた銃弾を確認していた。

 

「あれはキヴォトスの外の者だ。ヘイローは壊れ…いや、死ぬはずだ」

 

予定では即死させるはずだったが、ヒナの妨害によってそれは叶わなかった。

とは言え、当たった場所が場所だけに、時間差で死ぬであろうことをサオリは見越していた。

 

「しかし、あの様子…あの先生が、そんなに大事な存在なのか」

 

サオリは離れた場所で倒れ、気を失っているヒナを見つめる。

ヒナは、我が身を顧みず、先生を守ろうと戦い、そして、最後の瞬間も気力を振り絞って起き上がって来た。

どうでも良いような相手であれば、これほど食い下がりはしなかっただろう。

 

「……」

 

そんなサオリへ、アツコは何やら手話で意思を伝える。

 

「『あの人がいなかったら、全て計算通りになったはず』…?そ、そうなんですか姫ちゃん?え、『それにアズサもきっと…』?」

 

ヒヨリが通訳し、アツコは深く頷いた。

 

「……」

 

それと同時に、四人から少し離れたところで、地面を踏む音が鳴る。

 

「…ここでお前が出て来るのか」

 

新たな闖入者に、サオリがそう告げる。

 

「まさか姿を現すとはね…そのまま逃げ出しても良かったのに」

 

「えへへ、お久しぶりですね…」

 

アリウス・スクワッドの前に現れたのは、他でもないアズサだった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…」

 

アズサは大きく目を見開き、歯を噛み締めて、息を切らしていた。

 

「…どうだ、アズサ」

 

困惑と驚愕、その他の様々な感情に苛まれているアズサへと、サオリは語りかける。

 

「どうして、どうして…」

 

アズサは、上擦った悲痛な呟きを洩らす。

 

「私の言った通りだっただろう。トリニティにも、シャーレにも、お前の居場所は無い」

 

そんなアズサを更に追い詰めるように、サオリは容赦ない言葉を突き付けていく。

 

「私たちみたいな“人殺し”を受け入れてくれる場所なんて、この世界にはないんだよ」

 

「どうして、先生を…!」

 

その声が聞こえていないのか、或いは聞こえていながらなのか、アズサはサオリの言葉に反応せず、絶え絶えの息の中、言葉を吐き出していく。

 

「そんな場所があるように見えても、全ては儚く消える…さっきの“先生”とやらのようにな」

 

楽園など存在せず、そのように見えるものは全て虚構であり、まやかしである。

それが、アリウスの生徒が長年に渡って教え込まれる、この世界の真実。

 

「──全ては無駄だ。それなのに、どうして足掻くんだ。白洲アズサ」

 

アズサが勢いよく、顔を上げる。

見開かれた眼には、明確な怒りが宿っていた。

 

「サオリいぃぃぃぃっ!!!!」

 

咆えるアズサは怒りのまま地面を蹴り、サオリ──アリウス・スクワッドへと向かっていく。

 

「まだ甘い夢に酔っているのか…仕方ない、手伝ってやろう」

 

サオリは銃を手に、前に一歩、踏み出す。

アズサを心地良い悪夢から目覚めさせる為に。

空しく虚ろな現実へと、引き戻す為に。

 

「──来い」

 

サオリは、憎悪に満ちた形相でアズサを迎え撃つ。

 

****************************

 

(“お腹が熱い…”)

 

微かな振動を背中から感じ、朦朧とする意識と霞む視界の中、先生は撃たれた腹部の激痛だけは、まるで焼けた鉄の棒を押し当てられているかのように鮮明に感じ取っていた。

 

「よく聞いてください、先生。あなたは銃で撃たれました」

 

ややノイズがかっているが、声が聞こえる。

朧げな思考の中、それがセナであることは、どうにか認識することが出来ていた。

 

「奇跡的に急所は避けていますが、この出血は放っておけません」

 

撃たれた腹部は熱いのに、手足の末端や背筋は凍り付くかと思うほど冷たい。

感覚も曖昧であり、頭痛と吐き気が治らない。

 

「これより応急処置に入ります。痛かったら悲鳴を上げてください」

 

これ以上の痛みとなったら、それこそ気を失ってしまいそうだと、先生は内心で苦笑する。

 

霞む視界の中、ふとセナの顔が目の前に映る。

それは靄がかったようにぼやけているが、それでも真剣な表情をしている様子が見てとれた。

 

「死なせはしません。私は、救急医学部ですから」

 

その声を最後に、先生の意識は沈んでいった。

 

深く、暗い、深海のような、光も届かぬ、意識の底へと。

 

落ちていった。




希望はことごとく打ち砕かれ、残るは空虚な絶望のみ。

果たして彼らはこの深淵から這い上がることは出来るのか。

それでは、次回のお話でお会いしましょう。
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