ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

レイヴン、満身創痍
先生、撃たれる
アズサ、スクワッドと相対す

更新が遅くなりましたが、すみません、ロスリックに里帰りしておりました


EP-28 苦痛の最中で

──先生が撃たれた。

 

その事実を認識した瞬間、私は頭を棍棒で殴られたような衝撃を受けた。

 

……いや、敵であるエアの言うことだ。

私を動揺させる為の嘘かもしれない。

 

──だが、もし仮に嘘じゃなかったら?

 

『レイヴン、もしかしたら、私の嘘だと思っているかもしれません。ですが、事実です。彼は、スクワッドによって撃たれました』

 

…分かっている。

エアは、無駄な嘘は吐かない。

本当に、エアの言ったことは事実なのだろう。

 

……先生が倒れて、私は…。

 

いや、先生が倒れたから、何だというんだ。

 

『その他にも、正義実現委員会の剣先ツルギと他二名、空崎ヒナもまた、先生を守ろうとして倒れました』

 

私の目的は変わらない。

私の目的に、先生も、他の生徒たちも関係ない。

 

先生がアリウススクワッドに撃たれようと、トリニティやゲヘナが壊滅状態だろうと、エアを倒し、コーラルを根絶するという私の目的は揺るがない。

 

──それなのに…そうだと言うのに、手が震える。

その震えが銃に伝わって、カタカタと音を鳴らす。

 

先生が撃たれて…そして、どうなった…?

 

先生にはヘイローがない。

 

先生はヘイローが無い外の人間だ。

 

生徒にはヘイローがあって、先生には無い。

 

ヘイローがある生徒が撃たれても大丈夫。

 

だけど、ヘイローが無い先生が撃たれたら…。

 

それが意味することは──。

 

……前にも、こんなことがあった気がする。

 

私は戦っていて、それで、強敵を倒した。

 

だけど、私は後ろから不意打ちされて、それで動けなくなって。

 

それで、あの人は…ウォルターは──。

 

私が意識を取り戻した時には、全てが手遅れだった。

 

私は託された使命を全うするしかなかった。

 

そのまま、全てを終わらせる為に、戦うしかなかった。

 

『残るは、あなたと、スクワッドの前に現れた白洲アズサだけです、レイヴン』

 

……戦え。

 

例え、“居場所”を失うとしても。

 

──戦え。

 

例え、“意味”が無くなろうと。

 

戦え!

 

使命を、誓いを、果たす為に!

 

為すべきことを全うする為に!!

 

戦え!!

 

 

 

ダメージと疲労によって鈍る手脚に鞭打ち、地面を蹴る。

 

せめて…せめてアズサだけでも、助け出す。

 

トリニティも、ゲヘナも、例え壊滅状態にあろうと、少しでも多くの生徒を救い出せ。

 

生徒を助ける──きっと、先生なら、そうするだろうから。

 

その為に、聖徒会のミメシスも、アリウススクワッドも、私が倒す。

 

『…分かっていました。あなたであれば、きっと助けに行くだろうと』

 

エアの真下を通り過ぎる。

だが、エアは妨害をして来ない。

手札が切れたのか、或いは──。

 

『どうぞ、そうして下さい。()()()()()()()()()、ですが』

 

エアの言葉の直後、私の行手を阻むように、銃撃が走る。

 

私は咄嗟に足を止める他なく、そこへ更に単発の銃撃が飛んで来たことで私は後方宙返りで飛び退く。

その間に私の目の前に何者かが立ちはだかる。

 

それは、カイザーPMCやブラックマーケット同様のオートマタの姿をした機体だった。

違う点を挙げれば、赤と黒を基調に、水色の差し色で彩られた装甲であること。

ミメシスではなく、歴とした機械の体であり、左右の腕にはそれぞれ別の銃を握っている。

それが単なる量産型のオートマタでないことを物語っていた。

 

『そんな急いで何処に行こうってんだ?』

 

──その声は、聞き覚えがあるものだった。

 

それと同時に、この場所…このキヴォトスではあり得ない──あってはならない存在であることを認識した。

 

「その、声は…!?」

 

その声の主は、かつてのルビコンで出会った人物であり、傭兵の一人だった。

 

ベイラム専属部隊、レッドガンに所属する傭兵の一人であり、私も何度か協働した。

その中で、やけに突っかかって来たのを覚えている。

 

『よぅ、久しぶりだな。野良犬…!』

 

レッドガン所属、(ガンズ)5、イグアス。

 

「なんで…お前が…!?」

 

ルビコンにて、私が仕留めた──かは不明だが、少なくとも、コーラルを焼いた際の災禍で死んだであろうイグアスが目の前に立っている。

 

私の脳裏に呼び起こされるのは、以前、“廃墟”の軍需工場で出会った、死んだはずのテスターACのパイロットの声が聞こえたコーラル侵食体だった。

 

『んなもん決まってんだろ。てめぇを殺す為に地獄から蘇ってやったのよ…!』

 

私は蘇ったテスターACを“ルビコンの亡霊”と仮称した。

目の前のイグアスもまた、変異コーラルを通してエアが蘇らせた《ルビコンの亡霊》なのか──。

 

オートマタ──ルビコンの亡霊(イグアス)が、私へと銃口を向け、引き金を弾いた。

 

****************************

 

先生の意識は暗闇の中、突如、光を感じた。

 

[“ここは…?”]

 

目を開けば、そこは見覚えのある景色。

何度か足を運んだ、トリニティの一角。

 

そこでは主に、ティーパーティーのナギサと対面した。

だが、それだけでなく、先生は朧げながらも、ナギサ以外の生徒ともこの場所で対面した記憶があった。

 

それは──そう、目の前の大きな耳の金髪の少女──セイアのような。

 

「…()()()()()かな、先生」

 

テーブルに向かって茶を嗜んでいたセイアは、そう呟くと入口に立っていた先生に振り向く。

 

「私の名前は百合園セイア」

 

彼女は初めまして、と言うが先生自身は彼女と対面したのが今回だけとは思えない感覚があった。

 

「そして、ここは君の夢の中だ…或いは、私の夢の中かもしれないがね」

 

そう告げたセイアは、再びティーカップを口元へと運ぶ。

 

[“セイア…?”]

 

先生が小さく呟くと、セイアは僅かに目を見開く。

 

「おっと、もしかして『初めまして』ではないのかな?」

 

その言葉の意味することが分からず、先生は首を傾げる。

 

「これは失敬。今の私にとって、時間の流れは少しばかり捻れていてね」

 

セイアはティーカップを置き、改めて先生に向き直る。

 

「しかし先生、大事なのはそこではなく、君と私がこうして会えているということだ」

 

そう言うとセイアは穏やかな微笑みを先生に向けた。

 

「さぁ…では、お話を紐解いていくとしよう」

 

****************************

 

イグアスの持つSMGが火を噴き、無数の銃弾が私へと殺到する。

私はその弾幕をクイックステップで躱し、イグアスへと距離を詰める。

クイックステップの際に、鈍い頭痛が走る。

手足は鉛のように重く、全身に気怠さを覚え、息も絶え絶えだ。

 

それでも立ち止まることはできない。

目の前の相手は、キヴォトスの生徒やオートマタとは異なり、まず間違いなく、私を殺そうとするだろうから。

 

『どうやらテメェは、連戦続きで満身創痍みてぇだが…関係ねぇ。むしろ、テメェを殺す絶好の機会だ』

 

イグアス──。

ルビコンでは、他にも多くの傭兵が居たため、特筆すべき相手ではなかった。

だが、この世界──キヴォトスでは別だ。

 

他が上澄みというだけで、イグアスもまた、歴戦の傭兵。

どれだけの生徒がイグアスを相手に出来るかと言えば、限りなく少数だろう。

 

それこそ、単身であればホシノやヒナ、ネルや聖園ミカ、剣先ツルギでもなければ、マトモな勝負にもならない。

その五人であっても、苦戦は必至だろう。

 

何せ、イグアスは殺せる。

何の感慨無く、躊躇無く、敵であれば誰であろうと殺せる。

それが、この世界の生徒にとって、大きなアドバンテージとなる。

 

だからこそ、こいつは私が相手をしなくてはならない。

私がこいつを倒さなくてはならない。

 

「…殺せるものなら殺してみろ」

 

イグアスへと突っ込んだ私は、近距離からSGの散弾を見舞う。

だが、イグアスはACのクイックブーストを彷彿とさせる軽やかなステップで躱してのける。

 

『はっ!どうやら、この世界に来てテメェは口が利けるようになったみてぇだな。憎たらしい減らず口が。犬っころみてぇな耳が生えたその姿も、木っ端野良犬のテメェに相応しいぜ』

 

イグアスはACの時のようなシールドを持っておらず、それ故か回避を重視し、SMGとSRによる引き撃ちに徹している。

 

『女子供の姿だろうと関係ねぇ。テメェが野良犬だっていうなら、容赦無く殺すぜ』

 

私の散弾を躱したイグアスは、流れるようにSRの反撃を繰り出す。

的確な頭部狙いのヘッドショットを私は辛うじて頭を逸らして躱すが、微かに頬を銃弾が掠め、薄く傷を創る。

 

「それなら、今の私に負けたら何の言い訳も出来なくなるな?手負いの女子供の木っ端野良犬に負けたイグアス、ってな」

 

そう言って私は反撃にSGからSMGへと変形させ、攻撃直後のイグアスへと連射を撃ち込む。

 

『…テメェ…!言うじゃねぇか、ブッ殺すッ!!』

 

イグアスは私の挑発に乗って、私の射撃を躱しながら、SMGの連射で反撃してくる。

 

私は“眼”に映るその銃弾の軌道を見極め、射線を左右に振りながら掻い潜り、距離を詰めていく。

中距離まで迫ったところから、右手のARによる速射での薙ぎ払いをイグアスへと放つ。

 

『チッ…!』

 

イグアスが鬱陶しそうに飛び退く。

 

そのタイミングで私は右手のARをクイックチェンジでHGに切り替え、すかさず連射を見舞う。

HG──《ハウンズロア》の銃撃は、相手の体勢崩しだけでなく、威力も高い。

 

イグアスは私の銃撃を横に逸れながら躱そうとするが、一発だけが肩に直撃する。

 

『グッ…!?』

 

イグアスのくぐもった呻き声が洩れる。

 

「どうした?私を殺すんじゃなかったのか?それとも、ルビコンで負けが混んだお前には荷が重かったか?」

 

私は畳み掛けるように、左手の変形銃をクイックチェンジでSRに持ち替え、イグアスを狙撃する。

 

『テメェ…ラッキーパンチがたまたま当たったくらいで良い気になるなよ…!!』

 

私の狙撃をステップで躱したイグアスがSMGを私へと連射する。

イグアスの銃撃を掻い潜り、私は更に距離を詰める。

 

SRを変形銃に切り替えてSG形態に戻し、更にHGをARに持ち替える。

 

私が距離を詰めようとすると、イグアスはステップを踏んで距離を離す。

それでいて、向こうの銃の有効射程は維持する。

 

イグアスはイグアスで、腐っても傭兵なだけはある。

 

このままでは、体力的にも弾薬的にも、私の方が先に根負けしてジリ貧になる。

その前に、早期の決着をしなくてはならない。

 

イグアスのSRによる狙撃を躱し、私は思い切って地面を蹴り、イグアスへと突進する。

 

イグアスはSMGの弾幕によって私を牽制するが、私はその雨の中を縫うように駆け抜ける。

 

目と鼻の先まで接近したところで、私はSGの散弾を放つ。

SGの威力が十二分に発揮できる距離からの攻撃。

 

イグアスが銃撃の火花に飲み込まれる。

如何にイグアスと言えど、散弾をマトモに浴びて無事では済まないはずだ。

 

『チィッ!クソが…!!』

 

悪態を吐きながら、イグアスが銃撃を突っ切って飛び出して来た。

 

そのままイグアスは私へと蹴りを放つ。

 

「くっ…!」

 

私は咄嗟にARを盾にして受けるが、その金属の躯体から繰り出される重さに耐え切れず、吹き飛ばされた。

 

どうにか受け身を取って、体勢を立て直した私に、イグアスの銃撃──狙撃が立て続けに襲い掛かる。

 

「ッ…!」

 

悲鳴を上げ、痺れすらも感じつつある鈍い手足をどうにか駆使して、私は横に飛び、躱す。

 

どうにか立ち上がるが、すでに私は気を抜けば膝を突いてしまいそうな程だった。

 

ダメージと言うよりは、“歯車”と“残り火”を限界まで酷使した影響が色濃く出た結果だ。

 

『…中々、手こずらせてくれるが…もう本当に限界みてぇだな?』

 

そんな私の状態を察してか、表面が僅かに傷付きつつも、まだまだ余裕あるイグアスが私を煽り返す。

 

「…はっ、お前を倒すのに、このくらいのハンデ、大したことはない」

 

息切れを堪え、私は余裕たっぷりに言い返す。

正直、今の私では大言壮語の虚勢も良いところだが、そのくらいの意気を保ってないと、すぐにでも体勢を崩してしまいそうだった。

 

『…その減らず口がいつまで続くか、見ものだな、野良犬…!』

 

今の私が万全に近いイグアスを打ち破るには、それこそ奴の言ったラッキーパンチでも無ければ厳しいだろう。

 

それでも、私は戦わなくてはならない。

 

イグアスも、聖徒会のミメシスも、アリウススクワッドも。

全て、私が倒す。

 

倒さなくてはならない。

 

それが今、私のやるべきこと──為すべきことだから。

 

──その直後、“猟犬の耳”がイグアスとは異なる、別の銃撃を感知した。

私が反射的に飛んだ直後、イグアスのすぐそばを銃弾が横切り、私が立っていた地面が盛大に吹き飛んだ。

 

対物ライフルによる狙撃──。

 

それを理解したと同時に、イグアスの後ろから新たなオートマタが姿を現す。

黒と紫に染め上げられた機体。

携える武装は、思った通りの対物ライフルと、ハンドガン。

 

それを認識したと同時に、そのオートマタが声を発した。

 

『全く見ていられません。何を手こずっているのです。そんな──()()如きに』

 

その声は──決して、忘れもしない。

その声の主は──!!

 

「スネイル…!!」

 

アーキバスの強化人間部隊、ヴェスパーの第二隊長、スネイル。

こいつには何度も良いように扱われ、ウォルター共々、散々好き放題に言われたが、そんな事は今となってはどうでも良い。

 

こいつは…他でも無い、ウォルターを捕らえた張本人。

きっと、ウォルターはコイツに──。

 

……いや、全ては私の力不足が招いた結果だ。

確かに、こいつは悪辣だが、それでも、私にそれを押し潰す力があれば、あんなことは起こらなかった。

 

それに、最終的には私はコーラルをルビコンごと焼いた。

ルビコンにいた多くの人間──その中にはこいつも、そしてウォルターも含まれていただろう。

 

私は既に、ウォルターの仇討ちを果たしている。

 

だからと言って、こうして蘇った姿を見て、良い気分はしないが。

 

『おい!テメェ!もう少しで当たるところだったろうが!』

 

背後のスネイルに向かってイグアスが吠える。

 

『貴方が不甲斐ないから、仕方なく私が出て来たのです。感謝しなさい』

 

『んだとテメェ!相変わらずイラつく野郎だ。それに、野良犬は俺の獲物だ!邪魔するんじゃねぇ!』

 

『全く…駄犬に狂犬と…不愉快極まる』

 

『まとめてんじゃねぇ!!』

 

そんなやり取りをしながら、スネイルはイグアスの横に並び、私を見据える。

状況は依然として不利どころか、スネイルが現れたことで更に私は窮地に立たされている。

安易に攻撃を仕掛けることは出来ない。

 

『…お久しぶりです。独立傭兵レイヴン──いえ、今は違う名義でしたね。まぁ、そんなことはどうでもいい。貴女は今、ここで死ぬのですから──来なさい』

 

スネイルの言葉と共に、また新たな気配が加わる。

その数、二つ。

 

『おい!勝手に進めてんじゃねぇ!誰が人数増やせっつった!?』

 

『黙りなさい。元はと言えば、貴方一人でヤツを早々に仕留められなかったことが原因です。貴方に文句を言う資格はありません。私は貴方の尻拭いをしてやっているのですよ?』

 

『……クソがッ!!』

 

スネイルに論破され、イグアスは不貞腐れたように黙り込む。

 

『まぁまぁ、そう争わずに仲良くしましょう。折角、こうして企業や所属の垣根を超えて蘇ったのですから。皆、友人のようなものではないですか…そうは思いませんか?──()()()

 

ここまで来ると、亡霊が増えることには、もう驚きはしない。

……しないが、よりにもよってコイツか。

エアの人選はどうなってるのやら。

 

元はカーラと同じRaD所属だったが、資金やら部品やらを盗んでならず者の集まりであるジャンカー・コヨーテスに鞍替えした屑。

屑の名は、オーネスト・ブルートゥ。

 

ならば残るもう一人は──?

 

『スネイルは相変わらずだな。まぁ、俺にとってはどうでも良いが。それよりも、お前があのレイヴン──いや、猟犬か。相応しい姿になったな。どれだけ俺を楽しませてくれる?』

 

……なるほど、アーキバスのヴェスパー所属だが、それと同時に傭兵の頂点に立つ人間ならば、納得の人選と言える。

(ヴェスパー)1、フロイト。

Sランク傭兵にして、その頂点の一位に立つ男。

 

ルビコンの決戦の舞台、ザイレム上で一度戦ったが、中々に苦戦させられた。

こいつが蘇ったのも、他に輪をかけて厄介と言えるだろう。

 

イグアス、スネイル、ブルートゥ、フロイト──。

 

その四人が、今私の目の前に立っている。

 

私を挟むように、正面にイグアスとスネイル。

背後にブルートゥとフロイト。

 

進退もままならないが、もし私がこの場から逃げれば、エアは容赦なく、この四人を聖徒会のミメシスとアリウスに追い詰められているトリニティとゲヘナの生徒たちにけしかけるだろう。

 

……それだけは、何が何でも防がなくてはならない。

 

だが、今の私は満身創痍であり、立っているのもやっとだ。

この状態で、この四人を倒すことなど──。

 

「…くっ──」

 

「くははは…」

 

「はははははは…!」

 

「あっははははははハハハハハハハハハハッ!!」

 

下らない。

 

全く以って、話にならない。

 

お前は何を言っている。

 

満身創痍?

 

だから何だ?

 

まだ武器は握れるだろう?

 

手足は動くだろう?

 

生きているだろう?

 

諦めるにはまだ早い。

 

目が潰れようが、手足がもげようが、生きている限り、戦える。

 

生きている限り、生命ある限り、最後の最期まで、這ってでも敵に喰らい付け。

 

『なんだ…?野郎、ついにイカれやがったか?』

 

イグアスを含め、三人が虚をつかれた顔をしている。

 

『気を付けなさい。奴が何をして来るか──』

 

私は懐から最後の強化手榴弾──黒火炎弾を取り出し、イグアスへと投げ付ける。

 

それと同時に、私はブルートゥへと駆けた。

 

『あぁっ!私と一緒に踊ってくださるのですか、ご友人!?素敵だ…!』

 

ブルートゥはルビコンの時と同じ、火炎放射器によって迎え撃つ。

 

私はクイックステップによって横へ火炎を避け、更に地面を蹴ってブルートゥへと突っ込む。

 

『また一緒に踊れるなんて、夢のようだ…やはり貴女は最高です、ご友人!』

 

突っ込んだ私へ、ブルートゥはグレネードランチャーを放つ。

回避の為にステップを踏むが、爆発の余波の炎が肌を炙る。

この程度であれば問題ない。

 

『素敵なステップです、ご友人!』

 

私はブルートゥへと肉薄し、SGを見舞う。

ブルートゥは回避を狙うが、躱し切れず、半身を散弾が打つ。

 

更に畳み掛けようとするが──。

 

『お前らばかりズルいぞ。俺も混ぜろ』

 

そこに乱入して来るのはフロイト。

アサルトライフルの銃撃が飛んで来る。

 

クイックステップを使い、掻い潜る。

疲労の蓄積が限界を超え、肉と骨が軋んでいる。

 

続けてフロイトは、ロケットランチャーを繰り出す。

 

「──ッ!!」

 

咄嗟に身を(よじ)り、飛んで来た弾頭を躱せば、背後で爆発が起こる。

爆風を背に浴びながら、私は駆け、フロイトへと牽制のハンドガンを撃つ。

 

『そんな状態でもそんなに動けるとは…やはりお前は面白いな』

 

一方のフロイトは余裕綽々と私のハンドガンを躱す。

 

矢継ぎ早に、今度は遠距離攻撃を感知し、私は跳ぶ。

 

『何を遊んでいるのです、フロイト。早く仕留めなさい』

 

スネイルによる、対物ライフルを用いた遠距離からの射撃。

 

完璧には躱し切れず、空中で体勢を崩した私は地面を転がる。

その中でも私は受け身を取り、飛び上がるように跳ね起きる。

 

そこへ銃撃が殺到する。

 

『死ねッ!野良犬ッ!!』

 

イグアスと、フロイトのアサルトライフルによる銃撃が交差するように私に放たれる。

 

「ッ──ああぁぁぁあああああアアアアアッ!!」

 

銃弾が肩や手足を掠め、皮膚を切り裂く感覚の中、私はクイックステップでその範囲から逃れる。

 

傷に加え、全身が激痛に苛まれている。

 

度重なる無理な回避で手足の筋肉が引き千切れそうだ。

 

骨にも負荷が掛かっているのだろう。

 

内側から鈍い痛みを感じる。

 

肺も、心臓も苦しい、痛い。

 

酸素を求めて肺は呼吸を早めるが、それがより苦しさに拍車をかける。

 

激しい動きの中で、手足に血を行き渡らせる為に心臓が激しく脈打ち、それが胸の激痛を生じさせる。

 

思考を巡らせる頭も、常に戦況を把握する為の眼も痛い。

 

危機感知の酷使からか、耳鳴りもする。

 

──だが、まだだ。

 

まだ足りない。

 

もっともっと、手足に血を巡らせろ。

 

思考を加速させろ。

 

呼吸を早めろ。

 

肺が苦しくても、心臓が痛くても、その痛みは生きている証だ。

 

生きている限り、死に物狂いで生にしがみ付き、勝利を掴み取れ。

 

もっと速く、もっともっと、速く──!!

 

私は歯を食い縛り、地面を蹴った。

 

「ぐっ…が、アアアァァァァァァァァァッ!!!」




ルビコン同窓会として、イグアス他三名がキヴォトスに来てくれました

やったねレイヴン!

という訳でまた次回、お会いしましょう
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