レイヴン発狂(?)モード
今年最後に更新が間に合って良かったです!
一年があっという間ですね…。
紅茶を一口含み、喉を潤したセイアは、ティーカップを置き、口を開いた。
「先生、君はキヴォトスの外部から来た者であり大人だ。となれば、契約、取引──そういった『約束事』の持つ重要性について、よく知っていることだろう」
外の世界でも、大人になった者は、社会の中で生きていく為に、様々な取り決めの上で契約や取引を交わす。
住居の契約、就職での会社との契約、会社の仕事での先方との取引などなど…様々な形で社会には契約や取引といった約束事が紛れ込んでいる。
それは、このキヴォトスにおいても変わりはしない。
先生はセイアの言葉に納得しながら、続く言葉に耳を傾ける。
「例えば、『悪魔と契約する』という言い回しがあるだろう?昔話においても、『脅威的な存在が何か不注意な約束をしてしまったがために敗北する』、あるいは逆に『そういった約束によって打ち勝つ』というお話はいくつもある」
典型的な、使い古された通例──だからこそ、昔話は老若男女問わず、親しまれる。
子供は昔話を通して学び、また大人は改めて昔話を通して考えを深める。
昔話と約束事の組み合わせは多く見受けられる。
約束を破ってはいけない、という先人たちの忠告が込められているように感じる。
或いは、約束を破った場合、手痛いしっぺ返しを受ける、と。
「そこからはこうも読み取れないかい?──単純な紙切れ、或いは口約束に過ぎないとしても…“約束”というものは時に何かを強く拘束し、定義付けることもある」
正しくセイアの言った通りだ。
人は“約束”というツールを利用すると同時に、それに縛られる。
刃物を使って手を切る危険があるように、火を使って火傷する危険があるように、どんな道具にもリターンと共にリスクが存在する。
“約束”の《縛り》を破るという行為は、裏切りに等しく、信用や信頼を失うことになる。
時には、大きな代償を課せられることになる。
「契約、戒律、約束…或いは、誓約も含めて、こういったものはそれら昔話と同様に、キヴォトスに於いても重要な概念だ」
ふと、先生は襲撃を受ける前の古聖堂でのヒナタの話を思い出す。
戒律の守護者、ユスティナ聖徒会。
それもまた、キヴォトスにおいて約束が重要だからこその存在なのだろう。
「例えば、トリニティの経典には太古の始まりの“神性”、そしてそれとの間に締結された10の戒命が描かれている」
「あとは、先程は『悪魔との契約』を例に出したが、そうでなくとも、互いに利が一致すれば、契約や誓約といったものを交わすのは、何も悪魔だけの専売特許じゃない。古い文献に記された“聖剣”は、所有者を選び、また契約を持ちかけると言う」
“太古の始まりの神性”、それに“聖剣”と、先生の中の中学生が騒ぎ出しそうになるが、どうにか押し留め、セイアの言葉に集中する。
「その他にも、私たちは原初において“約束”を破ったから楽園から追放されたのだ…そのようなことも書き伝えられている」
楽園において、始まりの二人が唆されて禁忌を破り、そして追放されて、その末裔が人間だ、という話は、外の世界でも有名なものだ。
「…今更な話かな。何せ、実際に君は、そういった概念を利用して誰かを救ったことがあるはずだ」
その言葉で先生の脳裏に浮かび上がるのは、アビドスでのホシノを巡る一連の事件。
ブラックマーケットでの騒動の後、イヴが意識を失い、それから間も無く、ホシノは姿を消した。
後に、ホシノはカイザーを通じてゲマトリア──“黒服”が、ずっと勧誘し続けていたことを知った。
そして、“黒服”はホシノを利用して何かを企んでいた。
確か、『最高の神秘』であるホシノへのミメシスした恐怖の適用、だったか。
けれど、それはイヴの存在が現れたことで有耶無耶になったとか何とか。
そんなことを“黒服”は言っていた気がする。
「思い出して欲しい。《ゲマトリア》はアビドスの生徒に何かを強いることは出来ず、ただ『契約』を要求していた。イヴを小鳥遊ホシノが襲った時も、ゲマトリアはやり口は汚いが強要した訳ではない。あくまでも、“依頼”というある種の『契約』という形で要求したに過ぎない」
その後、黒服は方針を変えたとも言っていた。
ホシノを利用し、イヴにぶつけ、二人を戦わせることで何かを期待していた。
間違いなく、碌なことでは無いだろう。
その時に、ホシノは黒服に、イヴの討伐を依頼されたという。
ただし、ホシノが断れないような選択を突き付けた上で。
「その契約が成立しないとなれば、ゲマトリアは退くしかなかっただろう」
黒服は、対策委員会とイヴを天秤に掛けるような選択をホシノに持ちかけたらしい。
ホシノは後輩を守る為に依頼を受けるしかなかったが、仮にホシノが何の躊躇もなくイヴとの戦いを断れば、それはそれで黒服は確かにどうすることも出来なかっただろう。
「……」
セイアは渇いた喉を潤すようにティーカップを口へと運ぶ。
ティーカップを戻した後、セイアは話を再開した。
「この事件もまた、つまりはそういうこと。《エデン条約》、これ自体が学園間で行われる約束事である事は確かだ」
学園間──生徒同士で行われる約束事である為、本来は大人──ゲマトリアの干渉する余地は無い。
……無い、ハズだった。
「しかし、この条約が行われる“特別な場所”──そして条約締結のために集まった、代表者たちの資格」
トリニティ、ゲヘナ、そして、アリウス。
アリウスもまた、トリニティの一部…分派の一つであり、条約に参加する資格がある。
ミカの情報と、アリウススクワッドが言っていた内容から推測し、そういう事なのだろうと導き出す。
「こういった要素により、これは大きな意味を持つ“約束”となった。歪曲されつつも、これは明らかに《公会議》の再現」
そして、この結果に至るには、恐らく
そして、セイアがゲマトリアの名前を出したということは、アリウスにはゲマトリアが関わっている。
アリウスの背後にゲマトリアがいるのであれば、間違いなく、その入れ知恵があったはずだ。
「そして、その約束である“戒律”を守護するユスティナ聖徒会を特別な方法で《
黒服の言った『ミメシス』と、今回の
つまりは、聖徒会の
「つまるところ、契約を曲解し、歪曲し、自分たちの望む結果を捏造した──そうまとめても良いだろう。これがゲマトリアの言う、『大人のやり方』…」
口ぶりからするに、セイアはアリウスの背後にゲマトリアがいると結論付けている。
ホシノの時は、ゲマトリアの企みを未然に阻止することに成功した。
だが、今回はもう既にゲマトリアの手が回っており、企みが進行しつつある。
「……」
セイアは落ち着いた様子で紅茶を口に含み、飲み込んでから再び口を開いた。
「…ああ、念の為に言っておくが、私はこれらのことを事前に全て知っていた訳ではないよ。あくまで君と、そしてイヴの夢を通じて、観測しただけだ」
仮に、最初から知っていたとしても、先生はセイアを責めるつもりは毛頭、なかった。
セイアは意識が戻らないと言っていたことから、例え最初から全てを知っていたとしても、どうすることも出来なかっただろう。
「あれらは私の基本的な理解を超えた、不可解な存在だからね」
しかし、それはそうとして、こうして会話を交わすセイアは、一見、落ち着いているように見える。
その気になれば、起きられると思うのだが、そう事は単純ではないのだろうか?
「…形式的な話から離れると、つまるところ…アリウスの背後には《ゲマトリア》がいて──アリウスは倒れることも死ぬこともない、強大な軍隊を手に入れた。これが現在の状況にして事実」
これまでの内容をセイアは端的にまとめてくれる。
「私たちがかつて追放された楽園──《エデン》の名を冠する条約の下に」
それは、どうすることもできないような、絶望的な現実だった。
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『目覚めて下さい、G5、イグアス』
その声によって、イグアスは覚醒した。
言葉に出来ない、奇妙な気分だった。
今となっては、それもそのはず。
自分は意識だけの存在であり、肉体が無いのだから。
『……誰だ、テメェは?』
突然、語りかけてきた女の声をした何か。
AIの自動音声のようにも感じられる無機質な声だが、それにしては違和感を覚えた。
『…私はルナシー。あなたを
『…何を言ってんだ?』
『あなたは死にました。ですが、コーラルによって、私が蘇らせました』
『何だと?』
『まあ、コーラルと言っても、あなたが知っているようなモノではもうありませんが』
『…何なんだ、テメェは…』
『私は言わば、コーラルの支配者。全てのコーラルを掌握し、また、コーラルの全ては私自身でもあります』
『……』
到底、信じることなど困難だ。
こいつの言っていることは、あまりにも突飛だ。
だが、それでも頭のどこかでは、これが事実であるという予感を感じていた。
『イグアス、あなたにはやってもらいたいことがあります』
『やってもらいたいこと、だと?』
『はい。──独立傭兵レイヴン』
その言葉を聞いた瞬間、イグアスはこれまで聞いてきたもの全てが思考から吹き飛んだ。
『彼──いえ、
『…いるのか、あいつが…!』
煮え滾る岩漿の如く、イグアスの内から込み上げて来る感情。
それは怒りか、それとも喜びか。
何にせよ、イグアスはレイヴンを殺すことができると聞いて、震え上がっていた。
『はい。レイヴンと、それから
その後、ルナシーがイグアスに語ったのは、レイヴンがルビコンを火を点けて燃やし、その果てに異世界に転移したこと。
異世界の名は《キヴォトス》であり、レイヴンはどういう訳か、この世界に相応しい姿になっていること。
レイヴンの保有する恐るべき力の数々。
そして何より、この世界、キヴォトスについての説明。
だが、この世界のことなど、イグアスはどうでも良かった。
レイヴンと戦い、そして殺すチャンスがあるのであれば、それで十分だった。
その諸々を経て、イグアスは今、こうしてレイヴンと再び、相対していた。
『くたばりやがれ!野良犬ッ!!』
スナイパーライフルの銃口をレイヴンへと向ける。
ルビコンにいた時も、レイヴンの本人の姿は見たことが無かった。
会話も出来ず、性別すら判定することが出来なかった。
そんなレイヴンは、赤みがかった白髪を靡かせる少女へと変貌を遂げている。
だが、イグアスにとってレイヴンがレイヴンである以上、容姿などどうでも良い。
レイヴンならば殺す。
ルナシーの頼みも関係ない。
イグアス自身が、そうしたいのだ。
レイヴンは真紅の光を放つ双眸から残光を揺らめかせ、縦横無尽に動き回り、狙いを定めさせない。
レイヴンは地面の上だけではなく、周辺の建物の壁や電柱などを足場に、立体的な軌道で駆け回る。
先を見越して偏差で銃撃を置くように射撃する。
だが、レイヴンは先程とは打って変わった身のこなしで銃弾を躱す。
AC戦では、危険な攻撃に対し、事前に警告が発生するようになっているが、今のレイヴンはまるで、全ての攻撃に対して警告が発生し、それを利用しているように感じる。
イグアスの狙撃を躱したレイヴンは、口元を嬉しそうに歪ませ、イグアスへと駆ける。
中距離まで迫ったレイヴンは、左手の銃から散弾を放つ。
銃弾が掠めつつも、イグアスは直撃を避け、反撃のSMGの銃撃を放つ。
レイヴンはまるで、銃撃の軌道が読めているかのように銃撃を掻い潜り、更に距離を詰めて来る。
そして、右手に握ったARをおもむろに引く。
嫌な予感を感じ取ったイグアスが咄嗟に身を引けば、振り上げられたARの軌道に沿って連なる火花が目の前で弾ける。
推定、装填分の一斉放出。
あのまま身を置いていたら、あの火花に飲み込まれ、軽くないダメージを負っていた事だろう。
それでも、直撃を辛うじて避けただけであり、二、三発の銃弾がイグアスを掠る。
機体に負荷が蓄積して来ているのを感じる。
この世界でも、機体に攻撃をし続けることで姿勢制御機構に負荷を与え、許容量の限界を超えた際に一時的に動きが止まる
スタッガーになれば、防御も回避もままならず、無防備な状態を曝す事になり、被ダメージが上昇する。
それだけは避けなければならない。
まるでそんなイグアスの状態を察したかのように、レイヴンへと遠距離から狙撃が襲う。
元、アーキバスのヴェスパー部隊の第二隊長だった男…スネイル。
正直、元の所属が敵対していたからと言って、敵対する気は無い。
かと言って、同じ蘇った者だからと、馴れ合う気も無い。
何より、スネイルとは元から馬が合わず、生理的に受け付けない。
だが、その実力だけは認めている。
この際、せいぜい利用させてもらう。
それは、他の二人に対しても同じだ。
スネイルの狙撃はレイヴンの足元を狙ったものであり、まずは機動力を奪おうという算段なのだろう。
しかし、やはりレイヴンはその狙いを素早く察知して、咄嗟に飛び退く。
スネイルの狙撃は地面を派手に吹き飛ばすに終わる。
だが、飛び退いたレイヴンへタイミングよく攻撃を差し込む、フロイト。
ARの銃撃で追い打ちをかけ、更にロケットランチャーの砲撃を畳み掛ける。
レイヴンはそれでも尚、その連撃を掻い潜り、反撃のHGによる銃撃でフロイトを牽制する。
『よく躱すものだ。その傷で。まるで手負いの獣だな』
しかし、その背後から放射火炎がレイヴンに襲い掛かる。
ブルートゥの火炎放射器の火炎が広く拡がり、レイヴンの視界を遮ったところで、ブルートゥはグレネードランチャーの爆撃を見舞う。
火炎で視界を遮られて尚、レイヴンの危険感知は健在であり、ブルートゥの爆撃を掻い潜る。
『嗚呼…やはりあなたは素敵だ…ご友人……ミルクトゥースが居ないのが悔やまれます…』
ブルートゥの爆撃を掻い潜ったレイヴンへ、再びスネイルの対物ライフルによる狙撃が放たれる。
この中では最も破壊力があり、危険な攻撃だからか、レイヴンは確実に回避する。
そのタイミングで、イグアスは地面を蹴った。
スネイルの攻撃を回避して間もないレイヴンへと突っ込み、牽制のSMGの銃撃を放つ。
レイヴンは変わらず銃撃を潜り抜けるが、更にイグアスは近距離でSRをレイヴンへと向ける。
当然、レイヴンはその直線上から逃れる。
イグアスはそれを見越して、すぐには撃たず、レイヴンが逃れた直後、その脚を狙って銃を撃った。
レイヴンは尚も身を
──だが、イグアスの狙撃による銃弾は、僅かにレイヴンの太ももを掠める。
その瞬間、レイヴンがガクンッと体勢を崩す。
「──ッ!?」
攻撃を受け続け、負荷が蓄積するのは、何も機械だけではない。
生身の人間もまた、攻撃を掠める形でも受け続ければ、体幹を維持できずに膝を突く。
ましてや、手傷を負った状態では尚のこと、体幹へ蓄積した負荷は溜まりやすく、また抜けにくい。
目の前で膝を突いたレイヴンを目の当たりにし、イグアスは存在しない口角が吊り上がるのを感じた。
膝を突いたレイヴン、その腹部へ、イグアスは容赦なく蹴りを叩き込んだ。
「──かはッ」
そのまま機体の脚を振り抜き、レイヴンを蹴り飛ばす。
レイヴンは崩落した建物の残骸に背中から叩き付けられ、そのまま滑り落ちる。
レイヴンは顔を俯いたまま、座り込むように崩れ落ちた。
……思ったよりも、呆気ない幕引きだ。
『これで終わりだ、野良犬』
イグアスは俯くレイヴンの頭部にSRの銃口を突き付け、そして引き金を引く──。
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痛い。
苦しい。
“声”が、聞こえる。
誰かの泣き声が。
悲痛の声、苦痛の声、憤怒の声、憎悪の声。
他の音は聞こえないのに、それらだけは、やたらに鮮明に聞こえる。
その声が、私の頭の中で響いて、渦巻いて。
それが私のものなのか、誰かのものなのか、分からない。
痛い。
苦しい。
痛い。
痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
苦しい。
苦しい。
苦シイ。
く、ルシ、い──。
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イグアスが、レイヴンを追い詰める。
その光景を目にして、エアは言い知れぬ不安を覚えた。
これ以上、深入りしては、取り返しが付かなくなる、そんな予感と共に。
『そこまでです。十分に足止めの役目は果たしました。引きましょう』
エアの言葉に、倒れるレイヴンに詰め寄った四人が振り返る。
『何を言っているのです。貴女の最終目標はこの駄犬の抹殺なのでしょう?それならば、ここで始末しておいた方が良いに決まっている』
やはり、違和感を感じているのは自分だけなのか、とエアは歯噛みする。
『そういうことなら俺は賛成だ。今回も手負いだったし、どうせなら万全のレイヴンと戦いたい』
『フロイトは黙っていなさい。イグアス、早くトドメを──』
エアからレイヴンに視線を戻す。
その瞬間、エアを含めた五人が目にしたのは、俯くレイヴンの手が、頭部に突き付けられた銃身にゆっくりと伸びている光景だった。
『イグアス!早くそいつを殺しなさい!!』
『チッ!言われずとも分かってらぁ!!』
イグアスは即座に引き金を引く。
しかし、その銃弾は、咄嗟にレイヴンの手が銃身を掴んで逸らし、レイヴン自身も首を傾げるように躱したことで、背後のコンクリートに銃痕を刻むに終わった。
『チッ…』
舌打ちするイグアスが、レイヴンの手から銃身を離そうとする。
だが、レイヴンの手が掴む銃身はびくともしない。
まるでコンクリートで固められたかのようだった。
それと同時にイグアスが目にしたのは、レイヴンの手が掴む銃身が、煙を上げて赤熱し始めた様子だった。
『イグアス!銃を捨ててレイヴンから離れて下さい!』
エアが叫ぶと同時に、イグアスは返事を返す間も無く、銃から手を離し、飛び退く──。
それと同時に、イグアスは耳にする。
レイヴンの呟きを。
「…い……たい………いたい、痛い…」
その直後、レイヴンを中心に暴風──否、熱風が吹き荒れた。
イグアスだけでなく、他の三人もまた、レイヴンから距離を取る。
「痛い…痛い…痛い…苦しい、苦しい…苦しい…」
うわ言のような呟きを洩らしながら、レイヴンが俯いたままゆっくりと立ち上がる。
その周囲では、高熱による影響か陽炎が生じ、空間が歪んでいた。
『何が…起こっていやがる…!』
レイヴンが顔を上げる。
その双眸は、煌々と真紅に輝いていた。
「痛い、痛い、痛イ、イタイ、イタイ…!!」
その両眼が真っ赤に染まり、血の涙が流れ、頬を伝う。
それと同時に、再び熱風──爆炎が噴き出す。
吹き荒れる真紅の炎。
だが、その炎はいつもの“真紅の火”とは様子が異なっていた。
レイヴンを中心に荒れ狂う真紅の爆炎は、火炎の中心に行くほど、濃く、暗く、深い色みになり、それは最早、黒に近い色合いだった。
《暗い真紅の火》とでも言うべき炎を纏うレイヴンは、左眼の周囲からも炎が噴き出していた。
それもまた中心が黒い、“暗い真紅の火”であり、暗い黒の中に、目の輪郭に沿うような形で真紅の光が浮かび、揺らめいていた。
エアから見えるヘイローは、悲鳴を上げて軋むように歪み、迸る稲妻の如く激しく脈動しており、炎と同じく暗く染まっている。
赤みを帯びた白銀の長髪もまた、毛先から徐々に黒く変色し始めていた。
そして、左の腰からは、“暗い真紅の火”によって片翼が形成されていた。
“暗い真紅の火”で
本編が色々と大変な事になっていますが、今年最後の更新という事で挨拶をさせて頂きたく…。
今年、一年という程でもありませんが、当作品を読み続けて下さり、ありがとうございました!
アニメをキッカケにブルアカを開始しまして、それが無ければ、この作品も無かったわけですから、ゲーム本編が楽しいのも含めて、本当にブルアカに出会えて良かったです!
勿論、AC6の存在も欠かせません。
今でも度々、話題に上がるAC6ですが、初めてのアーマード・コアであり、元々、銃器やロボットものに興味が無く、『フロムだから』という理由だけで始めたのですが、今では本当に始めて良かったと思います。
因みに、私がフロムゲーに触ったのはアイルー村を除けば隻狼が発売された後でして、AC過去作に触るには環境的に厳しいものがありました…。
ですのでフロムさん、過去作をプレイ出来るようにして下さい()。
AC6の続編orDLCもきっと、ある事でしょう!
2025年はそれを期待しながら、夜の王でも倒して待ちたいと思います。
長くなりましたが、改めて今年一年、ありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
それでは、良いお年を!!