レイヴン、闇堕ち
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!!
ロスリック巡回も無事に終わり、戻って来ました
話は変わりますが、シャーレにミカが来るようになりましたね
トリニティは来ても補習授業部だろうと読んでいたので、サプライズ過ぎてビックリしました
ちょっと重いのもミカらしいですね
「痛い!あはははっ!痛い、痛イ、イタイ!ヒャハハハハハハッ!!」
“暗い真紅の火”を纏うレイヴンは痛い痛いと言う割に、その顔は狂喜に歪んだ笑顔を浮かべていた。
『おい、女ァ!!どうなってる!?炎は出せないんじゃなかったのかよ!?』
イグアスは、背後の空中に漂うエアに向かって吠える。
だが、対するエアの表情もまた、良いものではなかった。
『…私も、そう思っていたんですが…』
『調子に乗って貴方たちがレイヴンを追い詰めたからこうなったんです!』というただの責任転嫁でしかない、不毛な言葉をグッと飲み込み、エアはレイヴンを観察する。
狂った笑い声を上げるレイヴンが纏う“暗い真紅の火”は、エアからして、これまでの“真紅の火”と同じものだとは到底、考えられなかった。
少なくとも、間違いなくコーラル特効の効果が付与されていることは間違いないだろう。
その他にどのような特性があるのかは、エアでも想像すらつかない。
『なるほど、不測の事態という訳ですか。それで、どうするのです?あの炎、コーラルによって構成されているものを例外なく燃やすのでしょう?我々ではひとたまりも無いはずです』
落ち着いた様子で解決策を打診しようとするスネイルは、“元”とは言え、流石は曲者揃いのヴェスパーの第二隊長だったというだけはある。
だが、その第二隊長様であっても、手を焼く存在がいることはエアも知っていた。
『何を言っているんだ?面白そうじゃないか。向こうも満身創痍、そしてこちらもマトモに食らえば即死…良い戦いが出来そうだ』
V1フロイト…。
先程からのやり取りから見ても、フロイトはスネイルの注意を一切、気にも留めない。
『黙りなさい、フロイト。今はふざけている場合ではありません』
苛つきからか、或いは脅しの為か、スネイルはやや語気を強めにフロイトを厳しく注意する。
『…ふざけているつもりは無いんだがな』
それに対して、フロイトは困ったように溜め息混じりにそう溢した。
スネイルは無言だが、雰囲気からは明らかに苛つきが感じ取れる。
肉体が健在であれば、顔に青筋の二、三本は浮かんでいたことだろう。
『何にせよ、戦うにしろ逃げるにしろ、このままではいけない。遠隔操作のルナシー嬢は兎も角、我々四人には物理的な機体がある。あのご友人の機動力がどれほどのものかは分かりませんが、最悪、誰かを囮にでもしなければ、マトモに相手取ることは出来ない』
そこで意外にもブルートゥがまとめに入って来る。
てっきり、唯我独尊、我関せずを貫くものばかりだと思っていた。
『嗚呼…だが、あの姿のご友人とのダンスも、とても熱烈でスリルのあるものになりそうだ…楽しみですね…それはそれで…素敵だ…』
前言撤回。
やはり狂人は狂人だったらしい。
『…そうですね。そうなったら、フロイトかブルートゥを囮にでもしなければならないでしょう』
やはり、この狂人を甦らせたのは失敗だったかもしれない。
利用しても心が痛まない人選のつもりだったが、もう少しよく考えるべきだったかもしれないとエアは後悔の念を抱く。
ブルートゥには以前も混乱させられたものだが、今でもやはり慣れない。
『…ルナシー嬢?フロイトは兎も角、なぜ、私が囮候補に…?』
静かにする為に、この際に処分するのもやぶさかではない。
向こうも、レイヴンに殺されたところで、それはそれで満更でもないだろうし。
『ケッ…下らねぇ。要は殺すか殺されるか、ただそれだけだろうが。今までと何も変わりゃしねぇ』
そして、イグアス。
彼は彼で、中々、融通が効かない時がある。
それこそ、レイヴンが関わった時。
何かとイグアスはレイヴンを目の敵にしている。
レイヴンが関わらない時は意外にも従順だが、レイヴンが関わると途端に暴走し始める。
『待ちなさい、イグアス』
スネイルが再び静止に入る。
だが、イグアスは見向きもせず、ずっとレイヴンを睨み続けている。
『そんなに死ぬのが怖いならテメェらは逃げりゃ良い。俺があの野良犬を殺すのを指を咥えて見てな』
銃を構え、イグアスは今にも突貫しそうな勢いだ。
『イグアス、話を聞いていなかったのですか?そもそも、先程までの駄犬にすら苦戦していた貴方が、今のヤツに敵うとは到底──』
スネイルが理論的にイグアスを宥めようとする。
スネイルがここまで干渉的になるのは意外だが、スネイルからして見てもまだ利用価値のあるイグアスをここで失うには惜しい、という考えから来るものなのかもしれない。
『うるせぇ!俺はまだまだ本気じゃねぇ!それに、“奥の手”だってあるんだ!』
イグアスの発した“奥の手”。
それが何なのか、エアには当然、身に覚えがあった。
それを仕込んだのは他でも無い、エア自身だからだ。
しかし──。
『待ってください、イグアス。“アレ”はまだ、調整不足で今の貴方には──』
エアもイグアスを静止しようとするが、イグアスは勢いのままレイヴンに突っ込んでしまった。
『フッ、やはりそう来なくてはな。だが、お前だけに良いところを持っていかせる訳にはいかないな…!』
それに続いて、フロイトまでもがレイヴンへと向かう。
『フロイト!!』
スネイルの呼び止めに、フロイトが応じる訳もなく。
『……はぁ…』
エアの口からは自然と苛立ちを含んだ溜め息が洩れた。
『……』
スネイルは無言だが、その無言が苛立ちを表していた。
『これは困りましたね…』
まるで他人事のようにブルートゥは、レイヴンへと突貫するイグアスとフロイトを眺めていた。
それはそれで、エアとスネイルの神経を逆撫でしていたのだが、二人はどうにか爆発せずに堪えることができた。
『うるせぇんだよ…ごちゃごちゃとよ…!どいつもこいつも、俺を低く見るんじゃねぇ!!』
猛然と吠えるイグアス、そしてフロイトをレイヴンは獰猛かつ凄絶に歪んだ笑顔で迎え撃つ。
もう本当に、あの二人を囮にしてスネイルとブルートゥを逃してしまおうか。
そんな考えがエアの脳裏を過った瞬間。
『!?』
先行していたイグアスへと一発の銃弾が飛び、驚愕しながらも回避する。
その銃弾はレイヴン──ではなく、レイヴンの背後から撃たれたものだった。
攻撃の回避のために立ち止まったイグアスと、そこに追い付いたフロイトがそちらへと視線を向ける。
レイヴンもまた、新たな
その視線の先に立っていたのは──。
「──久しぶりね、レイヴン。いえ、イヴ」
見知った
「…ベン…り、や…」
便利屋68のアル、カヨコ、ムツキ、ハルカの四人だった。
レイヴンがその四人に目を奪われると同時に、身に纏う“暗い真紅の火”の勢いが弱まった。
今ならば、退却することができるはずだが、それをイグアスとフロイトが認める訳も無い──。
『…チッ、シラけたぜ』
そう思っていたのだが、イグアスは途端に興味を失ったように、それまでの戦闘姿勢を解いた。
『なんだ?お前は帰るのか?それはそれで良い。それなら俺はレイヴンとあの四人を──』
一方でフロイトは戦えるなら何でも良いというように相変わらずの姿勢だが──。
『うるせぇ。テメェも帰るんだよ。オラ、行くぞ!』
イグアスはついでにフロイトの首に腕を回し、強引に連れ帰ろうとする。
エアにとっては、思わぬ好機だった。
『なっ、邪魔をするな!まだだ…!これからもっと、面白く…!』
『良くやりました、イグアス。先程までのことは不問にしましょう』
そこにスネイルも加わり、フロイトの拘束に手を貸す。
『テメェも何様だ?チッ、イラつくことしかねぇぜ…』
イグアスとフロイト、スネイルが退いていく中、レイヴンはその様子を口惜しそうに眺めているだけだった。
相変わらず“暗い真紅の火”を纏った変貌した姿だったが、どうやら正気に戻ったらしい。
『それではレイヴン、我々はこれで失礼しますね』
空中に漂う幻影のエアが、レイヴンに恭しく礼をする。
「…ツギ、は…必ず、オ前たちを…殺ス…」
まだ変貌の影響が残っているのか、イヴはぎこちない調子で静かに告げ、エアを睨む。
『…はい、その時までに、しっかりと休んでおいて下さいね、レイヴン』
エアは無機質に笑みを浮かべると、空中に解けていくように、コーラルの粒子となって消えていった。
後には、凄惨な死闘の戦跡が刻まれた交差点に、イヴと便利屋の四人だけが残された。
イヴは、エアが消えた先の虚空をずっと見つめていた。
「──イヴ…」
その様子を見かねたアルが声をかけ、一歩、近付こうとする。
「来る、ナ…」
静かな、それでいて迫力のある一言が、アルの足を止める。
そして、イヴは便利屋へと振り向く。
その姿は変わらず、“暗い真紅の火”を纏い、歪んだ黒い火の片翼が形成された、異形と呼べる姿だった。
左の目元を覆う黒い火の中に浮かび上がる鋭い真紅の眼に睨まれ、アルは息を呑む。
「私、ハ…バケモノだ…。
その言葉は、イヴ自身が自分の姿を自覚していることの表れだろう。
自らの異形を自覚し、そして、その危うい力を理解しているからこその拒絶。
「──ふざけないで!!」
だが──否、だからこそ、アルは今のイヴを到底、放っておくことなどできなかった。
「確かに今のイヴは怖いわよ!えぇ、怖いわ!怖いけどっ!!」
思いの丈をありったけぶつけるように、アルは言葉を吐き出す。
「最初に初めて会った時から怖かったわよ!だから今更、もっと怖くなったところで誤差よ!誤差!」
正直、痩せ我慢をしているところもあるが、その言葉はアルの本心に違いは無かった。
「わぁーお♪アルちゃんむちゃくちゃ言ってる〜♪クフフ〜」
ムツキの冷やかしが入り、アルは反射的に睨み付けるが、ムツキはどこ吹く風と言うように受け流す。
そんなムツキはさておき、アルはイヴに向き直る。
「…アル…私、は…冗談を…言って、るんじゃ──」
そんなアルをイヴは暗い真紅の火によって包まれた左眼といつも通りの右眼で睨む。
左眼は異形感から恐怖を覚えるが、右眼は真剣そのものだ。
アルや他の便利屋の仲間の身を案じる気持ちの表れだ。
イヴの心は、まだ確かに其処にある。
だからこそ、アルもまた、負けじと吠える。
「私だって冗談でなんか言ってないわよっ!!」
まだ戻って来れるかもしれない友人を放っておくことなど出来ないから。
「私は、本気の本気よ、イヴ。今の貴女も確かに怖いわ──でも、そんなことより、私は恩人…いいえ、友人が居なくなることの方がもっと嫌よ」
アルは真っ直ぐ、イヴの顔を見つめる。
その真っ直ぐな視線を受け止め切れず、居た堪れなくなってか、イヴはそんなアルの視線から逃げるように目を伏せる。
イヴが纏う火が徐々に萎んでいく。
「だからイヴ、一人で背負い込んで私たちを拒絶しないで。独りで何処かに消えようとしないで。困ったら助け合う。それが友達でしょう?」
一歩、また一歩、とアルはゆっくりとイヴに歩み寄っていく。
それに比例するように、イヴの暗い火もまた、勢いを失っていく。
「…私は、全てを燃やシ…尽くすかもしれ、ナイんだぞ…?コノ、姿で…我を忘レテ、敵味方の、区別なく…見境無しに」
それは、警告のようでいて、イヴ自身が恐れていることのように、アルは感じた。
イヴは恐れているのだろう。
イヴ自身の力が、知らず知らずのうちに、誰かに向かう事を。
そうして、誰かの命を脅かすことを。
「その時は私たちが消火しながら引っ叩いてでも呼び戻してやるわ。貴女に、誰かを必要以上に傷付けさせやしない。そうでしょ?」
アルは便利屋の仲間たちへと問いかける。
「もっちろーん♪クフフ〜」
「は、はい!イヴさんが燃やす前に、私がイヴさんを爆破します!」
「ハルカ、それはちょっと違うと思う…でも、うん、私もアルと同意見。イヴ、誰かを傷付けることが怖いって言うのなら、それこそ一人で抱え込んじゃダメだよ。頼らなきゃ」
アルに加え、ムツキ、ハルカ、カヨコの言葉を受けたイヴは、それまで堪えていた想いが堰を切って溢れたように言葉を吐き出す。
「…良いの?こんな私が、一緒に居ても…?」
イヴは今にも泣き出しそうな表情で、恐る恐る訊ねた。
纏わり付く火は、すっかり収まっていた。
「バカね。最初からそう言ってるでしょ?」
アルは不敵な笑みを浮かべ、イヴの問いに応える。
「…そう、か…」
静かに、満足げに告げたイヴは、目を閉じ、ヘイローが消えると前のめりに倒れた。
それと同時に、黒く変色していた髪の毛から黒が剥がれ、イヴの姿は元通りに戻っていた。
『ちょっと、イヴ!?』
薄れ行く意識の中、イヴは柔らかく温かいものに受け止められた感覚と共に、アルの狼狽えた声を聞いた。
そして、イヴの意識は深く、だが、優しい暗闇の中へと、沈んでいった。
「ど、どどど、どうしましょう!?」
倒れる前にイヴを抱き止めたアルは、白目を剥きながら慌てふためいていた。
そんなアルをムツキはからかい、ハルカは戸惑い、カヨコは宥める。
「落ち着いて、アル。取り敢えずここは、
その腕の中で眠るイヴは、とても穏やかな微笑みを浮かべていた。
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「……行ったか。そして、次は君が来るんだね、イヴ」
その声と共に、私の意識は暗闇の中から浮上した。
目の前には、セイアがいた。
「どうやら君は抜け出せたようだね。身を焦がす“闇の炎”から。だが、君は逃れることが出来たとしても、大勢は変わらない…筈だ。悲哀と苦痛に満ちたエンディング。それがこの物語の結末…」
以前にも増して、卑屈な雰囲気が増したセイアに、私は何の気なく挨拶をする。
「…久しぶり、で良いのかな。セイア」
それと同時に私は、夢の世界で目覚めたことを認識する。
夢の中で目覚める、というのは、何とも奇妙な言い回しだが、とにかく私は再び、セイアとの夢の茶会の場に立ち会っている。
「…あぁ、それは間違いないよ。不思議なことに、君との夢の内容は、私も全て覚えている。無数に漫然と散らばった夢の意識の中でも、君との邂逅は全て、私の記憶と直結している」
相変わらず難しい言い回しを使うと呆れつつも、私はそれに懐かしさを感じる。
「…ちょうど良い。君にも訊ねたい事がある」
改まってセイアは私へと向き直る。
「君は前に言っていたね。七つの古則に関する問い、楽園のパラドックスについて──」
『…そう言えば、君には問いを投げかけたままだったね。どうだい?答えは出せたかい?『楽園に辿り着きし者の真実を証明することはできるのか』──“夢物語のような楽園エデンは実現し得るのか”』
『…そうだね。答えと言っていいか分からないけど、私は──』
「君はこう言った。『真実を証明することは出来ない。だから私だったら、そうあって欲しいと“祈る”』、と」
確かに、そんなことを言ったような覚えがある。
それが、私がそれまでに考え、導き出した、古則に対する“答え”だった。
「…そうだったね」
結局のところ、真実も楽園も、目に見えないものは知りようが無い。
ましてや、証明なんていう、第三者視点での答えなど、出しようがない。
「今でもそれは?」
だから私は、
「…変わらないよ。私には変わらず、“祈り”がある」
むしろ、その想いはより強く、堅固になった。
きっと、真実という“答え”に辿り着くことは、私たちには不可能なのかもしれない。
「…何故だ?何故、
「…そう、だね。でも、だからと言って、私たちは立ち止まることは出来ない」
世界は目まぐるしく変わっていく。
様々な者たちの思惑が渦を巻き、世界を変えていく。
迷っていては、それに飲まれ、敗れるか、死ぬか。
「……」
だからこそ、私たちに立ち止まることは許されない。
退き下がり、迷っている猶予は存在しない。
何かが変わるのを待つのではない。
変える為に、私たちは“選び”、“選択”し、そして抗っていく。
「“祈り”を胸に、
自分の望む“真実”を胸に、“祈り”を捧げ、“答え”を求める。
“祈り”は“答え”の為に。
何より、
「…そうか。
そう呟くセイアは、何かを諦め、そして、恐怖しているように、私には見えた。
その姿がどこか、先程までの私と重なるようで──。
同時に浮かび上がったのは、そんな私を救い出してくれた便利屋の四人の姿だった。
「…
セイアは以前、夢を通じて未来を見ることが出来ると言っていた。
いや、ハナコから聞いたアズサの話だっただろうか。
「…え?」
何はともあれ、セイアは未来を見ることが出来る。
夢を通じて、何の抵抗も出来ず、一方的に。
それはきっと、内容によっては、恐ろしい悪夢のように映る事だろう。
「セイアが何を見たのかは知らない。きっと、恐ろしい絶望的なものを見たのかもしれない。けれどね、絶望の闇の中にこそ、それに抗う“火”は明るく見えるものだよ。悪夢の暗闇に灯る、篝火のようにね」
レイヴン、闇堕ち脱却!
やはり便利屋…特にアルちゃんの光パワーは凄まじいですね
原作には登場しなかったので、上手く割り込ませることが出来ました
ここからはいよいよ、反撃のターンです
それでは次のお話でお会いしましょう