本編の伏線かもしれないし、そうじゃないかもしれない
某夜の雨が面白くて止まりませんでした
強化ボスまでしれっと追加されるし…
ようやく落ち着きましたのでボチボチ更新していきます
…などと書いている間も夜の雨のことが頭から離れない…恐ろしいゲームだ…
短編:予想外の遭遇?
その日、私はいつものようにシャーレに届いた荒事の依頼に臨んでいた。
何という事はない、不良生徒の掃討だ。
エデン条約にまつわるひと通りの事件の後始末も収束し、それに関連する依頼もすっかり鳴りを潜めた。
シスターフッドのサクラコからの地下遺跡探索については、ボチボチ依頼が届くが、私にとってはすっかり、仕事の合間の息抜き、という感じになっている。
そうしたトリニティ関係の依頼も無く、私に関しては、従来の日常的な生活に戻りつつある。
トリニティ自体、その内部は未だゴタついているだろうが…それについては部外者の私が首を突っ込む余地は無い。
先生に対しては、何か話が行くかもしれないが。
その日もまた、先生とは別行動をとり、依頼の目的地──掃討対象の不良生徒の拠点に向かって移動している最中だった。
ふと、私の携帯端末が振動する。
その端末の振動は着信であり、相手は先生だった。
『[“あ!もしもし、イヴ?”]』
その声からはひとまず、差し迫った状況ではなさそうなことを感じ取る。
「何か緊急の案件?」
その日の私の予定については、先生も把握しているはずであり、普段から仕事の最中は、余程のことが無い限り、連絡を控えるようにしてくれている。
そんな先生が私に連絡して来るのは、非常に珍しいことだった。
『[“緊急…緊急と言えば、確かにそうかも…”]』
何やら歯切れが悪い様子に、私は内心で訝しむ。
だが、一先ずは先生の言葉を最後まで聞くことにした。
『[“…もしかしたらだけど、イヴに頼ることになるかもしれない案件に直面してて…取り敢えず、こっちで出来る限りのことはやってみるつもりだけど、一応、連絡を入れておきたかったんだ”]』
私を頼る案件など、荒事に他ならない。
その日、先生は連邦生徒会に呼び出しを受けていた。
先生は『書類関係でリンちゃんからお叱りかもなぁ』なんて言っていたが、それとはまた別の案件のようだ。
「そうか。分かった。私も出来る限り、早めに仕事を終わらせて、いつでも要請に応えられるようにしておこう」
先生がどんな窮地に直面しているのかは気になるが、今はまず、現状の対処からだ。
話し込んでいる暇はない。
『[“うん。イヴに言えた事じゃないけど、無理はしないでね”]』
そう言うと、先生からの通話は切れた。
その後、私は無理をしない程度に、対象の不良生徒の拠点を叩き潰し、先生からの救援要請を待った。
だが、その後、届いたのは、先生と限られた生徒だけで、窮地を退けられたという事後報告だった。
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[“ごめんね、イヴ。あんなことを言っておいて、結局こっちだけで片付けちゃって…”]
その日の夕方、報告の為にシャーレの事務所を訪れた私に、先生は開口一番に謝罪を述べた。
「いや、何事もなく、杞憂で済んだのなら、それは良いことだよ。早く済んだおかげで、私も“息抜き”ができたからね」
[“『息抜き』…ああ、トリニティの遺跡調査だね。すっかり楽しんでるみたいだね。それはそうと、イヴがそう言ってくれるのなら助かるよ”]
「それにしても、先生の手を煩わせるとは…今日の相手は相当なやり手だったんだね?」
[“そうだね。《SRT特殊学園》の生徒だったから…”]
その学校の話は、私も噂程度に認知していた。
キヴォトスの基本的な治安維持を担う《ヴァルキューレ警察学校》は、連邦生徒会──その中の防衛室の管轄の組織であり、各地の各学園の自治権等の行政的理由から行動や活動を制限されてしまうことが多い。
だからこそ、基本的には、各自治区には、各自治区の治安維持組織が存在している。
トリニティで言えば、《正義実現委員会》、ゲヘナで言えば、《風紀委員会》等だ。
それでも、公正、公平に法を執行する機関として、《連邦生徒会》の管轄下では無い、《ヴァルキューレ》では対応できない案件に対処する為の
言わば、“特殊部隊”としての運用を目的にした学校であり、元々は《連邦生徒会長》直属の組織として、その権限の下に運営されていた。
だが、《連邦生徒会長》が失踪し、その権限の下で運営されていた《SRT特殊学園》は、その責任の所在を巡って必要の有無を疑問視され、協議の末に閉鎖された。
そのSRTの生徒の一部が連邦生徒会を襲撃したという事件についても聞いている。
一般生徒や住人からしてみれば、責任者の存在しない“武力”などは単なる
連邦生徒会襲撃事件は、それが露わとなった事件とも言えるだろう。
聞けば、先生が直面した事件は、元SRTの生徒による公園の占拠及び籠城だったという。
幸い、四人という小規模だった為に、その場に居合わせたヴァルキューレ生徒を先生が上手く指揮することで、その四人の鎮圧に成功したという。
[“イヴがあの場に来てたら、オーバーキルだったかもね”]
「失礼だな。手加減くらいするよ」
そんな軽口を叩き合い、その日は解散となった。
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それから数日後のある日。
その日、依頼を終わらせた私は、報告の為にシャーレを訪れた。
だが、その日は先生はシャーレのオフィスには居なかった。
特に珍しい事でもない。
普段から多忙を極める先生は、むしろシャーレにいることの方が珍しいくらいだ。
その日もまた、私はいつもの事だと流し、自身の用事だけ済ませ、帰る──。
いつものように、そうするつもりだった。
報告書を提出し終えた私は、オフィスの扉に向かう最中、ふと監視カメラの映像が表示されたモニターに目が行く。
そのモニターに映し出されていたのは、シャーレの玄関。
そこには生徒が一人、シャーレの中に入っていく姿があった。
きっと、先生に用事があってシャーレに訪れた生徒だろう、と納得し、同時に今、先生は不在であることをその生徒に伝えようと、私はシャーレの玄関に続く廊下を目指す。
その生徒とは、オフィスに面した廊下の途中で出くわした。
先ずは、これまで私が出会った事のない生徒である事を認識する。
そして、その身に纏う制服も、私が知る学校のいずれにも当てはまらない。
最初に抱いた印象は、まるで何処かの組織の“特殊部隊”のようだ、というものだ。
制服の上から、弾薬ケース付きの防弾ベストを着込み、腰にはポーチ、両脚の膝の周辺を覆うようにプロテクターを取り付けている。
頭部には、まるで兎の耳を彷彿とさせるような、ヘッドセットを取り付けていた。
その生徒が私に気付き、顔を上げる。
「こんばんは。先生に用事ですか?」
「…そうですが…貴女はどちら様でしょうか?」
生徒は僅かに警戒心を滲ませつつ、私に訊ねる。
「失礼しました。私は、シャーレ直属特務戦闘員、レイヴン。以後、お見知り置きを」
「レイヴン…!貴女が…!」
生徒は僅かに驚愕した様子で目を見開く。
相手にはどうやら心当たりがあるようだった。
先生に用があるのなら、私のことを知っているのは当然だろう。
生徒は私に視線を向け、僅かな思案顔の後に、口を開いた。
「…こちらこそ失礼しました。私は…“SRT特殊学園”、一年、《RABBIT小隊》所属、《月雪ミヤコ》と申します」
そう告げると、“生徒”改め、《月雪ミヤコ》は小さく頭を下げた。
制服に見覚えがないのも納得だ。
閉鎖されたはずのSRT特殊学園の生徒…。
先日、先生が手こずりながらも鎮圧したという、占拠及び籠城という形で公園でデモを行なっていた生徒の内の一人だろう。
だが、目の前の生徒は、少なくとも今は、そんなことをするような人物には見えない。
だが、人は見かけにはよらない。
このキヴォトスでは、尚の事。
「ミヤコさん、ですね。私のことは渡鳥イヴとお呼び下さい。レイヴンは仕事の中の肩書きのようなものですので」
相手が名乗ってくれたのだから、こちらも名乗らなければ不作法だろう。
幸い、ミヤコは拒否する事なく、受け入れてくれた。
「…そうですか。分かりました、イヴさん。それはそうと、先程の質問への返答が遅れましたが…近くに寄ったので顔を出しに伺っただけですので、どうかお気になさらず。ですが、お気遣い、ありがとうございます」
それは、先程の私の『先生に用事があるのか?』という問いかけへの答えだった。
ミヤコの言葉は、ややかしこまった硬さは感じるが、敵意のような棘は感じられない。
少なくとも、警戒心は多少は和らげられたようだ。
「そうでしたか。先生に伝えましょうか?ミヤコさんが顔を出しに来てくれた、と」
「あ、いえ、それには及びません。私の方でモモトークで一言伝えておきますので」
「そうですか。分かりました。では──」
「イヴさん、一つだけ…質問に答えて頂いてもよろしいでしょうか?」
このまま解散という流れになると思いきや、その前にミヤコが静かに、だが真剣に、質問を投げかけて来た。
「…私に答えられることなら」
「ありがとうございます。では──先生とはどういったご関係でしょうか?」
「・・・・……?」
真剣そのもののミヤコには申し訳ないが、私はその質問の意図を図りかねていた。
「…どう、と言われましても…先程、申し上げた通り、シャーレ直属の…」
「はい、仕事上の立場に関しては存じております。私が聞いているのは…そ、その…ぷ、プライベート上での関係と言いますか…」
ミヤコは私から目を逸らし、少し気まずい様子。
私の疑問は解消せず、むしろ困惑が加速するばかり。
プライベートと言われても…。
私は基本的にプライベートで先生に声をかけることは殆んどと言って良いほど無い。
先生は普段から忙しく、激務に追われている。
その邪魔をしないように、と思って、私は自分から先生にプライベートで連絡を入れることは極めて稀だ。
偶に限界を迎えた先生に深夜ラーメンに誘われることもあったりするが、二人きりという事はなく、夜間巡回中のホシノが乱入して来たり、ゲームで徹夜するゲーム開発部が雪崩れ込んだりしてくる。
他の生徒の場合もある。
その為、プライベート上での私と先生の関係は非常に希薄と言って良いだろう。
それは良いとして、私の疑問と困惑は、こんなことを聞いて、ミヤコにとって何になるのか、という事だ。
とは言え、特に聞かれて困るようなことでも無いし、包み隠さず、普通に答えるが。
「…あなた達とそう変わりませんよ。私もまた、生徒と変わらない立場です。プライベートでも、先生は先生ですから」
先生はいつ、如何なる時であっても変わらない。
相手が生徒である限り、先生はいつも先生なのだ。
私の答えに、ミヤコはキョトンとした表情のまま、固まっていた。
「…ご満足いただける答えでしたか?」
私が声をかけると、ミヤコは、はたと我に返る。
「あ!…いえ、大丈夫です。答えていただき、ありがとうございました」
そう言うと、ミヤコは感謝を示すように頭を下げた。
「…私たちRABBIT小隊は、子ウサギ公園にいます。何かあれば、連絡して下さい、イヴさん。何もなくとも、歓迎しますが」
「はい。何か、手土産でも持って、伺いますね」
そうして、その日は私とミヤコは別れた。
その後、シャーレのオフィスに併設されたコンビニに足繁く通うRABBIT小隊の面々と度々、顔を合わせるようになるのだった。
この裏でカルバノグ一章は解決しています!ということで!
カルバノグは、少なくとも一章はイヴを絡ませに行くのが難しいので、こういう形と相成りました!
短編に付きましては、もう少しだけ続きますよ〜