ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

ゲマトリア会議
トリカス
ミカ★脱獄
セイア大ピンチ




EP-3 選択と決断

先生の前に姿を現したサオリは、雨の中、膝を突いて頭を下げ、事情を説明した。

 

アリウスの部隊に追われる中、アツコが連れて行かれたこと、他のスクワッドも襲撃によって散り散りになったこと。

そして、連れて行かれたアツコが死んでしまうことを。

 

明朝には、アツコは“生贄”として、“彼女”の手によって殺されてしまう。

 

それがアツコの運命であり、サオリは、その運命を覆す為に、“彼女”の言いなりになり、エデン条約の強奪及びユスティナ聖徒会という武力の獲得によって、トリニティとゲヘナを手中に入れそうとした。

 

それが成功すれば、アツコは運命から解放される。

 

だが、サオリは失敗した。

 

任務を遂行できなかったアリウススクワッドは、もはや用済みであり、アツコは運命という呪縛に囚われたまま。

 

サオリは、何も成し得なかった。

 

“彼女”に命じられた任務も。

 

仲間を助けることも。

 

アツコを守ることすら──。

 

そんな落伍者のサオリは、トリニティやゲヘナはもちろん、アリウスにすら、助けを求めることは出来ない。

 

『だから、頼れるのはもう、シャーレの先生しか……』

 

降りしきる雨の中、そう言ってサオリは先生に頭を下げた。

濡れた地面に両手と両膝を突くのも厭わずに。

 

そこには最早、かつての憎悪を滾らせ、銃口を向けて来た姿は影も形もなかった。

 

サオリは続けて、自身の生命を賭け、どんな指示にも従うと言ってまで懇願する。

 

《ヘイローを破壊する爆弾》──それさえも先生に預け、命を握らせ、信用できなければ、使っても構わないとまで告げる。

 

そうしてまで、サオリはアツコの救助を先生に願った。

 

 

 

『“立って、サオリ”』

 

『“私はサオリと、対等に話がしたい”』

 

 

それが、サオリの話を聞いて、先生が最初に発した言葉だった。

 

立ち上がったサオリに、先生はいくつかの疑問を投げかけた。

 

サオリの言う、“彼女”とは何者なのか。

 

サオリ曰く、アリウス自治区の現代表であり、アリウス分校の主人。

スクワッドは“彼女”と呼んでいるが、他の生徒からは“マダム”とも呼ばれている。

サオリであっても数回しか見たことはなく、名を《ベアトリーチェ》というらしい。

 

背が高く、赤い肌を持ち、白いドレスを纏った大人であり、姫──アツコがよく会っていたという。

 

続けて、先生は質問する。

他のスクワッドは今、どうしているのか。

 

アツコを連れ去られてすぐ、スクワッドは襲撃を受けて散り散りになり、消息不明だとサオリは答えた。

もしかしたら、まだアリウスに追われているかもしれない、とも。

 

三つ目の質問。

連れ去られたアツコが何処にいるのか。

 

アリウス自治区にある、アリウス・バシリカ(聖堂)

その地下にある、ベアトリーチェが用意した特別な“秘密の至聖所(祭壇)”にいる可能性が高いという。

 

四つ目。

どうしてバシリカにアツコを連れ去ったのか。

 

それに関しては、サオリは詳しい内容は分からないとのことだった。

ただ、そこがアツコの為に用意された場所であり、いつか生贄として捧げられるのだとアツコ自身が言っていたという。

 

ベアトリーチェは、夜明けと共に“儀式”を始めるらしく、アツコに残された時間は少ない。

 

おおよその状況を把握した先生は、サオリに結論を告げた。

 

 

 

『“サオリを助ける”』

 

 

 

サオリが困惑する中、先生はサオリから起爆装置と共に《ヘイローを破壊する爆弾》を没収し、起爆装置を破壊してゴミ箱に捨てた。

 

これで、物騒な爆弾が炸裂することはなくなった。

 

全ては、生徒の為。

サオリを助けるのも、生徒の願いを無碍にする訳にはいかないから。

 

戸惑うサオリを引き連れ、先生は他のスクワッド──ミサキとヒヨリと合流する為に、移動する。

 

 

 

その道中。

 

[“そうだ!折角なら、イヴ──レイヴンにも救援要請を出すのはどうかな?あの子なら、きっと助けになってくれると思うんだけど……”]

 

「…私は構わないが…レイヴンの方がどう思うか……」

 

[“大丈夫!きっと二人とも仲良く出来るよ!”]

 

「そういうことじゃないんだが……そういうことなら、私の方から要請を出させて欲しい。元は私の願いだ。私の言葉を伝えたい」

 

[“…分かった。それじゃあ、よろしくね、サオリ”]

 

「ああ…」

 

 

 

その後、先に合流できたのはヒヨリの方だった。

 

アリウス生徒の襲撃を受けてはいたものの、間一髪、サオリの援護が間に合い、救助することができた。

 

幸い、ヒヨリは目立った負傷は見られず、会話からも思いの外、元気な様子が窺えた。

 

ヒヨリは、サオリの居場所を教えればアリウス自治区に戻れるように便宜を図る、とベアトリーチェに言われたらしいが、既に断っているという。

 

ヒヨリからしてみれば、ベアトリーチェを信用できるかも不明であり、一人でアリウスに戻ったところで、アツコも救われず、一人生き残っても意味がない。

 

それならば、少しでもアツコを助けられる可能性に賭けた方が良いと思ったようだ。

 

ヒヨリも仲間に加わり、残すはミサキだけ。

 

三人はミサキと合流する為に、サオリが目星を付けている場所を目指し、移動した。

 

 

 

その道中。

 

「えぇっ!?レイヴン、さんに救援要請を出したんですか!?」

 

「ああ、先生の提案だ。私も最初は戸惑ったが…時間が限られる今は、戦力は多いに越したことはない」

 

「確かに、あの人はすごい頼りになりそうですけど……」

 

[“…なんだか、すごい怖がられてるね……”]

 

「あぁっ!?すいません!レイヴンさんが頼もしいのは本当なんですけど、その…先入観と言いますか……」

 

「…私たちスクワッドは、作戦において、レイヴンとの接触を極力、避けるように言われていたんだ」

 

[“それは…例の『彼女』に?”]

 

「い、いえ、別の人です…ルナシーって人なんですけど…レイヴンの専門家らしいです……」

 

[“…なるほどね……”]

 

「あれ、ルナシーさんのこと、ご存じなんですか?」

 

[“前に、話をしたことがあるんだ。一回だけだけどね”]

 

「そうだったんですね……」

 

「私たちと出会う前から因縁があるんだな」

 

[“因縁があるのは、私じゃなくてイヴ──レイヴンなんだけどね”]

 

「それは何というか、大変そうですね……」

 

 

 

そうして三人が到着したのは、長きに渡って放置された大橋だった。

 

眩暈がするような高さに息を呑む中、橋梁の欄干にもたれかかるように立っているミサキの姿が目に入る。

 

ミサキはアリウス生徒の襲撃には遭っていなかった。

 

目立った傷もなく、その無事に安堵するが、サオリとヒヨリが先生と共に行動している姿を見て、淡々と自身の思いを語る。

 

ミサキを含め、スクワッドには先生を始末すればアリウスに帰ることが出来るのだと。

そんな相手を前に、先生は信用できるのか、と問う。

 

それについては、先生に対しては愚問だった。

 

サオリがその気であれば、すでに先生は無事じゃ済まないし、何より、生徒を信じることこそが先生の信念なのだから。

 

一瞬は納得した様子を見せたミサキだったが、その心は既に諦観に飲み込まれていた。

 

アツコを救うことは無理である、と結論付けていた。

 

更に、仮に、アツコを救った未来があったとしても、その先には苦痛に満ちた人生があるだけだと。

 

ミサキは最早、生きることに意味を見出せないでいた。

 

『“全ては虚しいものである(vanitas vanitatum)” ただそれだけが、私たちが納得できる真実──そうじゃない?リーダー』

 

そう問いかけ、ミサキはもたれかかる欄干に体重を預けるように身を乗り出す。

 

自ら、命を断とうとする。

 

しかし、サオリはミサキの脅しを一蹴した。

 

例え、ミサキが自死を試みて橋から落ちようとも、それを追いかけて救助し、必ず生かしてみせる、と。

 

そのサオリの執念を前に、ミサキは折れて納得し、仲間として合流するのだった。

 

ミサキの自殺を防ぎ、仲間として合流できた安堵も束の間、ミサキはタイムリミットを示し、サオリたちを急かす。

 

タイムリミットは0時までの90分──一時間半。

 

そこまでに、何処かに向かわなければならないようで、先生は疑問は後回しにしてスクワッドの三人に着いて行く。

詳しい事情は、道中で説明して貰えばいい。

 

とにかく今は、少しでも時間が惜しい。

 

 

 

「えぇ…?レイヴンに救援要請を出したの…?」

 

「まぁ、最初はそう思いますよね……」

 

「そう苦い顔をするな。確かに以前は敵対したが、今回は味方として、私たちの力になってくれる…はずだ……」

 

「その微妙な間で不安になるんだけど…?本当に大丈夫なんだよね、リーダー。私、後ろから撃たれるとか、勘弁して欲しいんだけど」

 

「やっぱり不安ですよね…怖いですよね……うわぁぁぁあん!なんだか私も怖くなって来ましたぁ!私たちみたいな裏切り者のお尋ね者なんて、助けてくれるはずがないんですぅ!」

 

「ヒヨリ!?だ、大丈夫だ!現に先生は私たちに協力してくれているだろう!?」

 

「先生は例外だと思うけどね…レイヴンも同じとは限らないでしょ」

 

[“大丈夫だよ、みんな。イヴ──レイヴンは、これまでも以前、戦った生徒であっても、助けを求めれば助けてくれたし、仲良くなったりもしてるから。だから、みんなも大丈夫だよ”]

 

「そ、そうなんですか?それなら…ちょっとだけ安心です……」

 

「…私たちも当て嵌まるかは分からないけどね」

 

「うわぁぁぁぁああん!もうおしまいです!」

 

「ミサキ!!」

 

「…私が悪いの?これ」

 

 

 

ふと、先生はスクワッドの背中を追いながら、違和感を覚える。

 

ヒヨリとの合流前にサオリに出してもらったレイヴンへの救援要請の返事がまだ届いていない。

 

ミサキとの合流までに、それなりに時間は経っているのだが、これほどまでに返答が遅れているのは、今まで無かったように思う。

 

こちらからの要請はイヴの元に届いてはいるはずだ。

それならば、既に了承の返事が届いていてもおかしくはない。

 

アビドス対策委員会の時も、ミレニアムのゲーム開発部の時も、トリニティの補習授業部の時も……きっと、ゲヘナの風紀委員会の時も。

ここまでイヴからの返事が遅れたことはなかったはずだ。

 

言い知れぬ胸騒ぎに苛まれながらも、先生はスクワッドの三人と目的地を目指す。

 

 

 

ほんの一瞬だけ、脳裏を過った“可能性”を振り払うように──。

 

 

****************************

 

目的地までの道中、先生は先程の『90分のタイムリミット』について三人に訊ねた。

 

曰く、アリウス自治区に向かうには、トリニティのカタコンベを通過する必要があり、その入口は()()()()()()()()()()()3()0()0()()()もあり、限られる()()()()()以外のものは全て偽物だという。

 

入口を間違えれば、カタコンベで迷い続ける羽目になる、という話を聞いた先生は、イヴが片手間に受けていた《遺跡調査》の依頼がイヴ以外には遂行が困難であることの理由を理解した。

 

イヴは、戦闘力だけでなく、探査能力も優れている。

その探査能力があったからこそ、イヴには《遺跡調査》が可能だったのだろう。

 

スクワッドを含めたアリウス生徒は、正しい入口と、アリウス自治区に通じるカタコンベの内部ルートを暗号で伝えている。

 

それは、カタコンベの内部が、どういう仕組みか、一定の周期で変化するからだという。

以前に通った道が行き止まりになっていたり、方向を見失ったり……。

 

カタコンベは、全容が明らかになっていない迷宮であり、足を踏み入れる度にルートと入口が変わってしまう。

 

今のスクワッドの三人には、暗号が通知されていない為、どこが正しい入口か分からない。

スクワッドは、任務に失敗し、また自治区に戻ることを拒んだ。

 

逃げ出した猟犬に、帰り道を教える必要はない。

 

だが、それでも一つだけ、まだ使える入口が残っている。

しかし、それも今日の日付変更線までしか使えず、それを逃せばアリウスには戻れず、アツコを救うことも出来ない。

 

だからこそ、スクワッドは急ぎ、その唯一のカタコンベへの入口へと向かっていく。

 

しかし、それを嗅ぎ付けた──否、先読みしていたアリウスの生徒たちが、スクワッドの進路を阻む。

 

だが、今のスクワッドには先生が付いている。

先生は惜しみなくスクワッドを指揮し、立ち塞がるアリウス生徒たちを蹴散らしていく。

 

そうして先生とスクワッドは、地下道へと辿り着く。

 

そこが、カタコンベへと繋がっているという。

 

だが、その先には当然、ベアトリーチェの指示で待ち伏せしているアリウス生徒がいる事が容易に予測できた。

 

とは言え、迂回路はなく、他の通路を探している時間などある訳もない。

今のスクワッドには、強行突破以外に残された道はない。

 

「この先には訓練されたエリート兵が待ち受けているはずだ。

我々が戦闘に立つ。先生は安全が確保されたら、後ろからついて来い。

厳しい戦いになるが、ここを突破すればアリウス自治区に入れる」

 

「──行くぞ」

 

サオリを先頭に、ミサキとヒヨリが続き、地下道の奥へと進んでいく。

 

想定通り、地下道の奥、カタコンベの入口の前には、アリウス生徒の部隊がサオリ達スクワッドを待ち受けていた。

 

数はアリウス部隊の方が当然多い。

それでも、スクワッドは遠隔での先生の指揮によって、その数の不利を覆して押し返す。

 

待ち受けていた部隊はスクワッドから見ても、アリウス生徒の中では精鋭と呼べる者たちであり、生徒の指揮が無ければ、危うかっただろう。

 

しかし、スクワッドの従来の連携と、それを活かす先生の的確な指揮によって、アリウス部隊は次々と倒れ、その数を減らして行く。

 

残るは、後方で指揮を取っていたリーダーと思しきアリウス生徒のみ。

 

 

 

 

──そう思ったのも束の間。

 

サオリ達が進んでいたカタコンベへと通じる地下道に合流するように横から伸びていた通路の暗がりの奥から、新たな第三者が飛び出した。

 

その闖入者は、手にしたサブマシンガンの銃撃によって、残っていたリーダーのアリウス生徒を一瞬にして吹き飛ばし、沈めた。

 

「……!!」

 

「……」

 

ヒヨリは驚愕し、ミサキは警戒を強める。

 

それは、この場に第三者が乱入した、という単純な事実から来るものだけではなく、その乱入した人物に問題があったからだった。

 

その人物──生徒は、手にしたサブマシンガンを下ろし、サオリ達へと向き直る。

 

煌めく桃色の長髪を揺らしながら──。

 

「ふふっ、やっぱりここに来ると思ってたよ。大当たり!」

 

無邪気な満面の笑顔を向ける少女に、サオリは苦しげに声を絞り出した。

 

「聖園、ミカ……」

 

どうしてこの場所にいるのか、何故、サオリ達の前に現れたのか。

 

答えが気になる疑問はあるが、それ以上にサオリにとって、この場で最も出会いたくなかった人物の一人だった。

 

「悪役登場☆ってところかな!…まだ覚えててくれたんだね」

 

ミカは笑顔のまま、サオリへと話し続ける。

 

サオリは理解していた。

 

ミカは笑顔ではあるが、簡単に道を譲ってくれそうにないことに。

 

「会えて嬉しい…って様子じゃなさそうだけど、どうしたの?

 

──そんな、魔女でも見た、みたいな顔しちゃって」

 

満面の笑顔から一変、ミカは歪んだ獰猛な笑みをサオリへと向けた。

 

サオリは確信した。

 

それがミカからの敵意であることを。

 

「…檻の中にいると聞いたが」

 

「出てきちゃった☆

…早く、あなたに会いたくってさ。

だってほら…私たち、まだお話しなきゃいけない事があるんじゃないかなって」

 

「……先生は?」

 

サオリはミカの姿を視界に捉えたまま、小声で二人に声をかける。

 

「う、後ろから来ています…多分、すぐに到着するかと」

 

サオリと同じように、ヒヨリも最小限の声で返事をする。

 

「私もこれまで、それなりにあなた達と一緒に行動してたからさ。ここに来るってすぐ分かったよ」

 

そんな二人のやり取りを知ってか知らずか、ミカは変わらず一人で話し続ける。

 

「…通路が閉じるまでは?」

 

こうしている間にも、二重のタイムリミットは迫りつつある。

ミカの立ち話に付き合っている暇は無い。

 

「残り約28分…まさか戦うつもり?今、あの女と交戦するのは無謀だと思うけど」

 

とは言え、ミサキの言う通り、ミカは容易く押し除けられるような脅威では無い。

 

「む、無謀ですかね…?」

 

「……」

 

サオリは思考を巡らせる。

この状況を打開し得る作戦を編み出すために。

 

「ただでさえ、姫と一緒にアリウスから逃げ続けた私達の体力は底を尽いてる。指揮がなければ、まともに戦える状態じゃない。

さっきまでは、先生の指揮があったからなんとか戦えてたけど…。

聖園ミカ…彼女はティーパーティーとしては異様なほど、それこそ群を抜く武力を持っている。おまけに、乱戦のこの状況は彼女にとって最も有利な戦場だよ」

 

ミカが強者であることはサオリも理解している。

万全なミカに対し、こちらは満身創痍であり、その上、地の利も向こうにある。

絶望的な窮地と言って差し支えない状況の中に置かれている。

 

それでも、先生と共に、ヒヨリとミサキと共に、アツコを救うと決めた。

諦めるなどという選択肢はあり得ない。

 

「あはは☆愚鈍な女だと侮っていたのかな?そうだよね。でも、あなた達の暗号くらいは分かるんだから。

集合場所とか、拠点とかもまだ覚えてる。こう見えても、クーデターを起こした張本人だからね!

あはは。多分、バカだと思われてたみたいだけど…利用しやすかったかな?まあそれは否定しないよ」

 

相変わらず、ミカは一方的に話し続けている。

ミカの声を聞き流しながら、作戦を練り続ける。

 

「後退して、出直すのは?」

 

「無理だ。時間がない。じきに通路が閉じる」

 

アリウス自治区に通じるカタコンベの入口が変わるまでのタイムリミットは既に30分を切っている。

出直していられるような余裕はない。

 

「先生が到着するまで時間を稼ぐのは?ていうか、レイヴンはいつ合流するの?」

 

レイヴンについては、サオリ自身も気になっていたところだった。

姿を現さない以前に、要請への返事すら返ってきた様子がないのだから。

先生の言葉を信じていない訳ではないが、それならば何故──。

 

「それは……」

 

「──ねぇねぇ、私の話聞いてる?無視?無視ってひどくない?これでも一緒にクーデター起こした仲なのにさぁ」

 

今気付いたのか、それとも既に気付いていて、それでも話し続けていたのか分からないが、ついに痺れを切らしたミカが返事を求めてスクワッドに声をかける。

 

スクワッドの三人は、緊張した面持ちでミカへと視線を向ける。

 

「それって…仲間外れじゃないの?」

 

その先で、ミカは不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ねぇ、あなたもそう思わない?」

 

コツ、コツ…と、足音が地下道に響き渡る。

 

その音は、ミカが現れた、カタコンベに通じる通路に合流する横道の奥の暗がりから届いていた。

 

自然と、三人の視線はその暗がりへと向かい、その暗がりの中に人影を見る。

 

朧げな輪郭が浮かんだだけの人影は徐々に明瞭になって行き、その姿を三人の前に晒す。

 

そこに現れた人物に、ミカは声をかける。

 

 

 

「──レイヴン」

 

そこに立っていたのは、紛れもなく、黒の制服に身を包み、尖った犬耳と赤みがかった長い白髪を靡かせる少女──レイヴンもとい、イヴに他ならなかった。




スクワッドの前に現れたミカ
そこにレイヴンも現れるが……?

スクワッドと先生はアリウスに辿り着くことはできるのか

また次の更新までゆるりとお待ち下さい……
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