ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ
アリウス自治区に辿り着いた先生とスクワッド
しかし、幸先悪く、サオリが熱で倒れてしまう
倒れたサオリをそのままにする訳にもいかず、またコンディションを整える為に、先生と残るスクワッドのミサキとヒヨリは小休止を挟むことに
身体を休める為に目を閉じた先生は、夢の中でセイアの言葉を聞く
セイアの窮地とミカの懸念、ベアトリーチェの思惑と先生に迫る危機
一方で、スクワッドを追うミカとレイヴンもまた、アリウス自治区に辿り着き、バシリカを目指す


EP-6 邂逅

アリウス自治区に到着した先生とスクワッド。

 

熱を出して倒れたサオリを休ませるついでに、小休止を挟むことにした先生とスクワッドのミサキとヒヨリ。

 

小休止の後、先生はミサキとヒヨリからアリウスにまつわる様々なことを知る。

ミサキやヒヨリの身の上の内容から発展し、アツコのこと、アツコを取り巻く環境のこと、ベアトリーチェのことなどなど。

途中から回復したサオリも加わり、詳しい話を聞いた。

 

アリウスの内戦の終わりと共に現れた、アリウスの新たな支配者──それが、“マダム”ことベアトリーチェ。

ベアトリーチェはアリウスの生徒たちを支配し、歪んだ真実を教え込み続けた。

 

その最たるものこそ──。

 

全ては虚しい。(Vanitas vanitatum)何処まで行こうとも、虚しいものだ。(et omnia vanitas.)

 

アツコが、“姫”と呼ばれ、ベアトリーチェの儀式の生贄として利用される理由も判明した。

 

アツコは、《ロイヤルブラッド》というかつてのアリウス生徒会長の血を受け継いだ《血族》なのだという。

それでも、誰にでも分け隔てなく優しく接していたアツコは、サオリだけでなく、ミサキやヒヨリにとっても、大切な存在なのだと。

 

アツコが儀式の生贄とされるのは、今回に限った話ではなく、ベアトリーチェはずっとアツコを生贄にしようとしていた。

 

それをどうにか食い止めていたのが、サオリだった。

アツコの運命を変える為に、サオリはベアトリーチェの忠実な走狗となり、アツコと、仲間であるミサキやヒヨリを助けようとしていた。

 

そうして、ヒヨリが思い出して震え上がるほどの厳しい鍛錬の末に、アリウススクワッドという、ベアトリーチェに都合の良い“猟犬”が出来上がった。

アツコのマスクも、姫──ロイヤルブラッドではなく、一人の生徒として、周囲に紛れ込む為。

 

スクワッドは様々な任務を遂行したが──結局、最も重要な任務を失敗し、アツコは再び、儀式の生贄として捕えられてしまった。

 

 

 

 

熱が下がり、回復したサオリが合流し、のちの方針を決める。

 

目的地がバシリカである事は変わらない。

 

問題は、その経路。

正面から向かったのでは、いくら先生の指揮があるとは言え、不利そのものだ。

ベアトリーチェが何の策も用意していないとは限らない、という事もある。

 

ベアトリーチェの包囲網を掻い潜る必要がある。

 

そこでサオリが導き出したのが、長らく放置されていたというアリウス分校旧校舎。

 

そこには、かつてアリウスの脱出と再建を主導した聖徒会がアリウス分校を建設する時、バシリカと分校をつなぐ為に作った地下回廊があるという。

 

そこであれば、長らく放置されていたが故に、ベアトリーチェが見落としている可能性があり、遠回りではあるが、安全にバシリカに到着出来ると考えてのことだとサオリは説明する。

 

回廊の具体的な場所までは判明していないが、とりあえずは行ってみよう、という方針に決定し、先生とスクワッドはアリウス分校旧校舎を新たな目的地として向かう。

 

 

 

 

──その最中、先生とスクワッドは、ベアトリーチェの足止めを食らった。

 

サオリの策を読まれ、先回りされて包囲されてしまった。

 

先生とスクワッドを取り囲んだのは、アリウス生徒に加えて、ユスティナ聖徒会の複製(ミメシス)たちだった。

 

スクワッドが調印したエデン条約をシャーレのエデン条約が上書きしたことで、エデン条約機構という形で顕現したユスティナ聖徒会の使役は不可能になった──はずだった。

 

だが、それはベアトリーチェが巧妙に仕組んだ二重の罠だった。

 

エデン条約の折、スクワッドに課せられた任務は、エデン条約を調印し、それによって顕現したユスティナ聖徒会の複製(ミメシス)を使役し、トリニティとゲヘナを占領する──というものではなく、最初から、《ロイヤルブラッド》たるアツコを古聖堂に連れて行き、ユスティナ聖徒会を顕現させる、というただそれだけ。

 

そして、()()()()顕現し、“(パス)が接続”された後は、()()()()()()()()()()()()()ようになる。

 

つまりは、ベアトリーチェの本来の目的を達成するという意味では、サオリは任務を遂行できていた、と言えるだろう。

 

だが、たとえ目的を果たしたとしても、ベアトリーチェは最初からサオリとの約束を守るつもりなど毛頭なかった。

 

ベアトリーチェは用済みと言わんばかりに、周囲のアリウス生徒や聖徒会のミメシスを使ってサオリを銃撃で伸す。

 

そして、先生へと改めて挨拶をする。

 

『はじめまして、シャーレの先生。

私はベアトリーチェと申します。既にご存知かもしれませんが、《ゲマトリア》の一員です。通信越しでの挨拶となる事をお許しください』

 

赤い肌に、白いドレスを纏い、長い黒髪を靡かせるその姿は、ホログラムではあるが、サオリが言っていた特徴と確かに合致する。

 

だが、完全な人の姿とは言い切れず、特に頭部は無数の羽が畳まれて眼が浮かび上がった異形の姿そのもの。

 

黒服やマエストロといった他のゲマトリアの連中との共通点を見出し、ベアトリーチェが確かにゲマトリアの存在である事を先生は理解した。

 

ベアトリーチェは自身をゲマトリア唯一の成功者であるとして、先生に情報交換を提案する。

 

しかし、先生はこれを毅然とした態度で断る。

 

ベアトリーチェは特に取り乱すようなことはなく、余裕ある態度を見せながら、自らがどのようにアリウスを手中に収めたのかを語り出す。

──否、()()出す。

 

負の感情に偽りと欺瞞を乗せ、アリウスの生徒たちを支配した。

アリウスに元々、内戦によって満ち溢れ、渦巻いていた負の感情を活用し、《楽園》とは対極の《地獄》を作り出したのだと。

しかし、その《地獄》は、()()にとっては、安寧の地であり、楽園。

 

そうしてベアトリーチェは先生に理解を求め、アツコを放っておくように要求を突き付ける。

協力してくれれば、ベアトリーチェの目的とその結果を絡めた上で、キヴォトス(この世界)の真実を教えるという条件も乗せて。

 

 

 

先生はこれを当然のように突っぱねる。

 

 

 

[“誰かの犠牲で到達できる真実なんて必要ない”]

 

 

 

それに対して、ベアトリーチェは、変わらず取り乱すことはなく、むしろ、好都合、予定通り、確信を得たと言わんばかりの態度でほくそ笑む。

 

真の楽園こそ、負の感情が溢れ返った、原罪の始まりの場所であり、大人はそれを子供たちに教えてあげなければならない、と宣うベアトリーチェ。

 

 

 

[“ベアトリーチェ”]

 

[“あなたは生徒を、私たちを侮辱した”]

 

[“そして「教え」を、「学び」を侮辱した”]

 

[“私は大人として、あなたを絶対に許すことは出来ない”]

 

その先生の言葉をベアトリーチェは宣戦布告と受け取り、受け入れた。

 

もし、バシリカに辿り着けたのなら、そこで決着をつけよう、と。

 

ベアトリーチェは先生を、“不可解な者”と称し、

互いに競い合える仲間として信じた黒服、

互いに高め合える理解者として信じたマエストロ、

互いを通じて完成されるメタファーとして信じたゴルコンダ、

この三人と同じように、

互いに反発する敵対者だと信じていると告げる。

 

『あなたは、私の敵です』

 

その言葉を最後に通信は切れ、ベアトリーチェのホログラムは消えた。

 

そして、アリウス生徒達と聖徒会のミメシスが動き出す。

ベアトリーチェの“敵対者”を排除する為に。

 

だが、その前に、スクワッドが立ち塞がる。

 

[“行こう!スクワッド!”]

 

「ああ!」

「は、はい!」

「うん…!」

 

先生はタブレット端末──《シッテムの箱》を手に持ち、スクワッドは各々の武器を構える。

 

アリウス生徒と聖徒会のミメシスによる混成部隊との戦闘が始まる。

 

 

 

 

 

──かに思われた、その直後。

 

 

 

アリウス生徒と聖徒会のミメシスの混成部隊は、突如として部隊の中心で噴き上がった青白い爆炎によって吹き飛ばされた。

 

[“!?”]

 

「!?」

 

思わぬ出来事に、先生とスクワッドの動きが止まる。

 

青白い爆炎によって、アリウス生徒と聖徒会のミメシスの混成部隊は壊滅状態になったが、まだ軽傷で立ち上がれる者もいた。

 

そこへ突如として飛来するのは、星のように煌めく銃撃。

 

「今のは…まさか…!!」

 

星の銃撃に倒れ臥すアリウス生徒やミメシスを目にしながら、サオリは爆炎の後に揺らめく青みを帯びた黒煙へと視線を向ける。

 

 

 

より正確には、その奥の気配の主へと。

 

揺らめく黒煙の中に、()()()()()が揺れる。

 

信じたくない現実に表情が険しく歪むのを感じながら、サオリは歯噛みする。

 

そして、黒煙の中から、二つの人影が正体を現す。

 

 

 

[“イヴ…!ミカ…!”]

 

「…まさか、ここまで追いかけて来たのか」

 

ベアトリーチェの包囲に続いて、レイヴンとミカの乱入。

ただでさえ、時間は限られ、残された時間も短いというのに、サオリ達を妨害する要素が次々と現れる。

 

「久しぶり…ってほどでもないか。また会えて嬉しいよ、サオリ」

 

黒煙の中で桃色の長髪を揺らし、穏やかな微笑みを浮かべるミカ。

しかし、サオリは知っている。

この微笑みの裏には、獰猛な復讐心が息づいていることを。

 

ミカを視界に捉えたまま、サオリはレイヴンへと視線を向ける。

 

レイヴンは無表情のまま、しかし油断なく、両手に異なる銃を握り、身構えている。

その異なる色調の真紅の双眸から放たれる視線は、常に、こちらを捉え、標的と定めているかのような、研ぎ澄まされた冷たい瞳をしていた。

 

それは正しく、“狩人の眼光”と言えるものだった。

 

スクワッド(そっち)には先生、こっち(自分)にはレイヴン…色々と加味して戦力はトントン、ってところかな?」

 

ミカが彼我の戦力比について分析する。

 

サオリとしては、買い被り過ぎだという意見を出したいくらいには、自分たちが不利だと考えていた。

 

先生に対する信用も信頼もある。

 

だが、現状、あまりにも自分自身のコンディションが悪過ぎる。

それを無視することは出来ない。

 

一方で、ミカもレイヴンも、負傷や不調の様子は無い。

四対二という人数の差はあるが、ミカとレイヴンという規格外の相手に対しては、人数差の有利など、焼け石に水も良いところだ。

 

よって、ミカと拮抗しているという分析は、間違いと言わざるを得ない。

 

 

 

──でも。

 

それでも、諦める訳にはいかない。

 

ベアトリーチェを止め、アツコを救う。

 

何が何でも。

 

たとえ、不利だとしても。

 

 

 

 

アリウススクワッドを前に、たった一人でも立ち向かった。

 

あの時の、アズサのように──。

 

 

 

[“ミカ…やめて!今はこうしている場合じゃ…!”]

 

ミカを止める為に、必死に訴えかける先生。

 

しかし、ミカは困ったような、ぎこちない悲壮な笑みを返すだけだった。

 

「…ごめんね、先生。私、元々言うことを聞かない“悪い子”だったでしょう?」

 

それは、話が通じていながら、ミカ自身、意味を理解していながら、それでも止まることの出来ない、決定的な決別を意味していた。

 

「先生が今、どういう状況なのかは大体分かるけど…その言葉には従えないの」

 

[“ミカ…!”]

 

「私は何度も先生を裏切って来たし…それが一回や二回増えたからって、いまさら変わることもないし、うん」

 

[“…イヴも、ミカと同じなの…?今からでも──”]

 

説得する相手をミカからレイヴンへと変える先生。

 

そこでようやく、レイヴンは先生に顔を向ける。

 

「…先生」

 

そして、応える。

 

先生の内心に、一縷の希望が光のように差し込む。

 

「…私が、()()()に立っていることが、その質問の答えだ。これが、私の選択だ」

 

しかし、その希望の光は、一瞬にして掻き消された。

 

レイヴンが、先生に靡くことは、決してない。

先生は、その事実を理解した。

 

「どうする?」

 

「せ、先生……」

 

ミサキはサオリに、ヒヨリは先生に、判断を仰ぐ。

 

「…同じだ。これまでと変わらない。ベアトリーチェを止め、アツコを救う。その為なら──私は、相手がミカだろうと、レイヴンだろうと、制圧する…!」

 

だが、この絶望的状況を前にしても、サオリが折れることはなかった。

闘志を燃やし、銃を構える。

 

[“…うん、そうだね。とりあえず、二人にお灸を据えよう!!”]

 

サオリの闘志に影響されたのだろう。

 

先生も心機一転、立ち向かう意志を見せる。

 

生徒であるサオリが踏ん張っているのに、大人である自分が先に折れる訳にはいかない、とでも言うかのように。

 

「は、はいっ!やりましょう!みんなでなら、きっと…!!」

 

「よかった。ちょうどムカついてきたところだったから」

 

ヒヨリは勢いよく返事をし、ミサキは挑発的な強気の言葉を発する。

 

ヒヨリとミサキの二人もまた、その根底には、サオリと同じような、ベアトリーチェを止め、アツコを救うという強い想いがあった。

 

「あれ?これって私たちが怒られる流れ?」

 

「本当、嫌われ役って損するばっかりなんだから。ね?レイヴン」

 

深い溜め息を吐くミカに、レイヴンは淡々と返す。

 

「軽口を叩いてないで構えろ、聖園ミカ。

──来るぞ」

 

アリウス自治区にて、再び、先生の指揮するスクワッドと、ミカとレイヴンのコンビがぶつかった。

 




先生を敵対者として定めたベアトリーチェ
再び、先生とスクワッドの前に立ち塞がったミカとレイヴン

しかし、それでも諦めず、抗うスクワッドと先生

地下通路に続き、二度目の激突
その勝負の行方は──?

また次の更新でお会いしましょう
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