ブルーアーカイブ -灰の翼-   作:空素

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あらすじ

アビドス市街に押し寄せるPMC兵器群
ホシノがカイザーの雇われに!?




EP-53 昏迷の最中の異変

一方、アビドス市街の一角でPMC兵器群を相手取る対策委員会メンバー。

 

シロコが突っ込み、銃撃に加え、体術と手榴弾の爆撃を交えながら縦横無尽に軍団を引っ掻き回す。

 

その際はあたかも、レイヴン或いは、ホシノのようだった。

 

シロコをサポートするように、セリカが後方から敵を狙い撃つ。

 

シロコの攻撃からあぶれた敵や、生き残った敵を確実にセリカの銃撃が撃ち倒していく。

 

そして、ノノミの広範囲掃射が纏めて薙ぎ倒していく。

 

そうして、周辺の敵は全て倒し、ひと段落つく。

 

『皆さん、この辺りの敵は全て倒し切ったようです!お疲れ様でした!』

 

インカムからアヤネが三人の戦いを労う。

 

『今、補給物資を届けます!』

 

アヤネが操るドローンが三人の元に現れ、弾薬や回復用のゼリー飲料を届ける。

 

「アヤネちゃん、ありがとう!」

 

「アヤネちゃん、ありがとうございます!」

 

「ん、ありがとう、アヤネ」

 

各々、銃をリロードしたり、ゼリー飲料を飲んで回復を図る。

 

「…イヴちゃん、大丈夫でしょうか?」

 

銃のリロードを終えたノノミが、小さく呟く。

 

「…今朝の見張りの担当は、確か便利屋の鬼方カヨコ、だったわよね…」

 

イヴの見守り担当者は、事前に便利屋と話し合って取り決め、いつ誰が担当になるのかを把握していた。

 

とは言え、まさかこんな状況になるとは思わなかった。

果たして、彼女一人でイヴを守り切れるだろうか、と三人の胸中に不安が渦巻く。

 

こんな事が起こると分かっていれば、せめて二人体制に出来たのだが、今更言ったところで後の祭りだ。

今はイヴの元へ急ぎつつも、敵を倒して行く。

 

アビドス市街は未だ混乱の真っ只中であり、三人が訪れた時には多くの人々が逃げ惑う混沌とした情景だった。

今、見渡す限りでは人の気配は感じられないが、まだ逃げ遅れた人がいる可能性もある。

 

兵器群を無視してイヴだけを優先する訳にはいかない。

アビドス対策委員会は、生徒会ではなくても、同じような心情を持っているのだから。

 

だからこそ、焦りは禁物。

適宜、休憩を挟みつつ、余力を常に残しておく。

どんな不測の事態が起こるか、分からないから、というのは先生の言だ。

 

「…大丈夫、きっとイヴは、大丈夫」

 

まるで自分自身に言い聞かせるように、シロコは呟く。

 

その様子をセリカとノノミは心配そうに見詰める。

 

イヴが倒れ、元気がなくなっていたところに、更に畳み掛けるようにホシノが居なくなりシロコは大きなショックを受けたようだった。

 

本当なら、今すぐにでもイヴの元に駆け付けたい一心を押し込めて、戦っている。

 

カヨコと、一縷の希望に掛けてイヴに電話をかけてみたが、何故か繋がらなかった。

 

その割には、対策委員会間のインカムでの通話は出来ると言うのに。

 

まるで、対策委員会からイヴを孤立させようとしているように、というのは、流石に考え過ぎか。

 

『[“みんな、ちょっといいかな?”]』

 

そんな不穏なことを考えていると、神妙な声色で先生が声をかける。

 

「何?どうしたの?」

 

三人ともそれぞれ、インカムの先生の言葉に耳を傾ける。

 

『[“私のタブレットを使って、街中の監視カメラやイヴが入院している監視カメラの映像を観ようとしたんだけど、どれにも一切、繋がらなかった”]』

 

先生は、シロコたちが戦闘をする裏で、街やイヴの状況を確認しようとアロナに頼んで監視カメラのハッキングを行おうとした。

 

だが、その試みは失敗に終わった。

 

アロナ曰く、『外に出ようとすると絡み取られて動けなくなるみたいなんです』との事だ。

 

紛れもなく、何者かの妨害を受けている。

 

『[“みんな、気を付けて。カイザーじゃない、別の何者かの企みがある可能性がある”]』

 

先生の警告を受け、一同に緊張が走る。

 

その直後。

 

ふわり、とそれぞれの視界に映り込むものがあった。

 

「ん…?」

 

真っ先に気付いたシロコが、それを目で追う。

 

それは、赤い光の粒子。

 

「何、これ…」

 

セリカが困惑したように声を漏らす。

 

明滅し、煌めきながら宙を舞うそれは、徐々に数を増やしていく。

 

「火の粉…じゃないですよね…?」

 

ノノミがそう呟き、周囲を見渡す。

 

血のように赤に煌めく粒子は、周囲一帯を包み込み、“深紅”に染め上げる。

 

『皆さん!大丈夫ですか!?』

 

状況を映像で観ているアヤネが慌てた声を上げる。

 

「私たちは大丈夫!だけど…!」

 

セリカが答えるが、訳の分からない状況に、明らかに戸惑っている。

 

「これ…イヴと同じ…?」

 

シロコには見覚えがあった。

 

だが、横に首を振って否定する。

 

イヴのヘイロー、そこから零れ落ちる光芒の色合いに似ていて、だが、決定的に違う何かを感じる。

 

その間にも、周囲を染める“深紅”は濃度を上げていく。

 

『[“みんな!何か嫌な予感がする!そこを離れるんだ!”]』

 

先生が指示を出した直後、シロコ達の周囲に満ちていた“深紅”が、四散し、“あるもの”へと収束する。

 

それは、シロコ達が倒したPMC兵器群。

 

そのオートマタ、ドローン、戦車の残骸。

 

『赤い粒子が兵器の残骸に…!?』

 

『[“みんな!気を付けて!”]』

 

“深紅”が収束した兵器の残骸。

 

撃破し、もう動かない筈のソレが、ぎこちない動きで動き出す。

 

それを目にしたシロコ達は銃を構える。

 

再び蘇った兵器群は、表面が赤みがかり、周囲には深紅の粒子が舞っていた。

 

血の紅に染まった兵器群は、ぎこちない動きながらに、不気味にシロコ達へと再び攻撃を始める。

 

****************************

 

「あ、アル!?今大丈夫!?どこにいる!?」

 

便利屋との合流を目指す最中、カヨコが遮蔽の陰でアルと通話する。

 

その間、イヴは周囲のPMC兵器を薙ぎ倒して行く。

 

『こっちは大丈夫よ!それより、レイヴンは無事なの!?』

 

アルもまた、眠っていたままのレイヴンが気掛かりであり、病院を出る時に一報は入れたが、そのまま戦闘をしていると言うことで、安否を問う。

 

「信じられないくらい元気みたい…だけど、要注意ってところかな」

 

カヨコから見て、イヴの動きは倒れる前と遜色ない程の暴れっぷりだ。

 

さすがに、銃弾が爆発するような事はないようだが。

 

『そう。分かったわ。そっちはカヨコに任せるわ。こっちの居場所だったわね。私たちがいるのは──よ』

 

アルが告げた場所は、此処からそこそこ離れた場所だった。

 

「それなら、私たちが居るのは──だから」

 

通話しながらも、カヨコは隙を見てイヴの支援に、ハンドガンによる銃撃を挟み込み、ドローンなどを撃ち落とす。

 

『それなら、──の辺りで落ち合うのはどう?』

 

端末越しに、アルの方でも戦闘が行われているのが分かる。

アルは後衛で狙撃に徹し、前をハルカとムツキに任せているようだ。

 

「うん、それが良いと思う。私たちも急いで向かう」

 

『それは良いけど、くれぐれも無茶はしないように。特にレイヴンは病み上がりなんだから!』

 

「“病んでない、怪我しただけ”、だって」

 

溜め息混じりにカヨコはアルの言葉に返す。

 

『何よそれ』

 

「私がアルと同じことを言った時のイヴの返事」

 

少しの間を置いて。

 

『屁理屈言ってんじゃないわよ!と言うか、カヨコあなた!いつの間にレイヴンを名前で呼ぶようになったの!?』

 

「雑談するなら切るよ」

 

『あぁ!!ちょっと待ちなさいよ!』

 

「まだ何かあるの?」

 

『ちょっと気になったんだけど、このカイザーの兵器なんだか──え?』

 

アルは会話の途中と思われる中、突然、困惑したような声を漏らす。

 

「アル?どうしたの?」

 

言葉が途切れた事を不審に思ったカヨコが呼びかける。

 

『何か急に赤い光の粒みたいなのが…えっ!?』

 

今度は驚いたような声を上げるアル。

 

「赤い光?アル?ちょっと何言ってんの?」

 

『赤い光が濃くなって…何よこれ!?』

 

明らかにアル、というか、それを取り巻く環境の様子がおかしい。

 

「アル…?アル!?ちょっと!返事してよ!!」

 

何か事件、或いは異変のようなものを感じる。

 

『ちょっ!?嘘でしょ!?倒したロボットが動いて…!?カヨコごめん!ちょっと二人だけじゃ厳しそうだからこれで切るわね!後で落ち合いましょう!それから、“赤い光”に気を付けて!!』

 

捲し立てるようにそれだけ言い切り、通話が切れる。

 

「アル…」

 

何か、嫌な予感がする。

 

カヨコは胸騒ぎを覚えずにはいられなかった。

 

「カヨコ、どうしたの?」

 

そこに、周辺の敵を倒し終えたイヴが歩み寄る。

 

「陸八──アルは何て?」

 

「イヴ、実は──」

 

カヨコは、イヴに振り向く。

 

そのカヨコの視界、イヴの背後に“ソレ”は浮かんでいた。

 

言うなれば、“赤い光の粒子”。

 

そう呼ぶべきものが無数に舞っており、それは徐々に増えていく。

 

「カヨ──ッ!!」

 

イヴはカヨコの様子がおかしい事を訝しんだ直後、その視線が自身の背後に向いていることに気付き、勢い良く振り返る。

 

そして、その視線の先に舞い踊る、()()()()()()血のように赤い──否、“深紅”の粒子を目にした。

 

*****************************

 

私の目の前の空間を埋め尽くし、“深紅”に染め上げる赤い光の粒子。

 

それは、かつてルビコンに於いて、嫌と言うほど目にしたものだった。

 

ルビコン──正式名、惑星ルビコン3で発見された未知の物質であり、その多様性の広さから、人類文明を飛躍的に発展させ、次世代のエネルギー資源として多くの人々から期待されていた。

 

一度、《アイビスの火》と呼ばれる災禍によって焼き尽くされ、失われたと思われたが、何者かがルビコンの星外企業に未だ残る物質の存在をリークし、その物質を巡って、企業とルビコンの土着勢力、様々な思惑を持った独立傭兵、そして、《惑星封鎖機構》を巻き込んだ大きな争奪戦にまで発展し、その果てに、独立傭兵の私は、雇い主の使命を継ぎ、二度目の災禍、星系を焼き尽くす大火を引き起こした。

 

その全ての中心となった物質。

 

《コーラル》。

 

私の目の前で瞬き、揺らめき、煌めく“深紅”の粒子は、正しくそのものだった。

 

そう言えば、私は一度、災禍を巻き起こした後に見ている。

 

災禍の果てに、辿り着いた星の荒野を彷徨っている中。

ふと、空を見上げた時に目にした、コーラルの潮流。

 

あれがきっかけで、私は今、きっと此処に居る。

あのコーラルに運ばれてなのか、それとも、私がこのコーラルを持ち込んでしまったのか。

 

そのどちらでもない、別の因果か。

何にせよ、この場所にコーラルが存在しているという事実は変わらない。

 

そして、私が為すべき事も変わらない。

コーラルは焼滅させる。

 

それが、私がウォルターから受け継いだ遺志であり、使命。

 

為すべき事を為す。

 

ウォルターの使命を全うする為に。

 

空間を埋め尽くしていたコーラルは、やがてPMC兵器の残骸に収束し、倒した筈のそれらが動き出す。

 

表面に赤みを帯び、粒子を漂わせる兵器が続々と起き上がり、私とカヨコにぎこちない動きで視線を向ける。

 

私のヘイローが強く、激しく脈動し、瞬くのを感じる。

 

零れ落ちた“真紅”の光芒が私の両手の銃に触れ、コーラルとは異なる“真紅”に染め上げる。

 

私の傍に猟犬が、背後に大鴉が姿を現す。

 

そのどちらも、コーラルを前に敵意を剥き出しに殺気立っている。

 

さぁ、始めよう。

 

“仕事”の時間だ。




なんでキヴォトスにコーラルがあるんだよ!?

割と大変な事になりそうですよね、キヴォトスにコーラルがあったら

カイザーが間違いなく悪用するし、ミレニアムの頭のイかれた科学者共が何を生み出すか分かったモンじゃないですからね
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